応募総数10,557、その結果に基づいて70曲をセレクト。 それぞれ35曲を3枚組のCDに収録。 TM NETWORKのボーカリスト・宇都宮 隆に今回のアルバムについて、そして改めてTM NETWORKというグループについて、さらにソロ活動についてインタビューした。 当時から、歌っている身からすると長いし 約8分 、これをやるってなったら大変なイメージがあったんですよね 笑。 その曲がこの位置にくるのは面白いなと」。 楽曲ではなくアルバムですが、昔はロンドンをはじめ、割と海外でレコーディングすることが多くて、アルバム『CAROL~A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991~』は、ロンドンで4か月くらいかけて作って、スタジオも二つ使って、そこを行ったり来たりしていたので、大変だったこと含めてすごく印象深い作品です」と、名盤の名前を挙げてくれた。 宇都宮 隆にとって、TM NETWORKとは ちなみにファン投票ランキングの1位は「改めてやっぱりいい曲ですよね」という、「STILL LOVE HER 失われた風景 」 1988年 だ。 昨年公開された大ヒット映画『劇場版シティーハンター~新宿プライベート・アイズ~』では、番組を彩った歴代の挿入歌やエンディングテーマが使用され、この曲も流れた。 当時の最新型のエレクトリックサウンドをポップスとして昇華させ、10年間の活動の中でシングル25作、アルバム22作、ビデオ13本をリリース。 多くの人を熱狂させたTM NETWORKというグループは、宇都宮にとって改めてどんなグループだったのだろうか。 TM NETWORK 「基本は小室 哲哉 なので、小室が示す方向性に向かって、たまたま一緒にやっていくことができた二人というか。 小室が僕と木根 尚登 にお題を出して挑戦させる曲もあれば、一人で作り上げる曲もあって、後者は歌い手の僕にとっては難しく、『これどうやって歌うの?』っていう挑戦が多くて 笑)。 小室が曲の大枠を作って、木根に『続きを作ってみてくれない?』って振ることも多くて、結果的に小室の曲を木根がアレンジするという意味でも、サウンド的にもやりやすくなるんです 笑。 僕と木根とはTMを結成する前のバンドから一緒だったので、そこまで大きな感覚のズレはないというか。 小室と知り合ってからの木根の曲の作り方は、多少変わったと思います。 小室の曲の中でも凄く歌いやすい曲もありますが、そうじゃない曲がほとんどですけどね(笑)。 TMは分担制という言葉が合っていると思います。 二人とも作家で僕は歌うこととプロモーション担当で、三人でいつもスタジオにいたのは、初期の頃だけだったと思います。 TMでもそれが続いていて、もし宇都宮が『こういう曲を歌いたい』とか、リーダーシップをとっていたら、TMは絶対に成立していなかった』と語っている。 「僕は僕で、今の土台があの濃かった10年ででき上がった、育った感じです。 だからソロになった時は、何をやろうかなではなく、方向をどう絞ろうか、どこに行こうかなと、セルフプロデュースがすぐにできました。 それはやっぱりあの10年間のおかげだと思います」と教えてくれた。 特に作り手の小室が一番大変だったと思います。 対メディア、レコード会社、そしてオリコンのランキング等をいつも気にして作品を作ってきて、プレッシャーも大きかったと思うし、色々な部分で負担が大きかったと思います。 最後のアルバム『EXPO』 91年 の時には、『きっとこれは…』と思っていたら、小室が「10年、区切りいいよね」って言うから『まあそうだけどね』って言いました 笑。 でも僕はそこで『いや、続けようよ』とは言えなかった。 「成功したとかどうかではなく、ソロをやろうと思った時、演技の世界に飛び込んでいったことは間違いじゃなかった」 92年、T. UTUとしてソロデビューを果たし、TMNは94年東京ドーム2days公演を最後に「終了」した。 「89年、TM NETWORKとしての活動が一旦休止して、色々考える時間ができて、レコード会社のディレクターから『ソロはどう?』と言われ、でもその時はソロ活動というのものが自分の中で漠然としていて、返事ができませんでした。 その中で、音楽じゃなくてもいいかもなって思って、 子供の頃に憧れた俳優をやってみようかなという気持ちに切り替わって。 でも今思うと、その考え方でよかったと思います。 成功したとかではなく、そこに向かった自分がいて、TMNに戻ってきた時、また新鮮な気持ちで歌うことができて、僕の中では改めて音楽をやってよかったと思ったし、そういう気持ちの一年でした」。 89年『LUCKY! 天使、都へ行く』 フジテレビ系 で、ドラマ初出演を果たし、その後も数々のドラマに出演。 表現の場を演技の世界の求め、追求していった。 「ハッキリしているのは、演技をやってよかった結果が、後に出たということです。 この時の経験がミュージカル『RENT』 98年 に繋がったと思っています」。 96年に宇都宮隆名義でソロ活動をスタートさせ、98年にブロードウェイミュージカル『RENT』日本公演に、主役・ロジャー役として出演し、注目を集めた。 この時の経験が、その後のアーティスト活動に大いに役立ったという。 「そこで対応できたのは、一年間音楽を離れ、演技の世界に身を置いたことが大きいと思うし、自分のライヴでは観せ方に関してはいつも舞台感覚で作っているので、音楽のライヴとしてだけ観ていない自分がいて。 特にオープニングとエンディングをどうしようかというのは、レコーディングが終わってから常に考えています」。 ソロツアーで全編TM NETWORKの楽曲をカバー。 その選曲基準は? その後、TM NETWORKとしての活動を再開する年があったものの、T. 昨年行ったツアー『Takashi Utsunomiya Tour 2019 Dragon The Carnival』 全国7都市12公演 は、今年2月、中野サンプラザで2日間の追加公演を行い、大盛り上がりのうちに幕を閉じた。 このツアーは全編、TM NETWORKの楽曲をセルフカバーするという新しい試みで注目を集めた。 『Takashi Utsunomiya Tour 2019 Dragon The Carnival』 Blu-lay/4月21日発売 「2018年のツアーで3キーボード、1ギターいう変則的な編成でやって、それが衝撃的だったみたいで、みなさんから『また観たい』という声を多くいただいて、そうは言っても僕の中ではやり切ったので完結されていて、これ以上のことはできないと思いました。 でも評判がすごくよかったし、今年がTMの35周年というタイミングでもあって、同じことはやりたくないと思っていたので、カバーというアイディアを思いついて。 それでセットリストをどうするか考えて、まずみなさんに喜んでもらえる曲、そして自分がこのメンバーとやってみたい曲、それとこの時点での自分的なTMベストという見方から、選曲しました」。 キーボードはバンマスの土橋安騎夫 REBECCA 、そして浅倉大介 access 、nishi-kenの3人、ギターは北島健二 FENCE OF DEFENSE という、TMと縁が深い豪華なメンバーがバックを支え、圧巻のサウンドと歌にファンは熱狂した。 そのライヴを余すことなく収録した映像作品 Blu-ray が、4月21日に発売される。 しかしこの企画でのライヴはこれで終了だという。 「同じことは二度とやらない。 「最近は次へ向かおうとする気持ちが生まれるのが、今まで以上に早くなっている気がする」 「もちろんファンがいるから頑張ることができるし、その存在が大きいけど、期待は時に…重いですね 笑。 重いなと思いながら、『ですよね』という気持ちもあるし 笑。 最近は次へ向かおうとする気持ちが生まれるのが早い気がします。 60歳を越えたからかなと思うんですよね、そんなに余裕がないんだなと。 余裕がないというか、やりたいことが多すぎて、早めに考えて、やっていかないと間に合わないなって 笑 」。 年齢のことが出てきたが、宇都宮は2013年に大きな病気を経験しているが、それも影響しているのだろうか。 本人は「大っぴらにしたくなかった」とこれまでそのことについては多くを語ってこなかったが、病気以降、歌うことについてや、人生観のようなものに変化があったのだろうか。 「あの時は、歌に関しては、どうなっていくんだろうという不安がありましたが、しっかり歌えるようになって、歌への思いは病気をする前と後ではそんなに変わっていないです。 ただ音楽以外の部分で変わったと思うことがあって。 それは人に関して敏感になってきた気がします。 人は嫌いじゃないけれど、相手が僕のことをどう思っているのかなということが、より気になって。 それによって対処や付き合い方も変わってくるだろうし、そこが変わった部分です」。 「僕の東北に対しての思いを伝え続けることができる」大切にしているライヴ「それゆけ歌酔曲!! 」 宇都宮が大切にしているライヴが2015年からスタートした『LIVE UTSU BAR TOUR「それゆけ歌酔曲!! 懐かしの歌謡曲と洋楽とをマッシュアップさせた絶妙なアレンジで、毎回楽しませてくれる。 「最初は東日本大震災の復刻支援のチャリティーから始まった企画で、それが好評だったので、ツアーをやろうよという話になりましたが、ここまで続くとは思っていませんでした。 でもこれを続けることは、僕の東北に対しての思いも伝え続けることができます。 」 ギア-レイワ2』 の公演中止・延期が発表され、4月7日 火 の公演を急遽、ニコニコ生放送で『LIVE UTSU BAR それゆけ歌酔曲!! ニコ生スペシャル』として無観客ライブ配信することが決定。 詳細はオフィシャルサイトまで。 流れが激しい音楽シーンの中で40年近く歌い続け、ファンを熱狂させてきた。 時代が変わり、CDに代わって、ストリーミングなどデジタル配信がメインになってきたり、聴き手の音楽を聴く環境も劇的に進化してきた。 双方に大きな変化が訪れた今、宇都宮がやりたい音楽、歌うべきものは、変化してきているのだろうか。 「今はライヴやアイディア勝負の時代」 「流れてくる音楽が、流行りのジャンルだと逆に耳に入ってこないことが多いですが、何か突拍子もないことをやっている人がいると、面白いなと思って感化されて、そこからオリジナルのものに昇華させていったりします。 今はライヴやアイディア勝負に変わってきた感じがします。 そのアイディアで面白いことをやって、そこから面白い音楽ができればいいなと思っています。 ライヴができるのであれば、ライヴをメインにやっていくべきだと思います。 いい音楽を作るためには資源が必要で、それがなければせっかくいい音楽を作ろうと思っても、作ることができないですよね、色々な意味で。 かといって、過去に出したものばかりを、ライヴでやるのもどうかなと思います」。 常に新しい宇都宮 隆の姿をファンに見せ、楽しませ続け、思いを伝えていく。
次の主にTM NETWORKのボーカルとして活動を続けている 宇都宮隆は1979年にSPEEDWAYとしてデビューしました。 1982年に解散しましたが、その翌年に木根尚登(Gu)と小室哲哉(Syn)との音楽ユニットTM NETWORKを結成しました。 1984年にコンテストで優勝してデビューを果たしリードボーカルを担当し「Get Wild」など数々のヒット曲を生み出し、1988年には「Come On Everybody」でNHKの紅白歌合戦に出場を果たしています。 ミュージシャンであるかたわら、1989年には「LUCKY!天使、都へ行く」で連続ドラマの初主演をして以降、翌年には篠ひろ子主演ドラマ「誘惑」に出演など俳優としても活動をしていました。 またアニメ「CAROL」では声優にも挑戦するなど音楽の他にも活動の幅を広げていました。 その頃TM NETWORKからTMNへとリニューアルし、1992年にはT.UTU(ティー・ウツ)としてソロ活動を開始しました。 1994年にTMNとしての活動を終了してからはソロ活動が中心となります。 翌年には、石井妥師と組んだユニットBOYO-BOZO(ボーヨ・ボーゾ)としても活動し、連名で作曲も手がけました。 1996年、宇都宮隆名義のソロ活動をスタートしてからは、ブロードウェイミュージカル「RENT」の日本公演に主演するなど音楽活動の幅を広げてきました。 1999年にTM NETWORKとして活動を再開してからはソロ活動と並行しています。 ソロとしてのファンクラブは「MAGNETICA」という名称で、より多くの人達を引きつけて、そしてファンとの距離感がより強力な力で近づくようにという願いが込められています。 ファンの間では「ウツ」と親しまれ、第一線から30年を過ぎても変わることのない透明感のある歌声で、ファンを魅了し続けてくれるアーティストです。 2019年4月1日から6月25日にかけて、「LIVE UTSU BAR TOUR 2019『それゆけ歌酔曲!! 』」を開催します。 宇都宮隆は、ミュージシャン、俳優として活躍中です。 1957年10月25日、熊本県で生まれました。 小学校入学を機に東京へ引っ越し、そこでのちのTM NETWORKメンバーである木根尚登と知り合いました。 1984年に小室哲哉と木根尚登に誘われ、リードボーカルとしてM NETWORKを結成しました。 1992年からはソロでも活動しています。 宇都宮隆名義としては1996年にCDデビューしました。 最初のメジャーデビューとなったSPEEDWAYから始まり自身が手がけるプロジェクトなど、これまでに7つの名義でデビューを飾っています。 TM NETWORKではボーカルでしたが、10代の頃から弾き語りをしていたため、ライブでもギター演奏することがあります。 また過去には歌の間奏などでダンスを披露することもありました。 透明感のあるストレートな歌声は還暦を過ぎた今でも健在で、若い頃から変わらぬで聴く人を魅了しています。 最近では2015年より毎年春にコンセプトライブ「LIVE UTSU BAR『それゆけ歌酔曲!! 』」 を開催するなど、ライブ活動も精力的に行なっています。 2018年2月28日には、ソロデビュー25周年を記念するアルバム「mile stone」をリリースしました。 このほか、俳優としてドラマやミュージカルにも出演しており、幅広く活躍中です。 チケットストリートは「ライブの感動を、すべての人へ」というミッションのもと、コンサート、ライブ、演劇、スポーツなど、興行チケットの安全な取引を仲介しています。 日本最大級の公演チケット売買(二次流通)サービスです。 代金のお支払いからお届けまでを事務局がサポートし、チケット詐欺にあう可能性はありません。 チケット掲示板やオークションなどより安心・安全です。 また「安心プラス」オプションを使えば、偽物や偽造チケットの心配もありません。 公演中止や主催者都合で入場できなかった場合も返金いたします。 Icons made by , , from is licensed by• 東京都公安委員会 許可番号:302171104982号• All Rights Reserved.
次の宇都宮隆が、2月7日に東京・中野サンプラザホールで全国ツアー『Takashi Utsunomiya Tour 2019 Dragon The Carnival』追加公演最終日となる千秋楽を開催した。 今回のツアーは、宇都宮隆がヴォーカリストを担当する35周年を迎えた3人組ユニット、TM NETWORK(宇都宮隆、小室哲哉、木根尚登)の楽曲を全編ソロとしてセルフカバーするという新たな試みとなった。 時を越えて、フレッシュな感動を与えてくれた一夜となった。 まず注目したいのが、キーボード3人とギター1人という変則的な編成だ。 Photo by 高田 真希子 キーボーディストは、バンドマスターにREBECCAの土橋安騎夫、TMとは縁の深いaccessの浅倉大介、アマチュア時代にTMから大きな影響を受けGReeeeN、ミオヤマザキなどのアレンジやサウンドプロデュースを手がけるnishi-kenの3名。 さらに、TMデビュー当時からレコーディングに参加しているFENCE OF DEFENSEギタリストの北島健二という、わかる人にはわかる縁の深いプロフェッショナルなメンバーが集結した。 そもそもツアータイトルとなった『Dragon The Carnival』とは、TM NETWORK初期の人気曲「Dragon The Festival」に起因する。 TM NETWORKの歌詞には海外の地名が頻出する。 時にはアフリカ、アマゾン、さらにコルドバ、バルセロナ、アンダルシア、ギリシャのクレタ島など、異国情緒漂う世界観を醸し出すセンス。 ファンタジックな物語性に溢れたサウンドを掛け合わすことで夢のイメージが無限大に広がっていくのだ。 フェスティバルでありカーニバル。 非日常へと誘うライブ・エンタテイメント。 それがTM NETWORKの本質であり、本公演によってあらためて浮かび上がってきたヴィジョンだ。 タイムマシンに乗ってあらゆる時代を行き交うサウンドをコンセプトとしているのだ。 ゆえに、シンセサイザーというどんな音色も生み出せる魔法の楽器を用いて、様々なリズムを駆使してキラキラした夢のようにワクワクする音楽を昭和~平成と時代に刻んできた。 本公演では、過去の記憶に残る演出をオマージュしたシーンを発見することができた。 実験精神とエンタメ精神の絶妙なバランスによって生み出されたTM NETWORKのヒストリー。 終わらない物語。 ネクストへの接点、その着火となる火種を、宇都宮隆はソロツアーで見事なまでに表現してくれたのだ。 オープニングは、FANKSのテーマといえる「Bang The Gong Fanks Bang The Gongのテーマ 」からスタート。 なお、本公演ラスト2公演は1枚も当日券が出ないほどの超満員となった。 続いて、驚きの選曲となったTMN時代のインスト・チューン「SECRET RHYTHM」の登場。 ドラムをギタリストの北島健二が担当して、宇都宮隆はギターを手にするなどギミッカブルな展開にオーディエンスが湧く。 白いスーツ姿の出で立ちにマスカレイドな仮面を身につけたエレガントなイメージ。 まさに、TM NETWORKが生み出してきたグラマラスでニューロマンティックかつニューウェイブ、さらに技巧で聴かせるプログレッシヴ・ロックな世界観だ。 勢いそのままに「Welcome Back 2」では、過去のTM NETWORKの楽曲タイトルを織り交ぜたコンセプチュアルかつ大胆な歌詞の通り、本公演のオープニングにふさわしい導入を誘った。 ライブの途中、ショーにおけるピエロ役EddieとZENが初期TM NETWORKヒストリーにおける大事な要素であるパントマイムちっくなパフォーマンスを寸劇風で演じてくれた(木根さんのダンス! 望遠鏡!? マジック、足長パフォーマンスなど)。 あらためて、35年の歴史を持つバンドの楽曲ながら、古さを感じさせないメロディーや歌詞、アレンジの秀逸さにも驚かされた。 マニアックな視点だが本公演のセットリスト、楽曲と楽曲を紡ぐ「CHILDHOOD'S END」のインストナンバーによる多国籍感は、TM NETWORKのダイバーシティーなアイデンティティーを示すかのようにも感じた(他にも、数曲隠れBGMありましたよね?)。 宇都宮隆が矢を放つかのような腕の動きと、矢の行方を躍動感ある照明によって表現する鳥肌モノなアクションに心を鷲掴みにされたのだ。 Photo by 高田 真希子 見所は多い。 1990年にリリースしたアルバム『RHYTHM RED』に収録した「RHYTHM RED BEAT BLACK」では、同時代的に世界を席巻していたプリンスやジャネット・ジャクソンのようなダンサブルな世界観をオマージュ。 当時のミュージックビデオからの抜粋で若き宇都宮隆が流麗に歌い舞う様がバックのLEDモニターに映し出され、当人も印象深いコリオグラフ(振り付け)を軽くジャンプしながら、瞬間的に導入部をなぞるシーンにフロアが湧いた。 TM NETWORKは80年代中期、ダンスカルチャーをいち早くポップ・ミュージックに取り入れたアーティストだ。 1984年、ラップ表現を取り入れたのも早かった。 ナイル・ロジャースなど海外著名プロデューサーによるリミックス、アナログレコードによるDJプレイ、さらには高音質レコーディング、サラウンド・ライブ、衛星を使った全国同時生中継ライブ、CD同時リリースによるTOP10内同時チャートイン、フリーダウンロード配信、メディアミックスとなるアニメ&小説化プロジェクトなど、現在の音楽シーンへ与えた影響は大きい。 途中、バンドメンバーによるソロパートも見どころだ。 その分、バンドメンバーである浅倉大介はaccess「Virgin Emotion」を、nishi-kenは「キセキ」を、土橋安騎夫は「フレンズ」を、北島健二は「SARA」をと、それぞれ自分の名刺となるナンバーをダンサブルな最新アレンジで、ライブ中に楽しませてくれた。 中盤以降の注目ポイントは、宇都宮隆もレアだと語っていた1stアルバム『RAINBOW RAINBOW』に収録した「クロコダイル・ラップ Get Away 」だ。 1stシングル『金曜日のライオン Take it to the Lucky 』カップリング曲であり、16ビートで加速するラップソング。 後半、宇都宮隆が英語詞のラップパートを畳み掛ける姿はセクシーだった。 一般的にTM NETWORKといえば「Get Wild」のイメージが大きいかもしれない。 しかし、誤解を恐れずにいえばTM=「Get Wild」という図式だけではもったいないと思う。 ソウルフルであり、ファンタスティックなTM NETWORKのイメージを体現するナンバーは他にもたくさんある。 中でも、この日歌われた「FANTASTIC VISION」は秀逸だ。 2020年の今、まったく古びない歌詞の世界観に小室哲哉の先見性をあらためて強く感じたのだ。 まぁ、こちらの内容を語るのは無粋だろう。 ライブに来たオーディエンスだけの楽しみとしておこう。 その後の選曲が、追加公演2日間で変化があったことに着目したい。 2月6日公演では、TM NETWORKのコアファンでももしかしたら知らない人もいるかもしれない木根尚登作曲、小室哲哉作詞によるナンバー「夏の終わり」が歌われた。 アルバム『SPEEDWAY』に収録されたフォーキーな作品だ。 聴けば聴くほどにメロディーと言葉が胸に突き刺さるエヴァーグリーンな楽曲だ。 もし、宇都宮隆が彼に投げかけたメッセージのひとつなのかもしれないと考えると、大変グッとくる興味深い一節だ。 なお、翌2月7日公演では、「夏の終わり」は歌われず、通常通り「We Are Starting Over」が歌われた。 TM NETWORKといえば一般的には小室哲哉によるクリエイティヴが注目されるが、木根尚登による作曲ナンバーもFANKS人気は高い。 「We Are Starting Over」はあたたかなメロディー、小室みつ子によるTMらしさに溢れたロマンティックな歌詞が趣深い。 歌詞に出てくる女性は木根作曲のTMナンバー「GIRLFRIEND」、「Time Passed Me By 夜の芝生 」に出てくる女性が成長した姿をイメージしているという。 人気曲「Be Together」では、宇都宮隆によるイントロダクションでの台詞回しに酔いしれ、バンドメンバー5人がステージ前方で横並びとなりアッパーに盛り上げる。 宇都宮隆は、ギターを手にしながら歌唱。 ピエロとゼンマイ仕掛けのロボット(一瞬、90年代にTMファミリーに登場した「Mr. G」ことガルボア進化系!?と思ったけど違うか……重厚感はたらなそう)による寸劇とともに繰り広げられていく。 「JUST ONE VICTORY たったひとつの勝利 」は、大胆なアレンジが施された今回のツアーにおいて比較的オリジナルに忠実に聴こえた。 なかでも注目は途中、アルバム『CAROL ~A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991~』における組曲ナンバー「Chase In Labyrinth 闇のラビリンス 」がインクルードされるセクションだ。 希望 葛藤 奪われた僕らのメロディ 街の音が消えていく 存在 光 これって、TM NETWORKリーダー、小室哲哉のことだよね??? FANKSの声が代弁されていく。 すべての想いがひとつになっていく。 音楽は時を越えていく。 俯瞰の視点。 タイムマシンに乗って旅をしているかのようだ。 それもそのはず、会場である中野サンプラザホールはTM NETWORKが1983年8月、TBSラジオと日本コカ・コーラの主催によって開催されたコンテスト『フレッシュサウンズコンテスト』で「1974」を演奏し、満点の評価を得てグランプリに輝いた場だ(映像作品『DECADE 1984-1994』に、その模様がボーナストラック的に収録されている)。 TM NETWORKがメジャーへの第一歩を手にしたきっかけとなるステージで、TM NETWORK 35周年という宇都宮隆なりの想いが結集した夜となったのだ。 そして、すべてを解放するかのようなイントロダクションと、天井の高いホール空間の最上空で回るミラーボールによって会場の空気が至福感でいっぱいに満たされた名曲「I am」が響き渡った。 この言葉が心を動かしてくれたのだ。 こうして熱狂のまま本編は終了。 アンコールでは比較的オリジナルに忠実に奏でるラストナンバー「Human System」からリスタート。 モーツァルトのピアノソナタ第11番(トルコ行進曲)のメロディーをマッシュアップする、当時では画期的なクリエイティヴィティーを今回は3人の鍵盤奏者による絶妙なハーモニーによって展開されていく。 宇都宮隆による歌のうまさ、声の透明感、力まずとも伝わる発音の際立ち、優しさ、情景が浮かび言葉が伝わる優れたヴォーカリゼーションに改めて感銘した夜だ。 メンバーがステージから去っていく最中、ここで誰もが終わりだと思った。 楽しすぎた夢のカーニバルの終幕だと思った。 しかし、キーボーディストnishi-kenが名残惜しげにステージに残った。 とある音色を弾く。 沸き立つオーディエンス。 袖にいるスタッフは手をバッテンにしている。 時間がないのかもしれない。 しかし、nishi-kenに気がついた浅倉大介、土橋安騎夫、北島健二とバンドメンバーがひとり、ふたりとステージへ戻ってくる。 なんと、宇都宮隆も帰ってきた。 nishi-kenが奏ではじめたイントロは人気曲「Self Control 方舟に曳かれて 」だ。 TM NETWORKらしさ溢れる代表曲。 しかも、ライブでは久しぶりにプレイされるナンバー。 まさかのレジェンダリーなアッパーチューンにFANKSのみんながビートに合わせてジャンプをしはじめた。 いてもたってもいられず、飛びはじめたのだ。 そして右腕を突き上げ、高らかと天へ掲げていく。 TM NETWORKには預言者的に時代の言葉を先取りする例がいくつもある。 2020年の今こそ、心に刻みたいワードであり楽曲が解き放つ信念だ。 誰もが心が溶け合い一体化、一体感に溢れた圧巻の高揚感。 客席では歓喜のあまり涙するオーディエンスもいた。 こうして『Takashi Utsunomiya Tour 2019 Dragon The Carnival』は幕を閉じた。 ラスト、ステージ上空のLEDに、宇都宮隆からのメッセージが、トライアングルが動き出す映像とともに流れていた。 しかし、ここぞというときに動いてくれるのがUTSU(宇都宮隆の略称)だ。 35周年のTM NETWORKの姿を観れなかったFANKSの想いを背負い、TM NETWORKが生み出したカルチャーを次に繋げるべく、仲間たちとともにステージで再構築して楽しませてくれた。 まさに、金色の夢といえる、きらびやかな夜の遊園地のような、幻のサーカス団のようなファンタスティックなロックショーを牽引してくれたのだ。 TM NETWORK、初ツアーのエンディングと同じ曲なのだ。 思えば、ライブ途中で宇都宮隆がキーボードでふと奏でていた名フレーズだった。 Photo by 高田 真希子 夢はまた現実に。 3月18日にはソニーミュージックとエイベックスから、ファンが厳選したベストアルバム『Gift from Fanks』がリリースされる(各CD 3枚組仕様)。 さらに、この春『Dragon The Carnival Tour 2019 LIVE Blu-ray』の発売も決定した。 チケット即日完売のプレミア公演。 観られなかったFANKSも多いことだろう。 全国7都市12公演を回ったツアー最終日。 2019年11月10日のZepp Tokyoでの熱狂を完全収録。 2020年以降、TM NETWORKの新たなヴィジョン。 そして、作品の継承、拡散に期待したい。
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