蜻蛉切 製法書。 蜻蛉切

【仁王2】手には蜻蛉、頭に角の攻略チャート

蜻蛉切 製法書

自本丸・独自世界観設定あり。 本日の任務を受けた四部隊を各時代へ送り出し、残った刀剣男士たちに警護や内番を命じ終えたのち、早めに昼食を済ませてから、主と共に万屋のある特区へとやってきた。 特区というのは、審神者や刀剣男士たちの衣食住を支える為に生まれた、政府管轄下に特別な街を指す。 衣類や小物、書籍や家具の専門店、万屋のように全てをまかなう店から、飲食店など多彩な店が軒を連ねている。 特区への出入りは自由で、刀剣男士にも定期的に資金が支給されており、それらを使い自由に買い物ができるようになっていた。 ただし、審神者に関しては必ず近侍が警護としてつくことが義務付けられている。 「この前のお団子、評判どうだった?」 「みんな美味しいって食べていたよ。 ねぇ、蜻蛉さん」 「えぇ、とても美味しく頂きました」 「あら良かった。 じゃあ、今回もおまけで付けといてあげようかね」 「本当?ありがとう!」 「貴方たちあってのうちだもの」 そう言うと、万屋を代々経営している初老の女将が手元の伝票にメモを書き込んだ。 本丸の刀剣男士は六十人を越えていて、すっかり大所帯となっている。 伝票に書かれている食材量も二人では到底持ち帰ることはできない為、後日届けてもらっていた。 それ以外の持ち帰れそうな雑貨類はすでに袋に詰められている。 「じゃあ精算はいつもどおりに政府の方へ回しておくとして、これはどうする?」 「自分が持ちましょう」 「うん、お願い」 全体で使うものではなく、個々のお使いの品が入った大きな紙袋を店員から預かり、片手に抱え込む。 その持ち上げた光景に、女将が感心したようにため息をこぼした。 「はぁ~相変わらず力持ちだね」 「でしょ?」 「恐れ入ります」 「それでいて礼儀正しいときてる…あんたいい男だね」 「ありがとうございます」 自分を褒める女将の言葉を聞きながら、傍らにいる主も嬉しそうに笑っている。 褒めの言葉には少しこそばゆくもあったが、主が嬉しそうにしていることが嬉しかった。 「こんないい男が近侍なんて、あんたも誇らしいでしょ?」 そう主の方を振り返る女将に、主は一瞬驚いたような表情を見せたが、チラリとこちらを見て、それから女将へ視線を戻して、にっこりと微笑んでみせた。 「うん、蜻蛉さんは、私にとって頼りがいのある、自慢の、そして大切な近侍だから」 言葉を一切澱ませることなく、満面の笑顔で言い切る主に、不覚にも一瞬ドキリとする。 主に大切と言われて、嬉しくないはずがない。 緩みそうになる口元を隠すように、そっと手で覆った。 同じく主の言葉を聴いていた女将は、どこか呆れたかのような表情を浮かべている。 「は~あんたも相変わらずだね。 聞いているこっちが恥ずかしいわ」 「…って、自分から聞いたんでしょう!」 「これが若さかね」 「もう!」 女将にからかわれたのだと気づいた主が、恥ずかしそうに顔を赤くしている。 それから拗ねたように唇を尖らせた。 女将も人が悪いと思うが、主をからかいたくなる気持ちも分かるため、あえて何も言わないでおいた。 「それじゃ、ここにサインを書いておくれ」 「もう、からかわないでよ」 「いいじゃないか。 審神者っていうのは、こんな色男たちが周りにいるんだろう?うちらから羨ましい限りだよ。 だからついからかいたくなるのさ」 「私たちは戦っているのー!」 「あんた見てるとそうは思えないね」 「ひっど!」 「はい、確かに。 あ、そうだ少し待っててくれるかい?」 言いたいことだけ言うと女将は伝票を持ったまま、奥の部屋へと入っていた。 店の中に残された主が、女将の言葉にう~とうめき声を上げている。 「私、そんなに審神者っぽくないのかなぁ…確かに他の審神者さんたちみたいに経験も実力もそんなないけどぉ」 「主、女将はからかっているだけですから」 「ほんとぉ?」 「えぇ、ちゃんと執務をこなされているではありませんか。 自信を持ってください」 「う~」 審神者という制度が出来て以来、本来であれば専門機関へ入り、特殊な訓練や経験と詰むものだと聞いている。 けれど主は、人員不足に悩む政府が広く募集をかけた中から拾い上げられた一般枠で、正規の訓練を受けた者たちとは知識も技術も遠く及ばないことをよく悩んでいた。 自分は補欠なのだと落ち込んでいることもあるが、それでも折れずに任務をこなしている姿を、自分を含む本丸の刀剣たちは知っている。 一番傍で仕える者として、主にはもっと自信を持って頂きたいのだが、中々に難しい。 すっかり落ち込んでしまった主に視線を合わせるように、軽く膝を曲げて中腰になる。 こちらの視線に気づいて、伏せていた顔を上げる主に、できるだけ穏やかなに微笑みかける。 「大丈夫ですよ、主。 あなたの努力を、本丸の皆は知っています。 それでいいではないですか。 それに貴方は先ほど、自分を誇ってくださった。 主に信頼して頂けることが、何よりの誉です。 自分はその誇りに答えられるように、貴方に尽くす所存です」 主はいつも誰かの為に動ける方で、自分はそれを素晴らしいことだと思っていた。 人のために動くというのは、簡単なようでいて実は難しい。 先に自分のことを考えてしまうところを、主は常に刀剣男士たちのためにと動いてくださっている。 それは数字には残らないものだとしても、主が与えた温もりや優しさは、自分も他の刀剣たちもしっかりと感じ取っている。 信頼しているからこそ、我らはなにも迷うことなく戦に出られるのだ。 どんな精神的に疲弊して帰ってきたとしても、主の顔を見るだけでホッと息をつくことができた。 気を張ることなく、力を抜いていられる場所を作れることがどれだけすごいことであるのか、主が気づくことはないように思う。 けれどそれでこそ、我らの主だ。 「あ、ありがとう…」 真っ直ぐに告げられた言葉に、主が頬を赤く染めている。 褒められたことが恥ずかしいのか、見つめる視線が逃げるように顔を背けた。 その反応が可愛らしくて、ふっと口元に笑みを浮かぶ。 「そういうのは帰ってからやりなよ」 いつの間のか戻ってきた女将が、また呆れたように告げる。 その声にはっと我に返った主が顔を赤くしたまま、その場で一人狼狽えている。 ------ --弐、ただ、貴方に触れたくて-- 「う~」 夕餉を終えて、近侍である蜻蛉切とともに執務室へ戻り、政府から依頼された調査書を前に頭を抱える夜。 時間遡行軍を無事殲滅出来たあとも、どこかに歴史の綻びが生まれていないかと調査するのも、審神者の役目のひとつだ。 けれど調査に必要な時空を感知する能力は人により感度がまばらで、複数ものもが同じ調査を行うことは珍しくなかった。 とても集中力を使う任務でもあるため、精神的疲労に思わず口から呻き声が零れた。 「つかれたぁぁ」 「まだ終わりませんか?」 「おわらない…」 傍らに座し、調査書の整理をしている蜻蛉切が、こちらの呻き声に気づいてそっと声をかけてきた。 すっかり気力が尽きてしまい、ぐったりと机に突っ伏していると、蜻蛉切の大きな手がそっと髪に撫でてくれる。 机の上に指で操作するタブレット端末がいくつか置かれており、それらで歴史的な時間軸や正史との誤差を探し、同時に時空の乱れを起きていないかと調査する。 乱れが感知されれば即政府へ連絡、場合によっては自らの本丸から刀剣男士を送り込むこともある。 とはいえ、そのような急務は起こることが極稀で、ほとんどが時空監視をしているだけに留まっている。 「政府の依頼だから無下にはできないけど、他の審神者さんにお願いしても良いことなのにぃ」 「頼りにされているということでは」 「体良く雑用を押し付けられている気がする…」 政府自体も歴史の流れを監視はしており、大きな乱れがあれば即座に審神者へ通達を出し、対処ができる流れができている。 審神者の中には詮索に長けているものもいて、特に歴史の節目となる時代はそういった方が主に受け持っていた。 私が行っている調査は、そこまで重要ではないけれど、時間遡行軍が現れたことはあるから一応監視しておこうという、重要度は極めて低めの雑務に近い。 それでも依頼なので受けない訳にはいかず、本丸内の執務を終えたあと、近侍を巻き込んで仕事に勤しんでいた。 実力や経験、後ろ盾のない補欠の身だからこそ、ひとつひとつ任務をこなすことでしか政府から評価は得られない。 少しでも功績を積み重ねることは、本丸にいる刀剣男士たちを守ることにも繋がっていく。 私の心に答えて、こうして顕現し、信頼をしてくれている彼らのためにも、私もできることから少しずつ、答えていきたいと思っていた。 「お茶でもお持ちしますか?」 「ううん、大丈夫」 優しく髪を撫でてくれる蜻蛉切の手が心地よくて、疲労が少しずつ和らいでいくのを感じる。 しばらく撫でる感触を堪能したのち、礼をいってゆっくりと身体を机から起こした。 ふぅっと一息ついたのち、気合を入れ直しまたタブレットと向かい合う。 そんなこちらの姿を蜻蛉切は穏やかな表情でずっと見守っていた。 「もうこれでいいかな。 あとでこんちゃんにまた解析してもらおう…」 ひとまずの調査が終わり、自分なりの報告書が最終稿の段階まで出来上がった。 政府へ提出する前に、一度こんのすけに再解析を依頼することにして、データを保存してからタブレットの電源を落とした。 肝心のこんのすけはというと、小狐丸の部屋で開催中の「油揚げ友の会」の会合に出ている為、ここにはいない。 こんのすけ曰く、大豆の品種から製法、上げる油に至るまでを延々油揚げと食べながら語り合う会合らしい。 参加者は小狐丸と鳴狐とお供の狐、そしてこんのすけ。 狐と油揚げは切っても切り離せないものらしい。 その会合の前を通り過ぎた獅子王からは「そのうちよくわからないものを呼び出しそう」な雰囲気を醸し出しているようだが、今のところ本丸内に害が及んでいるわけではないので好きにさせていた。 刀剣それぞれの個性を尊重するのも、審神者の務めでもある。 個性が豊かすぎて、むしろ争いが起きていないことが救いとさえ思っている。 「では、今日の執務は終わりですか?」 「うん…はぁ…つかれた」 ずっと同じ体制でいたせいで固まった身体を解そうと、ゆっくりと手を天井へ伸ばし、背伸びをする。 伸ばした腕から力を抜いて下ろして、ゆっくりと息を吐いた。 少し目が重たくも感じるけれど、これくらいなら少し眠れば問題はなさそうだ。 漸く執務を終えて、リラックス状態になったことに、傍らでいる蜻蛉切が穏やかに笑ったまま、そっと背中に腕を回して、ふいに肩に手が置かれた。 その感触に不思議そうに彼を見上げると、そのまま肩を引き寄せられ、蜻蛉切に寄りかかる体制に変わる。 突然抱き寄せられたことに、頬に微かな熱が灯る。 「と、蜻蛉さん?」 「お仕事、お疲れさまでした」 「う、うん、ありがとう」 急に蜻蛉切との距離が近くなったことに、驚きと恥ずかしさからどんどん体温が上がっていくのを感じる。 ------- -参、私の帰る場所-- 東の空に登った太陽から注ぐ光に、本丸内が明るく照らされて、庭では小鳥たちが可愛らしい囀りを響かせる頃。 朝餉を終えたのち、全体に今日の任務を知らせ、各自が出陣や内番のために身支度をする為、部屋へと戻っていった。 私はというと、食堂から程なく廊下に置かれた任務表の前に立っていた。 本丸所属の刀剣たちの名前が記載された木札が置かれていて、任務や遠征、内番の持ち回りまで、それを見ればわかる仕組みになっている。 「よしっと」 ひと通り木札の配置を終えて、一度執務室へ戻ろうと廊下を歩き出す。 すっかり大所帯になった本丸は、部屋の移動にも苦労する程度には広くなっていた。 広い廊下を歩きながら、すれ違い刀剣たちと軽く言葉を交わす。 特に任務がないものは、部屋で過ごすか、鍛錬を積むために道場へいくか、または万屋のある特区へ遊びにいくか、皆のびのびと過ごしていた。 「主、おはよう」 「次郎ちゃん、おはよう。 あれ、朝飯はこれから?」 程なくいくと、前からゆらゆらと、まだどこか寝ぼけ気味の次郎太刀に声をかけられた。 そういえば先ほど食堂で顔を見かけていなかったことに気がつく。 「ちょっと寝坊しちゃってさ~」 「もう、お酒飲み過ぎちゃダメだよ?」 「あはは、ごめんごめん」 「今厨房に光忠さんがいるから、声かけたらご飯用意してもらえると思うよ」 「二日酔いの朝に伊達男なんて、素晴らしいじゃないのさ」 「その前に残るほど飲まないの」 「はぁい」 刀剣男士たちは見た目の年齢こそ様々だが、付喪神としては私なんかよりずっとみんな長く存在しているため、お酒に関しては自由にさせていた。 【酒は神様からの贈り物】なんて捉え方もあるくらいには、神と酒は切っても切り離せないものらしい。 次郎太刀のように、お酒に強い刀剣男士もいる。 ただし、飲酒量に関してはもちろん自分で面倒を見切れる範囲でということになっている。 「ねぇ、今度主もお酒付き合いなよ」 「えぇ、私?」 「成人してるんだし、飲めないわけじゃないんでしょ?」 審神者になってからは、時折付き合い程度に舐めるくらいで、あまりお酒は飲んではいなかった。 お酒は飲めないわけではないが、次郎太刀や日本号のように強いわけでもない。 だからこそ次郎太刀の問いかけにう~んと頭をひねる。 「そうだけど…そんなに強くないからなぁ」 「大丈夫、酔い潰したりなんてしないから」 ねぇ?と首を傾げながら強請る次郎太刀に可愛らしくて、ふふっと笑って返す。 「次郎ちゃんと飲んだら楽しそうだね」 「んふふ、決まり!あ、どうせなら蜻蛉切もつれてきなよ。 二人のアッツアツな話、次郎さんにも聞かせなさい」 「ちょっ、次郎ちゃん!」 前触れもなく蜻蛉切の話を出され、思わず顔が赤くなる。 人目があるところでは、蜻蛉切とはあまり触れないようにしていた。 それでも、全員が同じ屋根の下に住んでいる。 当然、中には察しのいい子もいる。 気付いた頃には本丸公認の仲になっていた。 それがまだ少し恥ずかしくて今も慣れない。 「もうすぐ赤くなっちゃって、かわいいんだから。 あのいかにも堅物な蜻蛉切が思わず夢中になっちゃうわけだ」 「もう、からかわないの!」 カラカラと楽しげに笑う次郎太刀に、顔を赤くしたまま怒ることしかできなかった。 早く慣れてしまいたいと思うのに、未だに蜻蛉切と触れるだけで赤くなってしまうくらいだから、先は遠そうだ。 いい大人が何をしているやら。 「あれ、そういや肝心のその旦那は?」 「だっ…えと、蜻蛉さんなら今部屋に戻っているよ。 このあと出陣してもらう予定だから」 旦那なんて言葉を口にされたものだから、思わず声が上擦ってしまった。 男性を指す言葉としては適切なはずなのに、話の流れからつい脳裏に蜻蛉切の姿が過ぎってしまう。 その呼び方は、添い遂げると誓い合った相手を呼ぶ名称でもある。 確かに、蜻蛉切なら誠実で優しくて、頼れるからそういう理想ではあるけど…、なんておかしな方向に行きかける思考に、着物の袖をパタパタさせながら慌てて拭いさった。 その慌てた様子に次郎太刀がニヤニヤと意地悪げに笑っていた。 「あらぁ、誰も蜻蛉切がなんていってないわよ?」 「……あっ!」 その言葉にまたからかわれたのだと気づいて、今度は全身から熱が出そうになった。 話の流れから、勝手に蜻蛉切のことだとか思ってしまったが、次郎太刀は【旦那】が誰を指すのかとは言っていなかった。 無意識のその呼び名を蜻蛉切と繋げてしまった自分が恥ずかしい。 「ふ~ん、蜻蛉切が旦那さんかぁ~へぇ~」 「っ…もう、次郎ちゃん!」 -------------.

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【仁王2】手には蜻蛉、頭に角の攻略チャート

蜻蛉切 製法書

自本丸・独自世界観設定あり。 本日の任務を受けた四部隊を各時代へ送り出し、残った刀剣男士たちに警護や内番を命じ終えたのち、早めに昼食を済ませてから、主と共に万屋のある特区へとやってきた。 特区というのは、審神者や刀剣男士たちの衣食住を支える為に生まれた、政府管轄下に特別な街を指す。 衣類や小物、書籍や家具の専門店、万屋のように全てをまかなう店から、飲食店など多彩な店が軒を連ねている。 特区への出入りは自由で、刀剣男士にも定期的に資金が支給されており、それらを使い自由に買い物ができるようになっていた。 ただし、審神者に関しては必ず近侍が警護としてつくことが義務付けられている。 「この前のお団子、評判どうだった?」 「みんな美味しいって食べていたよ。 ねぇ、蜻蛉さん」 「えぇ、とても美味しく頂きました」 「あら良かった。 じゃあ、今回もおまけで付けといてあげようかね」 「本当?ありがとう!」 「貴方たちあってのうちだもの」 そう言うと、万屋を代々経営している初老の女将が手元の伝票にメモを書き込んだ。 本丸の刀剣男士は六十人を越えていて、すっかり大所帯となっている。 伝票に書かれている食材量も二人では到底持ち帰ることはできない為、後日届けてもらっていた。 それ以外の持ち帰れそうな雑貨類はすでに袋に詰められている。 「じゃあ精算はいつもどおりに政府の方へ回しておくとして、これはどうする?」 「自分が持ちましょう」 「うん、お願い」 全体で使うものではなく、個々のお使いの品が入った大きな紙袋を店員から預かり、片手に抱え込む。 その持ち上げた光景に、女将が感心したようにため息をこぼした。 「はぁ~相変わらず力持ちだね」 「でしょ?」 「恐れ入ります」 「それでいて礼儀正しいときてる…あんたいい男だね」 「ありがとうございます」 自分を褒める女将の言葉を聞きながら、傍らにいる主も嬉しそうに笑っている。 褒めの言葉には少しこそばゆくもあったが、主が嬉しそうにしていることが嬉しかった。 「こんないい男が近侍なんて、あんたも誇らしいでしょ?」 そう主の方を振り返る女将に、主は一瞬驚いたような表情を見せたが、チラリとこちらを見て、それから女将へ視線を戻して、にっこりと微笑んでみせた。 「うん、蜻蛉さんは、私にとって頼りがいのある、自慢の、そして大切な近侍だから」 言葉を一切澱ませることなく、満面の笑顔で言い切る主に、不覚にも一瞬ドキリとする。 主に大切と言われて、嬉しくないはずがない。 緩みそうになる口元を隠すように、そっと手で覆った。 同じく主の言葉を聴いていた女将は、どこか呆れたかのような表情を浮かべている。 「は~あんたも相変わらずだね。 聞いているこっちが恥ずかしいわ」 「…って、自分から聞いたんでしょう!」 「これが若さかね」 「もう!」 女将にからかわれたのだと気づいた主が、恥ずかしそうに顔を赤くしている。 それから拗ねたように唇を尖らせた。 女将も人が悪いと思うが、主をからかいたくなる気持ちも分かるため、あえて何も言わないでおいた。 「それじゃ、ここにサインを書いておくれ」 「もう、からかわないでよ」 「いいじゃないか。 審神者っていうのは、こんな色男たちが周りにいるんだろう?うちらから羨ましい限りだよ。 だからついからかいたくなるのさ」 「私たちは戦っているのー!」 「あんた見てるとそうは思えないね」 「ひっど!」 「はい、確かに。 あ、そうだ少し待っててくれるかい?」 言いたいことだけ言うと女将は伝票を持ったまま、奥の部屋へと入っていた。 店の中に残された主が、女将の言葉にう~とうめき声を上げている。 「私、そんなに審神者っぽくないのかなぁ…確かに他の審神者さんたちみたいに経験も実力もそんなないけどぉ」 「主、女将はからかっているだけですから」 「ほんとぉ?」 「えぇ、ちゃんと執務をこなされているではありませんか。 自信を持ってください」 「う~」 審神者という制度が出来て以来、本来であれば専門機関へ入り、特殊な訓練や経験と詰むものだと聞いている。 けれど主は、人員不足に悩む政府が広く募集をかけた中から拾い上げられた一般枠で、正規の訓練を受けた者たちとは知識も技術も遠く及ばないことをよく悩んでいた。 自分は補欠なのだと落ち込んでいることもあるが、それでも折れずに任務をこなしている姿を、自分を含む本丸の刀剣たちは知っている。 一番傍で仕える者として、主にはもっと自信を持って頂きたいのだが、中々に難しい。 すっかり落ち込んでしまった主に視線を合わせるように、軽く膝を曲げて中腰になる。 こちらの視線に気づいて、伏せていた顔を上げる主に、できるだけ穏やかなに微笑みかける。 「大丈夫ですよ、主。 あなたの努力を、本丸の皆は知っています。 それでいいではないですか。 それに貴方は先ほど、自分を誇ってくださった。 主に信頼して頂けることが、何よりの誉です。 自分はその誇りに答えられるように、貴方に尽くす所存です」 主はいつも誰かの為に動ける方で、自分はそれを素晴らしいことだと思っていた。 人のために動くというのは、簡単なようでいて実は難しい。 先に自分のことを考えてしまうところを、主は常に刀剣男士たちのためにと動いてくださっている。 それは数字には残らないものだとしても、主が与えた温もりや優しさは、自分も他の刀剣たちもしっかりと感じ取っている。 信頼しているからこそ、我らはなにも迷うことなく戦に出られるのだ。 どんな精神的に疲弊して帰ってきたとしても、主の顔を見るだけでホッと息をつくことができた。 気を張ることなく、力を抜いていられる場所を作れることがどれだけすごいことであるのか、主が気づくことはないように思う。 けれどそれでこそ、我らの主だ。 「あ、ありがとう…」 真っ直ぐに告げられた言葉に、主が頬を赤く染めている。 褒められたことが恥ずかしいのか、見つめる視線が逃げるように顔を背けた。 その反応が可愛らしくて、ふっと口元に笑みを浮かぶ。 「そういうのは帰ってからやりなよ」 いつの間のか戻ってきた女将が、また呆れたように告げる。 その声にはっと我に返った主が顔を赤くしたまま、その場で一人狼狽えている。 ------ --弐、ただ、貴方に触れたくて-- 「う~」 夕餉を終えて、近侍である蜻蛉切とともに執務室へ戻り、政府から依頼された調査書を前に頭を抱える夜。 時間遡行軍を無事殲滅出来たあとも、どこかに歴史の綻びが生まれていないかと調査するのも、審神者の役目のひとつだ。 けれど調査に必要な時空を感知する能力は人により感度がまばらで、複数ものもが同じ調査を行うことは珍しくなかった。 とても集中力を使う任務でもあるため、精神的疲労に思わず口から呻き声が零れた。 「つかれたぁぁ」 「まだ終わりませんか?」 「おわらない…」 傍らに座し、調査書の整理をしている蜻蛉切が、こちらの呻き声に気づいてそっと声をかけてきた。 すっかり気力が尽きてしまい、ぐったりと机に突っ伏していると、蜻蛉切の大きな手がそっと髪に撫でてくれる。 机の上に指で操作するタブレット端末がいくつか置かれており、それらで歴史的な時間軸や正史との誤差を探し、同時に時空の乱れを起きていないかと調査する。 乱れが感知されれば即政府へ連絡、場合によっては自らの本丸から刀剣男士を送り込むこともある。 とはいえ、そのような急務は起こることが極稀で、ほとんどが時空監視をしているだけに留まっている。 「政府の依頼だから無下にはできないけど、他の審神者さんにお願いしても良いことなのにぃ」 「頼りにされているということでは」 「体良く雑用を押し付けられている気がする…」 政府自体も歴史の流れを監視はしており、大きな乱れがあれば即座に審神者へ通達を出し、対処ができる流れができている。 審神者の中には詮索に長けているものもいて、特に歴史の節目となる時代はそういった方が主に受け持っていた。 私が行っている調査は、そこまで重要ではないけれど、時間遡行軍が現れたことはあるから一応監視しておこうという、重要度は極めて低めの雑務に近い。 それでも依頼なので受けない訳にはいかず、本丸内の執務を終えたあと、近侍を巻き込んで仕事に勤しんでいた。 実力や経験、後ろ盾のない補欠の身だからこそ、ひとつひとつ任務をこなすことでしか政府から評価は得られない。 少しでも功績を積み重ねることは、本丸にいる刀剣男士たちを守ることにも繋がっていく。 私の心に答えて、こうして顕現し、信頼をしてくれている彼らのためにも、私もできることから少しずつ、答えていきたいと思っていた。 「お茶でもお持ちしますか?」 「ううん、大丈夫」 優しく髪を撫でてくれる蜻蛉切の手が心地よくて、疲労が少しずつ和らいでいくのを感じる。 しばらく撫でる感触を堪能したのち、礼をいってゆっくりと身体を机から起こした。 ふぅっと一息ついたのち、気合を入れ直しまたタブレットと向かい合う。 そんなこちらの姿を蜻蛉切は穏やかな表情でずっと見守っていた。 「もうこれでいいかな。 あとでこんちゃんにまた解析してもらおう…」 ひとまずの調査が終わり、自分なりの報告書が最終稿の段階まで出来上がった。 政府へ提出する前に、一度こんのすけに再解析を依頼することにして、データを保存してからタブレットの電源を落とした。 肝心のこんのすけはというと、小狐丸の部屋で開催中の「油揚げ友の会」の会合に出ている為、ここにはいない。 こんのすけ曰く、大豆の品種から製法、上げる油に至るまでを延々油揚げと食べながら語り合う会合らしい。 参加者は小狐丸と鳴狐とお供の狐、そしてこんのすけ。 狐と油揚げは切っても切り離せないものらしい。 その会合の前を通り過ぎた獅子王からは「そのうちよくわからないものを呼び出しそう」な雰囲気を醸し出しているようだが、今のところ本丸内に害が及んでいるわけではないので好きにさせていた。 刀剣それぞれの個性を尊重するのも、審神者の務めでもある。 個性が豊かすぎて、むしろ争いが起きていないことが救いとさえ思っている。 「では、今日の執務は終わりですか?」 「うん…はぁ…つかれた」 ずっと同じ体制でいたせいで固まった身体を解そうと、ゆっくりと手を天井へ伸ばし、背伸びをする。 伸ばした腕から力を抜いて下ろして、ゆっくりと息を吐いた。 少し目が重たくも感じるけれど、これくらいなら少し眠れば問題はなさそうだ。 漸く執務を終えて、リラックス状態になったことに、傍らでいる蜻蛉切が穏やかに笑ったまま、そっと背中に腕を回して、ふいに肩に手が置かれた。 その感触に不思議そうに彼を見上げると、そのまま肩を引き寄せられ、蜻蛉切に寄りかかる体制に変わる。 突然抱き寄せられたことに、頬に微かな熱が灯る。 「と、蜻蛉さん?」 「お仕事、お疲れさまでした」 「う、うん、ありがとう」 急に蜻蛉切との距離が近くなったことに、驚きと恥ずかしさからどんどん体温が上がっていくのを感じる。 ------- -参、私の帰る場所-- 東の空に登った太陽から注ぐ光に、本丸内が明るく照らされて、庭では小鳥たちが可愛らしい囀りを響かせる頃。 朝餉を終えたのち、全体に今日の任務を知らせ、各自が出陣や内番のために身支度をする為、部屋へと戻っていった。 私はというと、食堂から程なく廊下に置かれた任務表の前に立っていた。 本丸所属の刀剣たちの名前が記載された木札が置かれていて、任務や遠征、内番の持ち回りまで、それを見ればわかる仕組みになっている。 「よしっと」 ひと通り木札の配置を終えて、一度執務室へ戻ろうと廊下を歩き出す。 すっかり大所帯になった本丸は、部屋の移動にも苦労する程度には広くなっていた。 広い廊下を歩きながら、すれ違い刀剣たちと軽く言葉を交わす。 特に任務がないものは、部屋で過ごすか、鍛錬を積むために道場へいくか、または万屋のある特区へ遊びにいくか、皆のびのびと過ごしていた。 「主、おはよう」 「次郎ちゃん、おはよう。 あれ、朝飯はこれから?」 程なくいくと、前からゆらゆらと、まだどこか寝ぼけ気味の次郎太刀に声をかけられた。 そういえば先ほど食堂で顔を見かけていなかったことに気がつく。 「ちょっと寝坊しちゃってさ~」 「もう、お酒飲み過ぎちゃダメだよ?」 「あはは、ごめんごめん」 「今厨房に光忠さんがいるから、声かけたらご飯用意してもらえると思うよ」 「二日酔いの朝に伊達男なんて、素晴らしいじゃないのさ」 「その前に残るほど飲まないの」 「はぁい」 刀剣男士たちは見た目の年齢こそ様々だが、付喪神としては私なんかよりずっとみんな長く存在しているため、お酒に関しては自由にさせていた。 【酒は神様からの贈り物】なんて捉え方もあるくらいには、神と酒は切っても切り離せないものらしい。 次郎太刀のように、お酒に強い刀剣男士もいる。 ただし、飲酒量に関してはもちろん自分で面倒を見切れる範囲でということになっている。 「ねぇ、今度主もお酒付き合いなよ」 「えぇ、私?」 「成人してるんだし、飲めないわけじゃないんでしょ?」 審神者になってからは、時折付き合い程度に舐めるくらいで、あまりお酒は飲んではいなかった。 お酒は飲めないわけではないが、次郎太刀や日本号のように強いわけでもない。 だからこそ次郎太刀の問いかけにう~んと頭をひねる。 「そうだけど…そんなに強くないからなぁ」 「大丈夫、酔い潰したりなんてしないから」 ねぇ?と首を傾げながら強請る次郎太刀に可愛らしくて、ふふっと笑って返す。 「次郎ちゃんと飲んだら楽しそうだね」 「んふふ、決まり!あ、どうせなら蜻蛉切もつれてきなよ。 二人のアッツアツな話、次郎さんにも聞かせなさい」 「ちょっ、次郎ちゃん!」 前触れもなく蜻蛉切の話を出され、思わず顔が赤くなる。 人目があるところでは、蜻蛉切とはあまり触れないようにしていた。 それでも、全員が同じ屋根の下に住んでいる。 当然、中には察しのいい子もいる。 気付いた頃には本丸公認の仲になっていた。 それがまだ少し恥ずかしくて今も慣れない。 「もうすぐ赤くなっちゃって、かわいいんだから。 あのいかにも堅物な蜻蛉切が思わず夢中になっちゃうわけだ」 「もう、からかわないの!」 カラカラと楽しげに笑う次郎太刀に、顔を赤くしたまま怒ることしかできなかった。 早く慣れてしまいたいと思うのに、未だに蜻蛉切と触れるだけで赤くなってしまうくらいだから、先は遠そうだ。 いい大人が何をしているやら。 「あれ、そういや肝心のその旦那は?」 「だっ…えと、蜻蛉さんなら今部屋に戻っているよ。 このあと出陣してもらう予定だから」 旦那なんて言葉を口にされたものだから、思わず声が上擦ってしまった。 男性を指す言葉としては適切なはずなのに、話の流れからつい脳裏に蜻蛉切の姿が過ぎってしまう。 その呼び方は、添い遂げると誓い合った相手を呼ぶ名称でもある。 確かに、蜻蛉切なら誠実で優しくて、頼れるからそういう理想ではあるけど…、なんておかしな方向に行きかける思考に、着物の袖をパタパタさせながら慌てて拭いさった。 その慌てた様子に次郎太刀がニヤニヤと意地悪げに笑っていた。 「あらぁ、誰も蜻蛉切がなんていってないわよ?」 「……あっ!」 その言葉にまたからかわれたのだと気づいて、今度は全身から熱が出そうになった。 話の流れから、勝手に蜻蛉切のことだとか思ってしまったが、次郎太刀は【旦那】が誰を指すのかとは言っていなかった。 無意識のその呼び名を蜻蛉切と繋げてしまった自分が恥ずかしい。 「ふ~ん、蜻蛉切が旦那さんかぁ~へぇ~」 「っ…もう、次郎ちゃん!」 -------------.

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サブミッション

蜻蛉切 製法書

村正ファミリーでわちゃわちゃしている動画+写真です。 寛大な方向けです。 geocities. amazon. nicovideo. geocities. html 2017年3月4日(土)に開幕したミュージカル『刀剣乱舞』~三百年の子守唄~。 『阿津賀志山異聞』に続いての出演となる石切丸役の崎山つばさ、そして、新刀剣男士となるにっかり青江役の荒木宏文、千子村正役の太田基裕、蜻蛉切役のspi、物吉貞宗役の横田龍儀、大倶利伽羅役の財木琢磨の新たな戦いの一部をご覧ください。 5 Theater Tokyo 【大阪公演】4月1日(土)~4月9日(日) 梅田芸術劇場 メインホール 【東京凱旋公演】4月14日(金)~4月23日(日) AiiA 2. モチベも微妙な感じに。 それにしても蜻蛉切は弱いね。 マジで。 有利なデッキが無い。 槍超絶だから騎馬には強いとか思ってる奴、それ勘違い。 最低士気8使って三葵躍進させたところで、武力上昇が低いから騎馬に乱戦されて終わり。 統率低いからゴリゴリ押されるし。 毘天にいたっては最低士気8を素の謙信の乱戦で終わり。 鳥居がいるから何とかなってるだけで、鳥居が修正されたら忠勝も同時に死にますね。 計略以前にスペックをエラッタしないと。 SRだよ?四天王だよ? 浅井朝倉にはRの2.

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