卵のアレルギーが心配で、なかなか卵を始められない方も多いことでしょう。 「卵を早くから微量はじめるといわれても、ずっと微量になってしまってどうやってすすめていいのかわからない」という相談が相次いでいます。 まず、 一般的な赤ちゃんと、皮膚炎のある赤ちゃんでは進め方は異なります。 この記事では、どうしてこういう理由になっているのかを考えていくための記事となっています。 ) まず、以下の記事は、 離乳食を指導したりする人向けであり、保護者向けではありません。 あらかじめご了承ください。 「卵アレルギーを予防するには、現在では生後6ヶ月頃から少しずつあげるとよい」と言われているもととなった、PETIT研究について少しだけ詳しくみていきましょう。 PETITスタディ、Lancet 2017; 389: 276-86 国立成育医療研究センターを中心とする研究グループが2017年に発表したPETIT研究は、とても注目を集めました。 また、2019年3月の「授乳・離乳の支援ガイド」改定も重なり、インターネットをはじめとするメディアでは 「卵の早期摂取がアレルギー予防となる」ということが報道されていますが、 これは違います! 言えるのは「卵の開始を遅くしてもアレルギーは予防はできない」というだけで、卵をはやめても予防にはなりません。 このスタディは下記のようにして行われていることを知っておきたいものです 本研究のまとめ 本研究では、 安易に「鶏卵は早くから始めるべき」としているわけではなく、まずスキンケアをしっかり行い、ごく微量の摂取を行なった場合にアレルギーが抑制されたといえます。 つまり、ここでいえるのは、 「アトピー性皮膚炎患児には卵の開始を遅らせても予防にはならない」ということです。 2g 本試験は、加熱全卵0. 2g相当の研究用加熱全卵を、毎日摂取したというものであり、 実際に毎日0. 2gずつ食べさせるというのは不可能に近いといえます。 卵白アルブミン量の加熱による変化 次に、卵アレルギーの主な原因である「卵白アルブミン」について見ていきましょう。 卵白アルブミンは、加熱によってそのチカラが変わってきます。 よって、 長時間、加熱したもののほうが抗原が弱まるため、20分しっかり茹でた固ゆで卵のほうが、良いと考えられます。 生卵と比較したアレルギー抗原残存率は下記のとおりです。 この表にある、「オボムコイド」も卵白に含まれているアレルゲンの1つです。 卵アレルギーといっても、アルブミンに反応しているのかオボムコイドに反応しているのかはわかりませんが、いずれにしても しっかり固ゆでのゆで卵にすることで、量を減らせることがわかっています。 卵ボウロは食べてもいいですか? 卵はごく微量の摂取が良いとはわかっていても、実際毎日食べさせるとなると、なかなか難しいので、卵ボウロはどうなのかという話になります。 岩本製菓のホームページには ・国産卵黄かぼちゃボーロ1粒 卵黄 19. 6mg 少量の卵白含有 ・タマゴボーロ1粒 全卵約23. 5mg 入っています。 卵の量だけみると、これが、卵の少量摂取にはいいような気がしますが、一方で気になるデータを発見しました。 この先生の文献によりますと、加熱時間が長そうな 卵ボーロでも、卵白アルブミンは多く残存しているとのことです。 ボウロには 、卵黄のみのボウロがあります。 卵黄のみといっても、少しの卵白は含んでいますので、少量のみのトライアルにはいいかもしれません。 卵黄のみのボウロは ・森永製菓 マンナボーロ ・大阪前田製菓 卵黄かぼちゃボーロ などがあげられます。 卵の量をどのように増やすか 最近とても増えているのが、「卵を少しずつはじめているが、全然増えない。 どのように増やしたらいいのか」ということです。 アトピー性皮膚炎があり、卵アレルギーの疑いがある児は、前述のPETIT研究を参考に、医師の診断を受けて皮膚をコントロールしながらすすめてください。 それ以外の人は、 授乳・離乳の支援ガイドをもとに離乳食をすすめましょう。 これはとても大切なことなので、もう一度書きます。 何もない場合は、 ガイドを基本に離乳食をすすめてください。 「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」日本小児アレルギー学会 より引用 卵のすすめ方 *以下は母子栄養協会が推奨するものであり、小児科医が推奨するものではありません。 また、皮膚疾患やアレルギーを疑うような疾患がない児を対象とした、一般的な卵のすすめ方であり、家庭で実践しやすい方法を考えたものです。 とにかく、卵には栄養があるので「無駄にさけても予防にはなりません」ので、鉄分豊富な卵黄から初めて行きましょう。 1.6ヶ月頃からしっかり加熱したゆで卵の卵黄を少しからはじめます 大丈夫であれば、加熱卵黄はそれほど慎重になる必要はありませんので、1週間くらいかけてゆで卵卵黄1個分を食べられるようにします。 茹でたあとはなるべく早く卵黄のみとりわけます。 (卵白アルブミンは水溶性なので、茹でてしばらく時間が経つと、卵白から卵黄に移行します) 2.7ヶ月頃~生卵の状態で卵黄と卵白にとりわけて、卵黄を薄焼き卵にします 卵を、生の状態で卵黄をとりわけてから、よく混ぜて 両面よく焼いて薄焼き卵にし、千切りにして錦糸卵にしてから少しだけとりわけます。 残りは 冷凍できるので、1週間少しずつ食べることができます。 このやり方は、飛ばしても構いません。 もしどうしても全卵に不安がある場合は、卵白を少しそぎ落とすという意味でオススメしているだけです。 例)森永製菓 マンナボーロ、大阪前田製菓 卵黄かぼちゃボーロ 3.全卵の薄焼き卵にしていきます 抗原の量だけをみると、20分固ゆで卵の卵白がいいということになっていきますが、リスクが高い児ではない場合、このステップを踏んでいくと時間がかかりすぎます。 また、卵白だけみじん切りして1gというのは、とても大変です。 (ゆで卵の卵白は冷凍すると食感が変わってしまいます) 卵はアミノ酸スコアも高い、優秀なタンパク源ですので、食べられるのであれば、食べさせたい食品です。 全卵を薄焼き卵にしていき、少しずつ小分けに冷凍しながら食べる量を増やしてい くとすすめやすいですよ。 まとめ アレルギーがご心配な気持ちはとてもよくわかりますが、赤ちゃんに必要なタンパク質を、いろいろな種類で補っていきたいですよね。 体調がよさそうであれば、まずは少しだけから試してみましょう。 卵は、早く始めたからといってアレルギーになりにくくなるというわけではありません。 ただ、遅らせてもアレルギー発症予防にはなりません。 タンパク質や鉄分をしっかりとるためにも、卵は必要以上に怖がらずに食べていきましょう。 参考文献) 食物アレルギー児の食事と治療用レシピ 診断と治療社2014.
次の卵を始めるのは離乳食に慣れてから• 初めて卵をあげるのは平日の午前中にする• 離乳食前にワセリンを顔にぬる• しっかり加熱する• あげるのは卵黄から• 最初は少量、徐々に増やしていく それでは詳細を解説します。 卵を始めるのは離乳食に慣れてから 冒頭で卵は離乳食初期からあげてOKですと書きましたが、いきなり最初に卵を与えてはいけません。 離乳食初期は、アレルギーの心配がなく、消化の良い10倍がゆから始めるのが基本です。 卵は10倍がゆ、野菜が慣れてきてからあげるようにしましょう。 初めて卵をあげるのは平日の午前中にする 初めて卵をあげる時はアレルギーを発症する可能性があります。 アレルギーは場合によってはアナフィラキシーという重い症状が出て命に危険がおよぶ可能性もあります。 したがって、 何かあったときに病院に行けるよう平日の午前中にあげることをお勧めします。 そして、 なるべく昼前は避けて、10時前にあげるとより安心です。 理由は、病院のお昼休憩を避けるためです。 アナフィラキシー症状が出るのは、食べてから2時間以内であることが多いので、この症状と病院のお昼休憩がかぶらない午前10時前がベストです。 離乳食前に顔にワセリンを塗る 離乳食前は、赤ちゃんの顔にワセリンを塗って顔を保護してあげましょう。 ワセリンを塗る理由は2つ。 卵アレルギーの原因物質の働きを弱める• 食中毒防止 卵アレルギーの原因物質は加熱することでその働きが弱まるとされています。 また、半熟の状態ですと、食中毒の危険性もあるので、十分に加熱する必要があります。 加熱時間ですが、完全に火を入れるため、20分以上加熱することをお勧めします。 加熱方法に関しては、後ほど説明します。 あげるのは卵黄から 卵は大きく分けると「卵黄」と「卵白」がありますが、必ず「卵黄」からあげるようにしてください。 卵黄と卵白ではタンパク質の種類が異なり、卵アレルギーは卵白のタンパク質が原因であることが多いとされています。 したがって、アレルギーの危険性が低い卵黄からあげるようにしましょう。 最初は少量、徐々に増やしていく 卵を最初から多めに上げてしまうと、もし症状が出たときに重症化しやすいため、最初は少量から始めます。 これは、離乳食の基本であり、卵に限ったことではありませんが、卵は特にアレルギーを起こしやすいので、かなり少量から始める必要があります。 最初は、卵黄を耳かき1杯程度から始めることをお勧めします。 固ゆで卵の簡単な作り方 固ゆで卵は普通に作ろうと思ったら、お湯に入れて20分以上茹でる必要がありますが、めんどくさいですよね? 実は、炊飯器でご飯を炊くときに一緒に卵を入れるだけで簡単に固ゆで卵が作れるんです! それでは、作り方をご紹介します。 卵をアルミホイルで包む• お米と一緒に入れてスイッチオン• 炊き上がったら卵を取り出し、氷水につける こんなんでいいの?って心配になりますよね。 私も最初は心配でした。 でも、我が家はずっとこの方法で固ゆで卵を作っていますが、十分中まで火が通っていますし、今のところ特に問題は起きていません。 ぜひ試してみてください。 離乳食で使う卵の保存方法 離乳食で使う固ゆで卵の保存方法ですが、卵黄は冷凍保存OK、卵白は冷凍保存NGです。 卵白は冷凍保存してしまうとゴムのように固くなるためお勧めできません。 また、 卵黄を冷凍保存するときは、きちんと卵白とは別にしてから保存するようにしましょう。 卵黄と卵白を一緒にしてしまうと卵白のアレルゲンが卵黄に移行してしまいます。 まとめ 離乳食で卵は離乳食初期からあげてOKです。 しかし、以下の点には気を付けるようにしましょう。
次の日本小児科学会専門医。 2002年、慶応義塾大学医学部卒。 神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県横浜市のなごみクリニックに院長として勤務。 内科・小児科・アレルギー科を担... 離乳食を始めてしばらくして、食べられるものの種類が増えてくると、アレルギーが心配な食品も徐々に試していくというステップに移ります。 しかし、特にアレルギー反応が出やすい卵には、なかなか手を出せないママも多いのではないのでしょうか。 そこで今回は、離乳食期の卵はいつから与えて良いのか、進め方や注意点についてご紹介します。 離乳食期の卵の進め方は? 離乳食期に与える食品の中で、特にアレルギー反応が出やすく心配されるのが卵です。 卵、または卵が含まれた食品を与えるときは、慎重にステップを踏んで進めていきましょう。 市販のベビーフードや赤ちゃん用おやつに卵が使われていることもあるので、離乳食で卵をスタートするまでは、食べさせないように注意してくださいね。 離乳食の卵の進め方は、まずは卵黄だけを与えるのがポイントです。 関連記事 離乳食の卵はいつから? 離乳食で卵をスタートする時期は、卵黄と卵白で異なります。 最初は、必ず卵黄のみを試してください。 卵白は、離乳食中期以降に与えましょう。 卵黄を食べられるようになって1ヶ月ほど経ってからが目安です。 少しずつ増やして、最大でも卵黄1個まで 卵黄を取り除くときに、卵白が混ざらないよう気をつけてください。 関連記事 2. 卵黄を食べられるようになって約1ヶ月経過してから始める。 全卵を与えた日から2日間くらいは、皮膚のかゆみや湿疹、下痢、嘔吐、呼吸困難などの症状が出ないかどうか、よく様子を見てあげてください。 アレルギーと思われる症状は一般的に30分以内に現れることが多いので、症状が見られたらすぐに小児科の受診をおすすめします。 関連記事 離乳食で卵を赤ちゃんに与えるときの注意点 赤ちゃんに初めて卵を与えるときには、いくつか注意しておきたいことがあります。 完全に火を通す 全卵が食べられるようになったからといって、半熟卵をまるごと与えてはいけません。 半熟卵のように十分に火が通っていない卵を食べるのは、6歳を過ぎてからにしましょう。 それまでは必ず完全に火を通しましょう。 卵には細菌性腸炎の原因となるキャンピロバクターやサルモネラ菌が混入している場合もあるので、火を通すことで食中毒の予防にもなります。
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