年金博士こと社会保険労務士の北村庄吾氏は怒りを隠さない。 「今回の制度改正は年金のあり方を大転換する内容です。 しかも、株価暴落で将来の年金給付のベースとなる積立金が毀損しているのだから、制度改正の前提が狂ってしまった。 この年金制度改正の先には、サラリーマンにとってもっと厳しい改革が待ち受けている。 国民年金と厚生年金の積立金の統合だ。 パートや自営業者が加入する国民年金はサラリーマンの厚生年金より財政状況が厳しく、積立金も極めて少ない。 厚生年金の積立金が約158兆円に対して、国民年金の積立金は約9兆円(2018年度末)しかなかった。 そこにコロナ危機と株価大暴落が追い打ちをかけた。 国民の多くが休職や自宅待機に追い込まれ、欧米のように失業者が更に増えていくことが予想されている。 年金の支え手の収入が減り、加えてコロナ対策の年金保険料の支払猶予の特例で年金財政がいよいよ厳しくなるのは間違いない。 このままでは国民年金の積立金が先に尽きて給付水準を大きく引き下げなければ維持できなくなるが、年金を減らせば生活保護に頼らざるを得ない人が増えてしまう。 そうなると国は税金を使わなければならない。 そこで厚労省は、コロナ収束後の次の年金改正で国民年金と厚生年金の積立金の統合を検討している。 「年金積立金の統合は、サラリーマンが積み立ててきた厚生年金の保険料で、パートや自営業者の年金を支えようというものです。 当然、サラリーマンの年金は減ることになる。 しかし、コロナでは国民年金の加入者だけでなく、厚生年金加入者も大きなダメージを受けているから、統合問題が表面化したら大きな批判を呼ぶでしょう」(北村氏) 国民は、日本の年金制度の危機がどのくらい深刻なのかの実情を全く知らされていない。 巨額の債務はコロナ危機でさらに膨れ上がり、破綻が近づきつつある。 今回の年金制度改正では到底近い将来の年金破綻を防ぐことはできない。 年金積立金が底をつけば年金制度は現役世代が1年間に支払う保険料をそのまま高齢者の年金給付に回す完全賦課方式に移行し、厚生年金も国民年金も大幅に減額されることになる。 そうならないためにはどんな改革が必要なのか、いまが国民に年金の真実を詳らかにして国民的議論をする最後のチャンスかもしれない。 【プロフィール】北村庄吾(きたむら・しょうご)/1961年生まれ、熊本県出身。 中央大学卒業。 社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャルプランナー。 ブレイン社会保険労務士法人 代表社員。
次の年金は最大でいくら受け取れるのか? 国民年金(老齢基礎年金)の満額は78万1700円 まず、国民年金から支給される老齢基礎年金の受給額についてです。 答えは 「上限あり」。 その額は 78万1700円(令和2年度)です。 国民年金(基礎年金)は日本国内に住所があると、20歳から60歳まで強制的に加入(保険料を支払う)することになります。 その間、滞納や免除期間がない限り、全員がこの満額を受け取ることになりますので、満額というより「定額」といったほうが正しいかもしれません。 年金の満額は毎年変わる この満額は前年の物価や賃金の変動をもとに決まるため、毎年変動しています。 平成16年以降は78万900円を基準として、これに毎年度の物価や賃金の変動を加味した改定率を乗じて計算されています。 ちなみに令和元年度の満額は78万100円でしたから、少し増額になったことになります。 国民年金のスタート時に比べて保険料は110倍、年金額は33倍 では、国民年金がスタートした昭和36年時点での老齢基礎年金の満額はいくらだったか、想像がつきますでしょうか?答えは「2万4000円」です。 一方、保険料はたったの「150円」(35歳未満は100円)だったのです。 令和元年度の保険料は1万6410円ですから、 年金額は約33倍になったのに対し、保険料は約110倍となっています。 年金額の上昇よりも保険料の上昇ぶりが目につきますね。 老齢基礎年金の満額を受け取るための要件 満額を受け取るには、20歳から60歳までの40年間、 1. 保険料を納めている 2. 会社員、公務員であった 3. 第3号被保険者(会社員、公務員の被扶養配偶者)であった のいずれかである必要があります。 この40年間の中で、保険料を滞納もしくは免除されていると、その期間分が減額されます。 ただ、40年の期間が足りない場合、要件はありますが、滞納や免除期間についてさかのぼって納付したり、60歳以降任意加入したりすることにより、満額(に近づける)ことも可能です。 基礎年金額の推移で見えるもの 先ほど、制度スタート時の満額が2万4000円だと説明しました。 その後の推移をみると、 昭和48年 24万円 昭和51年 39万円 昭和55年 50万4000円 と高度経済成長時にかけて満額も大幅アップしていることがわかります。 そして、さらに平成に入っても上昇は続きます。 平成元年 66万6000円 平成6年 78万円 平成11年 80万4200円 この80万4200円というのが、今までの満額の中での最高額となります。 その後、デフレとともに年金額が微減していき、令和2年度の78万1700円という流れになります。 従って、『概ね「78万円」』が老齢基礎年金の満額と言ってもよいでしょう。 老齢厚生年金に満額はない!? 一方、会社員、公務員の皆さんが加入する厚生年金(老齢厚生年金)には満額というものは存在するのでしょうか?老齢厚生年金は、加入期間と加入期間中の平均給料によって決まります。 加入期間が長ければ長いほど、平均給料が高ければ高いほど年金額が多くなる仕組みです。 したがって、「満額」という概念はありません。 ただ、加入期間については70歳という上限がありますし、平均給料についても、月額給料が62万円、1回の賞与が150万円という上限が設けられています。 加入期間とは、「会社員、公務員であった期間」を指します。 極端な話、中学を卒業してから70歳までずっと会社員か公務員で、給料と賞与がずっと上限だというのが「満額」といえるかもしれません(「上限」という言い方が正しいのでしょうが)。 仮に、こういった人がいるとして計算すると、現在の計算方法で年300万円ぐらいになると思われます。 ただ、そんな人はほとんどいないでしょうが……。 そうすると、「満額」という概念は老齢基礎年金にのみあるものといえますね。 【関連記事】•
次の「老齢年金」・・・年金加入者が(基本的には)65歳以降の老後に支払われるもの 「遺族年金」・・・年金加入者が死亡したときに残された家族に支払われるもの 「障害年金」・・・年金加入者が事故や病気で障害を負ったときに支払われるもの よく「60歳よりも、65歳になった時に年金をもらった方が多くもらえる。 」という話を聞きませんか?それは、「老齢年金」のことを指しています。 ですから、「年金」と言えど、「老後のための年金だけではない」ということを知っておきましょう。 そして、「年金」には、加入の仕方が3種類あります。 それぞれ、 「国民年金」、 「厚生年金」、 「共済年金」と呼ばれています。 以下に3つを端的に説明します。 「国民年金」・・・個人事業を行っている自営業者が加入する年金のこと(「基礎年金」と言われたりもします) 「厚生年金」・・・会社の役員や従業員などのサラリーマンが加入する年金のこと 「共済年金」・・・公務員が加入する年金のこと この3種類の加入の仕方によって、上記で説明した「老齢年金」、「遺族年金」、「障害年金」をもらえる金額が変わってきます。 重要なのは、「厚生年金」です。 「厚生年金」は「国民年金」より支払う金額が高いです。 「厚生年金」は、「国民年金部分 + 報酬比例部分」から成り立っているからです。 つまり、 「厚生年金」に加入している = 国民年金を支払い + 給料に応じた支払い、をしていることになります。 そして、「厚生年金」を支払っている人は、すべて国民年金だけの人よりもたくさんの金額がもらえるようになります。 したがって、厚生年金は、国民年金分も払っているので、国民年金と厚生年金は両方払う必要はありません。 支払う金額やもらえる金額が異なりますので、細かい事情がある方は、年金事務所や市役所など専門機関に相談することをオススメします。 覚えなくても、頭の片隅においておいてください(笑) またサラリーマンや公務員の妻やお子さんは「第三号被保険者」と呼ばれ、1円も支払っていなくても、「国民年金」に加入しているのと同じ保険料を支払ったことになります。 だから、専業主婦の人やニートのお子さんは、非常に得をしているんです!(笑) 厚生年金に加入したら国民年金の脱退手続きは必要? 厚生年金に加入したら国民年金の脱退手続きは必要ありません。 厚生年金の加入手続き(会社が行うこと)をすると、国民年金は自動で脱退となります。 自分がすることは、厚生年金の加入のための書類を会社に提出することです。 ただし、厚生年金加入後にも、国民年金の口座登録が解除されるまで、数回国民年金分が引き落とされてしまうことがあります。 次の章でも書きますが、厚生年金と重複する分は、戻ってきます。 送付される還付請求書を返送すれば、手続きは完了します。 窓口に行く必要はありません。 国民年金と厚生年金の支払いが重複したら還付される? 国民年金と厚生年金の支払いが重複したら還付されます。 過払い保険料の還付手続きの流れについてお伝えします。 (1)「国民年金保険料過誤納額還付・充当通知書」が届く 就職して1〜2ヶ月たてば、年金事務所から送られてきます。 それでも届かないという場合は、年金事務所での再発行が必要なので、連絡をしてください。 (2)「国民年金保険料還付請求書」に記入して年金事務所に提出 本人の場合は、振込を希望する口座情報を記入するだけです。 代理人が行う場合は、いくつかの手順が必要ですが、同封されてくる記入例にしたがってください。 還付請求書に記入後、それを年金事務所に郵送するか、直接持って行ってください。 (3)「国庫金振込通知書」が届く 提出した還付請求書の手続きがスムーズに行われると、「国庫金振込通知書」が郵送されます。 ハガキには、住所・氏名・振込先の金融機関名・金額・支払予定日が書かれています。 (4)払い過ぎた保険料が口座に入金される 実際に入金されるのは、還付請求書を提出してから1〜2ヶ月後になります。 時間が空くので、忘れずに確認しましょう。 国民年金と厚生年金の手続き、まとめ いかがでしたでしょうか? 今回は「国民年金と厚生年金は両方払うの?脱退手続きや重複した場合は?」についてご紹介しました。 厚生年金に加入すれば、就職先の会社で国民年金の脱退手続きをしてくれるので、あなたは何もしなくても大丈夫です。
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