060] 小倉山荘では、2000年~2002年にかけて、『ちょっと差がつく百人一首講座』と題したメールマガジンを発行しておりました。 『小倉百人一首』の中から毎回一首ずつ、100回完結の形式で発行いたし、たくさんの方々に愛読いただいておりました。 この度愛読者様からのご要望にお答えし、バックナンバーを作成いたしましたのでおせんべいを召し上がりながらゆったりくつろいでご覧ください。 尚、マガジンの記載内容につきましては発行時点(2000年~2002年)のものであること、お問い合せ等にはお答えできかねますことを重ねてご了承くださいませ。 【つれなく見えし】 「つれなく」は形容詞「つれなし」の連用形で「冷淡だ」などの意味です。 そのまま「つれない」で現代でも意味は通じます。 「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、過去の女との別れを回想しています。 また、月のつれなさと別れた女のつれなさを重ねています。 【別れより】 「より」は時間の起点を表す格助詞で、「その時から」という意味になり、現在までの時間の経過を表しています。 【暁(あかつき)ばかり】 「暁(あかつき)」は夜明け前のまだ暗いうちのことです。 「ばかり」は後の「なし」と組み合わせて、「~ほど、~なものはない」という意味になります。 【憂(う)きものはなし】 「憂き」は形容詞「憂し」の連体形で「つらい」「憂鬱な」という意味です。 「夜明け前ほど、憂鬱な時間はない」という意味になります。 もうすぐ夜明けだ。 有明の月は、本当に白々と冷たくそっけない。 逢瀬にと女性の許へ行くと、とても冷たくあしらわれ、追い返すような態度をとられた。 そんなことがあってから、私には、暁ほどつらく憂鬱な時間はないのだよ。 そこそこの年齢の男性読者の中には、ふうっとため息をつかれた方もおられるのではないでしょうか。 しょぼくれた男の哀しさ、とでも言いましょうか。 仕事でくたびれ果てて女性の家へ行ってみたら、もうあなたへの興味は薄れたのよ、他に優しい人ができたの、早いとこ帰ってといわんばかりの態度。 未練がましい態度をとる自分が嫌になるし、袖にされて辛いことばかり。 外へ出ると夜明けの月までそっぽを向いているようだった。 この歌は、今まで紹介してきた恋の歌とは一線を画すものがあります。 相手が冷たくて泣き崩れる女性の歌でもなし、逢瀬を遂げた男が相手に夢中になっている歌でもない。 「癒しの場を求めて得られなかった中年男の背中の歌」なんですね。 現代の仕事に疲れた男にも少し通じる感覚で、「袖の濡れて乾く間もない」大泣きの歌より、じんわり心にくるものがある秀歌です。 こういう歌のような情景が小説になったら、それはハードボイルドなどと呼ばれます。 ハードボイルドというと、日本では大藪春彦の小説で有名になったため、タフな男たちが銃で撃ち合ったり殴り合う小説だと思いがちです。 でも、ハードボイルドの魅力は実は、この歌のような「しみじみとした実感」や「やるせなさ」にあることが多いのです。 ハードボイルドの味は若い人には分からない、なんて言いますが、この歌にも一種そうしたところがあるのかもしれません。 なお、作者には次のような歌があります。 「陸奥に ありといふなる 名取川 なき名取りては 苦しかりけり」 (陸奥にあるという名取川だが、無実の中傷をされては苦しいものだ) 名取川は、宮城県の中央を流れ、「青葉城恋歌」で有名な広瀬川と合流して太平洋に注ぐ大きな川です。 川を見るならJR東北本線・南仙台駅で下車すれば近いですが、観光ならやはり仙台市まで足を伸ばしましょう。 伊達政宗公の居城・青葉城をはじめ、仙台博物館など見どころが満載ですし、5月18・19日の両日には、伊達・火縄銃鉄砲隊演武式やすずめ踊りなどで有名な「青葉祭り」が開かれます。 ぜひ一度訪れてみて、人生の苦みを忘れてしまいましょう。
次の婚約者がうつで失踪中です。 7月に結婚を予定していましたが、彼の税金の未払い、うつ病が完治していない、非正社員を理由に彼の父親が彼を責め、結婚の話が一向に進まず、彼は気分が落ちていました。 私も年齢的にも早く結婚したくて、「いつまで待てばいいの?」と彼を責めてしまいました。 そんな矢先、治りかけていたうつ病が再発した事がきっかけで、内定取り消し、病状が悪化、要入院となりました。 全てを失ったといい彼は失踪しました。 メールは送れば返信はありますが「私に迷惑をかけてばかりだから別れよう。 待たせてばかりで申し訳ない。 会いたくないから居場所も言わない」という内容ばかりです。 私は別れたくないし病気が落ち着いたら結婚もしたいと思っている反面、そんな私の気持ちが彼を苦しめているのではないか、という気持ちで日々悩んでいます。 友人は皆別れを進めます。 彼が心配で精神的にも辛いです。 助けてください。 「いつまで待てばいいの?」というような気持ちがあるのであれば、お別れした方が良いと思います。 うつ病の方と共に生活していくというのは、想像を絶する大変さです。 早く結婚して子供が欲しい、というような普通の幸せを望むのであれば、他の方を探した方がずーっと早いと思います。 うつ病は治りかけの時が一番危ないのです。 気分が落ちている時は気力がないから、死にたい逃げたいと思っていても動けないのですが、ちょっと元気が出てきた時にダメージを受けると、マイナス思考そのまんまで危ない行動に出てしまうのですよ… 彼と幸せになりたいというのであれば、結婚したいという考えは忘れた方がいいと思います。 落ち着いたら結婚…と思っていると、その想いが彼を苦しめることになるからです。 うつの人は急かしてはなりません。 また「完治」と書かれていますが、あの独特のマイナス思考が身につくと、なかなか難しいです。 薬物(向精神薬・睡眠薬)への依存がなければ、まだマシだとは思いますが… 結婚を考えるならば、主さんがうつという病気に対する理解を深める事も必要です。 その上でひたすら待つことになるかと…主さんにできるでしょうか。 自分の幸せと、彼の幸せと、二人の幸せが、全て重なるのかどうか。 ゆっくりと考えてみてください。 大好きな人に別れを言われるのは辛いですね。 でもいくら病気だからと言って、みっちょんさんのためと言って失踪してしまうのはちょっとずるい気がします。 厳しいいい方をすれば逃げているだけですから。 そのことを彼が分かるといいのですが、どうですか。 本当にわかれるのならばきちんと面と向かって話し合いたいですよね。 そうしないとみっちょんさんも思いがふっきれないですよね。 そのあたりが今後のためにきちんとできるといいのですが・・・。 もしもう一度やり直すことができるのならば、みっちょんさんも病院に行けるといいですね。 行ったことはありますか。 これからのパートナーとしてお医者さんと一緒に彼を支えていけるといいですよね。 なんとかまず彼ときちんと話ができますように。 私もあまり重度ではないですが、鬱です。 重度ではないと言え、少し気持ちが落ちるとすぐに死ぬことだけを考えてしまいます。 何かあるとすべて私のせいだと考えて、私がいなくなれば、全て良くなるのに…と考えてしまいます。 実際にはそうではないのですが… 鬱病は他の方からは理解しにくい病気です。 鬱病の家族は接するときも気を付け、その疲れから、ご家族も鬱病になってしまうかたもいらっしゃいます。 結婚するとなると、それ相応の理解と決意が必要となります。 彼氏さんはみゆっちょさんに対する責任から逃げている、と思われるかもしれませんが、今彼氏さんが自分の心を守るために精一杯何とかしようとしているのだと思います。 もし、みゆっちょさんが絶対に別れたくないのなら、結婚の事は意識せず、つかず離れずで彼氏さんを支えていかなければならないと思います。 今は、少し距離をおいて仲の良い友達くらいの意識が必要です。 このような状態で、みゆっちょさんも大変お辛いと思います。 ですが、彼氏さんも苦しんでいることだけは理解してあげてください。 また、他の方も仰っていますが、鬱病は完治しにくい病気です。 治ったと思っても、ふとした事がきっかけで、再発 というかひどく なってしまいます。 みゆっちょさんはまだ28歳です。 焦らなくても大丈夫です。 もしかしたら、これから先、運命の人と巡り会うかもしれません。 今は、みゆっちょさんも彼氏さんも焦らないことが一番だと思います。 何も知らないのに、出すぎた真似をしてしまい、申し訳ありませんでした。 私の彼氏も遠距離中に鬱になりました。 若かった私は「こんな人とはやっていけない。 別れよう。 」と思った時期もありました。 しかし、彼は「私がいるから今まで生きてこれた。 仕事復帰もできた。 みんなタンゴのおかげ。 」と言ってくれています。 彼の両親には「タンゴさんがいてくれたからあの子は立ち直れたのよ。 」と感謝の言葉をいただきました。 来月結婚します。 みゆっちょさんは彼に「会いたくない」と言われているのですよね? それはみゆっちょさんが好きだから弱い自分を見せたくないのか、それとも重荷になっているからなのか。 前者ならまだ希望はあります。 待ちましょう。 後者ならこれから一緒に暮らしていくのは難しいと思います。 別れることをおすすめします。 彼から返信があるとのことで 少し安心しました。 内定も取り消されて、彼にとっては希望が見えない状態なのでしょう。 みゆっちょさんのことを けっして嫌いとかではないですよね。 ただ 病気が回復しなければ、一緒にいることは お互いに苦しくなるだけのように思います。 どなたかお2人共通の、中立な立場でいてくれる人に立ち合ってもらい 顔を合わせて話す場をつくれたらいいのかな。 (親同士は、ちょっと感情が入り過ぎちゃうような気がするので) このままメールのやり取りだけで、結婚を考えた相手のこと 諦めたくないですよね。 きっと彼も本心はそうだと思うのです。 無理強いはできませんから、今は無事を確認しつつ、 時間が経つのを辛抱強く待つしかないように思います。 この間に、彼との人生を、ひとりの女性として、じっくり考える時間にしてはどうでしょうか。 好きだから結婚する という選択もあり、 好きだからこそ今は別れる という選択もあると思います。 悪いことが重なってしまいましたが、 どうか耐えてほしい。 結果がどうであれ、お2人が納得したこれから決めてほしいと思います。 締められた後にすみません。 みゆっちょさんの事が心配になってしまいましたので、コメントさせてください。 お体の具合いかがですか? 人は自分で抱えきれないぐらい悩んだりすると体がSOのサインを出します。 みゆっちょさんは今その状態だと思います。 みゆっちょさん自体が少し鬱になってしまっているのではないかと心配です。 彼氏さんと連絡がとれないと不安になってしまいますよね。 変な言い方ですが、何かあったらご両親やみゆっちょさんに連絡が来ると思いますので、今はみゆっちょさんの心身の回復に専念してください。 心療内科だけでなく、メンタルクリニックなどで予約制でないところなどでも話を聞いてもらった方が良いと思います。 あまりご自身を責めないでください。 自分の心を守れるのは自分だけです。 また気持ちを吐き出したくなったら、ここに書き込んでください。 必ず皆さんが助けてくれます。 もちろん、私も。 また、新規に書き込むのが大変でしたら、この相談に書き込んでください。 出来るだけお力になりたいと思いますので。 どうか、ご無理だけはなさらないでください。 抹茶さん 優しいお言葉ありがとうございます。 返事が遅くなってしまってすみません。 私自身は落ち着きました。 その後彼から『もう俺にかまわないでくれ。 俺の事はほっといてくれ』と怒られ一切連絡はとっていません。 もう何をしても今は無駄だと思って、ウジウジ悩むのをやめました。 どんな結果になろうとも、いつか彼と会えた時に今までとは違う私になれるよう自分磨きをしようと思ってます。 抹茶さんのあたたかい言葉や、友人が親身に相談に乗ってくれたおかげで、前向きに進めそうです。 抹茶さんの言葉で救われた気がします。 ほんとにありがとうございます。 以前に相談させていただいた主です。 4カ月以上経ち、やっと踏ん切りがつきました。 たくさん泣いて、たくさん悩んで…… 多くの人達にも迷惑をいっぱいかけました。 その中で、やはり私は彼を支えていけないという答えにたどり着きました。 世の中には病気の彼(彼女)を支えて幸せに暮らしてらっしゃる方も多いと思います。 見捨てるなんて冷酷な人間だと言われる事も覚悟しています。 考え方が甘いということも理解しています。 ただ、このまま彼と復縁をしたところで、お互いに私達は成長出来ないと感じたので、きちんと彼にその事を伝えて別れました。 彼自身に病気に打ち勝って欲しいという想いでいっぱいです。 見ず知らずの私のために、コメントくださった皆様、本当にありがとうございます。 身勝手ですが、この件については閉めさせていただきます。 ありがとうございました。
次の060] 小倉山荘では、2000年~2002年にかけて、『ちょっと差がつく百人一首講座』と題したメールマガジンを発行しておりました。 『小倉百人一首』の中から毎回一首ずつ、100回完結の形式で発行いたし、たくさんの方々に愛読いただいておりました。 この度愛読者様からのご要望にお答えし、バックナンバーを作成いたしましたのでおせんべいを召し上がりながらゆったりくつろいでご覧ください。 尚、マガジンの記載内容につきましては発行時点(2000年~2002年)のものであること、お問い合せ等にはお答えできかねますことを重ねてご了承くださいませ。 【つれなく見えし】 「つれなく」は形容詞「つれなし」の連用形で「冷淡だ」などの意味です。 そのまま「つれない」で現代でも意味は通じます。 「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、過去の女との別れを回想しています。 また、月のつれなさと別れた女のつれなさを重ねています。 【別れより】 「より」は時間の起点を表す格助詞で、「その時から」という意味になり、現在までの時間の経過を表しています。 【暁(あかつき)ばかり】 「暁(あかつき)」は夜明け前のまだ暗いうちのことです。 「ばかり」は後の「なし」と組み合わせて、「~ほど、~なものはない」という意味になります。 【憂(う)きものはなし】 「憂き」は形容詞「憂し」の連体形で「つらい」「憂鬱な」という意味です。 「夜明け前ほど、憂鬱な時間はない」という意味になります。 もうすぐ夜明けだ。 有明の月は、本当に白々と冷たくそっけない。 逢瀬にと女性の許へ行くと、とても冷たくあしらわれ、追い返すような態度をとられた。 そんなことがあってから、私には、暁ほどつらく憂鬱な時間はないのだよ。 そこそこの年齢の男性読者の中には、ふうっとため息をつかれた方もおられるのではないでしょうか。 しょぼくれた男の哀しさ、とでも言いましょうか。 仕事でくたびれ果てて女性の家へ行ってみたら、もうあなたへの興味は薄れたのよ、他に優しい人ができたの、早いとこ帰ってといわんばかりの態度。 未練がましい態度をとる自分が嫌になるし、袖にされて辛いことばかり。 外へ出ると夜明けの月までそっぽを向いているようだった。 この歌は、今まで紹介してきた恋の歌とは一線を画すものがあります。 相手が冷たくて泣き崩れる女性の歌でもなし、逢瀬を遂げた男が相手に夢中になっている歌でもない。 「癒しの場を求めて得られなかった中年男の背中の歌」なんですね。 現代の仕事に疲れた男にも少し通じる感覚で、「袖の濡れて乾く間もない」大泣きの歌より、じんわり心にくるものがある秀歌です。 こういう歌のような情景が小説になったら、それはハードボイルドなどと呼ばれます。 ハードボイルドというと、日本では大藪春彦の小説で有名になったため、タフな男たちが銃で撃ち合ったり殴り合う小説だと思いがちです。 でも、ハードボイルドの魅力は実は、この歌のような「しみじみとした実感」や「やるせなさ」にあることが多いのです。 ハードボイルドの味は若い人には分からない、なんて言いますが、この歌にも一種そうしたところがあるのかもしれません。 なお、作者には次のような歌があります。 「陸奥に ありといふなる 名取川 なき名取りては 苦しかりけり」 (陸奥にあるという名取川だが、無実の中傷をされては苦しいものだ) 名取川は、宮城県の中央を流れ、「青葉城恋歌」で有名な広瀬川と合流して太平洋に注ぐ大きな川です。 川を見るならJR東北本線・南仙台駅で下車すれば近いですが、観光ならやはり仙台市まで足を伸ばしましょう。 伊達政宗公の居城・青葉城をはじめ、仙台博物館など見どころが満載ですし、5月18・19日の両日には、伊達・火縄銃鉄砲隊演武式やすずめ踊りなどで有名な「青葉祭り」が開かれます。 ぜひ一度訪れてみて、人生の苦みを忘れてしまいましょう。
次の