ミッド サマー 感想。 『ミッドサマー Midsommar』感想(ネタバレ)…私はアリ・アスターに恋してる : シネマンドレイク:映画感想&レビュー

サマーソニック2018 東京1日目のライブ感想[ノエル・Pale Waves等]

ミッド サマー 感想

「ミッドサマー」の登場人物・キャスト ダニ: フローレンス・ピュー 心理学専攻の学生。 妹が両親を道連れに自殺して以来、 心に大きな傷を抱えている。 クリスチャン: ジャック・レイナー 人類学専攻の学生。 ダニとは4年付き合っているが、 その関係は冷めかけている。 ペレ: ヴィルヘルム・ブロムグレン クリスチャンの学友のスウェーデン人。 人里離れた村の出身であり、 故郷の祝祭に友人たちを招待する。 ジョシュ: ウィリアム・ジャクソン・ハーパー クリスチャンの学友。 北欧の伝統文化を研究しており、 論文執筆の調査のため ペレの故郷を訪れる。 マーク: ウィル・ポールター クリスチャンの学友。 学業には熱心でないようで、 祝祭の最中でも態度が悪い。 「ミッドサマー」のネタバレあり感想 注意!ここから先、グロテスクな表現が含まれます 「ミッドサマー」の内容を ひとことで表すならば、 真っ昼間から繰り広げられる悪夢 これに尽きるでしょう。 舞台は夏のスウェーデン。 夜9時を過ぎても太陽は沈まず、 闇のやってこない世界です。 緑は生い茂り、 花は咲きほこり、 空はどこまでも青い。 そんな美しい自然を背景に 人がばったばったと惨死していく とんでもない映画でした。 飛び降り死体の ぐちゃぐちゃになった頭部を 大写しにする映画とか、 もうどうなってんですか。 監督はあたまおかC しかしどうにも、 前作「へレディタリー」に比べて 間延びしている感じは否めません。 とにかく淡々と儀式が進み 淡々と人が死んでいくので、 物語上の起伏があまりないんですよね。 この手の映画、普通なら 主人公たちが逃げようとして 村人が追いかける、みたいな 筋書きになるところですが 「ミッドサマー」ではみんな 人類学研究の調査に来てるので、 逃げようという気にならない。 ただただ異文化を受け入れ、 儀式を理解しようとしている。 それが新しくもあるのですが、 エンタメとしては成立してない ようにも感じました。 映画初心者はお断り、 完全にマニア向けのカルト映画として 楽しむのが正解のように思えますね。 ……では感想はこのくらいにして、 次は考察編にうつります! ポイント1: ダニの部屋の内装が示す意味とは? 物語の伏線は、 スウェーデンに飛ぶ前から すでに張られていました。 まずダニの部屋に飾られている絵。 バイキングの少女と巨大な熊が 印象的に描かれています。 これはダニとクリスチャンの 関係性を象徴していると言えるでしょう。 熊はその後も画面に登場します。 オリの中に閉じ込められている熊。 火に包まれる熊の絵。 そして、熊の毛皮を着て焼かれるクリスチャン…… クリスチャンとの関係を 克服する過程が、 すでに画面の中で語られ始めていたわけです。 アリ・アスターはほんとに芸が細かいよ また、 ダニの部屋にやたらと 植物があるのにも気づいたでしょうか。 ペレの従兄弟から ドラッグをもらって以降、 ダニは植物の力を強く 感じるようになっていきます。 しかし彼女は最初から、 植物に惹かれていたんですね。 部屋の中にあるのは葉っぱばかりでしたが、 スウェーデンに来ると芝生や樹木、 そして花々からエネルギーを受け取っていく。 最終的には 全身を花で包まれた 「5月の女王」として覚醒するのです! ポイント2:「アテストゥーパ」の儀式は実在した? 「ミッドサマー」のヤバさを 一瞬で示してくれる "アテストゥーパ"の場面。 72歳を迎えた老人が、 崖の上から身を投げて死ぬ という恐ろしい儀式です。 ぐちゃぐちゃの頭部の大写し、エグいことやるわ これは決して 映画のなかだけの作り物ではなく、 古代北欧の伝説をもとにしています。 北欧に詳しい人にとっては 有名な儀式のようで、 ジョシュは儀式の中身を 知っているような素振りを 見せていますね。 ペレはおそらく 「うちの故郷では いまだにアテストゥーパを やっているぞ。 見に来ないか?」 とでも言って、 ジョシュを誘ったのでしょう。 ポイント3: 何度も登場するルーン文字、その意味は? 村の中では 「R」に似たルーン文字が 何度も登場します。 これは北欧に実在する文字で、 イチイの木を象徴しているそうです。 これは架空の文字のようです。 僕の解釈ですが、 「R」は死、鏡文字の「R」は生を表している のではないでしょうか。 長老たちが飛び降りる崖、 その上の碑文には「R」が掘られています。 一方で、 ペレがダニにプレゼントした似顔絵の 右下には鏡文字の「R」」が書かれていました。 生と死は表裏一体、 同じものだという考えが この文字に象徴されていると 考えられます。 同じような意味では、 乾杯の儀式も 生と死が対称になっていました。 生と死の対称性、ほかにも探せば見つかりそう! ポイント4: サイモンはなぜあんな殺され方をしたのか? ペレの従兄弟が連れてきたサイモン。 物語中盤で行方不明になりましたが、 鶏小屋の中で 背中を大きく切り裂かれた 惨殺死体となって発見されました。 実はあれ、 ブラッドイーグル(血のワシ)と呼ばれる 古代北欧の処刑方法なのです。 実在の処刑方法なのか、 伝説上のものなのかは 専門家でも意見がわかれるそうですが。 ただの空想ではなく、 冒頭の「アティストゥーパ」と同様、 北欧の伝承をもとにしているんです。 ちなみにですが、 よく見るとサイモンの肺が 動いてるんですよね…… もしかしたら、 クリスチャンがサイモンを 発見した時点では、 彼はまだ生きていたのかもしれません。 こっっっっわ! ポイント5: "命を捧げる"ことに意味はあるのか? 「ミッドサマー」では、 命に関する異質の価値観が提示されます。 老いさらばえて死ぬのは悪いこと。 若い世代のために命を捧げることが 喜びである、と語られるのです。 一般社会に住む我々には とても理解しがたい考えですが、 ダニにはある意味救いになっています。 突然死んでしまった妹、 その巻き添えを食って 殺された両親の死にも 意味があったと考えられるからです。 しかし! ここから先が アリ・アスターの意地悪なところ。 最後の最後で、 自ら死ぬことを志願した若者が 悲鳴をあげながら炎に包まれる 場面を入れてくるんですね。 ほらー! やっぱり死ぬのって怖いじゃーん!! ヨボヨボになっても寿命が尽きるまで生きるべきか、 信仰の中で自ら時期を定めて死ぬべきなのか。 「ミッドサマー」は 全然答えを示してはくれません。 観客自らが死について 考え続けざるを得ないように 作られた結末なんですよ。 ポイント6: なぜダニは最後に笑ったのか? 主人公のダニが、最後の最後で 実に意味ありげな笑顔を浮かべて、 「ミッドサマー」は終わります。 あの笑顔の意味は なんだったのでしょうか? 僕の意見では、 形だけの家族から離れて 本当の家族を手に入れられたから ではないかと思います。 ダニを支えてくれるはずの クリスチャンとは、 ずっと関係がギクシャクしていました。 恋人であるとはいいつつ、 付き合った記念日も 誕生日すらも覚えてません。 一方で、ダニを親身になって 支えてくれたのはペレです。 ダニと妹や両親との関係性は はっきりとは描かれません。 しかし、 最後に幻覚として現れた両親ですら、 ダニに声をかけない点を見ると、 彼女は家族の中でも孤立していたのでは ないかと思われます。 ずっと寂しい思いをしていたんだね ダニは儀式の中で 「5月の女王(May Queen)」に選ばれ、 村人たちから大きな祝福を受けます。 また全身を花飾りで覆われ、 物語序盤から感じていた 植物のパワーを受け取るのです。 極めつけには、 形だけの恋人だった クリスチャンを葬り去り、 過去から完全に決別します。 一見バッドエンドですが、 ダニにとっては完璧な ハッピーエンドになっている。 これが「ミッドサマー」という 映画の正体なのです。 まとめ 〜カルト映画の新たな古典が誕生した〜 「ミッドサマー」、実に恐ろしい映画でした。 ホラー映画としてのカタルシスはなく、 真夏の太陽のもとで ひたすらおぞましいものを映すという、 とんでもない芸当をやってのけてくれました。 正直なところ 物語の面白さとしては 「へレディタリー」が上かと思うのですが、 「ミッドサマー」もまた カルト映画の古典として語り継がれることに 間違いはないでしょう。 お行儀のいい映画ばかりが もてはやされがちな昨今のこと、 こういう劇薬のような映画も たまには観ておきたいものですね。

次の

【みんなの口コミ】映画『ミッドサマー』の感想評価評判

ミッド サマー 感想

21世紀最高のホラーとも称される前作から1年、早くもアリ・アスター監督の新作が公開されている。 日本に先立ち2019年7月5日にアメリカで公開された新作『ミッドサマー』(原題:Midsommar)は、前作に引き続き観客に恐怖を振りまいている。 しかし、ワシントンポスト評によると、アリ・アスター監督は本作をホラー映画というよりも、おとぎ話みたいなものだそうだ。 そして、同時に本作を「Breakup Movie」(失恋映画)と語っている。 2020年2月より、日本での公開予定だ。 カナダで一足先に鑑賞した私が本作について紹介しよう。 ダニの家族の不幸が会ったことを機に、2人の関係に改善の兆しが見えてきた。 クリスチャンは友人と共に、スウェーデン人の友人の故郷に旅行をすることとなる。 男友達のみでの旅行をする予定だったが、ダニも旅行に参加することとなる。 そして、一行はスウェーデンの夏至祭(Midsommar)に参加をする。 その夏至祭こそが、狂気に満ちた地獄の始まりだった。 そして、明るい場所は安全地帯として描かれてきた。 しかし、本作はほぼ全編を通して光に満ちている。 緯度が高いスウェーデンでは、日が最も長い夏至には午後9でも真昼のように日光が降り注ぐ。 本作でも暗いシーンはあるが、光に満ちたシーンも安全ではない。 色とりどりの花を見ているだけでも気味が悪い演出が随所に隠れている。 光の中でも堂々と恐怖を植え付ける本作に安全地帯はない。 この異質なホラー作品は、明るい場所が安全という予定調和を見事に壊し、きっとこれからのホラー作品にも影響を与えるだろう。 ジャパニーズホラーのように、奥ゆかしい描写で怖がらせる作品でもない。 『ミッドサマー』では、じわじわと攻めてくる恐怖を味わう映画だ。 心霊的な怖さや、驚かされるような描写は少なく、不気味さや不快感がじわじわとこみ上げる構成になっている。 夏至祭に参加する現地住民達の眩しい笑顔、色とりどりの花と緑に満ちた色彩豊かな映像が続く。 そんな映像でも、独特のカメラワークや音楽が、得体のしれない気持ち悪さを演出している。 まさに毒のような恐怖を味わう本作は、鑑賞中だけに効く毒ではない。 実は、鑑賞後にカップルを別れさせる映画としても話題になりつつあるのだ。 本作を鑑賞した私としては、アリ・アスター監督の精神状態が心配で仕方がない。 私は1人で鑑賞をしたのだが、カップル向きの映画とはとても言い難い。 また、家族で鑑賞することをおすすめできるような作品でもない。 凶悪な失恋映画である本作をどうしてもカップルで鑑賞したい場合は、以下のパターンに当てはまるか確認して頂きたい。 絆を確かめたい 付き合いたて、あるいは1年くらい経って価値観の違いが見つかり始めたカップルがこのパターンだ。 危険な賭けなので正直おすすめはできないが、この作品を共に乗り越えれば2人の絆もより深まるだろう。 気まずい雰囲気や喧嘩して間も無いカップルなら感想を語り合わない方がいい。 きっと、壮絶なブレイクアップが待っているだろうから。 絶対の信頼がある 連れ添って数十年の熟年夫婦やカップルがこのパターンに当てはまる。 相手との価値観の違いも熟知しながら、一部は受け入れ、一部は諦めの境地に達しているカップルなら、この作品で簡単にブレイクアップすることはないだろう。 しかし、お互いが精神的にキツくなるホラーが好きでない限りは、口直し用に別の映画のチケットが必要になるかもしれない。 むしろ別れるきっかけが欲しい もしあなたが煮え切らない関係にやきもきしている場合、本作を是非カップルで鑑賞して欲しい。 そして、相手の感想を根掘り葉掘り訊ねてみることをおすすめしよう。 次第にお互いに怒りが込み上げて簡単に別れることができるだろう。 しかし、逆のパターンも考えられる。 感想を語り合ううちに、意外と共通の価値観でむしろ関係が改善してしまうパターンだ。 そうなったらそうなったで、アリ・アスター監督に感謝をしよう。 まとめ 日本での公開が決定した。 かなり過激な描写もあるため、おそらく修正が入るのではないかと思う。 個人的にショックだった点は、『』で優しいお兄ちゃんを演じたジャック・レイナーが、本作で見事にジェットエンジンをもぎ取られてしまったことだ。 本作は1人か、同性の友人と鑑賞することをおすすめしたい。 正直、かなり観ていてしんどくなる作品なので、精神的にきついホラーでも大丈夫な方のみ鑑賞していただきたい。 また、何も知らないカップルがデートでふらりと鑑賞してしまわないことを祈るばかりだ。

次の

『ミッドサマー』評価は?ネタバレ感想考察/90年周期の理由?夏至祭の目的は?

ミッド サマー 感想

8億円 世界興行収入 0. 批評家と一般は単純平均 映画『ミッドサマー』あらすじや概要 悲惨な事件で家族を亡くした女性ダニーは、恋人らがスウェーデンの90年に1度の夏至祭に行くのに同行します。 白夜で明るい村で、白い清潔な服を着た人達に迎えられ、奇祭を目にするうちに…。 奇祭の内容は?ダニーが真に求める事は? ネタバレ感想『ミッドサマー』考察や評価レビュー この先は ネタバレありの感想考察です。 他の映画はも参考にしてください。 映画『ミッドサマー』は長編映画では2作目の監督・脚本作ですが、すでに作家性が濃厚すぎるほど出ています。 本作は、アリ・アスター監督の過去の失恋や恋愛経験がもとになっているそうです。 アリ・アスター監督は、この映画を製作することにより「自分の失恋セラピー」になってるとも語っています。 前作ヘレディタリーも、実際の家族喪失セラピーでした。 主人公ダニーを演じる フローレンス・ピューはイギリス女優で、昨年の『ファイティング・ファミリー』の主演で注目され、本作の後『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』ではされています。 最新作『ブラック・ウィドウ』では新ヒーローに挑戦するそうなので楽しみです! フローレンス・ピューの恋人役を演じる ジャック・レイナーは、『』で主演を務めたアイルランド俳優で『』にも出演してました。 友人マーク役の ウィル・ポールターは一度見ると忘れにくい超個性派俳優で、10年前の『』や『』で存在感を発揮しましたが、最近の 『デトロイト』の狂気演技が脳裏に焼きついています。 他にもスウェーデン俳優など個性派ぞろいなので、登場キャラクターたちが何を考え、どこへ向かうのかストーリーを全く予測させません。 実話?フェスティバルホラー映画?こわいの? 映画『ミッドサマー』は、一般的な宗教ではなくケルト原始宗教を信仰するスウェーデンのコミューン(組織体)のホルガ村が舞台となります。 過去の実話を脚色した「90年に1度の夏至祭」で起こる民間信仰を描く「フォークホラー」です。 日本では、夏至祭という祭りにあわせて「 フェスティバル・ホラー」とも宣伝されてます。 同じフォーク・ホラーでは、 キリスト教以前のケルト信仰を描いた映画『ウィッカーマン』も似た設定なので、興味ある人は観てみてください。 邦画では『WOOD JOB!神去なあなあ日常』を思い出します。 個人的には 映画『ミッドサマー』は、気持ち悪い描写は多いけどこわくは感じませんでした。 前作『ヘレディタリー 継承』の方が不気味で不穏な状況がつづくので、こわい映画好きにはオススメです。 冒頭タペストリーが結末を予言?ハーメルンの笛吹き男? 冒頭でのタペストリー、誰もが意味深で重要だと感じたと思います。 私もなるべく記憶しようとつとめたけど、その後の衝撃展開の連続でかなり忘れてしまってます。 一部Google画像検索で確認したので、気になる人は検索してみてください。 タペストリーは、左から右へ時系列になっています。 映画『ミッドサマー』の鑑賞後に見ると、ダニーの将来を暗示してる予言のようにも見えます。 タペストリー左端は、雪降る冬の日に ダニーの妹が両親を巻きこんだ悲惨な事件が描かれています。 次に泣くダニーを恋人クリスチャンがなぐさめてて、木の枝の上からながめてる男性が絵を描いてるように見えます。 次にその 笛吹き男が、ダニーとクリスチャンとジョシュとマークの4人を従えて、スウェーデンのホルガ村の90年に1度の夏至祭(ミッドサマー)へ連れて行きます。 右端は白夜の太陽の下で、ダニーらに混ざってガイコツ(死者)も踊ってます。 この笛吹き男はホルガ村の出身のペレです。 ハーメルンの笛吹き男とは、中世13世紀ドイツである村に裏切られた男が、復讐のために村の子供たち130人を引き連れ行方不明になった事件です。 『ミッドサマー』ではペレが友人を引き連れます。 ただし、ダニーは後から行くことに決めたので、もしダニーが行かなければ他の女性を連れて行ったのか興味あるとこです。 ペレはダニーと2人っきりで話す時に、軽く説得してましたが。 ホルガ村の武器はドラッグ?赤子のような文明人 結局ダニーも含めた4人がペレのスウェーデンの故郷へ向かいます。 飛行機内の揺れや、ドライブ中の景色の180度回転などで軽い不安をあおるのはアリ・アスター監督らしいです。 景色が反転した瞬間から「別世界」入りしたとも考えられます。 ホルガ村へ入る前に、白夜で明るい草原でドラッグを飲んで気分よくくつろぎます。 ダニーだけはバッドトリップになり、走り出してトイレ小屋に入り電気をつけると、背後に不気味な顔が一瞬映ります。 ドラッグの幻想かもしれませんが。 ホルガ村に入ってからも、食事の飲み物に少しドラッグが入ってた可能性が高いです。 ラスト近くでダニーら女性が、メイポール(十字架の上に傘のある棒)の下でダンスコンテストしてメイクイーンを決める前にも、ドラッグを飲んでました。 ダニーはドラッグを飲むと、体から草木が生えてくる幻想を見ますが、自然と同化してる夢なのでしょうか。 ドラッグできめながら踊り狂うトリップ感は『デビルマン』誕生時を思い出します。 ケルト等の原始宗教では実際にあったそうです。 ダニーと引き離された クリスチャンが飲んだドラッグは、かなり強いものだったようで精力剤の一種だと思われます。 性欲を抑えられなくなったクリスチャンは、若い少女マヤの誘いを断る理性すら失われてラストの悲劇へと向かいます。 アッテストゥパンの儀式とは? 映画『ミッドサーマ』で最初に衝撃を受ける儀式です。 本作の アッテストゥパンの儀式とは、72歳に達した老男女が高い崖から飛び降り自殺する光景です。 絶命できなかった場合は、みんなでその苦しみを共有して息づかいをマネします。 「村全体が家族」で喜びも苦しみも共有することを示す最初のシーンでもあります。 そして 大きなハンマーで何度も顔をつぶして絶命させ苦しみを止めてやります。 日本の「おば捨て山」と似た風習です。 先史時代の北欧では実際に、共同体内で負担の大きかった高齢者は自ら命を絶ったそうです。 本作では飛び降り前に食事会の主役となり歌い、みこしで運ばれ、 手を切って流れた血をルーン文字の刻まれた石碑にこすりつけて最後のお祈りをします。 さすがに初めて見た外部の人間は動揺し、先に来てたサイモンとコニーのカップルはもう帰ると騒ぎ出します。 年配女性指導者が「 これが我々の伝統文化。 命は循環(サークル・オブ・ライフ)して彼らの名も引き継がれる」と説得します。 ダニーも帰りたいと主張するが、「ホルガ村を題材に論文を書きたい」と考えるクリスチャンには同意してもらえません。 ちなみに「ディレクターズ・カット版」では、もう1つ水?池?にいけにえを捧げる儀式もあるそうです。 崖からの飛び降り自殺に衝撃を受けるというより、それをながめて祝福してる村人にショックを受けます。 ただ「 住む場所が違えば、常識もシキタリも違う」と考えると、外部のダニーらや私達こそ異人であることも理解したいですね。 多彩な処刑方法とは?生贄か冒涜の罰か? ペレが連れてきた4人のアメリカ人のうち、最初の犠牲者というか生贄(いけにえ)はマーク(ウィル・ポールター)です。 マークは、ホルガ村の先祖の命がやどる神聖なる神木に小便してしまい、その保護者ウルフを激怒させます。 マークはそれ以前にも女性をネタにしたり、モラル感が薄い言動をしてたので、知らなかったとはいえもはや同情の余地は感じません。 夕食時に若い女性に声をかけられると期待してついて行き、そのまま帰らぬ人となります。 黒人ジョシュは、マークよりはしっかりしてますが、クリスチャンが同じテーマの論文を書くと聞いてからは対抗意識で頭がいっぱいになってます。 そしてついに、 ルーンの聖書ルビラダー(Rubi Radr)を盗撮して、その現場を見つかり悲惨な最後をむかえます。 ジョシュが最後に見たマークは「 マークの顔の皮をかぶったホルガ人」です。 わかりにくかったけど、 下半身もマークの皮で、アイスランドの魔術伝承「ナブロック」という死者の皮のパンツだそうです。 先に来てて、アッテストゥパンの儀式後に恋人コニーを置き去りにして帰ったと言われてたイギリス人のサイモンは、最も残酷な拷問の末に処刑されます。 サイモンの罪は、アッテストゥパンを否定したことでしょうか。 先史時代の北欧ヴァイキングに伝わる処刑方法 「血のワシ」(Blood Eagle)とは、人体を空中につるして背中を切り開き、左右の肺を生きたまま外へ引きづり出してワシの翼のように広げます。 しばらく呼吸し続けるので、苦しみは長そう。 クリスチャンはマヤとの子作り後、9人のいけにえ候補とされ、家族を得たダニーに見捨てられて、 聖殿の中で焼かれます。 檻にいたクマの内臓を出し、クリスチャンにかぶせて着ぐるみのようにしたのはシュールです。 焼かれるいけにえは、 ホルガからの志願者4人、外部者4人で、後1人はホルガと外部から候補者を出してメイクーン、つまりダニーに選ばせました。 ペレの両親も焼死したと言ってましたが、この儀式のいけにえに名乗り出たのかもしれません。 夏至祭ミッドサマーの真の目的とは?ダニーのその後? 映画『ミッドサマー』のテーマの1つにもなってますが、 夏至祭ミッドサマーの真の目的とは「近親相姦をさけるため、外部者と子作りして新しい血を取りこむ事」です。 目的が「結婚」ではなく「子孫繁栄」のみなので、先進国より合理的ですが人間性は無視しています。 村のイングマールか誰かの発言「 人はみな役割を果たす」の意味もこれで理解できます。 ホルガ村で子作り許可年齢に達したマヤは、事前にペレから何人かの友人の写真を見せてもらい、気にいった男性クリスチャンを選んだようです。 マヤは序盤で気合い入れたり、ダンス中にわざとクリスチャンを蹴ったり、 枕やベッド下にルーン文字「愛」をひそませたり、タペストリー「ラヴストーリー」のとおりに陰毛をミートパイに、生理の血を飲み物に混ぜてクリスチャンに飲食させます。 ラストでは、精力剤入りの強いドラッグでもうろうとした クリスチャンが、マヤの母も含む裸の女性数人の前で、マヤとつながります。 マヤの声にあわせて女性たちも叫ぶ光景が異常すぎるけど 「受精」の喜びも家族で分かちあうのでしょう。 その行為後、クリスチャンはあっさり焼き殺されるので虫のようですが 「同じ血を他の女性と共有しない」という意味では合理的だと感じます。 ダニーがダンスコンテストで最後まで踊り続けて「メイクイーン」に選ばれたのは偶然か必然かわかりません。 ちなみに、 ルーンの聖書ルビ・ラダーを記せるのは、あえて近親交配(近親相姦)で生んだ純粋な神官(日本でいう巫女)のみだとも語られます。 少し顔がただれた人や、身障者のような人がいましたが、彼らのことだと思います。 ダニーが求めたものとは?恐れた事は? ダニーは冒頭で妹と両親を失い、深い悲しみにつつまれます。 それを癒やしてくれるのは、まだ結婚はしてないが唯一家族のように甘えられるクリスチャンだけです。 ダニーが求めたものは、頼れて依存できる家族の代替です。 しかしクリスチャンは、まだ他の女性に興味もあるしダニーの愛も重すぎるので破局寸前です。 つきあってる期間を月まではっきり言えるダニーに比べ、つきあい期間どころか誕生日すら覚えてないクリスチャンの落差は恋愛あるあるです。 ダニーが最も恐れてることは、クリスチャンと別れて独りきりになることです。 だからコニーが恋人サイモンに置き去りにされたと聞くと、自分のことのように「1人にされることを恐れ」ました。 ダニーが求めたものが「クリスチャン」ではなく、あくまでも「家族の代替」だったことは、「ホルガ村の住人が家族になってくれた」瞬間、クリスチャンをいけにえに選んだことから明らかです。 メイクイーンに選ばれたダニーは、ミッドソンマルクランス(美しい花の冠)をかぶり、村人達にたたえられ「 必要とされる喜び」を得ます。 クリスチャンがマヤと結ばれる姿を見て泣き叫ぶと、村人達も本当の家族のように悲しんでくれて一体感も感じます。 結果的に失恋セラピーにもなってます。 家族の定義は現在の個人主義主流の文明国では「血縁関係」だけですが、 原始宗教をもとに生きるホルガ村では「運命共同体が家族」です。 だから共同体の繁栄のためには、外部の血も入れるし、殺人や高齢者排除も「罪」とは感じません。 北欧は福祉国家と呼ばれ、他の欧米や先進国と比べるとそもそもその傾向は強いです。 福祉国家とは逆光するし超個人主義なのに、トランプ大統領の「強いアメリカ」も、ホルガと同様に自国の繁栄重視を掲げる点は面白いですね。 90年周期の理由は?9は聖なる数字? ホルガ村では「9」が特別な数字として多用されてます。 ミッドサマー(夏至祭)は 90年周期で、9日間続けられ、最後は9人が聖殿で焼かれていけにえとして捧げられます。 飛び降り前に血をぬる 石碑も9つのルーン文字が描かれてます。 そもそも北欧神話には『』でも示されたように、神々の世界アスガルドを含む「9つの世界」が存在します。 地球はそのうちの1つ「ミッドガルド」に所属します。 9つの世界は、世界樹ユグドラシルがつないでいます。 ホルガ村では、9の倍数の「18年周期」で過ごします。 そして72歳になるとアッテストゥパンの儀式で飛び降り自殺して次の世代に名を譲ります。 映画『ミッドサマー』で 夏至祭が90年に1度の理由は、その周期くらいで積極的に外部の血を入れる必要があるからだと思います。 72年より長いので、一度も夏至祭を体験せずに死んでいく人には気の毒です。 また、90年周期という設定は濃い血を薄める目的としては長すぎるので、実際には 夏至祭以外の日にも外部からの人間を引き入れてると考えたいです。 映画『ミッドサマー』私の評価と総括 ひとことで言うと「 とんでもなく衝撃的な映画」です。 ただし良い意味ではなく、わるい意味で記憶に残るため、この手の映画を見慣れてない人や好きではない人には全くオススメできないです。 怖いもの見たさならどうぞ。 昔ながらの 共同体生活、三大宗教以外の原始宗教などの非常識・非日常を描いた「フォークホラー」というジャンルでは、映画『ミッドサマー』は間違いなく歴史に残る印象的な作品だと思います。 ホラー映画としての「こわさ」はそれほどないけど「気持ち悪さ・狂気」はずば抜けて高いです。 ストーリーの大枠は「 家族を失ったダニーが、新たな家族を得るまでの物語」と考えると、意外とシンプルです。 冒頭で亡くなった妹たちの死因が伏線になるかと深読みしたけど回収されることはなく、逆に中盤での「近親相姦」という言葉でラストを予測できたりして驚きは少なかったです。 その点では、 ラストのひとひねりがきいた『ヘレディタリー継承』の方が好みですが、次回作以降も楽しみな監督になってきました! 他の映画はも参考にしてください。 『ミッドサマー』含む映画ランキングや映画賞•

次の