1. 1 歳未満の赤ちゃんがハチミツを食べることによって乳児ボツリヌス症にかかることがあります。 [乳児ボツリヌス症の発生状況] 乳児ボツリヌス症は、国内では、保健所が食中毒として報告した事例は1986 年以降3 例、医師が乳児ボツリヌス症として報告した事例は1999 年以降16 例あります。 また、欧米でも発生しており、米国では毎年100 例以上の発生報告があります。 乳児ボツリヌス症の発生原因は、食品としてハチミツが指摘されていますが、ハチミツを食べていない例(国内では井戸水)も報告されています。 2. ハチミツは1歳未満の赤ちゃんにリスクが高い食品です。 ボツリヌス菌は、土壌中などに広く存在している細菌です。 ボツリヌス菌が食品などを介して口から体内にはいると、大人の腸内では、ボツリヌス菌が他の腸内細菌との競争に負けてしまうため、通常、何も起こりません。 一方、赤ちゃんの場合、まだ腸内環境が整っておらず、ボツリヌス菌が腸内で増えて毒素を出すため、便秘、ほ乳力の低下、元気の消失、泣き声の変化、首のすわりが悪くなる、といった症状を引き起こすことがあります。 ほとんどの場合、適切な治療により治癒しますが、まれに亡くなることもあります。 なお、1歳以上の方にとっては、ハチミツはリスクの高い食品ではありません。 3. ボツリヌス菌は熱に強いので、通常の加熱や調理では死にません。 1歳未満の赤ちゃんにハチミツやハチミツ入りの飲料・お菓子などの食品は与えないようにしましょう。 一般的に、ハチミツは包装前に加熱処理を行わないため、ボツリヌス菌が混入していることがあります。
次の日本小児科学会専門医。 2002年、慶応義塾大学医学部卒。 神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県横浜市のなごみクリニックに院長として勤務。 内科・小児科・アレルギー科を担... 「1歳未満の赤ちゃんにはちみつを与えてはいけない」と、聞いたことはありませんか?その理由は、はちみつに含まれるといわれるボツリヌス菌の芽胞が赤ちゃんの体内に入り、「乳児ボツリヌス症」を引き起こすかもしれないからです。 今回は乳児ボツリヌス症について、原因や症状、治療法、後遺症が残るのかなどをご紹介します。 乳児ボツリヌス症とは? 乳児ボツリヌス症とは、1歳未満の赤ちゃんがボツリヌス菌の「芽胞(がほう)」と呼ばれる菌の卵・種のようなものを、食品を通して体内に入れることで重症化する感染症です。 芽胞が赤ちゃんの腸の中に入ると、発育・増殖して毒素を出すことでボツリヌス症が引き起こされます。 ボツリヌス菌自体は、大人でも激しい食中毒症状を引き起こす原因菌です。 ただ、食中毒症状を引き起こすのは、食べ物の中で、すでに発育・増殖した菌の摂取によるものなので、芽胞の摂取が原因で起こる乳児ボツリヌス症とは区別して考えられます。 乳児ボツリヌス症は、生後12ヶ月未満の乳児に最も多く起こるといわれています。 乳児ボツリヌス症の原因は?はちみつにボツリヌス菌がいるの? ボツリヌス菌の芽胞は、大人が食べても害はありません。 しかし、1歳未満の赤ちゃんは、ミルクや母乳など栄養価の高い食事を摂ることと、腸の粘液の自浄作用が未熟で腸内環境も整っていないことから、ボツリヌス菌の芽胞が腸内で発育・増殖しやすい状況です。 そのため、乳児ボツリヌス症を引き起こしやすくなっています。 主な原因食品としてははちみつがあり、コーンシロップや黒糖にもボツリヌス菌の芽胞が紛れ込んでいる可能性があります。 関連記事 乳児ボツリヌス症の診断方法は? 乳児ボツリヌス症の診断は、赤ちゃんの便・血液のなかにボツリヌス菌が存在するかどうかで判断します。 乳児ボツリヌス症の治療法は? 乳児ボツリヌス症の治療では、呼吸管理や輸液をして症状を軽減させる対症療法、近年では抗体を投与する集中治療を行います。 はちみつを食べてしまった場合は、すぐに受診をしておくと安心でしょう。 また、感染した赤ちゃんのうんちには、長期間に渡ってボツリヌス菌が混入することがあるので、2次感染には十分な注意が必要です。 乳児ボツリヌス症の予防法は?授乳中にはちみつを食べてはダメ? 乳児ボツリヌス症を予防するには、1歳未満の赤ちゃんにはボツリヌス菌の芽胞が混入している可能性があるはちみつやコーンシロップ、黒糖を摂取させないことです。 ボツリヌス菌の芽胞は熱に強く、加熱調理してもなかなか死滅させることができません。 1歳を過ぎれば腸内環境が整って抵抗力がつくので、はちみつを食べられるようになりますよ。 また、赤ちゃんにおっぱいをあげているママだと「自分がはちみつを食べると、母乳を通して赤ちゃんが乳児ボツリヌス症になるのでは?」と思うかもしれませんが、ママは免疫が安定しているので、菌を取り込むことはなく、母乳へ移行することはほぼないので授乳中でもはちみつを食べることはできます。 ただし、はちみつを食べる際は、赤ちゃんが間違えて口にしないように、赤ちゃんの手が届かないところにすぐに片づけてくださいね。 関連記事 乳児ボツリヌス症にさせないようはちみつに注意しよう 乳児ボツリヌス症は周囲の大人が気をつけていれば、ほとんどの場合予防できます。 1歳になるまでは、日頃から赤ちゃんが口にするものは気をつけてくださいね。 特に、はちみつは市販の食品に使われていることがあるので、赤ちゃんがうっかり口にしてしまったということがないように、原材料を確認する癖をつけましょう。 万が一、1歳未満の赤ちゃんが蜂蜜を食べてしまった場合、まだ免疫力が弱いので、様子を注意深く観察しましょう。 便秘が5日程度続いたり、嘔吐、哺乳低下などの症状が見られたらすぐに小児科に連れて行ってください。 食後1ヶ月間は乳児ボツリヌス症の症状が現れないか注意しておきましょう。 赤ちゃんの離乳食が始まると、何かと気をつけることが多くて大変ですが、赤ちゃんの健康のためにも日頃から気を配ってあげてくださいね。
次の徐々に離乳食がスタートする赤ちゃん。 ハチミツは健康食品のイメージが強いのかもしれませんが、1歳未満の乳児には決して食べさせてはいけません(画像はイメージ) 2017年3月30日、蜂蜜を食べたことによる乳児ボツリヌス症により、生後6カ月の赤ちゃんが亡くなってしまうという事故が報道されました。 一般的に健康食品としても人気の蜂蜜ですが、 1歳未満の赤ちゃんに食べさせてはいけない食品の一つです。 ボツリヌス症とは、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)と呼ばれる細長い形をした桿菌から産生される「ボツリヌス毒素」によって起こる食中毒です。 ボツリヌス毒素には、神経を麻痺させるはたらきがあります。 ボツリヌス症は4種類に分類されています。 ボツリヌス食中毒(食餌性ボツリヌス症)…食材に含まれるボツリヌス菌と、菌が産生した毒素を摂取して起こるもの• 乳児ボツリヌス症…ボツリヌス菌の芽胞(後述)を摂取することで、1歳未満の乳児の腸管で芽胞から発芽し、増殖して、産生された毒素を吸収して起こる• 創傷性ボツリヌス症…土壌に含まれるボツリヌス菌が傷から侵入して、芽胞から発芽し、増殖して、産生された毒素によって起こる• 腸管感染毒素型ボツリヌス症…大人に起こる乳児ボツリヌス症と同じで、ボツリヌス菌が定着して、芽胞から発芽して、増殖して、毒素を産生する 特に1歳未満の乳児の場合、腸内細菌の状態が大人と異なります。 そのためボツリヌス菌が腸内にとどまりやすく増殖しやすいため、大人とは異なるボツリヌス症になりやすいのです。 蜂蜜やコーンシロップなどのボツリヌスが含まれる可能性のある食材を乳児に与えないことは、小児科医の常識になっています。 乳児ボツリヌス症による死亡率…蜂蜜が乳児が危険な理由 実は生後2週までは、母乳の成分によりボツリヌス菌が腸内にとどまることはありません。 しかし、生後2週以降から1歳までは、腸内細菌の構成のために、ボツリヌス菌が腸内にとどまりやすくなり、腸内で増殖し、毒素を産生してしまうリスクがあることが知られています。 成人は平気でも、乳児は蜂蜜摂取により、多くの毒素が体内に回ってしまうことがあるのです。 乳児ボツリヌス症は死亡例はこれまでなかったものの、人工呼吸器の使用が必要になることもあります。 成人がボツリヌス症になった場合はウマから作られた抗毒素製剤を使用しますが、乳児ボツリヌス症には通常は使用することができません(アメリカでは抗ボツリヌスヒト免疫グロブリン製剤が認可承認を受けています)。 アメリカでは、1976年~2006年までに2419症例の乳児ボツリヌス症が患児が報告されており、その0. 8%にあたる20例が死亡しています。 原因が蜂蜜だと考えられるものは、1970年代では39. 7%と多かったのですが、2000年代には4. 9%に減少し、特定できなくなってきています。 日本では今回、初めて蜂蜜摂取した例での死亡例が報告されてしまいました。 どれくらいで症状が出る? ボツリヌス症の症状・潜伏期間 まず、乳児ボツリヌス症が蜂蜜を食べてしまってからどれくらいで症状が出るのかの潜伏期間と、主な症状について解説します。 数日後から、赤ちゃんの動きが減ったり、筋肉に力が入っていないような状態になったりします。 哺乳が弱くなり、泣き声も小さくなります。 次第に目をつぶった状態になり、無表情な顔つきになり、全身の筋肉が動きにくくなり、呼吸もしにくくなります。 これらの経過による、最悪の場は死亡してしまうすることがあります。 また、乳児ボツリヌス症以外の各ボツリヌス症の症状は、それぞれ以下の通りです。 摂取してから発症までの潜伏期間:早くて5~6時間、遅くて2~3日(一般に8~36時間)• 症状:吐き気、嘔吐、下痢などの症状から始まり、めまい、頭痛、全身の違和感、目の症状(視力低下・かすみ目・物が二重に見えたり、眩しさを感じる)と口の症状(ノドの渇き、言葉が出なくなったり、物が飲み込みにくくなる)などの神経麻痺の症状が出ます。 さらに進行すると、お腹が張ったり、便秘になったり、尿が出なくなったり、手足の脱力感と麻痺がおこり、呼吸ができない状態になれば、死に至ります。 潜伏期:受傷後4~21日• 症状:ボツリヌス食中毒と同じですが、胃腸症状はありません。 日本での報告も2017年現在ではありません。 米国で多く、最近ではドラッグの注射部位の汚染などによる発症が報告されています。 症状:大人が発症しますが、乳児ボツリヌス症と同じです。 増殖して毒素が見られ、便から長期にわたり、ボツリヌス菌と毒素が出ている。 抗菌薬を使用している患者にみられています。 土壌、河川、海などに広く分布していると言われます。 そして空気のある所では、ボツリヌス菌は「芽胞」と呼ばれる、いわゆる冬眠しているような状態になります。 通常、菌というものは、芽胞の状態になると熱に強くなります。 水分のない乾燥状態でも、同じように菌は死ににくなります。 芽胞の状態で生き延びた菌は、酸素が少なくなると菌は芽胞状態から脱して、発芽します。 そして増殖し、毒素を産生し始めるのです。 症状を起こすボツリヌス毒素は熱に弱いです。 蜂蜜だけではない!ボツリヌス症の原因となる原因食材 1歳未満にはハチミツは与えないように それでは、ボツリヌス菌による食中毒を予防するためには、蜂蜜だけに気を付ければよいのでしょうか? 実はそうではありません。 ボツリヌス菌は様々な場所に存在するため、農作物、魚介類、動物の肉などのあらゆる食品の原材料がボツリヌス菌の芽胞に汚染される可能性があります。 過去のボツリヌス食品による食中毒例を挙げると、ニシンのにずし 1951年 、輸入キャビア 1969年 、辛子レンコン 1984年 、グリーンオリーブの缶詰 1998年 、あずきばっとう 2012年 など、様々な食品が原因となっているのがわかります。 乳児ボツリヌス症の場合は、1986年~2011年までの31例中、12例で蜂蜜の摂取が認められました。 蜂蜜がボツリヌス菌に汚染されている割合は、5. 7~6. 6%程度と考えられていますが、いずれにしても注意が必要です。 そして最近のボツリヌス食中毒、乳児ボツリヌス症の原因は不明なことも多くなっているため、蜂蜜以外の食品にも注意が必要です。 1997年に日本で自家製野菜スープが原因とされるのが1件ありました。 ボツリヌス症の検査法・診断された後の治療法 筋電図などで神経麻痺が疑われたり、血液や便から毒素や菌が検出されると、ボツリヌス症と診断されます。 ボツリヌス菌に対する抗菌薬治療だけでは毒素は減らせないため、毒素に対する治療として、抗毒素抗体を含む製剤による治療を受けることになります。 しかし、乳児の場合は、ウマの血清を体内に入れることで救命率を上げられないという報告もあるため、あまり使用されません。 呼吸筋が麻痺してしまった場合には、人工呼吸器による管理が行われます。 なお、ボツリヌス症と診断された場合、医師は感染症法に従い、ボツリヌス症が発生したことを保健所に届け出ることになっています。 さらに、ボツリヌス食中毒患者が発生した場合は、食品衛生法に基づき、保健所にも届け出なければなりませんので、法的に保健所に報告されます。 ボツリヌス症の予防法 乳児ボツリヌス症を防ぐには、何よりも芽胞で汚染されている可能性のある食品を与えないようにすることのが一番です。 1歳未満の赤ちゃんには、蜂蜜、コーンシロップ、 自家製の野菜スープやジュース等は与えないようにしましょう。 これらは土壌に近いために芽胞に汚染されやすくなっているためです。 ただし、野菜は十分に洗うことで土壌からの芽胞の混入をかなり減らすことができます。 加熱により無毒化することができます。 また、たとえ真空パックされた方な食品であっても、芽胞が混入していた場合、酸素が少ない状態でボツリヌス菌が芽胞から発芽し、増殖することがあります。 パック製品だからと過信せず、容器が異常に膨張している場合は、開封時に異臭を感じるような場合には、食べずに廃棄することも大切です。 芽胞が残っている場合は、元気がない、泣き声が弱いなどの変化が赤ちゃんに見られないか、よく観察する必要があります。 もし異常を感じた場合には、すぐに医療機関を受診し、蜂蜜を食べてしまったことを医師に伝えましょう。 しかし、この場合も十分に加熱されていればほぼ大丈夫と思われますが、蜂蜜そのものが含まれている場合や、蜂蜜が後でかけられているようなものの場合は、経過に注意する必要があります。 1カ月程度は様子を見ておきたいもです。 ただし、ボツリヌス症は多くは毒素が原因ですが、便から毒素が排出される可能性はゼロではないので、当然のことではありますがトイレの後には手洗いをしっかりとするようにしましょう。 蜂蜜は自然で安全で食品という考え方もあるようですが、やはり 蜂蜜は1歳になるまで与えないことが大原則です。
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