Katchaman 初出版 イベント in岡山 勝屋久氏の著書「人生の目的の見つけ方」の初出版を記念しまして、トークイベントを開催しました。 今の時代に大切なことや本を書き終えて感じていることなどをお話いただきました。 この本を出版されるまでも自分と向き合う作業の中で筆が止まったり、色々なことを経てやっと完成した作品だったそうです。 自分とつながることの大切さ、素晴らしさについて、幼少期から学生、IBMでスタートアップに関わった時代、リストラという大きな転機を経て現在に至るご自身の体験談とともにお伝えいただきました。 赤ちゃんは本質そのもの。 生まれたとき人は皆『ダイヤモンドの原石』のような存在であるが、自我が芽生え、様々な思い込みなど、知らない間に観念が少しずつ覆いかぶさり、さらには本来の自分に気づけなくなってしまう。 自分自身か何者かわからないままだと、つい肩書や資格、世間から賞賛されたり、人からみて凄いと思われたいなど、足りないものを内ではなく外に求めはじめ、『偽ダイヤ』になってしまう… 勝屋さんは起業をする上でも事業がしっかりと自分(自分軸)とつながっているか?そこを大切に。 時には起業家や経営者にもアドバイスされるそうです。 自分軸、他人軸を樹木に例え、自分軸が「幹」だとしたら他人軸はそれから広がる「枝木」 「誰のため何のための事業なのか?」自分軸があったうえでの市場やマネタイズなど他人軸のことが考えられる。 他人軸(枝木)ばかりだと栄養不足で木がポキッと折れてしまう。 足りないものを外へ外へと求めていきがちだか、まず自分と繋がること。 心の無い事業はよいものにならない、ついマネタイズや流行を追ってしまうけど、大切なのはまず自分と繋がること。 このことに、いつ、どんなタイミングで気がついたのか、今は何を大事にしているのか、というお話を色々と伺えました。 質問タイムでは質問が尽きず、一人ひとりに向き合い、言葉を選び、質問者に確認しながら、時には今の感情も確認しながら丁寧に答えていただきました。 奥様の祐子さんも会場に登壇される一幕もあり、起業家、ビジネスマン、学生それぞれの参加者のみなさんにとって、自身の事業や人生を振り返ったり、本当の気持ちにつながるキッカケに場となりました。 イベント中は、会場全てのみなさんが「分かち合い」を体感しながら、会場内に温かな空気が流れ、あっという間の2時間半でした。 【katchaman 初出版 イベント in岡山】 開催場所:ももたろう・スタートアップカフェ(ワンダーウォール) 開催日時:2020年02月02日 (日) 14:00~16:30.
次の今回、お褒めのお言葉をたくさん頂き、スタッフ一同大変光栄に存じます。 しかしながら、ロビー近くの喫煙所のタバコの臭いがあり、不快な思いをさせてしまい 大変申し訳ございませんでした。 今後は臭いが残らないように対応をしてまいります。 また部屋の洗面台の蛇口の不備に関しましても、大変な不便をおかけしました事も 申し訳ございませんでした。 二度とこのような事がないように点検と清掃を徹底してまいります。 次回、お越しいただける際には、万全の準備をしてお待ちしております。 またのお越しを従業員一同、心よりお待ちしております。 当館は13階建てでございまして、函館山からの夜景までとは申しませんが、大浴場露天風呂からご覧頂ける街の夜景は、一味違った景色となっており、当館自慢の大浴場となっております。 ご朝食の内容に対しましてもご満足のご様子で何よりでございます。 ご指摘頂きましたマットレスに関しましてはご期待に沿えず申し訳ございません。 こちらは動かせることを利点として販売させて頂いておりますので、何卒ご理解頂ければ幸いに存じます。 しかし、グランパ様のご意見から、しっかりとお客様のお言葉を受け止め動きにくくなる工夫を検討して参ります。 また、Wi-fiの強度にばらつきが出てしまい重ねてお詫び申し上げます。 こちらは他のお客様からもご指摘を頂いておりますので、すぐにとは参りませんが必ず改善出来るように努力して参ります。 この度のご投稿、誠にありがとうございました。 当館自慢の天然温泉やご朝食、さらには客室の清掃に対しお褒めのお言葉を頂きまして、こちらといたしましても大変嬉しく存じます。 たまみ様のお褒めのお言葉に甘えることなく、さらに精進して参る所存でございます。 また、2月第二週には冬の花火大会が開催されます。 まだまだ夏の花火大会に比べますと認知度は低いかもしれませんが、函館の冬のイベントとしてお客様を魅了しております。 これからも一年を通し、様々なイベントが開催されますので、別の機会にまたどうぞお越しくださいませ。 たまみ様のまたのご利用を心よりお待ちしております。 この度のご投稿、誠にありがとうございました。 ごゆっくりお過ごしいただけましたご様子がお伺い出来、大変嬉しく思います。 当館自慢の朝食は、四季折々、その時にその土地で生産されるものを意識し、季節に合ったこだわりの食事をご提供させて頂いております。 北海道の郷土料理である三平汁は冬の定番料理でもあり、私共には懐かしく心もあたたまります、また体が温まり寒い朝には大変おすすめです。 「またお世話になりたい」とのお言葉を頂戴し、スタッフ一同今以上にお客様がお過ごしやすい環境づくりに励んで参ります。 ご投稿誠にありがとうございます。 温かいご感想をお寄せ頂き重ねて御礼申し上げます。 ご滞在中は、快適にお過ごし頂けたご様子にスタッフ一同大変嬉しく思います。 当ホテル自慢のご朝食につきましては、皆様から大変ご好評頂いておりましておとっしー様のお口に合いました様で何よりでございました。 今後もお客様のご期待にお応え出来ますよう、スタッフ一同、日々頑張って参ります。 また大浴場からの眺望をご堪能されたようで大変嬉しく思います。 私どもといたしましては、お客様の大切な1日を思い出にして頂ける事が有難い事でございます。 今後もお客様が心地よくご滞在できるよう日々精進して参りますので、ラビスタ函館ベイを引き続きよろしくお願い致します。 一つ気になったのが、お風呂の木の椅子が滑って、身体を洗う際落ちないようにするのが大変でした。 初めての、支配人特別感謝プランで、どの部屋になるかドキドキ、ワクワク感がたまりません。 ラッキーなことに、デラックスツインの山側のお部屋で最高でした。 朝起きたら真っ白な銀世界が広がっており、徐々に雪が除雪されていく様子を挽きたてのコーヒーを飲みながら眺めるまったりした時間が何とも贅沢でした。 また、函館を訪れた際は泊まりたいホテルです。 大浴場の木の椅子につきましては、何か改善策がないか考えて参ります。 貴重なご意見・ご感想を頂きました事、深くお礼申し上げます。 温泉だいすきっこ様の「また泊まりたいホテル」とのお言葉も、大変嬉しく存じます。 冬の銀世界も函館の魅力の一つですが、お部屋からの函館の四季折々の景色を また是非ご覧になりにお越し頂けましたら幸いでございます。 疲れた体を癒しにまたご利用くださいませ。 温泉だいすきっこ様の次回のご来館、スタッフ一同心よりお待ち申し上げております。 この度のご投稿、誠にありがとうございました。 朝食バイキングは海産物あり、洋食もあり、デザートありの充実ぶりで、特にデザートは花畑牧場のタルトや函館牛乳のプリン、そして自分で作れるソフトクリームもあり、これだけでデザートバイキングとして成り立ちそうな品揃えでした! 朝食以外も全部満足度高めでした。 最上階の露天風呂は、掛け流しの温泉に浸かりながら時折受ける風が心地よく、函館山の夜景も相まって日頃の疲れや鬱憤を一気に吹き飛ばしてくれました。 お部屋も広々としていて、ひとり旅にはもったいないぐらいでした。 シックな空間で、ミルで挽く本格的なコーヒーを飲みながら旅の思い出に浸る…最大限の贅沢なひと時でした。 次回は観光せずにホテルを楽しむだけでも十分かと思えるぐらいです。 またぜひ泊まりたいと思います。 季節ごとに変わる和食や洋食、また函館牛乳や花畑牧場という北海道ならではのデザートを使用している当館自慢の朝食を目当てにご宿泊頂き、有難い限りでございます。 そして大浴場やお部屋で挽きたてのコーヒーを味わって頂けるコーヒーミルにもお喜び頂けました事、大変嬉しく思います。 「また泊まりたい」との嬉しいお言葉も頂き光栄でございます。 今後も皆様に愛されるホテル作りを続けて参りますので、またの機会がございましたら是非当館をご利用くださいませ。 お忙しい中、ご投稿頂きまして誠に有難うございました。 ラビスタさんは自分でいくらたっぷりの海鮮丼を作れることで人気が沸騰。 全国的にも有名でかなりの期待をしての宿泊です。 今回、部屋はツインを用意していただきました。 部屋に入ると暖房がついてるわけではないのに暑いのなんの、空調の温度を下げても暖房か送風にしかならず、このままでは不快なままなのどフロントに電話して窓の施錠を解除していただき外気を入れての温度調整。 部屋の中を色々見ながらベッドサイドのランプに手を触れるとグラグラ、洗面の横に置いたタオルが洗面と壁との隙間に落ちてしまい引き上げて見れば埃や髪の毛が付着。 なかなか日常の清掃では気がつかないし、清掃しない箇所かもしれませんが、清掃の方達だけに頼ることなく定期的に設備のメンテナンスもされた方がいいと思います。 その後、大浴場を利用しましたが、ここは満足。 そして翌朝、前回、前々回は他のホテルを利用してまして、正直、どちらの朝食も凄いとの印象でした。 そして本家本元はと期待をふくらませて朝食会場入り。 真っ先に目にした海鮮丼のネタは流石だと感動したのですがその先が…。 メニューこれだけ?ってのが正直な感想。 函館朝食戦争を意識しているのかしていないのかは分かりませんがメディアで露出したことでおおいに話題となり、函館に来たことのない方やラビスタさんしか知らない人達には『いくら盛り放題の海鮮丼が凄いホテル』で多くの宿泊客が来るのかもしれませんが、私の感想は他の2つのホテルが後出しじゃんけんかもしれませんが、イクラなどの海鮮に限らず、他のメニューも豊富ですし、演出も含めて素晴らしいと思います。 函館は新規ホテルラッシュ、ハードの面では当然新築の方が魅力的です。 朝食の海鮮丼は何処もデフォルトになりつつあります。 フロントスタッフなどの接客は流石だと思いますので、決してメディアだけの評判に甘んじることなく、頑張ってください。 口コミが辛口で済みません。 ごゆっくりお寛ぎ頂けましたでしょうか? お部屋の空調に関しましてご不便をおかけし、大変申し訳ございません。 冬季は暖房対応となっており、窓開錠での対応をさせて頂いておりました。 函館は仰る通り、どこのホテル・旅館でもバイキングには必ず海鮮食べ放題がついているような地域になってまいりました。 朝食会場で提供いたしております食品も、1階売店で人気商品となっております。 他にはない「大正浪漫」な雰囲気と魅せ方となっておりますので、ゆったりとした時間を楽しんでいただければ幸いでございます。 とはいえ、様々な宿泊施設をご利用されているお客様に「やっぱりここだ」と選ばれる宿泊施設になりたいと願っております。 今回の貴重なご意見を必ず活かして参ります。 また函館旅行にいらっしゃって再度ご宿泊頂く機会があった際に「選んでよかった」と仰っていただけるよう、日々精進して参ります。 「頑張ってください」のお言葉、嬉しく頂戴いたします。 またのお越しをスタッフ一同心よりお待ちいたしております。 夫と雪が溶けてからまた行きたいねと話しているので、その時はまたこちらのホテルを利用したいと思います。 ご滞在中はごゆっくりお寛ぎ頂けたご様子で私どもも大変嬉しく存じます。 温泉は一度目のご入浴で『昨日の疲れ』を癒し、二度目のご入浴で『今日の疲れ』を癒し、三度目以降のご入浴で温泉の効果があらわれるとも言われておりますが、 ご入浴頂きご堪能頂けましたご様子と癒しのお手伝いが出来ましたこと、私どもと致しましても大変嬉しく思います。 涼み処「そら」にご用意しております「アイスキャンディ」につきましてもご堪能頂けましたようでありがとうございます。 今後もお客様のお褒めのお言葉に恥じぬよう、またお客様にお喜びいただけるサービスを提供できるよう、邁進して参ります。 ご投稿頂き、また良い評価を頂戴致しまして心より御礼申し上げます。 また、次回お客様にお会いできる日を楽しみに致しております。 ご滞在中はごゆっくりお寛ぎ頂けたご様子で私どもも大変嬉しく存じます。 これからも更に上質なサービスを目指してまいりますので、お気づきの点がございましたら、お気軽にお申し付けくださいませ。 また、お褒めのお言葉を頂戴いたしましたこと、重ねて御礼申し上げます。 今後も皆様より愛されるホテルを目指し、努めて参りますので、ご愛顧いただけますようよろしくお願いいたします。 これからもお客様お一人お一人に愛されるホテルを目指し、努めて参りますので、またのお越しを心よりお待ち申し上げます。 ご投稿、誠にありがとうございました。
次の[chapter:みやげは紅葉] 二年生が、修学旅行から帰ってきた。 別にそれがどうという訳ではないが。 「弓弦がね、お土産だって」 英智が上機嫌に眺めている箱に入っているのは、どうやらお香のようだ。 「昨日、早速焚いたんだけど、ちょっと敬人の家のにおいと似ているね」 「線香のにおいと一緒にしてやるな」 そうだね、と何が楽しいのか、食えない表情の幼馴染がふふ、と笑う。 「僕も来年、会長にあげますからねっ?」 「卒業しててもくれるのかい?桃李」 勿論ですよ!と笑うその様子だけを見れば、随分微笑ましくもある光景なのだが。 「姫宮、お前は先にその目の前の書類を片付けろ」 とん、と彼の机を小突くと、姫宮は途端にむぅ、と膨れ。 「…副会長のケチ」 「何か言ったか?」 「いーえ!何も!さぁて、お仕事お仕事っ」 態とらしい台詞に、俺はハァ、と重い息を吐いて、自分の席に戻る。 「そう言えば敬人の処の可愛い後輩からは、お土産無かったのかい?」 そう言われて、俺は髪の長い古風な後輩を思い浮かべた。 「いや、神崎とはまだ会ってないからな。 fineは昨日が練習日だったんだろう?」 「ああ、そうだね。 弓弦からは生徒会へのお土産のお菓子も戴いているから、真緒が来たら皆で分けようか」 「あ、良いですね!さっすが会長!」 丁度そのとき、ガチャ、と生徒会室の扉が開き、衣更が顔を覗かせた。 「おや、噂をすれば、だね」 「え、何ですか?」 「修学旅行の土産の話をしていたんだ」 戸惑う様子を見せる彼に説明を加えると、ああ、と合点が言ったように声を上げる。 「なら丁度良かった。 副会長にお客さんですよっと」 「し、失礼いたす!」 おどおどとした様子で姿を見せたのは、こちらも先ほど噂していた後輩で。 俺と目が合うとパッとその目を輝かせた。 …何だ。 「蓮巳殿!」 「どうした、神崎」 「土産を!土産を買って参ったゆえ!」 「お、おお、分かった。 分かったから少し落ち着け」 予想外のテンションに少し椅子を引くと、衣更が後ろから神崎の肩を叩く。 「どうしたお前、何か緊張してる?」 「う、うむ、何やら敵陣に突入した心地であるゆえ、落ち着かぬのだ」 「あー…」 まぁ、分からんでもないかな、と苦笑を浮かべる衣更に、視線で説明を求める。 「ああほら、紅月の練習日、まだ先じゃないですか。 でも土産ってやっぱりできるだけ早く渡したいものだし、多分生徒会室いるからって俺が誘ったんですよ」 何より朝からずっとそわそわしてたこいつを見てられなかったというか、とボソリと零したのが一番の本音だろう。 「神崎」 「な、何であるか蓮巳殿!」 「何買って来たんだ」 見せてみろ。 そう促せば、今度は目だけでなく顔全体が喜びを表す。 それを最近、満更でもないと思うようになったのは十中八九、彼女の影響だろう。 「あれ、何か賑やかですね?」 開きっ放しの扉からひょこりと顔を覗かせたのは、またもや今、思い浮かべたばかりの人物で。 どうやら今日は人に縁のある日らしい。 「おや、あんずちゃん。 どうしたんだい?」 英智が問いかけると、あんずは持っていた紙袋を持ち上げる。 「お土産配ってるんです。 食べ物だから早目に配っちゃわないとと思って」 「確かチョコレートだったよな」 「京都でチョコレートかい?意外だね」 「抹茶や焙じ茶を使ったものなんですよ」 へぇ、と英智の目が楽しそうに細められる。 「ボク、そっち食べたい!弓弦が買ってきたの和菓子ばっかりでつまんないんだもん」 再び仕事を忘れた桃李が言う。 この調子だと、恐らくまた俺か衣更が手伝う羽目になるだろう。 「蓮巳殿!気に入っていただけたかっ!」 「ああ………あ?」 向こうに取られていた意識を戻すと、いつの間にか俺の机の上はおもちゃ箱と化していた。 八つ橋を始めとしたお菓子は勿論、手拭い、巾着、ストラップ、その他諸々。 いや、入ってきたときからやたらと大きな紙袋だとは思っていたが。 「…神崎、お前、買い過ぎじゃないか?」 「あと、木刀を買おうとしたら衣更殿に止められたである」 今度、衣更に何か奢ってやろうと決めた瞬間だった。 「気に入って、いただけなかっただろうか」 垂れた耳と尻尾が見える。 う、と言葉に詰まるが、だからと言って、これ全部を俺一人では処理し切れはしない。 んん、と咳払いをしてから、神崎の顔を見据える。 「全く、お前は加減というものを知らない。 俺一人にこんなには要らんだろうが」 「何が良いのか分からなかったゆえ…」 しゅん、と項垂れる神崎を視界に入れつつ、俺は右の方にあった細長い袋を手に取った。 「だが、これはいいな」 麻ぼかしの、深緑色をした扇子袋。 「良い色だ」 「………は」 「は?」 「蓮巳殿が喜んでくれたである!あんず殿ぉ!」 何でそこであんずなんだ、お前。 何でそれであんずは当たり前のように微笑むんだ。 母親か。 神崎の母親は一体何人いるんだ。 「…全く、度し難い」 「まぁまぁ、副会長もこっちでお茶しませんか?神崎も」 衣更が手招きをすると同時に、あんずが立ち上がり。 「あ、お茶用意しましょうか、蓮巳殿」 するりと出た呼称に、生徒会室の空気が止まった。 ぶふっ、と英智が吹き出す。 あんずの顔が真っ赤になり、衣更は口元に手を当て俯いた。 「あんず〜、蓮巳『殿』?」 「桃李くんっ!」 だって、神崎くんが、旅行中もずっと言ってたから、だから、と若干涙目になっている彼女が。 「本当に可愛いね、彼女は」 ね、敬人。 「……ふん」 否定できない程度には、可愛いと思っただなんて、言ってやるものか。 がやがやと騒がしい空気の中。 意味の分かっていない神崎だけがキョトンとした顔で首を傾げていた。 〜おまけ〜 「ねぇ、敬人とあんずちゃんが一緒にいたら、彼女は僕を『英智』って呼んでくれるのかな?」 「…俺に聞くな」 [newpage] [chapter:壊した宝石] ぽろぽろと、彼女が涙を零す。 宝石みたいにきらきらと落ちていくそれが、好ましいのだと言えば、恐らく、彼女に好意を寄せる何人かは、俺を非難するのだろう。 例えば俺が愛してやまない、綺麗な瞳の彼も。 「ねぇ、あんず」 俯いていた顔が、ゆっくりと上げられる。 涙を湛えた目が、水面のように揺らめいて。 ああ、綺麗だ。 なんて。 知っている。 彼女が自分の涙を好まないことを。 独りよがりな涙を、弱さを、誰よりも彼女自身が一番嫌っていることを。 だから。 「俺の為に泣いてよ」 温度の低い手で、濡れた頬に触れる。 拭ってなんかやらない。 その役は俺じゃなくていい。 だってこんなにも綺麗なのに。 「どうして」 悔しそうに、彼女の顔が歪む。 どうして、私を弱くするの。 敬語さえも忘れた言葉に、ひたりと彼女の心の臓に触れた気がして、俺は密やかに笑う。 「どうしてだろうねぇ」 遠い昔に、己の手で進んで壊したそれも、同じように綺麗だったのだろうかと、不毛な思いを馳せる。 止まることのない感情の粒に、懐かしさに似た憧憬を寄せて。 俺はそっと瞼にキスを落とした。 願わくば、彼女がこの宝石を失うことがないように、と。 [newpage] [chapter:それ以外は] 放課後の図書室。 夕陽の差し込むテーブルで、肘を尽きながら書物を読む姿は、人が人だけに、そのまま絵画にできてしまいそうだ。 瀬名泉。 本当に、黙ってさえいれば、どこまでも綺麗な人物だと思う。 黙ってさえ、いれば。 「何見てんの?あんず」 視線が突然此方に向いて、心臓が跳ねる。 これ以上見惚れることを諦めて、テーブルに近付くと、彼は再び書物に目を落とした。 「瀬名先輩、何読んでるんですか?」 「ゆうくんは?」 変わらないスタンスに、呆れを通り越して、ちょっとした感動すら覚える。 「遊木くんならもう帰りましたよ」 そう言うと、まぁ知ってたけどねぇ、と返ってくる。 私も知っていましたよ。 知ってることくらい。 彼の手元の本を見ると、そこに見慣れた日本語は無く。 「英語、ですか?」 「いや、独語。 懐かしいのが偶々あったからさ」 「独、ドイツ語ですか」 そ。 との淡白な返事に、ほう、と感嘆の息を吐く。 「読めるんですか?」 「読めないとしたら、俺今何してると思うわけぇ?」 ぱたん、とページが閉じられ、呆れたような視線が向けられる。 「羽風先輩とかならカッコつけで持ってそうだと思って」 「その認識はあんまりじゃない?」 流石に不憫になるよ、と顔を顰める彼に、それもそうだと思い、苦笑を浮かべる。 「バレエ、やってたからね」 「ベルリンとか有名でしたっけ、確か」 「多分留学とかさせたかったんだろうねぇ」 だから読める、ということだろうか。 「分かる幅が広いのに越したことはないし、いいんだけどねぇ」 そして、先ほどまで読んでいた本をほい、と手渡される。 「何、ですか?」 「簡単なやつだから、辞書引いたらあんたでも読めるんじゃないの?」 渡されたそれは、確かに書籍にしては薄いが、だからと言って安安と読める量でもなく。 「ちょっと、敷居が高いかと思います」 「あそ」 ひょい、と手の中の本は再び彼の元に戻る。 「あ、じゃあ詩とかは?」 「詩、ですか?」 「そう。 ゲーテとか。 あとグリルパルツァーとか意外と知ってる人多いけど。 知らない?」 聞きなれない響きに、ブンブンと頭を横に振る。 ふうん、と彼はつまらなそうに言った後、ふと何か思いついたかのように目を光らせ。 ニヤリ。 悪い笑みを浮かべた。 「せ、先輩?」 嫌な予感に、咄嗟に距離を取ろうとする前に、立ち上がった彼に手を取られ。 「Auf die Hande kust die Achtung」 さながら騎士のように、彼の薄い唇がそっと手の甲に触れて、離れる。 「、っあ、の……」 綺麗な淡青色と目が合って、その瞳がふわりと和らぐ。 「Freundschaft auf die offne Stirn」 「……っ」 今度は、額に。 「Auf die Wange Wohlgefallen」 頬にまた、一つ。 「Sel'ge Liebe auf……」 「ま、待って、ください」 思い出した。 作者こそ知らなかったけれど、知っている。 もし、そうなら次は。 「唇なら、愛情」 「何、知ってたわけぇ?」 知らないフリなんて悪い子だねぇ。 クスクスと笑う顔は蠱惑的だ。 まるで、現でないものみたいに。 「くれるんですか、愛情」 貴方の好きな『彼』ではないのに。 代わりの人形にも、到底なり得ないのに。 「どうしようかなぁ」 白い指が、私の唇をなぞる。 浅く吐いた息が震えた。 「奪われてあげてもいい、けどぉ?」 あげるのは、ゆうくんだけだけどねぇ。 そう、彼は自分の魅力を十二分に理解した顔で、綺麗に微笑み。 「ほら、早くしなよ」 促す言葉に、私は震える足で背伸びをして、刹那ほどの、掠めるようなキスをする。 「次」 瞳を閉じる彼。 続きをしろと、そう言うらしい。 さっきよりもさらに伸びをして、今度は薄い瞼に触れた。 「そう、正解」 そして、私の腕を引いて、掌を自らの唇に当てる。 掌へのキス。 「In die hohle Hand Verlangen」 肌を伝って響く声が、全身に甘い痺れをもたらす。 「Arm und Nacken die Begierde」 そのまま滑らせて腕と、そして、首に。 「最後、知ってるんでしょ」 耳元で囁く甘い声に、ただ、私は頷くことしかできなくて。 「いいの?逃げなくて。 そういう意味で受け取るけど」 いいも何も、だって最初から。 「貴方に」 「ん?」 「貴方に恋をした時点で、正気なはずありませんから」 「生意気」 ま、いいけどねぇ。 俺もだし。 Ubrall sonst die Raserei. それ以外は、狂気の沙汰。 お前とキスがしたい。
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