上肢の運動項目 ブルンストロームステージの上肢の運動項目は下記の通りです。 共同運動、またはその要素が随意的に行われ、はっきりと関節運動を示す。 前方水平位に腕を挙上する。 前方頭上に腕を挙上する。 肘伸展位で回内、回外する。 手指の運動項目 ブルンストロームステージの手指の運動項目は下記の通りです。 動きは不器用で機能的な使用は制限される。 随意的な手指伸展は可能だが、その範囲は一定しない。 全可動域が伸展できる。 個別の手指の運動は可能だが、健側に比較して劣る 体幹と下肢の運動項目 ブルンストロームステージ体幹と下肢の運動項目は下記の通りです。 共同運動またはその要素が随意的に行われ、はっきりと関節運動を示す。 座位で踵を床に着けたまま、背屈が可能。 立位で、膝伸展位で足を少し前方に踏み出しての背屈が、分離運動として可能。 座位で、内側および外側ハムストリングスの交互運動による、膝における下腿の内外旋が、足内反と足外反を伴って可能。
次のそうだね!じゃあ、実際にどうやって段階付けをしているかみてみよう。 リハアイデア 引用元:Li S et al:New insights into the pathophysiology of post-stroke spasticity. Front Hum Neurosci 2015 その回復過程における段階として、脳卒中発症による運動麻痺の初期症状として、第一段階は 動き自体がみられない状態(弛緩性)からはじまります。 Flaccidity は 弛緩という意味で、このグラフをみてわかるように、縦軸の Spasticity(痙縮)がない(もしくは、低い)状態で、かつ Motor control(運動コントロール)も低い状態なのがわかります。 そして、脳卒中後の片麻痺患者さん特有の運動パターンである 共同運動や連合反応といった動きが徐々に生じるとしています。 しかし、現在では学会などではこのブルンストローム・ステージによる評価は減ってきている印象があります。 確かに今みている担当患者さん初めっから手も動いていました。 運動麻痺を呈していても発症後すぐにでも上・下肢が動く人もいれば、全く動かない人もいたり、上手に物が持てる人もいれば、上手く手があがらない人など、その症状は 患者さんそれぞれによって大きく違います。 なので、あくまでも運動麻痺を呈した場合にはブルンストローム・ステージのような回復現象の中でも、 どういった症状が初期にみられるかは個々でしっかりと評価し、判断する必要性があります。 ここまでのことを整理すると、運動麻痺の評価に用いるブルンストローム・ステージは、 運動麻痺の回復程度を表す指標でありますが、その回復過程自体の経過は人それぞれ違うといったことになります。 つまりみるべき点は、麻痺した手足の現象をみるだけでなく、それがなぜ起こっているのか、そしてどういったことが原因で起こっているかという 原因分析が必要になってきます。 そういった意味でもこのブルンストロームステージでみられる麻痺側の現象を脳の神経メカニズムと合わせて解釈することがとても重要になってくるのです。 運動麻痺回復に関する脳内メカニズムはこちら! そして、このブルンストローム・ステージは 治療的要素に立った視点でみてみると、実はその捉え方が大きく変わってくるというのが、臨床的な考え方になるのではないでしょうか。 治療法A:連合反応や共同運動パターンは誤学習を生むという考え方から、そういった反応(例えば連合反応など)は 出さない方が良い。 治療法B:通常回復過程の中で起こり得る問題なのだから、いかにそれ(連合反応など)を 早期に脱却するか ( つまり出ても良い )を考える。 といった、2通りの考え方があるのではないかと思います。 なので、そういった形で運動麻痺を捉えると回復過程で起こる反応を 「良し」とするのか、 「ダメ」とするかは、それをみるセラピストによって、若干捉える印象が違うということになります。 これは、どちらが正しい・正しくないというわけではなく、自分たちがやる治療が 何を目的に、そして何の動作を得るためにやっていることなのかを理解する必要があります。 そのために必要な評価の一環として、ブルンストローム・ステージによる反応が良い反応なのか、良くない反応なのかを評価できることが、臨床場面では非常に重要になってくるということです。 治療に対するセラピストの意見の食い違いって結構多いんだよ。 リハアイデア そのためにも、運動麻痺による評価を理解することと合わせて、実は運動麻痺そのものの概念を、あらかじめしっかり理解する必要があります。 では、何故ブルンストローム・ステージのような運動をみる評価方法が臨床で活用されているのか。 その目的について考えてみたいと思います。 ブルンストローム・ステージの本当の目的は ブルンストローム・ステージの目的を理解する前に、まずは 運動麻痺について、少しおさらいしていきましょう。 運動麻痺とは 随意運動障害ということで、 自分の意思で筋肉を自由に動かせなくなったことを指します。 その結果、筋肉の働きによってもたらされる、個々の関節運動が自由に(自由ということをもう少し具体的にすると、単関節運動とも捉えられる)動かすことができない現象のことを、運動麻痺と一般的に呼んでいます。 運動麻痺についてもう少し詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。 意識した単関節の分離運動が行えているか• 運動自体が回復段階でのどのレベルなのか• 先程の目的の話でいくと、ブルンストローム・ステージは運動麻痺の評価に用いられ、それをみる目的としては、 運動麻痺の程度を知ることと、 運動麻痺の回復過程を知ることの大きく2点として考えることができます。 ただこれはあくまでも、ステージ毎に分類しただけなので、実はブルンストローム・ステージだけではその回復過程を本当に追えるかどうかという点では少し疑問が残ります。 回復過程を追えない?ブルンストローム・ステージは回復過程を追うものではなかったのですか? それは、ブルンストローム・ステージによる運動パターンの改善や変化が、筋肉の収縮が反応するレベルから、共同運動や連合反応からの分離運動へと変わってきた、というような考え方に基づいていますが、臨床的な部分では必ずしも評価方法に応じた回復過程を正確にたどれているわけではないということになります。 そして、単関節運動が できたか・できてないかが主な判定基準となるため、筋出力に対してある程度の 質的評価にはつながりますが、動作によって生じる筋出力に対する 量的評価には適していないということを十分理解しておいてください。 ブルンストローム・ステージによる回復過程って? では、実際にブルンストローム・ステージによる回復過程の変化は、臨床症状としてどのような形で現れるのかを、詳しくみていきましょう。 まず覚えておいて欲しいのが、この図になります。 これは末梢性及び中枢性(つまり脳血管障害などによる脳の問題によって引き起こされる)による運動麻痺の回復過程を表したものになります。 注目して欲しいのが 中枢性麻痺の回復過程になります。 ここでは、この図における回復過程について段階を追って、もう少し詳しくおさらいしていきます。 臨床的に別の検査方法として、 腱反射などで筋の反応をみるケースがありますが、弛緩性の状態では腱反射は消失しています。 これは努力性に力を入れた際に(立ち上がりや起き上がりなどの)、本人の意思とは無関係に 上肢の屈曲反応や下肢の伸展反応(その逆も)がでることが臨床上見られます。 あくびやくしゃみなんかでも出ることがありますね。 また腱反射は徐々に反応性を示し、場合によっては、 亢進状態となることがみられます。 そして、原則この屈曲及び伸展といった共同運動パターンをはずれた、自由な運動を行うことはできないとされており、臨床的にはそういった現象を 痙性パターンと捉えることが多いと思います。 ここでいう 共同運動とは個々の筋のみの動作ではなく、それに付随する筋肉(例えば拮抗筋や補助筋など)も一緒に働いてしまう、といった現象も見受けられます。 臨床的な反応としては、肩関節と肘関節や、膝関節と足関節といった比較的隣接する部分の関節運動から 徐々に分離運動が出現してくる印象です(全てではありませんが)。 関節運動としてはフル可動域はやや不十分(MMTで判断する筋力低下なども随伴して)ながらも、関節の分離運動が出現するといった動きになります。 StageV:分離運動の回復 分離運動の実行、共同運動や痙性は減少 共同運動から 各関節が独立した分離運動(痙性減少 が可能となる状態です。 臨床的にはみかけ上、関節運動が可能ながらも少しぎこちなさや滑らかな動きが障害しているような印象です。 稀に努力性の随意運動を伴うと、共同運動まではいかないような筋の同時収縮やパターン運動がみられる場合などがあります。 そのため随意的に各関節運動のコントロールが可能となり、分離性の問題はほぼみられません。 やや 動作スピード は 低下(非麻痺側に比べると)している要素は見受けられるも、巧緻性については日常生活レベルにおいては、ほぼ正常に近づいた状態になります。 以上が、ブルンストローム・ステージにおける基本的な回復過程の分け方になります。 まとめると、運動麻痺とは随意運動の障害になります。 そして、その随意運動を評価するのがブルンストローム・ステージになるのですが、ここで上記のステージ毎の評価でみてわかるのが、ブルンストローム・ステージは すべてが分離運動を評価している訳ではないということです。 すなわち、この段階では随意運動を評価しているわけではなく、 運動に伴う筋緊張の変化をみていることがわかります。 なので、各ステージで評価しているものが違うということを理解しておくことが大事になってきます。 腰の後方へ手をつける• 肘伸展位で肩屈曲し手を頭上まで挙上• 膝伸展• 立位股関節中間位で膝屈曲• 座位で股関節内外旋• 対向つまみ• 円柱、球握り• 各指の屈曲と伸展• 全指の完全伸展 ブルンストローム・ステージを用いる際に注意すべき点 確かにこのブルンストローム・ステージは評価方法としては 簡便かつ、客観的な指標としても「この患者さんはステージ〇で」って情報交換すれば、ある程度の患者像はイメージや共感できるのが利点としてあります。 日本でも、このブルンストローム・ステージをさらに細かくみれるように改良された 上田式12段階片麻痺機能検査というものもでてるからね。 リハアイデア 上田式12段階片麻痺機能検査に関する評価方法や利点などはこちら! 臨床場面をみていると特に感じるのが、運動麻痺による身体運動の現れ方は本当に多様です。 それは脳卒中による 皮質脊髄路の受傷程度によっても出てくる症状は変化しますし、そもそも運動出力における 脳システムのこと、 関節運動のこと、 筋力や重力のことなどの要素は、このブルンストローム・ステージで評価するには不十分な点が多数あります。 皮質脊髄路の損傷程度を知るにはこちらをご覧ください! ブルンストローム・ステージを評価として用いる際は、運動麻痺の回復過程をある程度客観的に大きな枠で捉えられるものとして、イメージしておく方がよいのではないかと思っています。 それを知るにはまずは ブルンストローム・ステージの本質を知ることだよ! リハアイデア これに関してもブルンストローム・ステージの本来の目的は、正しい肢位で行うということも客観的指標としては非常に大事ですが、それよりも大事なのが、 運動麻痺の程度と回復過程を知るということです。 すなわち、その肢位がとれなかったから、ステージ〇とするのではなく、各関節運動を行った時にどういった運動様式を示したのか(例えば、肩の分離運動をみた際に、肘や手も曲がり、肩の運動なのに上肢がひと塊として動いてしまったとか、上肢と一緒に下肢まで力が入ったとか、上肢運動を体幹を大きく動かして代償していた、またその際に大きく姿勢が崩れたなど)を明確に把握し、その上で運動麻痺の程度を理解するとともに、その ヒトの運動パターンを知ることがとても重要な要素になってくるのです。 なので、ステージがいくつということより大事なことは、運動麻痺に対する検査においてもまずは、随意運動による動きを 筋肉レベルでより詳細に評価する能力が必要になります。
次の上田式片麻痺機能テスト(12段階片麻痺機能法)とは 中枢性麻痺は、質的変化によって回復するが、上田はこの弓なりの曲線的なプロセスを12段階の判定基準にしている。 縦軸は運動支配の随意性(自分の意思によってどの程度動かせるか を示している。 横軸は運動の異常性を示している。 曲線に沿って示す数字は12段階法のグレードに対応するもので、 グレード0は完全麻痺グレード12はほぼ完全な回復を示すものである。 グレード6は中枢性麻痺に特有な異常(原始的)運動パターンが完成され、最も著明になった時点で、これを「折り返し地点」として、その後の回復は逆方向 連動パターンの正常化)に向かうことになる。 上肢・下肢テストは、グレード6で完成する共同運動(屈筋共同運動・伸筋共同運動)を「折り返し地点」としている(手指テストに関しては後述)。 中枢性運動麻痺は上記図のように、末梢性麻痺で認められる量的変化だけでなく質的変化をもち、回復過程では筋力が回復するだけではなく、『通常ではみられない連合反応、強度運動などが認められる。 でもってブルンストロームステージは片麻痺の回復過程を6段階に分けたものだが、それをさらに細かく分けたのが『 上田式片麻痺機能テスト(12段階片麻痺機能法)』であり、連合反応・共同運動・分離運動を簡単に診やすいよう工夫されている。 スポンサーリンク ここから先は、上田式片麻痺12段階テストの一覧表となる。 ただし、(観覧してもらうと分かると思うが)拘縮などがあり、テストNo. 1~11のいずれかの段階で施行不能となる可能性もある。 でもって、この様な際は『予備テスト』が用意されており、そのテストで代行するのだが、この記事は予備テストにまで言及していない点には注意してほしい。 上肢の片麻痺12段階テスト 上肢の片麻痺12段階テストは以下になる。 テスト No. 健測の肘を曲げた位置から、徒手抵抗に抗して肘を伸ばさせ、患側の大胸筋の収縮の有無を触知する。 「患側の手を反対側の腰の辺りに伸ばしなさい」と指示し、大胸筋の収縮を触知する。 「患者の手を耳までもっていく」ように指示し、手先がどこまで上がるかをみる。 手が背中の中心から 5cm以内に達するか否かをみる。 1動作で行うこと。 肘を体側にピッタリとつけ、離さないこと(つかない場合は失格)。 手先を肩につけ真上に挙上する。 できるだけ早く 10回繰り返すに要する時間をはかる。 健側を先に測定する。 所 要 時 間 健側 患側 不 十 分 健側の 2倍以上 健側の 1. 5倍以上~ 2倍 十 分 健側の 1. 上肢の判定基準 上田の片麻痺機能テスト(12段階片麻痺機能法)における下肢の判定基準は以下の通り。 総合判定 (グレード) テスト No. 患側下肢の内転、または内転筋群の収縮の有無をみる。 「患側の足を曲げる」ように指示し、随意的な動きの有無、程度を股関節屈曲角度でみる。 健側を先に測定すること。 所要時間 健側 秒 患側 秒 不十分 健側の 2倍以上 患側の 1. 5倍~ 2倍以上 十分 健側の 1. 5倍以下 下肢の判定基準 上田の片麻痺機能テスト(12段階片麻痺機能法)における下肢の判定基準は以下の通り(上肢の判定基準と同じ)。 総合判定 (グレード) テスト No. 一方で、手指テストは(共同運動と本質的に同じものである)『 集団運動』と呼ばれるもの(集団屈曲・集団伸展)の完成をグレード6の「折り返し地点」としている。 集団運動は、手指では5本の指が同時に同方向の動きをすること(横の共同運動)と、1本の指の3つの関節が同時に屈曲または伸展すること 縦の共同運動)の両方が同時に起こっている。 この集団屈曲・伸展が完成した状態がグレード6であり、それから個々の運動が分離独立していくのがグレード7~12である。 その際にも横の分離 ある指の運動が、他の指の影響を受けなくなること)と縦の分離(主にMP関節と両IP関節とが互いに独立した運動ができるようになること)との両者が平行して起こってくる。 さらに上肢の遠位の関節の状況、特に手関節の伸筋・屈筋の活動が手指の動きに影響するので、手指の回復過程は複雑になる。 ・ MP. IPの角度を足し合わせて判定する。 すなわち、指末節の最終位置により判定することになる。 ・全指が揃わない場合は平均して判定する。 ・全指がそろわない場合は平均して判定する。 ・全指が揃わない場合は平均して判定する。 5回で判定しにくい場合は、 10回行わせて計測する(ストップウォッチで秒単位に小数点 1ケタまで測定)。 所要時間 計測は 10回分として計算し、小数点 1ケタまで記載する。 0を超える。 または、患側の所要時間が 8秒を超える。 0以内で、かつ患側の所要時間が 8秒以内。 9 連合反応 健手にをもたせ、最大限握らせた時に、患指の屈曲が起こるかどうかみる。 関連記事 上田式片麻痺テストのベースとなっている『ブルンストロームテスト』に関しては以下を参考にしてみてほしい(読み比べることで、これらの違いも分かると思う。 ブルンストロームテストの方がシンプルなので、臨床で好んで使われるという側面もあったりする)。 また、上田式片麻痺機能テストやブルンストロームテストが運動機能にフォーカスをあてたテストなのに対して、脳卒中に対して運動機能のみならず高次脳機能などを含めた多面的な評価テストとして開発されたものが『SIAS』であり、詳しくは以下の記事で解説している。 また、以下の記事は、SIASも含めた脳卒中片麻痺に関連する用語や評価などをまとめた記事になる。 合わせて観覧してもらう事で、理解が深まると思う。
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