ビートルズが開いたドアを多くの者が通り抜けて行った60年代後半のいわゆるサイケデリックエラの名盤の1枚である。 オリジナル曲は少ないが、シャウトも十分できる歌唱力を持つボーカル、不思議なオルガン音、ひずんだギター、これまでにないリズムを刻むドラム、自己主張するベースと当時のサイケデリックバンドのいいところだけを集めたようなバンド、ヴァニラ・ファッジの最高傑作。 ただ、このアルバム、そして、このバンド自体、単にサイケデリックエラ云々で片付けてしまえないところがあるのだ。 日本盤のアルバムタイトルになっている曲は名曲、そして、なんといっても1曲目のビートルズの「涙の乗車券」のカバーは秀逸。 作者のレノンがこの曲をして史上初めてのへヴィロックといったとおり、きちんと、へヴィな楽曲に仕上げているところはさすがである(ちなみに最終曲も「エリナ・リグビー」で当時いかにビートルズの影響力が強かったが分かる)。 ちなみに、この後、このバンドのカーマイン・アピスとティム・ボガードがジェフ・ベックと組んであのスーパーバンドを組むのは有名な話である。 が、実はこのヴァニラ・ファッジの時代からこの3人は関係があった様でジェフ・ベックがこのバンドのヘルプとしてギターを弾いたこともあると言う。 そんな風に歴史的な意味でも重要な一枚。 紙ジャケ、リマスターでロックが再評価されている中、絶対はずせない、楽しめる1枚であるのも確かである。 モートン + メンバーの音楽的才能が後に60年代ロックを代表するこのアルバムを生みました。 誰もが知る曲の数々に手を加えた結果、原曲が解らないほど前衛的な作品に生まれ変わっているので、最も困ったのは日本で言えば当時の日本グラモフォンであったと推測します。 全米ヒットしたと言っても上位には程遠く、コマーシャル的にみて売れる材料に乏しい上に、前例のないサウンド。 内外ともGSブーム絶頂期に発売された、最初のドーナツ盤を 今でも所有してますが、何ともセンスのない写真が使われていました。 ただこのグループがロックの歴史に刻んだ足跡は、売れた売れないなどという表面的な数字以外で語り継がれるべきです。 難解なサウンドのイメージは強いですが、ボーカル が始まれば全ての曲でオリジナルの面影は感じられます。 最も前衛的にアレンジされたものは「バン・バン」と「シーズ・ノット・ゼア」あたりですが、聴き終えると納得。 「涙の乗車券」や「ユー・キープ・ミー・ハンギング・オン」はいつまでも曲の余韻が残る秀作です。 この時代の代表作として忘れてはならない衝撃のアルバムです。 From there on it is downhill all the way. For what ever reason the band decided to strip out of the songs the very elements that made them great, so as to leave mediocre pap. The reason that the 60s stand out as a golden period of music is the wide variety of bands playing original music across a wide spectrum of genres or if playing covers doing so in a way outstandingly different from the first-time round. certainly vies for a place at the bottom of the heap. This lot were not icons nor influencers of music in the 60s, in fact at the time most people had never heard of them, and no doubt continue to live in blissful ignorance of their existence; and from this example of their work I am not surprised. This is not an example of great 60s music, but that which is most forgettable, and generally has been forgotten. Save your money.
次のヴァニラ・ファッジ(2020年モービル・フィディリティ・リマスター)/ヴァニラ・ファッジ 昨日、亀渕昭信さんと泉麻人さんとをお迎えして、ぼくもメンバーに混ぜていただきつつの鼎談を敢行。 密にならないように気をつけながら、カメさんがラジオDJとしてばりばり活躍なさっていたころ、1960年代末から70年代アタマのお話をあれこれうかがった。 面白かった。 その模様は7月に出る電子版音楽雑誌最新号に掲載予定。 楽しみにしていてください。 で、そこで亀渕さんの興味深いお話を浴びながら、やっぱ1960年代後半というのはなんだか特別な、ロックを含む若者文化がもっとも幻想を伴って語られた時代だったのかもしれないなぁと改めて思い知った。 いろいろなところで何度も何度も書かせてもらってきたことの繰り返しになるけれど、1950年代前半に誕生して以来、卑俗で、猥雑で、やかましいガラクタ音楽と社会からまともに認知されることがなかった若者音楽=ロックンロールも徐々に成長。 象徴的なきっかけとしてはビートルズの『サージェント・ペパーズ…』とか、ドアーズのファースト・アルバムとか? あの辺のアルバムがバカ売れしたあたりを契機に、ブルース、ジャズ、クラシック、インド音楽などの要素を積極的に取り入れ、従来の45回転シングル盤における3分間の壁をぶちやぶるロック作品が次々とシーンを賑わすようになった。 そして、拡散が始まった。 フォーク・ロック、ジャズ・ロック、ブルース・ロック、アシッド・ロック、サイケデリック・ロック、ブラス・ロック、ラテン・ロック、プログレッシヴ・ロック…。 様々な呼び名が生まれた。 もはやロックはただの子供向けガラクタ音楽じゃない、ロックは知的な鑑賞にも十分に耐える芸術だ、と。 そんな主張が若者たちの間で首をもたげはじめた。 こうした状況のもと誕生し、日本の洋楽シーンを席巻した究極のジャンル名。 新ロックと芸術ロック。 すごいよなぁ。 なんだかわからないけど、すごい。 ありがた味があるような。 いかがわしいような。 もはや音楽スタイルを表わす言葉ですらなかった。 今、海外でそう呼ばれている音楽はある。 当然、昨今海外でそう呼ばれている音楽とはまるで違うものを指していた。 なんで代表選手かと言うと、なんたって彼らが1967年にリリースしたデビュー・アルバム『Vanilla Fudge』は、事もあろうに世相を反映して日本では『アート・ロックの旗手』という堂々たる邦題で発売されちゃったのだから。 代表選手です。 間違いない。 確かに。 このアルバム、ぱっと聞くとそういう第一印象。 基本的にオリジナル曲はなし。 大げさなことが大好きなシャドウ・モートンのプロデュースの下、ビートルズの「涙の乗車券(Ticket to Ride)」と「エリナー・リグビー」、スプリームスの「ユー・キープ・ミー・ハンギング・オン」、ソニー&シェールの「バン・バン」、インプレッションズの「ピープル・ゲット・レディ」、ゾンビーズの「シーズ・ノット・ゼア」、イーヴィ・サンズの「テイク・ミー・フォー・ア・リトル・ホワイル」などヒット曲を大胆な発想でリアレンジした長尺作品ばかりだった。 B面は自作スニペットを曲間に挟んだ組曲ふうの構成になっていたし。 重厚なハモンド・オルガン、重々しいドラム、ソウルフルなベース、サイケなギター。 プログレの文脈で語られることも多かった。 ヘヴィー・メタルの先駆として持ち上げられることもあった。 当時中学生だったぼくもすっかりそういうもんだと思って思いきり楽しんでいたのだけれど。 でも、その後いろいろと音楽体験を積むにつれヴァニラ・ファッジは、またひと味違うバンドとしてぼくの耳に飛び込んでくるようになった。 オルガン中心のバンド編成でアトコ/アトランティック所属…とくれば、ね。 ロング・アイランド出身という素性も含めて、これはもう間違いなくラスカルズの後継バンドだったわけで。 そう思って接し直してみると、オルガン&ヴォーカルのマーク・スタインの歌いっぷりも実にソウルフルだし、のちにジェフ・ベックと組んで独自のブルー・アイド・ソウル系ハード・ロック・アンサンブルを構築することになるティム・ボガート&カーマイン・アピスのリズム隊もこの上なくファンキー。 その事実に気づいてから、ぼくはヴァニラ・ファッジのことがますます好きになった。 あと、まだ輸入盤なんて買う手立てすらなかったぼくの中学生時代、当然、愛聴していたのは日本グラモフォンから出ていた国内盤で。 カヴァー曲ばかりだったこのアルバムの裏ジャケットに掲載された北山幹雄さんのライナーノーツで、ぼくはインプレッションズとかパティ・ラベルの名前を知った。 それでオリジナル・ヴァージョンを聞いてみたくて八木誠さんのラジオ番組にリクエストはがき書いて、インプレッションズの「ピープル・ゲット・レディ」かけてもらったんだよなぁ…。 個人的にはこれがリクエスト初採用の瞬間だった。 懐かしい。 いろいろな意味でこのアルバムにはお世話になった。 まあ、ヴァニラ・ファッジの場合、これまでにもライノとかサンデイズドとか、いろいろな再発系レーベルからCD化が実現していたけれど。 いよいよその究極、Mo-Fiからのリリースだ。 しかもモノ・ミックス! もちろんオリジナル・マスター・テープからの高音質リマスター。 うれしい。 泣けてくる。 モノ・ミックスがこのバンドのブルー・アイド・ソウル感をより生々しく甦らせてくれる。 かっこいい。 しびれる。 ぼくが買った日本グラモフォン盤はステレオだったけれど、なんか突然、曲によって一部モノになっちゃったり。 もともとモノラルを想定して製作されていた1枚だったのだろう。 そういう意味でもこのMo-Fiの判断はたぶん正しい。 CDに入るたびにカットされがちだったりするA面1曲目「涙の乗車券」の前のしゃべりもちゃんと入っている。 けど、そこからイントロのオルガンの音が出るまでのブランクが長すぎるような気も…。 モノ盤とステレオ盤とでその長さ違ってたりする? ちょっと謎。 このほどリリースされたハイブリッドSACDヴァージョンが2000枚限定。 これから出るらしいってのが3000セット限定だとか。 ぼくは、まあ、待ちきれず普通にナンバリング入りハブリッドSACDで聞いているのだけれど、高音質アナログも出るんじゃ、ねぇ…。 そのためにも、現在、本格的な営業再開に向けて頑張っているを応援したい。 というわけで、みなさまにご支援をお願いする配信イベントを開催。 残念ながらCRTのような洋楽レコード・コンサートのネット配信は権利の問題上難しいため、完全トーク・ライヴとなります。 が、ここ最近の新譜や再発を紹介したり、みなさんとの近況報告リモート飲み会ってことで楽しく盛り上がりたいと思います。 みなさまの晩酌タイムに、いつものメンバーがお邪魔して音楽談義! すみませんがおつまみとBGMは各自、ご自宅でご用意ください。 4月にゲスト出演予定だった奥田祐士さんがリモートで登場。 ポール・サイモン伝記の話や、あれやこれやのオタク話で盛り上がります。 アーカイブは遅延なくご覧いただけますので予めご了承ください。 《アーカイブについて》 アーカイブ期間は3日間となります。 配信終了後から6月24日(水)まで視聴可能です。 また、入り待ち・出待ちなどの行為も禁止させて頂きます。 ご了承ください。
次のヴァニラ・ファッジ(Vanilla Fudge)の『キープ・ミー・ハンギング・オン(Keep Me Hangin' On)』である。 ヴァニラ・ファッジは1960年代半ばぐらいから活躍したアメリカのロックバンド。 アートロックやサイケデリックロックの先駆けとなった4人組のグループだ。 最近は徹夜で飲むことは「まったく」といっていいくらい、なくなったが明け方近くまで飲んでいると、いつも思い出すのはプロコルハルムの『青い影』とこのヴァニラ・ファッジの『キープ・ミー・ハンギング・オン』なのである。 アルバムのタイトルにもなっている『キープ・ミー・ハンギング・オン』と言う楽曲のオリジナルは、ダイアナ・ロスも在籍していた3人組ガールズグループのシュープリームス。 オリジナルの楽曲はモータウンサウンドを代表するようなリズミカルでポップなものだが、ヴァニラ・ファッジのアレンジはオリジナルのサウンドを思わせるものはまったくなく、ねっとりとしたからみつくようなサウンドで、まったくの別ものになっている。 でも、これがすごくカッコいい。 昔、飲みにいっていたバーのようなスナックのような店には古びたジュークボックスが置いてあって、夜が白々と明けるころになると、コインを入れてこうしたロックをよく聴いていた。 なぜか夜明けのバーにはオルガンの入った、サイケなロックがよく似合う。 眠くて朦朧とした頭と疲れたハートに、憂いを含んだオルガンの音色は心地よくしみるのである。 ところで、このヴァニラ・ファッジには後の「ベック・ボガート・アンド・アピス」でギタリストのジェフ・ベックに引き抜かれたベースのティム・ボガートとドラムのカーマイン・アピスが在籍している。 バンドのヴァニラ・ファッジという名前は、当時、アメリカで販売されていたアイスクリームの商品名だとか…。 このアルバムに収められている曲はすべて誰かが歌った曲のカバーなのだが、原曲のイメージはなく彼らのものになっている。
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