「じゃあ大元の元凶は貴方が作った試薬品だと」 「ええ、貴方の推察した通り。 少しばかりゾム君に協力して貰ったんですよ」 「ほんまココで試すのは止めてくれませんかねぇ… 毎度毎度巻き込まれるワイ達の事も少しは考えて欲しいわ」 「まぁ、たまにその悪行に喜々として参加する何処ぞの総統サマも人の事を言えないんですがねぇ?」と言葉を続けたトントンは隣のグルッペンに冷たい視線を送る。 視線を受けた方は「そんな悪い奴が居るのか」と素知らぬ顔をしてほざいているが、若干声が小さくなっているので罪悪感はあるのかも知れない。 それでも彼の中には悪行自体を止めるという選択肢は無いのだろうが… 近い未来、また同じような珍事件に頭を悩ませる己の姿が思い浮かび、トントンは溜息を吐いた。 「で、詳しい所を聞く前に、まずはこれをどうにかして欲しいんだが」 グダグダ話してる余裕もない。 さっさと事態の終息を、とグルッペンは話を切り出した。 「あ、そうだね。 ひとまず先に止めなきゃね。 えっと、じゃあそうだね… 彼と彼がいいかな?」 そう言って目ぼしい二人を見つけると、手招きをした。 呼ばれたエーミールとショッピは首を傾げながらも手招きしたDr.クラレの元へと歩いてくる。 そしてクラレは二人だけにボソボソと耳打ちをしたかと思うと、後は任せたとばかりに二人を当事者の方へと押し出し自分は後ろに下がった。 一方、碌(ろく)な説明もないまま押し出された二人は、何が何だか分からないといった感じだったが、そこは軍人、さっさと思考を切り替えると互いに向き合った。 ショッピがおずおずと頭を下げる。 それに応えるようにエーミールは手を伸ばすとショッピの頭を優しく撫で始めた。 「ショッピ君はいつも偉いなぁ」 エーミールが幾分大きめの声で褒め言葉を言って視線を当事者の方へと向けると… 「…」 足を止めて目を見開き、ジーっとこちらを見つめるゾムの姿があった。 ゾムの急な変わりようにコネシマ達も手を止めたようで、静まりかえった空気の中、その場の全ての視線がエーミールとショッピ、ゾムの三人にそそがれた。 そんな視線にもゾムは一切動じる事なく、ひたすらエーミールとショッピを見ている。 ゾムの見つめる視線には、まるでショーウィンドウに飾られた玩具を欲しがる子供のような、物干しそうな熱が籠もっているように感じた。 その様子にピンとくる物があったのか、エーミールはニコリと笑みを見せると先程よりも声のトーンを上げて喋りだした。 「ショッピ君はほんま偉いなぁ! 私、知ってますよ。 仕事を任せればきちんとやり遂げるし、真面目だから団体での訓練の後に時間を作っては自主訓練までしてはるって! 伸びしろもあるから、頑張った分技術面も伸びてきてるしね。 ほんま感心するわぁ!」 聞こえが柔らかくなるように堅苦しい敬語を崩し、これでもかって程ショッピの事を褒めちぎると、乗せていた手を大きく動かしグシャグシャと頭を撫でた。 物欲しげな子供に伝わるように大袈裟に、子の意識を惹きつけるようににこやかに。 一連の動きをジーっとゾムは見つめていたかと思うと、そろそろと近付いてきた。 そしてショッピの横に並ぶように立つと、フードを落として頭を垂れ、押し付けるようにエーミールへと差し出した。 その様子は、あたかも僕も撫でてと言うように、彼等の瞳には映った。 そんな可愛らしいゾムの仕草にエーミールは微笑むと、そっと手を伸ばし撫で始めた。 「ゾムさんも、いつもありがとうな。 ゾムさんが他国に赴いては情報を取ってきてくれて、邪魔な上層部があれば暗殺してきてくれるから私達もスムーズに仕事を進められるんや。 どんな高難易度の任務もこなしてくれると安心して任せられるのも、ゾムさんだからこそやで」 ゆったりと優しく撫でてやると、気持ち良さそうでいて、何とも嬉しそうな蕩(とろ)けた顔を見せた。 こんな大きな子供も、弟もいないのに。 何かが目覚めそうになった。 心の柔らかいところがくすぐられる。 「ほんま頼りにしてるで」 何も言わない代わりに、もっと撫でてと言うようにゾムは頭を掌に押し付けると、催促するようにエーミールの服の端をクイクイと引っ張った。 気付いたエーミールに再び撫でられ満足そうに微笑むゾムに、見ている者の母性本能がくすぐられてしまう。 撫でてる側も満更でもない顔をしていて、それがまた可笑しかった。 - 46 - [] [] ページ:.
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