新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生した今年前半、このウイルスの感染拡大より人目を引く災厄がアフリカ東部で猛威を振るっていた。 それはバッタである。 食欲が旺盛なバッタは、特に穀物などの炭水化物を好む。 穀物はアフリカ大陸の農民の主要な生活の糧だ。 国連食糧農業機関(FAO)が1月に予測したところによると、まだ最悪の事態こそ訪れていないが、バッタの大群は6月には500倍に増える可能性があるという。 そしていま、最悪のタイミングでバッタの大発生の第2波が訪れた。 FAOによると、第1波の20倍もの数のバッタがアフリカ東部に発生したのは、3月後半の大雨のせいだという。 作付けの時期にバッタが襲来 バッタの大群はイエメンに侵入したのち、イランのペルシャ湾沿岸560マイル(約901km)におよぶ地域に定着し、産卵した。 バッタの新たな群れの大発生は、特にケニア、エチオピア、ソマリアで深刻化している。 「タイミングが実に悪すぎます。 というのも、農家はまさに作付けの時期であり、雨期が始まってから苗が伸び始めているところだからです」と、FAOの上級蝗害予測官のキース・クレスマンは言う。 「そんなときにちょうど、ケニアやエチオピアでバッタの数が増えているのです。 バッタの大群によって壊滅的になっている苗の写真や情報がすでに出回っています。 つまり、農家の作物はもうないのです」 「今回のバッタの大発生は食糧安全保障や生活への予期せぬ脅威に相当する」と、FAOの担当者は4月上旬に短い報告を発表した。 こうしたバッタの大発生は、いずれも新型コロナウイルスのパンデミックを防ぐためにロックダウン(都市封鎖)されている地域で起きている。 そのうえ旅行制限がかかっているので、専門家がバッタが大発生している国々に出かけて、地元の人々に駆除対策などのトレーニングをすることもままならない。 さまざまな要因が、これほど容赦なく重なる状況は想像し難い。 「こうした国々の大半では、バッタの大発生に対する備えがありませんでした。 問題は、そこにバッタの襲来を受けている点です」と、経済的途上国の農業問題を支援するフランス国際農業開発研究センター(CIRAD)の環境学者シリル・ピウは言う。 「解決策はバッタの発生の抑制に可能な限り努めることです」 移動に適した状態へと変化 バッタほどしぶとい敵は想像し難いところも問題だ。 いま大発生しているのは、サバクトビバッタである。 サバクトビバッタは、通常は単体で活動する「孤独相」だが、1日に90マイル(約145km)移動できる大群、すなわち「群生相」に変わる20種のバッタのうちの1種だ。 孤独相のバッタが「群生相」に変異し、群れをなして移動するようになるきっかけは雨である。 サバクトビバッタは湿った砂地にのみ産卵する。 乾いた砂地では卵が暑さにやられてしまうからだ。 大雨のあと、バッタは狂ったように繁殖し、砂地は卵だらけとなり、その数はわずか1平方メートルに1,000個ともいわれている。 卵からかえった幼虫は、生え始めたばかりの草に溢れ、食べ物が豊富にある環境で育つ。 バッタは草を食べ尽くすと、さらに食べ尽くすための植物を求めて、群れをなして移動する。 その際、サバクトビバッタの体は移動に適した状態へと変化する。 筋肉が増え、体色はくすんだ茶色がかった緑色から非常に目立つ黄色と黒に変わる。 体色の変化は、群生相になったバッタが孤独相だったときには避けていた、有毒の植物を食べるようになったことと関係があるらしい。 食べ物のせいで有毒の昆虫になっていることを、鮮やかな色合いによって捕食者に警告しているのだ。 孤独相のときにこんな色だったら、捕食者に見つけられてしまっただろう。 だが、数十億匹も群れをなすようになれば、もはや目立たないようにしている必要はない。 あまりに数が多いので安全だからだ。 前例のない大雨がきっかけに 今回のバッタの大発生は、2018年5月と10月の2度のサイクロン(温帯性低気圧)による大雨が、アラビア半島南部を襲ったときに始まった。 この大雨によってサバクトビバッタが大発生し、2世代が繁殖した。 各世代は前の世代より20倍のペースで増えるのだ。 「最大の問題は、数多くの不安定な状況や戦争などがある地域でこうした前例のない大雨が発生したことです。 そのせいでバッタが爆発的に急増し始めた最初の段階を見過ごしてしまったのです」と、CIRAD元所長の昆虫学者ミシェル・ルコックは説明する。 バッタの大発生を初期段階で検知できなかったという失敗は、FAOの最善の努力にもかかわらず、深刻化した。 従来からFAOでは、群れをなして移動を始める前のバッタを早期に発見するため、バッタに関する情報収集担当者の複雑なネットワークを調整していた。 担当者はアフリカ東部からインドまで、バッタの被害に遭っている最前線の20数カ国と連携し、現地の人々とともにトラックでパトロールし、害虫を監視する。 そして、地上で得た情報を植生の状態を示す衛星データと組み合わせる。 空腹のバッタは植物を追いかけていく可能性が高いので、植生はバッタの行動を予測する指標のひとつになる。 拡大したあとに食い止める術はない ところが運悪く、2018年のバッタの大発生は、オマーンの人里離れた砂漠で始まった。 その辺りには人が誰もおらず、バッタが発生したという警告は発せられなかったのだ。 「わたしたちはよりよいモデルをつくったり、よりよい予測を立てたりすることはできます」と、ピウは話す。 「しかし、誰も現地にいなかったら、人間がひとりもいなかったら、モデルや予測だけでは意味がありません。 現地にいる人々を人工衛星とすげかえるわけにはいかないのです」 恐ろしいのは、バッタの大発生は最初のうちに食い止めない限り、その拡大を止めるためにできることはほとんどないという現実である。 バッタは国境など構うことなく穀物を食い荒らす。 バッタの大群がやって来たとき、最も優れた当局者にできることは、穀物の破壊を減らすための殺虫剤の散布である。 だが、この方法も人手が必要で、しかもそのための人員は殺虫剤の散布について特別に訓練を積んでいなければならない。 農民に大量の殺虫剤を渡しておいて、病人をひとりも出さずに済むはずがないだろう。 国家的なバッタ対策がない地域の懸念 幸運なことに、ケニアやエチオピアなど最近バッタに襲来された国々には、殺虫剤の散布法に詳しい専門家がすでに数多くいる。 そこで今後の懸念は、南スーダンやウガンダといった数十年もバッタの大発生が起きていない国々にバッタの大群が飛来するかどうかである。 「そうした国々では農業関係の省庁において、国家的なバッタ対策がまったく用意されていないのです」と、FAOのクレスマンは言う。 「物理的な資材もなければ、バッタの制御全般に関する専門家も訓練を積んだスタッフもいません」 旅行制限が実施されていることから、専門家は現地に行って地元の人々を訓練することができない。 たとえ現地に行けたとしても、ソーシャル・ディスタンシング(社会的な距離の確保)を守らなければならないので、満員の会場でバッタの制御について講義するわけにもいかない。 こうした状況のなかでも朗報がある。 現在の流通全体のサプライチェーンの遅れを受けて、本来なら殺虫剤と噴霧器のアフリカへの出荷も遅れていた可能性があった。 ところが、この2点のサプライチェーンは全世界で機能していることだ。 「殺虫剤と噴霧器が世界各地から届いています」と、クレスマンは言う。 「供給をひとつの地域に頼るとかなり危険が高くなりかねないので、そういう方法はとっていません。 もしその地域が封鎖されたら、安定した供給を保てなくなるからです」 バッタを再び繁殖させないために とはいえ、タイミングは最悪だ。 新型コロナウイルスが大流行しているときにバッタが大発生しており、今後6月後半から7月前半にかけて収穫期が始まるのだ。 「困ったことに、この収穫期とまったく同じ時期に次の世代のバッタの大群が発生するでしょう」と、クレスマンは指摘する。
次のイナゴ(サバクトビバッタ)の大群がアフリカ大陸からインドを通過し現在は中国に来襲しています。 その数は4000億とも言われており、大群は幅40km、長さ60km、重量80万トンと過去最悪の規模で世界各地の農作物を食い荒らしながら移動しています。 特に中国は新型肺炎のコロナウイルスで混乱しており、泣きっ面に蜂状態となっています。 中には日本にもやってくるのではと心配している方もいました。 以下動画と飛んでいる巨大イナゴの画像も含まれますので、苦手な方閲覧注意です。 アフリカではヘリコプターからの消毒液を巻いていましたが焼石に水状態でした。 イナゴの大群は東アフリカで発生、ソマリア、エチオピア、ケニア、南スーダン、ウガンダ、中国、インドが主な被害地となっています。 コロナウイルスとのダブルパンチで流通不全と食糧危機も危惧されています。 日本には多分来ない アフリカから欧州ではなくインドから中国に向かったのは偏西風によりでしょうか。 偏西風は日本にも向かっていますが、日本海があるので恐らく日本までは来ないはずです。 (アフリカ大陸からサウジアラビアに移動した際紅海を越えているようなので、サバクトビバッタの飛行能力があれば物理的には日本への来襲は可能ではあるようです。 ) ただし土の中に卵を産む性質があるので、土ごと人の手によって移動すれば、ヒアリのように今後日本で定着し大量発生しないとも言い切れないです。 虫が苦手な私としては何としてもこのイナゴの大群だけは阻止してもらいたいです。 先週「アフリカでイナゴが大発生!」 今朝「イナゴがインドに到達!」 夕方「イナゴが中国で大暴れ!」 無茶苦茶やね。 カラコルム越えられる訳ないね。 — 皿屋敷 sarayashiki ちなみに寿命も1か月から長くても3か月とかなり短いとのこと。 ネットの反応まとめ まずくて食べられないそうです。 しかし硬くて食べられなかった。 大量発生し群体になると、特殊なホルモンにより茶色の硬いイナゴへと変わる。 翅を硬く強固にし、長距離の飛行を可能にし、多くの個体に餌を確保させるための変化です — Herp-about. これを相変化と呼ぶ。 数が減ると、元の緑に戻るんだとか、日本でバッタと言われているのはイナゴの一種で、こういう変化は起こさない。 バッタとイナゴの違いは相変化するかしないか。 とんだ風評被害だなあ」と思っているのだ。
次の新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生した今年前半、このウイルスの感染拡大より人目を引く災厄がアフリカ東部で猛威を振るっていた。 それはバッタである。 食欲が旺盛なバッタは、特に穀物などの炭水化物を好む。 穀物はアフリカ大陸の農民の主要な生活の糧だ。 国連食糧農業機関(FAO)が1月に予測したところによると、まだ最悪の事態こそ訪れていないが、バッタの大群は6月には500倍に増える可能性があるという。 そしていま、最悪のタイミングでバッタの大発生の第2波が訪れた。 FAOによると、第1波の20倍もの数のバッタがアフリカ東部に発生したのは、3月後半の大雨のせいだという。 作付けの時期にバッタが襲来 バッタの大群はイエメンに侵入したのち、イランのペルシャ湾沿岸560マイル(約901km)におよぶ地域に定着し、産卵した。 バッタの新たな群れの大発生は、特にケニア、エチオピア、ソマリアで深刻化している。 「タイミングが実に悪すぎます。 というのも、農家はまさに作付けの時期であり、雨期が始まってから苗が伸び始めているところだからです」と、FAOの上級蝗害予測官のキース・クレスマンは言う。 「そんなときにちょうど、ケニアやエチオピアでバッタの数が増えているのです。 バッタの大群によって壊滅的になっている苗の写真や情報がすでに出回っています。 つまり、農家の作物はもうないのです」 「今回のバッタの大発生は食糧安全保障や生活への予期せぬ脅威に相当する」と、FAOの担当者は4月上旬に短い報告を発表した。 こうしたバッタの大発生は、いずれも新型コロナウイルスのパンデミックを防ぐためにロックダウン(都市封鎖)されている地域で起きている。 そのうえ旅行制限がかかっているので、専門家がバッタが大発生している国々に出かけて、地元の人々に駆除対策などのトレーニングをすることもままならない。 さまざまな要因が、これほど容赦なく重なる状況は想像し難い。 「こうした国々の大半では、バッタの大発生に対する備えがありませんでした。 問題は、そこにバッタの襲来を受けている点です」と、経済的途上国の農業問題を支援するフランス国際農業開発研究センター(CIRAD)の環境学者シリル・ピウは言う。 「解決策はバッタの発生の抑制に可能な限り努めることです」 移動に適した状態へと変化 バッタほどしぶとい敵は想像し難いところも問題だ。 いま大発生しているのは、サバクトビバッタである。 サバクトビバッタは、通常は単体で活動する「孤独相」だが、1日に90マイル(約145km)移動できる大群、すなわち「群生相」に変わる20種のバッタのうちの1種だ。 孤独相のバッタが「群生相」に変異し、群れをなして移動するようになるきっかけは雨である。 サバクトビバッタは湿った砂地にのみ産卵する。 乾いた砂地では卵が暑さにやられてしまうからだ。 大雨のあと、バッタは狂ったように繁殖し、砂地は卵だらけとなり、その数はわずか1平方メートルに1,000個ともいわれている。 卵からかえった幼虫は、生え始めたばかりの草に溢れ、食べ物が豊富にある環境で育つ。 バッタは草を食べ尽くすと、さらに食べ尽くすための植物を求めて、群れをなして移動する。 その際、サバクトビバッタの体は移動に適した状態へと変化する。 筋肉が増え、体色はくすんだ茶色がかった緑色から非常に目立つ黄色と黒に変わる。 体色の変化は、群生相になったバッタが孤独相だったときには避けていた、有毒の植物を食べるようになったことと関係があるらしい。 食べ物のせいで有毒の昆虫になっていることを、鮮やかな色合いによって捕食者に警告しているのだ。 孤独相のときにこんな色だったら、捕食者に見つけられてしまっただろう。 だが、数十億匹も群れをなすようになれば、もはや目立たないようにしている必要はない。 あまりに数が多いので安全だからだ。 前例のない大雨がきっかけに 今回のバッタの大発生は、2018年5月と10月の2度のサイクロン(温帯性低気圧)による大雨が、アラビア半島南部を襲ったときに始まった。 この大雨によってサバクトビバッタが大発生し、2世代が繁殖した。 各世代は前の世代より20倍のペースで増えるのだ。 「最大の問題は、数多くの不安定な状況や戦争などがある地域でこうした前例のない大雨が発生したことです。 そのせいでバッタが爆発的に急増し始めた最初の段階を見過ごしてしまったのです」と、CIRAD元所長の昆虫学者ミシェル・ルコックは説明する。 バッタの大発生を初期段階で検知できなかったという失敗は、FAOの最善の努力にもかかわらず、深刻化した。 従来からFAOでは、群れをなして移動を始める前のバッタを早期に発見するため、バッタに関する情報収集担当者の複雑なネットワークを調整していた。 担当者はアフリカ東部からインドまで、バッタの被害に遭っている最前線の20数カ国と連携し、現地の人々とともにトラックでパトロールし、害虫を監視する。 そして、地上で得た情報を植生の状態を示す衛星データと組み合わせる。 空腹のバッタは植物を追いかけていく可能性が高いので、植生はバッタの行動を予測する指標のひとつになる。 拡大したあとに食い止める術はない ところが運悪く、2018年のバッタの大発生は、オマーンの人里離れた砂漠で始まった。 その辺りには人が誰もおらず、バッタが発生したという警告は発せられなかったのだ。 「わたしたちはよりよいモデルをつくったり、よりよい予測を立てたりすることはできます」と、ピウは話す。 「しかし、誰も現地にいなかったら、人間がひとりもいなかったら、モデルや予測だけでは意味がありません。 現地にいる人々を人工衛星とすげかえるわけにはいかないのです」 恐ろしいのは、バッタの大発生は最初のうちに食い止めない限り、その拡大を止めるためにできることはほとんどないという現実である。 バッタは国境など構うことなく穀物を食い荒らす。 バッタの大群がやって来たとき、最も優れた当局者にできることは、穀物の破壊を減らすための殺虫剤の散布である。 だが、この方法も人手が必要で、しかもそのための人員は殺虫剤の散布について特別に訓練を積んでいなければならない。 農民に大量の殺虫剤を渡しておいて、病人をひとりも出さずに済むはずがないだろう。 国家的なバッタ対策がない地域の懸念 幸運なことに、ケニアやエチオピアなど最近バッタに襲来された国々には、殺虫剤の散布法に詳しい専門家がすでに数多くいる。 そこで今後の懸念は、南スーダンやウガンダといった数十年もバッタの大発生が起きていない国々にバッタの大群が飛来するかどうかである。 「そうした国々では農業関係の省庁において、国家的なバッタ対策がまったく用意されていないのです」と、FAOのクレスマンは言う。 「物理的な資材もなければ、バッタの制御全般に関する専門家も訓練を積んだスタッフもいません」 旅行制限が実施されていることから、専門家は現地に行って地元の人々を訓練することができない。 たとえ現地に行けたとしても、ソーシャル・ディスタンシング(社会的な距離の確保)を守らなければならないので、満員の会場でバッタの制御について講義するわけにもいかない。 こうした状況のなかでも朗報がある。 現在の流通全体のサプライチェーンの遅れを受けて、本来なら殺虫剤と噴霧器のアフリカへの出荷も遅れていた可能性があった。 ところが、この2点のサプライチェーンは全世界で機能していることだ。 「殺虫剤と噴霧器が世界各地から届いています」と、クレスマンは言う。 「供給をひとつの地域に頼るとかなり危険が高くなりかねないので、そういう方法はとっていません。 もしその地域が封鎖されたら、安定した供給を保てなくなるからです」 バッタを再び繁殖させないために とはいえ、タイミングは最悪だ。 新型コロナウイルスが大流行しているときにバッタが大発生しており、今後6月後半から7月前半にかけて収穫期が始まるのだ。 「困ったことに、この収穫期とまったく同じ時期に次の世代のバッタの大群が発生するでしょう」と、クレスマンは指摘する。
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