妊娠中に「つわり」に悩まされる方は多いでしょう。 妊娠したのだから、つわりは仕方がないと思って、つらい症状も我慢し続けいませんか。 つわりは、個人によって症状は様々です。 人によっては、重症化する可能性があります。 重症化した結果、ウェルニッケ脳症という命の危険がある病気を発症させてしまう可能性があるのです。 ウェルニッケ脳症を発症した場合、赤ちゃんや母体にどのような影響があるのでしょうか。 今回は、ウェッケル脳症の危険性についてまとめました。 「つわり」の重症化とは? つわりの症状は、個人差が大きいのが特徴です。 その発生期間も重さも感じ方も、人によって異なります。 つわりは、妊娠をした事を知らせる代表的な体の症状です。 そのため辛い症状でも、妊娠したのだから…と自己判断で症状が回復するのを待ち、医師に相談しない方もいらっしゃるようです。 しかし、「つわり」は対処せずにいると重症化する場合があります。 重症化したつわりの症状を「妊娠悪阻(にんしんおそ)」と呼びます。 妊娠悪阻は、極度な栄養失調の状態に陥っており、危険な病気を発症する可能性を秘めています。 また、体力の回復にも時間もかかり、場合によっては入院が必要になることもあるのです。 妊娠悪阻の症状は? 具体的な症状には、動悸が激しくなる、嘔吐が続き慢性化する、つわりが原因で体重が3キロ以上減るといったことがあります。 この状態悪化から医師の診察を受けた際に、尿ケトン体の陽性反応が出た場合、妊娠悪阻と診断されることが多いと言われています。 『ウェルニッケ脳症』は妊娠悪阻の合併症 妊娠悪阻を発症すると、上手く栄養素を吸収することができなくなります。 その影響でビタミンも不足していきます。 中でもビタミン B1が不足した結果、眼球を動かすことができなくなったり、自立した歩行ができない、物忘れがひどくなったりといった症状を発症します。 ウェルニッケ脳症の発症率 このような症状が見受けられた結果、ウェルニッケ脳症と診断されます。 ウェルニッケ脳症を発症する割合は、妊娠悪阻の中でも 0. 1%~ 0. 35%と低い確率です。 しかし、一度発症してしまうと母体死亡率 4%、後遺症が残る確率は 90%といわれています。 つわりを重症化させないように、十分な注意が必要といえるでしょう。 ビタミンB1の不足が主な原因に また、ウェルニッケ脳症は、ビタミン B1の不足により起こるため、つわり以外が原因でも発症をする可能性があります。 例えば、大量のアルコール摂取、摂食障害、極端に偏った食事をするなどがあげられます。 日ごろからバランスのいい食事をとり必要な栄養素を接種することが大切です。 ウェルニッケ脳症の治療法は? ウェルニッケ脳症の場合は、ケトン体が認められることも一つの判断基準になります。 ケトン体が認められたということは、単純にいうと、栄養障害や代謝異常をきたしている状態をさします。 そのため、妊娠悪阻の症状を回復させるためには、必要な栄養素を摂取することが必要不可欠。 特にビタミン B1の不足が深刻化している状態になっているので、ビタミン B1の投与を行います。 主には、病院で点滴をして栄養を補います。 通院でも治療することができますが、重症化している場合は入院が必要となります。 ビタミン B1の働きとは? ビタミン B1は、糖質がエネルギーに変換される時に、酵素を助ける働きをします。 そのため、ビタミン B1が不足してしまうと、脳のエネルギー源である糖が正常に行き届かない状態に陥ります。 脳に糖が届かない結果、脳がエネルギー不足を起こしてしまい、神経機能が阻害されてしまうのです。 赤ちゃんへの影響は? 妊娠悪阻によって、食べ物や飲み物を受けつけない場合、胎児へどのような影響があるのか気になりますよね。 妊娠悪阻の症状をもった場合、低体重の赤ちゃんが生まれることがあるようですが、ほんの一部のようです。 また、妊娠悪阻からウェルニッケ脳症に発展した場合の胎児への影響についても、妊娠悪阻と同様に低体重児のリスクがあります。 ただし、両方とも目立った報告はなく、妊娠悪阻・ウェルニッケ脳症が原因とは言い切れないようです。 重症化する前に適切な治療を ウェルニッケ脳症を発症したからといって、赤ちゃんがすぐ死亡するわけではありません。 ただし、妊娠悪阻・ウェルニッケ脳症を発症すると、赤ちゃんに栄養素を送れない身体になっていることは間違いはないので、適切な治療を受けるようにしましょう。 「妊娠したのだからつわりになるのが当たり前」と、我慢をしずぎた結果、判断を誤ってしまい最悪な事態を迎えてしまうことがあります。 ウェルニッケ脳症は、ママがビタミン B1をしっかり補給すれば防げる病気です。 そして、 90%は後遺症を残してしまうという恐ろしい病でもあります。 赤ちゃんに影響がないにしても、ママの一生を左右する病。 食事がとれない状態が続いているようであれば、赤ちゃんの未来のために早めに病院へ行くようにしましょう。 photo-ac.
次の症状 [ ] ウェルニッケ脳症はビタミンB1欠乏症により、運動失調(を伴う)を引き起こす。 眼球運動障害をおこすこともあり、外側に目を動かせなくなり寄り目になってしまうことがある。 運動失調では、急激に歩行が不安定になりどこかにつかまりながら歩くようになる。 意識障害については、特に特徴的な症状はなく、軽い意識障害からこん睡状態になることもある。 ウェルニッケ脳症がある程度回復してくると、目がゆれて、物が二重に見えたり、がしたりする。 精神的な症状により、無力や無気力になり、になってしまうこともある。 原因 [ ] によるは現在では非常に少なくなったが、後のビタミン摂取不良 、アルコールの多飲やインスタント食品の偏食による栄養の偏りなどが発症の要因となる。 またかつては厚生省が保険診療において妊娠悪阻の点滴にを入れることを認めていなかったため おそ (つわり)で食事ができなくなって長期に治療を受けたところ、それが原因の ビタミンB1 不足で発症した例なども報告されている。 治療法 [ ] 早い段階でビタミンB1を投与を行うことが良いとされる。 数日間ビタミンB1を1日1000ほど静脈注射し、その後は150 mgほど内服で補充する場合が多い。 また、アルコール依存症を伴っているケースが多いため、アルコール依存症に対するリハビリや末梢神経障害等、ビタミンB1が欠乏していることにより引き起こされ得る障害に対するリハビリテーションが必要となる場合がある。 出典 [ ].
次の原因としてビタミンB1の欠乏になるものは、以下のものがあります。 ウェルニッケ脳症の原因は? 冒頭で述べましたように、最も多い原因は慢性アルコール中毒ですが、それ以外にも様々なことで起こります。 慢性アルコール中毒• 消化管の手術後• 摂食障害• 妊娠中の悪阻• ビタミンB1を含まない高カロリー輸血 慢性アルコール中毒 「どうしてアルコールでビタミンB1が欠乏するの?」 「関係ないでしょ?」 と思われがちですが、 アルコールはビタミンB1の吸収を阻害する働きがあります。 また特にお酒好きな人は、食べるものもろくに食べずただひたすら飲むという傾向にあり、余計にビタミンB1が不足してしまうというわけです。 消化管の手術後 胃の全摘出手術後に栄養欠乏となり、起こりやすいといわれています。 摂食障害 それ以外に、摂食障害で必要な栄養素がとれなかったり、インスタント食品ばかり食べていることによる 栄養の偏りも原因となります。 日常生活での食生活(食事内容や摂りかた)が原因となると分かっていれば、ならないように 予防も可能になってきますよね。 妊娠中の悪阻 妊娠中の悪阻によって食べるものもろくに口に出来ない状況となり、点滴をするも、そこにビタミンB1が(ブドウ糖のみ)入っていないと、ウェルニッケ脳症になることもあります。 ウェルニッケ脳症だとどんな症状があらわれる?• 意識障害• 眼球運動障害• 運動失調 が、三大特徴でもあります。 それぞれについてご説明します。 意識障害• 注意力散漫• 傾眠(読みは「けいみん」すぐに眠ってしまうこと)• 昏睡(こんすい)• せん妄(頭が混乱し、興奮状態)• 錯乱状態(気持ちや考えが混乱した状態)• 見当識障害(自分が今置かれている状態が理解できない)• 健忘(記憶障害)• 記銘力(きめいりょく)障害(新たに体験したことを覚えられない) このような 精神症状があらわれます。 眼球運動障害• 外直筋麻痺(読み方は「がいちょくきんまひ」外方に眼を動かせない状態)• 内斜視(黒目がまっすぐ向かない状態)• 瞳孔異常• 内眼筋麻痺(目の内側の筋肉が麻痺した状態)• 水平眼振(眼球が自動的に動揺する状態)• 複視(ものが二重に見える) このような眼球に障害が起き、これにより 目眩があらわれることもあります。 運動失調• 体幹失調 体の体幹が失われ、まっすぐに保てない、 つかまり立ちでも不安定な歩行状態となります。 ウェルニッケ脳症の診断は? 血中のビタミンB1の測定、MRIによる画像診断が有用です。 通常の採血検査ではビタミンB1は測定しないため、症状やMRI画像所見から、この疾患を疑わないと診断には結びつきません。 それゆえ、冒頭にも申し上げたように、この病気は 「ウェルニッケ脳症かもしれない」と疑うことが診断に重要であると言えます。 MRIによる画像診断では、T2強彫像やFLAIR像で、第三脳室周囲・中脳水道周囲・第四脳室底・乳頭体などに対象的に高信号域(白く映った状態)が確認できます。 また、最終的に脳萎縮をともなうこともあります。 症例:70歳代男性 運動失調 拡散強調像及びT2強調像において 視床内側、中脳水道周囲に異常な高信号を認めています。 FLAIR像の冠状断像において、 視床内側(左側)及び乳頭体(右側) に異常な高信号を認めています。 ビタミンB1を測定すると、低下を認めておりウェルニッケ脳症と診断され、治療されました。 この症例を動画でもご覧ください。 症例:60歳代男性 消化管の悪性腫瘍摘出後に意識障害 (出典:2016年放射線科診断専門医9) MRIのFLAIR像において、第3脳室周囲(視床内側)、中脳水道周囲に異常高信号を認めています。 ウェルニッケ脳症を疑う画像所見です。 ウェルニッケ脳症の治療は? ビタミンB1の欠乏によって起こるため、 速やかにビタミンB1を補給する必要があります。 方法としては、入院管理の元、 大量経静脈的投与(点滴)がおこなわれます。 また、 ビタミンB1投与後にブドウ糖を補充することもあります。 (ブドウ糖は必ずビタミンB1投与後に行わなければ、逆に投与前に行うとウェルニッケ脳症を誘発する) 治療は 早期であればあるほど、効果が発揮されやすく、3日〜5日程度の入院で済みます。 しかし、治療開始が遅れればそれだけ回復は遅く、後遺症を残す可能性もあります。 また、原因を取り除くべく• 食生活の見直し も必要です。 特にアルコールが原因の場合は、酒を断つことが重要になります。 また妊娠中の場合、早期に治療を行わなければ赤ちゃんに栄養を送れないことにも繋がりますので、重い悪阻を我慢しないようにしましょう。 ウェルニッケ脳症の予後は? 速やかにビタミンB1の投与を行えば回復が見込めます。 しかし、この投与の開始が遅れると、 神経後遺症や死に至ることもあります。 カテゴリー• 141• 103•
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