「ドレミファソラシド」とは何語でしょうか。 答えは、イタリア語(正確にはラテン語)です。 グレゴリオ聖歌に 「聖ヨハネ賛歌」という曲がありまして、その曲は各フレーズの最初の音がド・レ・ミ…と一音ずつ上がっていく、という面白い特徴がありました。 (ドレミの歌みたいなもんです) そこで、この各フレーズの 最初の音に当てられている歌詞(ウト・レ・ミ…)を、そのままこれらの音の名前にしてしまおう! という大胆な試みが起こったのです。 その後シが加えられ、ウトは訛ってドになり、現在の「ドレミファソラシド」が完成しました。 一方、 ドから順番に「CDE…」とする呼び方もあります。 実は「ドレミ…」とは階名なので、音の高さを正確に表しているわけではありません。 ポピュラーにしてもクラシックにしても、専門的に音楽を学ぶなら、音名である「CDE…」も覚える必要があります。 ただし、 ポピュラーの場合は英語なので読み方は「シー・ディー・イー」ですが、 クラシックはドイツ語なので「ツェー・デー・エー」です。 注意しましょう。 音名と階名について詳しく知りたい方はこちら「」をご覧下さい。 英語 まずは英語から見ていきましょう。 ドがCで、そこから順番に「CDEFGAB」と続いていくだけです。 簡単ですね。 初心者の方にとっては複雑な話になってしまいますが、実は 「CDE…」という呼び方はコードを表すときにも使われます。 つまり、単にドの音を表すときにも「C」と言い、ドミソの和音を表すときにも「C」と言うのです。 コードのCの正式名称は「C メジャー コード」と言うのですが、これは「Cの音をルートとする明るい和音」という意味です。 この通り正式名称で言ってくれれば混乱することは全くないのですが、なぜか実際には「メジャー」と「コード」を省略して「C」と呼ばれてしまいます。 「このCがさぁ…」と言われたら、それが単音を指しているのか和音を指しているのか、文脈から判断するしかありません。 注意しましょう。 …え、なぜドはAではなくCなのか? え~っと、我々現代人にとっては音階はドから始まるのが一般的ですが、実は「ドが中心」という考え方が音楽界に広まったのは16~17世紀頃です。 けっこう最近ですね。 しかしアルファベットによる命名法は大昔から存在していました。 当然、当時は「ドが中心」という考え方は存在しなかったので、何となくラをAとし、それが定着してしまったということです。 スポンサーリンク ドイツ語 では次にドイツ語バージョンを見てみましょう。 とりあえず突っ込みどころとしては 「何でシはドイツ語でHなのか」ですよね。 当初はドイツ語でもシをBと言っていました。 しかし当時のヨーロッパではファとシの間にできる三全音(トライトーン)の音程が不協和で嫌われていました。 そこでラとシの間に 「もう一つのB」を作ることでその音程を上手く回避したのです。 この「もう一つのB」は元のシに比べて軟らかく聞こえたので 「軟らかいb」、それに対して元々あったBは 「硬いb」と呼ぶことになったのです。 そのうち、「硬いb」が何となくhに似ていることや、音名で使用するのはA~Gまでで丁度Hが空いていたこともあり、いつの間にかシはHと書かれるようになってしまったのです。 ちなみに 「軟らかいb」はフラットの原型になり、 「硬いb」はナチュラルやシャープの原型にもなりましたとさ。 また、 シャープが付く場合は音名の後ろに「is」、フラットが付く場合は「es」を付けて表します。 また、ダブルシャープのときはCisis・Disis・Eisis・Fisis・Gisis・Aisis・Hisis で、ダブルフラットのときはCeses・Deses・Eses・Feses・Geses です。 AとHは、Ases・Bes という言い方も一応あるようですが、Asas・BB(ドッペルベー)と呼ぶのが一般的なようです。 ところで…。 我々は普段「ド シャープ」「レ フラット」のような言い方を平気でしていますが、よく考てみると ドレミはイタリア語で、 シャープやフラットは英語ですよね。 つまり、本場イタリアでは「ド シャープ」のような言い方はしていないのです。 では何と言っているのかというと、 シャープは「ディエズィス」、フラットは「ベモレ」という、RPGのボスキャラみたいな名前で呼んでいるようです。 日本語 では最後に日本語の場合を見ていきましょう。 欧米が「ABC…」なので、日本語はそれに対抗して「イロハ…」です。 つまり ドから順番に「ハニホヘトイロ」です。 昔NHK教育で放送していた「クインテット」という番組のオープニング曲が歌える人は楽勝ですね。 ちなみに全っ然関係ありませんが、私はこの動画の38分20秒頃から始まる「リンゴの木の下で」のアレンジが大好きです。 話を戻します。 シャープが付く場合は「嬰」、フラットが付く場合は「変」を付けて表します。 しかしイロハ読みだと「ハはトとヘへニに…」のように非常に分かりづらくなってしまうため、普通は使われません。 ハ長調・イ短調など、 調を指すときに多少使われるぐらいですね。 もっとも、戦争中は欧米の言葉が禁止されていたため「ハホトの和音が…」などと言っていたようですが…。 さて、今回は各言語でのドレミの呼び方について勉強しました。 ポピュラーをやりたい人は英語を、クラシックをやりたい人はドイツ語をしっかりマスターしておきましょう。 ハッピー、ラッキー、皆に届~けっ! mie238f.
次の2016年06月23日 13,551 PV ドレミとは 普段何気なく使っている「ドレミファソラシ」。 『ドレミの歌』というものもあるくらいですし、極端な話、物心がついた頃から、きっとみんなが当然のように知っているのではないでしょうか。 では、ドレミ…って何語でしょう? 私のところにレッスンに来ている方には、必ず聞く質問です。 「あー、考えたことがなかったです…」か「日本語じゃないんですか?」と答える方がほとんど。 多分、今まで正解を答えられた方はいなかったんじゃないかと。 というくらい、楽譜が読める読めないに関わらず、老若男女みんなが当たり前に使っているのに、正体不明な「ドレミファソラシ」。 どこで、どのようにして生まれたのでしょうか。 ドレミってどうやってできたの?何語? 『ドレミの歌』から「ドレミ」が生まれた? 昔々、音には名前がありませんでした。 楽譜は一応存在していましたが、現在のように五線ではなく二線。 音を人に伝えるには、歌って聴かせていました。 この伝達方法を不便に思っていたのが、イタリアの修道僧で、音楽教師でもあったグイード・ダレッツィオ。 10世紀後半に生まれたグイードは、8世紀頃から存在していた『聖ヨハネ賛歌』に着目、編曲をしました。 ラテン語で書かれている歌詞は以下の通りです。 Ut queant laxis Resonare fibris Mira gestorum Famuli tuorum Solve polluti Labii reatum Sancte Johannes この曲は、今で言う『ドレミの歌』のように、一節ごとに音が高くなるように書かれています。 (グイードが作曲したとの説もあり) そこで、各節の始めの文字をとって「Ut Re Mi Fa Sol La」と、音に名前をつけたのです。 なお、第7節は「Sancte」のSと「Johannes」のJ(Iの異字体)を組み合わせて「Sj=Si」とされたと考えられていますが、グイードの時代には6音音階が主流であり、「Si」が生まれたのは16世紀頃のようです。 17世紀半ば、イタリア人にとって発音のしづらい「Ut」は『支配者、主』を示す「Dominus」の始めの文字「Do」へと変更され、今日私達が当然のように使っている「ドレミファソラシ」が完成したのです。 ちなみにグイードは、ドレミを作っただけでなく、2本線で書かれていた楽譜を4本線に増やし、現在用いられている楽譜記譜法の原型を考案しました。 彼がいなければ、もしかしたら今もなお、音楽は口頭伝承が当たり前だったかもしれません。 さて、先程も書いたように、グイードはイタリアの修道僧。 使っていた言語もイタリア語。 ということで、「ドレミ」はイタリア語です。 では、なぜ世界の共通語というわけではないイタリア語の「ドレミ」が、このように日常的に使われるまで広まったのでしょうか。 なぜイタリア語が有名に? 音楽用語(=楽語)は、基本的にイタリア語です。 「楽語って???」という方でも、例えば『フォルテ』とか『クレッシェンド』などは聞いたことがあるのではないでしょうか。 これもイタリア語。 もちろん、ドイツの楽譜はドイツ語で書かれていたり、フランスの楽譜はフランス語だったりしますが、楽譜に書いてある記号・用語は、一般的にはイタリア語で書かれています。 「ドレミ」だけではなく、なぜ音楽用語までイタリア語が普通に使われているのかというと、音楽確立の歴史が関係あります。 教会で歌われていた「教会聖歌」が発展して、宗教曲として歌われるようになったのですが、法王・グレゴリオ1世が各地に散らばっていた歌の編纂(整理してまとめること)をした際、イタリア・ローマがキリスト教カトリックの総本山だということで、音楽用語をイタリア語で書いたのが始まりのようです。 時を経て、17世紀(バッハの時代)から、今でも有名な曲が多く作曲されるようになったのですが、当時の音楽家は宮廷音楽家や教会オルガニストといった、キリスト教に関する職に就いていたため、音楽用語のほとんどにイタリア語を用いた、と考えられています。 また、宮廷音楽界において、イタリア人が強大な力を持っていたことも関係していると思われます。 そのような背景があり、今日でも音楽の世界では、イタリア語が使われているのです。 国によって異なる呼び方 世界的に使われているイタリア語の「ドレミ」ですが、もちろん各国ごとの呼び方もあります。 クラシックの世界で、よく用いられるものをご紹介します。 日本 「ハ長調」や「ト短調」など、「カタカナ+長調・短調」という言葉を聞いたことがありませんか。 この「ハ」や「ト」が、日本語の「ドレミ」です。 日本音名と呼ばれます。 並び方は ハ・ニ・ホ・ヘ・ト・イ・ロ 「あいうえお」ができる前の五十音「いろは」からつけられています。 ドイツ ドイツ音名は、クラシックの世界で最もよく用いられます。 特に、オーケストラや吹奏楽では、「ドレミ」よりも使われています。 Ces(ツェス)・Des(デス)・Es(エス)・Fes(フェス)・Ges(ゲス)・As(アス)・B(ベー) 「E+es」が「Es」、「A+es」が「As」、また「H」は「B」になりますので、気をつけましょう。 アメリカ・イギリス 日本やドイツが、音名に五十音やアルファベットを用いているように、アメリカやイギリスなどの英語圏でもアルファベットを使用します。 一番読みやすいかもしれませんね。 世界のドレミ もちろん、他の国にもその国の「ドレミ」があります。 インドやネパール、バングラデシュなどの、ヒンドゥー語の地域では「サ・レ・ガ・マ・パ・ダ・ニ」と言うそうです。 世界には、6000以上の言語があると言われていますので、私達が知りえない「ドレミ」が、きっとたくさんあるに違いありません。 音名は、なぜ「ハ」や「C」から始まるの? 日本、ドイツ、アメリカ・イギリスの音名を見てきましたが、気になることはありませんか? 日本は五十音の「イロハ」から、ドイツやアメリカはアルファベットの「ABC」から音名がつけられているわけですが、ではなぜ最初の音が「イ」でも「A」でもないのでしょうか。 これには、やはり音楽の歴史が関わってきます。 中世、ヨーロッパの音楽理論家が「この音より下の音は使わない」という最低音を決めました。 その音に「A」という名前をつけたのです。 その頃の音階は「教会旋法」と呼ばれる、今とは少し違うものだったのですが、当初は8つの旋法でした。 それがのちに12に増え、その後現在の長調・短調に変わっていくのですが、その過程で「C」の音から始まる音階が、たまたま理論の中心になった、というのが理由のようです。 綿密に考えられた理論から生まれた偶然が、世界に広まったんですね。 音名と階名の違い これまで、イタリアの「ドレミ」、日本・ドイツ・アメリカ・イギリスそれぞれの音名について書いてきましたが、「ドレミ」と国ごとの呼び方には、決定的な違いがあります。 「日本音名」「ドイツ音名」などと表記してきたように、これらは「音名」と言います。 一方、「ドレミ」は「階名」です。 と言われても「何が違うの?」と思われると思います。 実際私は、中学校の音楽の授業で「これは音名。 これは階名」と言われても、さっぱり意味がわかりませんでした。 簡単に言うと、「音名」は固定です。 「ハの音」と言われたら、ピアノの鍵盤で言うところの、2つ並んだ黒鍵の左下の白鍵です。 「C」も同じ。 「階名」は移動します。 「移動ド」という呼び方もするのですが、調によって「ド」の位置は動きます。 どういうことかと言うと、「ハ長調」は「ハ」の音から始まります。 「ト長調」は「ト」の音から始まります。 この「ハ」や「ト」は主音と呼ばれる音で、理論上「主音=ド」ですので、どちらも「ドレミファソラシ」という音階になるのです。 まだ、ちょっとわかりにくいでしょうか。 では、クラリネットを例にしてみます。 長さの違う楽器だと「ド」と吹くと「イ」「A」の音が鳴ります。 それでも、クラリネット吹きにとっては「ド」なのです。 「ド」が移動する、というのは、そういうことです。 先程、ドイツ音名の項で「オーケストラや吹奏楽では、『ドレミ』よりも使われています」と書いたのは、このような理由があるからです。 せーの!」とやったら…大惨事ですね。 ですので、固定であるドイツ音名を用いて、合奏は行われているのです。 ドレミをきっかけに 誰もの身近にあって、あまり意識したことのない「ドレミ」ですが、歴史を知ったり、各国の呼び方を知ったりすることで、知識が深まり、もっといろいろなことを知りたい、という気持ちも生まれてくるかと思います。 歌ったり、ピアノを弾いたり、クラリネットを吹いたりするだけではなく、直接関係ないように思えるちょっとしたことでも興味を持って、昔の人達に思いを馳せると、見え方・聞こえ方も変わってくるものです。 また、オーケストラや吹奏楽で演奏したり、クラシックを勉強する上で、ドイツ音名は必須とも言えますので、「ドレミ」と同じように使えるまで、繰り返し声に出して、必ず身につけましょう。
次のドレミも、ハニホも、CDEも、すべて音名です。 絶対音のことです。 音楽の専門教育でも、ソルフェージュを考えればわかるように、 中央ハの音は、ハ長調であろうとへ長調であろうと、「ド」と読みます。 しかし、ニ長調の場合に「ニの音を『ド』として読む」という「移動ド」という読み方の慣例があるのも確かです。 絶対音感のない方 私を含め、大多数ですね が、その時に思った音程で自由に歌いだしても、移動ドで考えれば同じ階名で伝えることができます。 「移動ド」という便利な方法は、調性がはっきりしていてかつ転調がないという、歌謡曲のような極めて限定的な範囲では有効です。 しかし、そうでない場合には著しく不便です。 交響曲の分析などではやはり絶対音が便利です。 このあたりの論は、「究極の楽典」青島広志 著 に、こまかく興味深く書いてあります。 面白い本ですよ。 ところで、移動ドといいますが、なんでそこに「ドレミ」の文字を使ったのでしょうね。 ハとかCとかは既に絶対音を示すために使われていたので、別の相対的な音階のルールとしては「ド」を使うのが、混乱しなくて良かったのではないでしょうか。 証拠はないけど。
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