フィリピンの感染者数の推移 まずはこの1週間で感染者数がどのように推移したのかを見ていきます。 (1)感染者数の合計 上の図は、合計感染者数の推移を示したものです。 3月22日(日)が 380名でしたが、翌23日(月)に 462名となり、1週間後の3月28日(土)には 1,075名になりました。 フィリピンも日本や諸外国同様に増加を続けています。 (2)1日の新規感染者数 1日当たり、どれくらい新規の感染者が発生しているのかも見てみましょう。 上の図は、1日の新規感染者数の推移を示したものです。 グラフからも分かるように1日平均して、 70~90人前後で新規の感染者が発生していることが分かります。 直近の3月28日(土)には1日で272名増加しました。 引き続き警戒が必要です。 死亡者数の推移 次に感染した人の中で、どれくらいの人が死亡に至ったのかを見ていきましょう。 (1)合計死亡者数 上の図は、合計死亡者数の推移を示したものです。 3月22日(日)の時点では 25名でしたが、日を重ねるにつれ徐々に増加していき、3月28日(土)時点では 68名となっております。 (2)1日の新規死亡者数 「(1)合計感染者数」と同様に、1日当たりに新規の死亡者がどれくらい発生したのかを見ていきましょう。 上の図は、1日の新規死亡者数の推移となります。 今週の状況を見ると、死亡者の一番少ない日が24日(火)の 2名で、一番多かった日が28日(土)の 14名でした。 性別・年齢別 感染者の「性別」及び「年齢」の構成は、どのようになっているのかも見てみましょう。 (1)性別 上の図は、性別毎の感染者です。 こちらからも分かる通り、 女性が411名、 男性が664名となっており、パーセンテージにすると、 女性が38%、 男性が62%となっております。 (2)年齢 続いて、年齢構成を見てみましょう。 上の図は、年齢別感染者となります。 全体的に見ると、他国同様に高齢者の感染者が多く、 50歳以上で全体のおよそ60%を占めています。 しかしながら、若年層も決して少ないというわけではないです。 30歳未満の感染者数は110名で、全体の10%に相当します。 感染後の回復率等のデータは今後出てくるでしょうが、 「若いから感染しにくい。 」とは考えずにどの世代も注意が必要です。 地域別の感染者数 上記の「感染者数の推移」・「死亡者数の推移」及び「性別・年齢別」でご覧いただいた数値は 「フィリピン全域」のデータでした。 これを「地域別」で見ると、どうなるのでしょうか。 上位7エリアを見てみましょう。 いかがでしょうか?これを見ると、 首都のマニラ領域に固まっていることがよくわかると思います。 マニラ周辺の地域は人口密度が高いことや海外からの渡航者が多いことなどから、感染者が増加したという風に考えることができます。 現時点で合計感染者数が 1,075名おり、その中で地域が確定できているケースが 547名です。 そのうち、この 上位7エリアに締める人数は349名です。 パーセンテージにすると 63. 8%に及びます。 3月28日(土)の安倍首相の記者会見で 「密閉・密集・密接」の3つの「密」を避けるよう要請があったように、感染はひとたび一つのエリアで広がり始めると、オーバーシュート(爆発的患者急増)する危険性があります。 現在のバギオの状況 現時点でのバギオにおける感染者は2名です。 日本においても現時点で同数、あるいはそれ以上の感染者が発生している地域は多いと思います。 外出制限等の対応策は自治体によって異なると思います。 バギオはどうしているかというと、全市民外出制限中です。 認められた理由等がない限りは外出ができません。 公共交通機関やタクシーもストップしています。 3月17日(火)から開始され、既に10日以上が経っています。 外出制限に加え、現在は基本的にバギオに住所のある住民でない限り、他地域からバギオに入ることができません。 「まだ感染者がそこまでいないのに…。 」と思う人もいるかもしれませんが、医療体制も日本に比べても決して良いとは言えませんし、今の世界各地の状況を見れば、事前にこれだけの対策するのも適切だと思っています。 個人的に感じたこと ~バギオの人は協力的~ 日本では「学校の休校」であったり、「自宅待機」等の要請が出たりすると、それに対して様々な方面から否定的な意見が多く出ているように感じます。 それとは対照的にというわけではありませんが、 バギオの人たちはとても協力的だなぁという印象を個人的に持っています。 感染者が1人出たというアナウンスがバギオ政府からあった時は、完治を願うコメントが多くのバギオ市民から寄せられていました。 バギオ政府が行なっているコロナ対策の状況やお知らせ等はFacebook等で随時確認できるのですが、それについても応援するコメントが多く寄せられています。 バギオ市民の人たちは、バギオ政府やドゥテルテ大統領をはじめとしたフィリピン政府を信頼しているなぁというのが個人的に今感じている印象です。 3月17日(火)から始まった、こうした外出制限等の対策は4月中旬まで続きます。 それに関しても 私の周りのフィリピン人の先生やスタッフは何一つ文句を言わず、できることを黙々とやっています。 コロナの状況次第では、「外出制限は延長されるかもね。 」という風に冷静に言っている人も多いです。 元々私自身、 「バギオの人は温かい」という風に留学生活からも感じていたのですが、今回のコロナの一連でその印象はさらに強くなりました。 まだ油断はできないので、引き続き自分も含めて予防を徹底したいと思います。 フィリピン留学を控えている人や一時帰国中の生徒の中には、フィリピン・バギオの状況が気になっている人も多いと思います。 今、このコラムとYouTubeでバギオの状況を更新していますので、気になる方はチェックしていただければと思います。
次の元・フィリピン退職庁(PRA)ジャパンデスクで、現在は「退職者のためのなんでも相談所」を運営する、フィリピン在住20年以上の志賀さんが、3月から続くマニラ首都圏封鎖の状況をレポートします。 2020年3月15日、新型コロナウイルスの感染防止策として、マニラ首都圏、ルソン島、そしてほとんどフィリピン全域の封鎖(Lock Down)がスタートした。 このようなことは前代未聞の出来事で、世界中がパニックに陥っており、聖域だと思っていた南国フィリピンも例外ではなかった。 マニラ首都圏をはじめフィリピン全土の空路、陸路、海路による移動の禁止、学級閉鎖はもとより行政機関の機能停止、民間事務所、食料などの必需品以外の生産工場の停止、イベント・娯楽施設の閉鎖、食料・医薬品以外の商店の営業禁止、一般人(特に60歳以上と21歳未満)の外出禁止など、徹底したもので、庶民はひたすら耐えるしかなかった。 さらにすべての外国人の入国についても、フィリピン人の配偶者、外国政府関係者、航空便のクルー以外は禁止され、入国者はすべて14日間隔離するという、フィリピンそのものの完璧な封鎖といえるものだ。 結局、封鎖は5月31日までの2ヵ月半におよび6月1日から緩和されたものの、引き続き日本の非常事態宣言程度の規制が継続し、さらに外国人の入国も引き続き制限される。 完全に解除されるのは大分先のようで、経済社会生活の停滞と庶民の生活の不便は計り知れないものがある。 外国人の退職ビザのお手伝いをするという商売柄、外国人の入国制限、マニラ首都圏の封鎖、行政機関の機能停止という状況は、私にとって、まさに死活問題である。 当面、すべての活動が凍結されることになってしまったわけだが、今日に至る経緯を振り返ってみた。 2月早々、退職ビザ取得申請に「コロナ陰性」証明書が必要に 1月12日 日 に発生したマニラ郊外の観光地タガイタイのタアル火山噴火の記事が下火になって、新型コロナウイルスの記事が一面をにぎわせはじめた矢先の2月3日 月 のこと。 日本人の退職ビザの申請をしている最中に、PRA(フィリピン退職庁)のスタッフがざわついて、「PRAトップからの指示で、すべてのビザ申請者はクワランティン(検疫所)から『新型コロナウイルス感染に陰性である』という証明書をもらってこなければ申請を受け付けない」というのだ。 そして翌日、別のアメリカ人申請者とともに検疫所に向おうとしていると、PRAのスタッフから電話があって、新たに通達が出て今度は、「中国、香港、マカオ経由でフィリピンに来た申請者についてのみ、申請拒否の対象とする」と告げられた。 ひと安心と、ほっと胸をなでおろした。 まさに朝令暮改も甚だしいところだが、新型コロナウイルスの世界的感染状況に対して、国家の中枢がどう対処していいのかわからず混乱しているためであろう。 中国人の退職ビザ申請者が途絶えて閑古鳥が鳴いているPRA(フィリピン退職庁)の受付 【撮影/志賀和民】 中国、香港、マカオ経由での入国は制限され、さらに台湾が含まれるとか含まれないとか、当方としては中国からの申請者が激減して、返ってスムーズに手続きが進んでありがたい、などと気楽に構えていた。 日本ではクルーズ船がどうとか、北海道で感染者が急増とか、話題になっていたが、フィリピンでは帰国者の数人に感染者が出たくらいで、所詮インフルエンザと同類の新型コロナも南国では自然消滅するものと高を括っていた。 ところが、韓国、イタリア、イランなどで感染者が急増しているという状況で、世界的に警戒心が強まり、3月になって当方の業務にも多大なる影響を及ぼすことになった。 3月に入ると事態は急展開。 朝令暮改の通達が次々と 3月9日 月 の週から事態があわただしく展開していった。 10日 火 から週末まで、学校閉鎖で、子どもたちが学校に行かない。 その少し前に、日本でも全国的に学級閉鎖となっていたが、何でマニラでと違和感を覚えた。 さらに子どもたちはショッピングモールなどを訪れてはいけないというお達しがでているという。 この週末にはマニラ首都圏が封鎖されるかもしれないという噂を耳にして、息子一家は嫁の実家(マニラ北方100km)に避難した。 一方、私の仕事の相棒のフィリピン人は水と食料の買い出しに走った。 12日 木 未明、大統領の「マニラ首都圏封鎖」の発令にいたった。 これを知ったのは翌朝のフィリピン大使館からの情報で、すべての行政機関は機能停止するというただならぬ状況だった。 3月13日 金 早朝、SRRV(退職ビザ)申請を直前に控えていた退職者の一家とPRAに赴いた。 前日の通達によると、申請は郵送で受け付けるというものだったが、「この通達は大統領の封鎖発令前に発行されたもので、変更されると思うが、どう変更されるかわからない」というので、当方としてもどうしたものか思案のしようもない。 退職者一家にとっては、すみやかに申請できるのか、あるいは申請まで封鎖期限の1カ月も待たなければならないのか、という切実なものだ。 とりあえず、いざという時のために預かっていたパスポートを退職者に返却しておいた。 3月13日、PRAは一切の業務を停止、帰国できない申請者も その日の内にPRAの営業部長からメールが入った。 内容は「PRAは一切の業務を停止する」という悲劇的なものだった。 これにより件の退職者一家はすみやかに帰国するという決断を下した。 3月4日 水 に、封鎖直前に滑り込みセーフで申請したご家族がいた。 当初は、うまくやったと思っていたのだが、封鎖、そしてPRAの業務停止により申請書類も棚上げとなってしまい、いつビザが発効されるか見当もつかない。 そのため、一時帰国を希望したが、パスポートをPRAに預けているので、帰国できない。 しかもPRAは閉鎖中なので、パスポートを取り返すこともできない。 その結果、PRAの機能回復まで、3カ月近い足止めを食らうという羽目に陥ってしまった。
次のフィリピン保健省(DOH)は3月30日、新型コロナウイルスの感染者数が1,546人、死者は78人となったと発表した。 3月5日に4例目の感染者を確認して以降、感染者数が徐々に増加したことを受け、3月16日にはドゥテルテ大統領はルソン島全体に外出禁止令および公共交通機関の停止を決定()。 その他地域の自治体は、独自に外出禁止令を発令するなど感染拡大防止策を講じているが、感染者数の増加は止まらない。 レニー・ロブレド副大統領は、感染防護服、ゴーグル、マスクといった医療用品を製造できる国内メーカーが存在せず、中国、マレーシア、韓国、インドといった海外からの輸入に頼っている現状に警鐘を鳴らす(3月24日付マニラ・ブレティン)。 世界保健機関(WHO)および日本の厚生労働省によると、日本とフィリピンの人口10万人当たりの病床数を比較すると、日本は1,311床なのに比べ、フィリピンは101床(いずれも2016年時点)と10分の1以下にとどまるとされる。 そのほか、人工呼吸器は日本には2万2,254点存在するとされる一方、フィリピンは5,250点、医者の人数は日本が31万1,205人に対してフィリピンは4万775人にとどまる。 なお、フィリピンの現在の新型コロナウイルスの1日当たりの検査件数は最大1,000件とされる。 このように医療体制が不十分なフィリピンで操業を続ける日系企業からも不安な声が聞かれる。 ジェトロが複数の日系企業にヒアリングしたところ、「主要な病院が受け入れの制限を発表しているなか、仮に日本人駐在員自身が感染し、重症化した場合、公共交通も運行休止で、会社のドライバーが出勤できない状況の中、どのように対応すれば良いか悩んでいる」「一定水準以上の医療サービスが期待できるとされていたセントルークス病院や、マカティメディカルセンターも新型コロナウイルスの入院患者の新規受入れ制限を発表しており不安」といった声が聞かれた。 ジェトロがマカティメディカルセンターにヒアリング(3月31日)したところ、PCR検査は行っているが隔離病棟は満室のため入院患者は受け入れられない状況とのことだった。 また、マカティ市の日本人会診療所も3月18日以降の休診を発表しており、日本人駐在員や家族が頼ることが可能な医療サービスが十分に提供されない状況だ。 日系企業からはそのほか、「指定病院が発症者、特に重症者に対して十分な処置を提供できるのかといった情報を得ることが難しい」といった声が聞かれた。 マカティメディカルセンターの担当者は、マカティ市内の主要な病院が入院患者の新規の受け入れができない状況のため、万が一の場合に備え、マニラ首都圏外の病院を含め、比較的医療水準の高いとされる病院の隔離病棟における病床の空き状況を確認しておく必要があるとした。 (坂田和仁).
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