彼らしい超絶早口そして女性陣へ適度に「俺ってデキる男だろ?」オーラを飛ばすその姿はウザいんだが状況把握能力は的確だった。 「正確な分析だな。 なに、ここに集まった面々なら力押しに終始してもそう後れはとるまい。 期待している」 「僕達に期待してくれた依頼主の方のためにも、ここは足踏みしている場合ではありませんね! 一気に攻略するのが最善です!」 ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ p3p007867 と日車・迅 p3p007500 は居並ぶ面々と同様に、仲間達を信頼している。 背中を預け、自らの力で切り開くというこの状況に至上の喜びを覚えているのは確かである。 「とにかく、ここを壊して悪人を捕まえればいいんだよね!」 「HAHAHA、ミー達にかかれば建物ごと壊すことだってお手の物だぜ! それをやっちまうと逃げられたときに困るんだけどな!」 ローレット・イレギュラーズの中でも屈指の突破力を誇るソア p3p007025 と郷田 貴道 p3p000401 が言うと冗談に聞こえないし、制限がなければやりかねないだろう。 それは自信の有無というより、結果への確信というべきか。 「ああ、無理に壊して逃げられることは避けたい。 それに、夏子さんが説明してくれた事態……逃げようとしてる、っていうのが罠の解除に時間を割かせない為のブラフの可能性もあるよね」 ルチアーノ・グレコ p3p004260 は貴道の言葉を肯定しつつ、尤も重い懸念を口にする。 罠に自信があるなら河岸を変える選択肢そのものが怪しい。 逃げる気なら、今以上の隠密性か防御力を備えた場所じゃなければ意味がない。 どちらも、あまり現実的ではないと思えた。 「でも、本当に逃げそうなら早く捕まえないと、また多くの人に迷惑がかかるよね……他の皆を呼ぶ時間もないし、ここは私達で突破しなきゃ……!」 ノースポール p3p004381 は強い正義感そのままに、夏子が告げた情報も仲間達の懸念も疑うことがない。 そして、若い感性ながら『どちらも正なれば頼るべきは自分自身』であることを熟知している少女である。 「ナーちゃんたちがタテモノもワルモノもアイしてあげればいいんだよね?」 ぶんぶんと得物を振り回すナーガ p3p000225 は、細かい理屈や駆け引きというものを知らない。 知っていても気にしない、というべきだろうか。 要は、「強行突破して自分たちのリスクをとるか」「安全策を講じて逃げられ、多くの人に累が及ぶリスクをとるか」。 そんなもの、イレギュラーズが採る選択肢はひとつだろう。 「悪人のアジトを見つけたからには放ってはおけません! 全員捕まえてしまいましょう!」 ノースポールの言葉に、異論をさしはさむ者はいなかった。 GMコメント 過密スケジュールって言葉がこれほど現実味を持つなんて知らなかったよ。 リクエスト有難うございます。 細かいことは脇において、暴れると良いと思います。 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。 非常に多種多様な罠と防御機構を備えており、解除しながら進もうとすれば時間が果てしなくかかる上にほぼ間違いなく察知されます。 アジトを引き払って逃げるという噂も、OP通りブラフの可能性があります。 複雑な設計なので「罠解除」で解除はできません。 ただし罠系非戦で「こう突破すればいい」という閃きを得ることがあります(なくても攻略できます)。 一般的な罠は以下。 ・壁からの矢や槍:多数襲いかかる為回避に減衰が入ります。 高回避の人が避けて穴をぶち壊せば大丈夫です。 ・吊り天井+行き止まり:天井が迫ってきます。 防技高めの人二人で受け止めることで進行を抑えられます。 毎ターン防技判定に邪道5ずつ累加され、判定失敗ごとに徐々に押し負けます。 対処不能になる前に壁に高火力で集中攻撃を叩き込み、破壊しましょう。 ・不動の扉:取手などがない扉です。 「一撃の威力が」強烈な攻撃を叩き込まないと突破できません(直前に恍惚付与などのセットプレーは可能)。 ・スイングハンマー:通路を振り子のように往復するハンマーです。 タイミング(反応)とミート力(命中)を備えた一撃で破壊可能。 十分でないと、攻撃に対して「棘」相当のダメージが返ってきます。 ・転がる鉄球:とにかく叩いて叩いて叩いてぶっ壊せ! (猶予2ターン、全員の全力攻撃で最高火力を狙いましょう) ……etc、多種多様な罠があり、「こうやれば突破できる」という説得力でなんとかなるはずです。 皆イレギュラーズだからね。 そこまで凶悪じゃないけど種類豊富なBSを付与するナイフで襲ってくる部下が20人ほど、指揮役と治療を兼ねる幹部が3名、超範囲の行動統制(ドクトリン)を操るボスの計24名が相手となります。 戦場となるフロアは四方60mはある広大な空間のため、部下達との密着の問題さえクリアできれば移動に融通がききます。 当然、密着されて自然とマーク(ブロック)状態になる可能性は高いです。 中央密集陣形で周辺から処理していくか、飛んだりはねたりして空間を使って戦うかは任意です。 力押しってこうですか? わかりません! 兎に角楽しめればいいなと思います。 しかし手を掴んだりはしない。 紳士なので。 でもそうだよね、もうちょっと前置きとかほしい……ほしくない? 「何? 依頼に対しての心情や想いなどがあるだろうと? ぬるい!!!!! 最後に飲もうと思って残しておいた結果ぬるくなってしまった味噌汁よりもぬるいわァ!」 やめろよ。 前置きとか心意気をきちんとなんかしておかないと壊す為の説得力足りなくなるんだぞ。 「流石幻想指折り巨悪の組織OF組織。 悪そうな奴は大体ここ出身とまで聞く……一筋縄じゃ引き千切れてしまう事だろう」 「ファミリーか、懐かしいね」 気を取り直して(?)夏子がごくりと息を呑むのと、ルチアーノの極めて軽い口調とでは、態度に大きな開きがあった。 「ワルを『わからせる』……うんうん、とってもわかりやすい。 ナーちゃんのアタマでもよくリカイできる、ステキなミッションだね!」 「オーケーオーケー、とにかくパワーで押しまくれば良いんだな? HAHAHA、シンプルで良いじゃないか、たまにはこういうのもアリだな!」 ナーガと貴道はこのシンプルな状況がひどく気に入ったらしい。 そりゃそうだ。 この二人の専門は力による突破、罠を力づくで解決するという今回の趣旨にうってつけの二人なのだ。 なんでこんな相手を敵に回したんだろうなあこの組織。 「どんな罠がきても、私達が協力すればどうにでもなります!」 「かつて我が師は仰いました。 『鍛え抜かれた暴力は全てを解決する』と!」 ノースポールが仲間を強く信頼しているのがよく伝わってくる。 根っからの善人でもなくばこうはいくまい。 ……迅の師の教えが非常に脳筋感溢れるものなのは仕方のないことだが。 「逃がすわけにはいかいないよね!」 「我々イレギュラーズが交渉を行わず暴力のみに訴えかけた結果どうなるか、教えてやろうではないか!! だから突撃だ突撃!」 誰だよこの適材適所甚だしい脳筋卿をこの依頼に呼び出した奴は。 ダンジョンアタックに時間を割けってか。 そういうことか。 ともあれ、一同は今や遅しと待ち構えていた勢いそのまま、ファミリーの味とに突貫したのであった。 ……私が前に出ますっ!」 暗い通路を進む一同は、ノースポールの声に即座に足を止めた。 本人はずんずんと前に出て、足元の敷石を確認する。 「ちょちょちょっとノッポちゃん単独行動はマズいんじゃないの罠とか罠とか罠とかで! 大丈夫? デーt」 「大丈夫ですよっ、あとルーク以外とはお断りします!」 焦りを含んだ夏子の言葉を、しかしノースポールは半ばで遮った。 遮られた方は異国映画さながらに大袈裟に肩をすくめる。 緊張感どこに置いてきたんだよ。 「多分、これがスイッチで……っと」 ノースポールが敷石の一点を踏むと、彼女の位置へと左右から矢やら槍やらが降り注ぐ。 ここで尋常ならざる観察眼をお持ちの方なら気づこうものだが、左右それぞれに空を切った得物を回収する孔があるのだ。 何たる精密精と武器再使用頻度と回転力を上げた巧妙な罠か! だが、ノースポールを見て頂きたい。 横殴りの雨もかくやという勢いで飛び来るそれらを軽快なステップで避け、返す刀と突き出した短剣は刃部が虚無の刃を纏い、伸び上がったそれで発射機構を叩き壊したではないか! 「……せいやーーッ!!」 「ガガピーッ!」 「せいやーーッ!」 「ガピーッ!」 攻撃! 破壊! 攻撃! 破壊! 次第に減りゆく武器など避ける必要すら皆無! ノースポールは、次々と発射機構を破壊していく! 「あれが発射機構ですね! では、一撃を見舞いましょう!」 「殴ってぶっ壊せるなら何でもイケるさ、HAHAHA!! 」 「ポーに手を出すなんて不埒な罠だ。 壊してしまおうか」 迅と貴道は己の拳を頼りに、ルチアーノは己の得物を銃へと変え、狙いすました一撃を発射機構へそれぞれ叩き込む。 ノースポールが己が身を的にかけているうちに、男性陣の目覚ましい活躍が奏功した格好である。 「さあ、次へ行きましょうッ!」 「フフ、私が庇い立てする必要もなかったようだな……頼もしい限りだ!」 罠を抜け、意気揚々と向かおうとする姿を見て、ベルフラウは頼もしさに舌を巻く。 だが、彼女とて得意分野はある。 まだまだ本番はこれからなのである! 「ンッンー……このあからさまな行き止まり感、そして天井! これは……アレだね?!」 「夏子! 男を見せる所だな!? 見せる相手がいるのかは甚だ疑問ではあるが!」 「ベル貴婦人、それは……いま言わなくていいやつじゃない……?」 両腕を回しながら準備体制に入った夏子に、ベルフラウの辛辣な一言が飛ぶ。 あからさまにテンサゲの夏子は多分邪道30はカタい状態だが果たして問題はないのだろうか? 「このクソスr天井は任せてやれーーーっ!」 「私は二人分、夏子と合わせれば200人分だぞ、200人! 10倍だぞ10倍!」 全然問題なかった。 メンタルの問題は脇においといて夏子もベルフラウもめっちゃ有能だった。 どのくらい有能かっていうと何処かの世界のプロ格闘家っぽいことを言い出す程度には。 「ふふっ、この壁抜けそうだね!」 「それじゃあ、ナーちゃんがアイしてあげるねっ!」 「私も、一発ガツンといってみましょう!」 今度は、女性陣が力を振るう番だ。 ナーガの脅威の一撃で生まれた隙に、ソアの強烈な雷撃が叩き込まれる。 更にノースポールが光輝の銃弾を立て続けに打ち込めば、たちどころに崩壊は進む。 最後を飾るのは、やはり貴道の鍛え抜かれた拳だ。 「シンプルに、アメイジングに、インクレディブルパワーでぶち抜いてやるぜ!」 頼もしい声とともに振るわれた一撃は半壊だった壁を完膚なきまでにぶち破り、仲間達が進む隙を生む。 天井を支えていた二人は、そのまま殿として脱出……ここまで、被害をほぼ出さずにクリアしていることになる。 「二人共流石だね。 この調子でどんどん行こう。 僕も出来るだけ手伝……」 「っと、もう次の罠ですか! 『ファミリー』の皆さんはせっかちですね!」 ルチアーノが話そうとしたタイミングで、次の罠、つまりは鉄球が迫ってくる。 迅はいち早く反応すると、速度に乗った拳をまっすぐに叩きつける。 「やっぱりあったー!」 ある種の定番、とばかりに目を見開いたソアは、一気に距離を詰めて渾身の一撃を放つ。 僅かに動きの鈍ったそれに、貴道の拳が更に食らいつく。 「HAHAHA、こういう手合はミーの出番だぜ!」 腰を落とし、極限の集中に身を投じた彼の拳が、不規則な軌道から叩き込まれる。 前進する勢いが削がれ、運動エネルギーが一瞬、消える。 「テッキューをアイしてテツクズにしちゃってもイイんだよね! じゃあ精一杯アイしてあげる!」 そして、ナーガは機械戦斧を振り回し、自らの傷を厭わぬ猛攻で攻め立てる。 見る間にひび割れる鉄球は、押し潰す能力など残っていない。 「ウワー! マジ同じ知的生命体の繰り出す破壊行動かよー!?」 夏子のヤケクソ気味のカウンターがきれいに入り、なんとか鉄球が吹っ飛ぶ! 残骸が足場を悪くするが、一同は気にすること無く乗り越えていく。 「素晴らしい! この調子なら敵陣まですぐだな!」 ベルフラウは非常に嬉しそうに手を叩くと、次へ向けて大手を振って歩きだす。 この潔さは見習いたいものである。 そして、一同の前に現れたのは……3つ4つと道沿いに配置されて往復ビンタよろしくスイングするハンマー! ハンマーが所謂ネイルハンマーではなくセットハンマーの類……当たれば無事では済まない! 「僕やソア殿の出番ですね、おまk」 迅が自信ありげに前に出ようとしたのを、しかし夏子は手を伸ばして止めた。 わずかに振り向いた彼は、ソアへと目配せをする。 よしやるぞ、いいとこまた見せるぞと腕を振り上げた彼の腕が空振る。 「ダメだ……! 俺の力じゃ……クソ! ココまで来てダメなのか!? ダm」 ガツン。 そこで一時的に夏子の記憶は途切れた。 「面白そうっ!」 ソアを突き動かしたのはその振り子構造。 彼女の本能に働きかけるそれは、思わず無計画に飛びつきたくなるほど。 ……だが駄目だ。 確実なタイミングを見極めねば、傷つくのは己だ。 徐々に彼女の瞳が細まり、腰を沈めた獣の姿勢へと変化していく。 「お美事! 次は僕の出番ですね!」 迅は拳を構えると、前に構えた左手から引き絞った右手に至るまでを一本の矢の如くに、水平に構える。 深い吸気が続いたかと思えば、鋭い呼気と共に右拳が迸り、振り子のハンマーを2つ同時に弾き、吹き飛ばした。 それらは、あまりに大きな鉄扉に弾かれ、地面へと転がり落ちた。 「次がラストトラップか? ここはミーが一発キメるぜ!」 貴道はその鉄扉……不動の扉の間合いに踏み込むと、一瞬の集中を交え、死角から振り上げる一撃を叩き込む。 鉄同士が打ち合うような壮絶な音を経て、しばしの静寂……破壊には至らずか。 「チッ、ブレイクにはインスフェションか……! だがノープロブレムだぜ! 行け!」 「いいよもう、何回だって壊してやるんだから!」 貴道は諦めに至ったのではない。 彼の全力の攻撃すら、ソアの一撃に繋ぐセットプレーだったのだ。 ……必然、彼女の爪は貴道が拉げさせた部位を貫き、最後のトラップを破壊するに至ったのである。 「えぇ? 本当にジャンル同じ生き物なのぉ?」 「ゲゲェーッ!? 正面突破でトラップ全部壊されたのか? 馬鹿な!!」 夏子、まさかの敵リーダーと同じような感想を抱いてしまう。 まあ人間種と精霊種だからジャンルは違うぞ。 「もう逃げられないよ、観念なさい!」 「稚拙だね。 統率に自信がなかったから、罠に頼ったんだ?」 ノースポールとルチアーノは口々に『ファミリー』のボスを挑発すると、集まっていたメンバー全員が一同を睨みつけた。 「密すぎる! もっと広い場所に陣取らぬか!」 そしてそのタイミングでベルフラウが威風堂々に謳い上げれば、雑多な面々に抗うことなど敵わない。 そもそも論として、ベルフラウの言葉が全面的に正しいのも事実。 押し寄せる面々の感情を制御しようと声を張る幹部達は、しかしノースポールの呪術とソアの雷に打ち据えられ、動きが乱れる。 「あはっ! テーマパークに来たみたい! テンション上がるゥ!」 「目標は全滅だ、デッドオアアライブ!!」 貴道は正面切って拳を叩き込み、拳圧でもって真正面から制圧にかかる。 曲芸じみて飛び散る部下たちは、尻餅をついてから立ち上がれる胆力のある者は殆どいない。 「まだまだ体力は残っていますから……一気にブチ抜きます!」 迅は近付いてきた相手に片っ端から三連突きを叩き込み、次々と昏倒させていく。 一歩間違えば命も危ういが、不殺の誓いを立てたわけでもなし、そうなったらそうなったまで、と割り切ってぶちのめす。 より謙虚な敵意を振りまくナーガに比べれば、まだかわいいものである。 「ナーちゃんの『アイ』をゾンブンにとどけるね!」 なお、ナーガに言わせれば「アイ」なのでぶっちゃけその先で死のうが生きようが相手の胆力次第、なのだが、容赦する道理もないのでそんなものだ。 「ヘイヘイパスパース! 逃げ道なんて無いから吹っ飛べやルァーっ!」 夏子は槍を振り回し、豪快な爆裂音と共に部下ごと幹部を薙ぎ払った。 威力は脇においても、次々吹っ飛ぶその豪快さは雑なように見えて、一箇所にまとめようとする意志が垣間見える。 「ファミリーは一蓮托生だよね? 今ここで散りなよ」 「冗談ポイだぜ、こんなところでやられてたま」 「覚悟が足りなすぎるわァ! あくのそしきなら暴力で来い暴力で! これでは我らが暴れ損ではないか!」 ルチアーノの挑発にすら反応が薄かったボスは、しかしベルフラウのさらなる挑発(?)の前に冷静さを失う。 多分、複数回挑発されたのと勢いのせい。 連携の結果だと思います。 日の当たる世界で足掻く方が、人生楽しいよ」 戦闘終了後。 不幸にも何名かは(主に数名の破壊力で)命を落としたが、大多数が生存していたのは僥倖というべきだろう。 夏子の親身な説得と、ルチアーノの経験者の言葉に、リーダーは肩を落とした。 「こんなに凄いアジトを作れるんですから、もっと良いことに使いましょうよっ。 アトラクションを作るのとか、どうですかね?」 ノースポールは、首を傾げながらそんな提案をした。 ……流石にこの言葉を想定していた者はいなかったらしく、なるほどと手を打つ一同であった。 ……まあ罪を償った結果生き残ってればアリだな! 成否 成功 MVP.
次の「赤ちゃんに暴力シーンを見せたら、悪い影響を与える?」 「残酷な暴力シーンを子どもに見せるとよくない?」 テレビを見せるときに、殴ったり、蹴ったり、斬ったりなど、攻撃的なシーンがあると、 「子どもに良くない影響を与えないのかな…」とついつい不安になりませんか? 実は、暴力シーンを含むテレビ番組を子どもに見せた場合、どのような影響を与えるかという研究は、海外を含めいくつか調査されています。 結論からお伝えすると、暴力シーンが多い番組を見せることで、 ・子どもが殴る蹴るなどの攻撃的な性格になる ・学校の成績が下がる などのリスクがあることが指摘されています。 そこで、今回は 国内外の研究論文や調査を踏まえて、暴力シーンが子どもに与える影響について、わかりやすく解説していきます。 ある研究では、学齢期 6~15歳 の子どもを対象に調査を実施したところ、 日頃テレビで暴力シーン見ることが少ない子どもは、そうでない子どもに比べてより多くの睡眠をとる傾向があることがわかっています(Gentile et al 2014)。 子どもの発達やパフォーマンスを考えても、睡眠はとても大切です。 そのため、暴力シーンを見せることで、大切な睡眠の質を悪くしないように気をつける必要があります。 また、対人的なつながりを積極的に求め、促進する行動のことを指します。 フィッツパトリック氏らによる調査で、4歳のときにテレビで暴力的なコンテンツを多く視聴した子供は、わずかですが、 感情的な問題を経験するリスクが高まり、2年生では学業成績が低下したという結果が得られました(Fitzpatrick et al 2012)。 そのため、暴力シーンを見せすぎると、 自分の感情をコントロールしたりするのがむずかしくなったり、 小学校に入ってからの学業に良くない影響を与えるリスクがあるので注意しましょう。 コーカー氏らが11歳 5年生 の子供たちを対象に行った研究では、社会経済的地位や精神面における健康などの、さまざまな要因を調整した後でも、 「児童の暴力的なコンテンツの視聴は身体的攻撃に関連していた」ことがわかりました。 (Coker et al 2015)。 さらに、クリスタキス氏とその同僚らによる興味深い研究もあります。 この研究では、ランダムに選ばれた複数の家庭に、日頃見ている暴力的行為を含むコンテンツの代わりにセサミストリートなど非暴力的な教育用テレビ番組を視聴するように指示しました。 その結果、 子供は半年後には問題行動が少なくなり、社会的能力が上がったことがわかりました。 (Christakis et al 2013)。 テレビや動画の内容を親がチェックすることが大事! 米国小児科学会は、 現実に起きている暴力行為の10%から20%はメディアによって暴力シーンを見聞きしたためだと報告しています。 このように、子どもは、 テレビやその他のメディアで見た内容に影響を受けやすいです。 そのため、テレビを見せるときは、その番組内容が子どもに悪影響を与える心配がないかをしっかりと確認することが大切です。 テレビを見させるときの6つのポイント 先程解説したテレビやその他メディアによる悪影響を防ぐために、テレビを子どもに見せるときは、次の6つのポイントを意識するようにしましょう。 アニメや映画では、作品を面白くするために、暴力シーンが多く含まれます。 子どもに 身近なヒーローものでも、暴力シーンは含まれています。 ただ、特に男の子は、ヒーローごっこや戦いごっこが好きです。 そのため、そういった暴力シーンを含む番組や動画を全部禁止する必要はありません。 ただ、見せ過ぎもよくありません。 そのため、今回解説した点を踏まえて、 テレビや動画を見えるときは、その内容を見せてもいいのか、親御さんがあらかじめチェックしてあげるようにしましょう! Gentile DA, Reimer RA, Nathanson AI, Walsh DA, Eisenmann JC. 2014. JAMA Pediatr. 168 5 :479-84. Garrison MM and Christakis DA. 2012. The impact of a healthy media use intervention on sleep in preschool children. Pediatrics. 130 3 :492-9. Fitzpatrick C, Barnett T, and Pagani LS. 2012. Early exposure to media violence and later child adjustment. J Dev Behav Pediatr. 2012 May;33 4 :291-7. Fitzpatrick C, Barnett T, and Pagani LS. 2012. Early exposure to media violence and later child adjustment. J Dev Behav Pediatr. 2012 May;33 4 :291-7. Coker TR, Elliott MN, Schwebel DC, Windle M, Toomey SL, Tortolero SR, Hertz MF, Peskin MF, Schuster MA. 2015. Media violence exposure and physical aggression in fifth-grade children. Acad Pediatr. 15 1 :82-8. Christakis DA, Garrison MM, Herrenkohl T, Haggerty K, Rivara FP, Zhou C, Liekweg K. 2013. Modifying media content for preschool children: a randomized controlled trial. Pediatrics 131 3 :431-8.
次の監督のことを怖れていないチームは強い 「金足農業」を取材して感じた衝撃 から続く 2018年夏の甲子園を沸かせ、一大フィーバーを巻き起こした「金足農業」ナインの素顔に追った『 金足農業、燃ゆ 』を刊行したノンフィクション・ライターの中村計。 二人が、金足農業について、高校野球指導について語る。 中村 読みながら考えていたんですけど、あとがきで書かれている、監督が選手に暴力を振るった不祥事に対して、保護者の方が言った〈「熱心に指導してくれる、いい監督さんやったんです。 暴力は悪いことなんでしょうけど、やっぱりダメなんでしょうか」〉という発言が、まさに野球界から暴力がなくならない理由なのかなと。 ある意味、「悪い指導者」ではなく、「いい指導者」だから、暴力を振るってしまう、というか。 暴力はもちろん絶対ダメなんですけど、案外、そういう監督ほど愛情が深くて、熱心だったりする。 そこが厄介なんですよ。 周囲も「いい監督だから」ってことで逆に庇ったりするので、なかなか露見しない。 高校野球における体罰というと、勝利至上主義に毒された監督が、怒りに任せて選手を殴るというイメージを持たれがちですけど、今の時代、そんなことをしたら一発退場ですから。 そんな監督は、もうほとんどいないと思います。 元永 殴って勝てるようになるわけでもない。 甲子園は夢のまた夢という高校も多い中で、なんで暴力が入る余地があるのって。 本当に理解できない。 中村 高校野球を取材していると、おそらく一生、甲子園に出られないだろうに、なんでこんなに一生懸命になれるんだろうと思える指導者がたくさんいて驚かされます。 世界中に、こんなに熱心な指導者がたくさん集まってるスポーツってあるのかな、と。 その一生懸命さが、ときに悪い方向へいってしまうんじゃないですかね。 金足農業の野球は「古い」「厳しい」 元永 暴力を振るったら問題になるってことは、わかっているはずなのに、なぜするのって思いますよね。 金足農業を追う中で、指導についてはどう思ったんですか。 中村 おそらく世間的には、金足農業の野球は、「古い」とか、「厳しい」とか、むしろ、いいイメージを持たれない部類のスタイルだと思うんです。 去年、大船渡の佐々木朗希フィーバーのときも、彼が岩手大会の決勝で登板を回避したことによって、大船渡は正しい、むしろ、去年の金足農業の方がやり過ぎだって空気になりましたよね。 吉田君は地方大会から甲子園準決勝まで全試合、先発完投しましたから。 でも、僕はいい悪いは別として、「高校野球はパワハラだ」みたいな言い方をする人たちが、正義はこっちにあると信じて疑ってない感じが気持ち悪くて。 自分の中では、改めて金足農業の存在が輝きだした感じがありました。 この方法で勝つチームもあるんだ、と。 強いだけじゃなく、彼らは本当に野球を楽しそうにやっていましたから。 僕はみんながみんなこういう指導をするべきと足並みをそろえる必要はまったくないと思っていて。 むしろ、いろんな野球観があるから楽しいし、ここまで盛んになったのだと思います。 暴力は絶対NGですけどね。 元永 吉田君が5試合完投して、決勝は打たれて代わりましたけど、地方大会からほぼ最後まで一人で投げ切った。 本人としては、完全燃焼なんだろうけど、それを「けしからん」と思う人はいますよね。 中村 基本的に高校で野球をやるには、高野連に所属するしかない。 なので、大学のサークルのようなチームから、セミプロのようなチームまでが、一緒に戦う。 いわば、無差別級なんですよ。 なので、大学野球リーグとか社会人野球リーグのように似たレベルのチームが集まっているところと違って、こういうルールをつくりましょうとしたとき、みんながみんな「いいね」とはならない。 でも、そこが魅力的なんですよ。 「高校野球はこうあるべき」という枠をはめることは無駄だし、つまらないと思いますね。 元永 球数制限自体については、どう思いますか? 中村 そこも公立のように選手層のうすいチームは当然、反対しますよね。 ただ、僕は不思議に思うのは、球数制限を設けることの前提として、「勝利」と「投手の体を守る」ことは相反することだという認識がありますよね。 でも、そこは両立できると思っているというか、両立できるチームが勝てるチームだと思っているんですよね。 どんなチームでも一人に頼っていたら、普通、どこかで負けますよね。 金足農業も、準優勝したことは快挙ですが、最後は負けましたから。 勝とうと思ったら、自然と複数投手制になる。 なので、理想は、そこも監督に任せる方がいいとは思っていたんですけど。 でも、やっぱり難しいのかな。 ルールは指導者が考えればいい 元永 僕は極論を言えば、ルールはなくてよいと思っています。 それは指導者が考えればいいし、そのために指導者がいるわけですから。 中村さんと同じで、一人で投げて勝ち続けるピッチャーなんて、日本中にほとんどいないですよ。 どうしても連投していくと、どこかで負けていくから。 それに、ピッチャーがどんなコンディションなのかは、チームの外にいる人間にはわからない。 監督、指導者が見るしかないですよね。 中村 金足農業の指導者や選手たちにも当然、吉田君が一人で投げ続けたことについては聞いたんです。 でも、議論にならなかったですね。 「はっ?」て感じで。 「そのために練習してるんじゃないですか」と。 僕は、吉田君のお父さんは、さすがに心配していると思っていたのですが、じつに冷静な口調で「肩を壊すのは球数ではなく、フォームのよしあしにあると思っているので」と語っていて。 吉田君のお父さんも金足農業OBで、元ピッチャーなんですけど、吉田君の連投に関して、誰よりも落ち着いた様子で話していましたね。 ああ、じゃあ、もう外野は何もいえないと思いました。 元永 2018年の夏、済美の山口直哉君も地方大会からずっと一人で投げていて。 そうしたら、甲子園の2回戦で星稜に勝った後のインタビューで、監督の中矢太さんはずっとそのことを聞かれていたんですよ。 「180球以上投げていましたけど」って。 でも、中矢監督はそのとき、「なんでそのことばかり聞かれるんだろう」って思っていたみたいです。 白熱した試合で、延長してタイブレークになりという状況で、本人としては無我夢中ですよね。 「投げさせすぎるとまわりから何を言われるかわからない」 中村 特に去年の夏の甲子園は大船渡の佐々木君の「事件」があった後なので、連投させようものなら、記者につるし上げられかねないみたいな雰囲気がありました。 そういう意味では、球数制限を設けた方がいいと思うんです。 監督を守る、という意味で。 確かに、投げさせ過ぎだろと思うことはありますけど、それで監督を責めるのは違うと思うんですよ。 「なんでですか?」って聞いても「勝つためです」って言うにきまってますし。 その態度は監督として当然でしょう。 勝つために試合をすることは参加する全チームのマナーだと思いますから。 疑問があるのなら、ルールをつくっている大会サイドに言うべきですよね。 元永 最近は、「投げさせすぎるとまわりから何を言われるかわからない」という意識が、監督たちにはあるように感じますね。 中村 去年の夏、ある監督が、エースを温存した試合で、「大船渡のことは関係ないですよ。 みんな、そう言わせたいんでしょうけど」って言ってましたね。 でも、少なからず、影響はあったと思います。 いい指導者について、あえて語るなら 中村 暴力を肯定する監督は、よく「選手になめられるから」と言いますけど、あれも不思議なんですよね。 興南の我喜屋優監督は、暴力は絶対反対の立場なんですけど、それでもきちんとチームを統率して、2010年に春夏連覇を達成した。 その我喜屋さんは「暴力なしで選手をコントロールするのなんて、簡単だよ」と話していました。 「(メンバーから)外せばいいんだから」と。 先日亡くなられた野村克也監督もまったく同じことを言ってましたね。 「なんで殴る必要あんの? 気に食わないんだったら外せばいいじゃない」と。 選手が9人しかいないチームだとできないかもしれませんが。 元永 外されることが選手にとっては、一番つらいですもんね。 中村 元永さんにとって、いい指導者ってどういう人なんですか。 元永 シンプルに、選手を上手くする人。 もちろん、上手くなるためには試合に出ないといけないし、そのためにはある程度勝たなきゃいけないでしょうけど、それがかみ合うことで、チーム全体を上手くしてあげられる指導者ですよね。 たとえば、いい選手が山ほど来ているのに、全然上手くならずに卒業していくとなると、いい監督とは言えないなと思う。 それは単純な勝ち負けとは別で。 毎年たった1校しか優勝はないわけで、当然いつも勝てるわけじゃないんだけど、それでも指導者としては、選手が野球を上手くなるようにしていきましょうよって。 中村 僕もそれに近いのですが、高校卒業後、さらに上のレベルで野球を続ける選手が多いほどいい指導者なんじゃないかなと思います。 野球の楽しさを教えてあげた、ということですから。 金足農業の指導法は、傍から見たら、必ずしも褒められるものばかりではないと思うんです。 でも、準優勝した年のレギュラー9人は全員、上の世界で野球を続けているんです。 金足農業は例年、大学などで野球を続ける選手は、いても1人か2人という中で。 これは金足農業の指導者の最大の「勝利」だと思います。 野球が好きなままでいさせるのが、監督の大事な仕事 元永 実力の問題でレギュラーになれないのは仕方ないけど、人間関係や監督の指導に合う合わないとかで、野球が嫌いになる子は相当数います。 そういうことを避けて、野球がそのまま好きでいてくれればと思いますよね。 そうじゃないケースも多いじゃないですか。 もう野球は見ませんって人はいるし、野球部時代を思い出したくないから、もう野球とは関わりたくないって人もいるので。 野球が好きなままでいさせるのが、監督の大事な仕事。 中村 高校野球の監督は、がんばり過ぎているのだと思います。 監督の最大の仕事は、野球の楽しさを教えることでいいと思うんです。 あえて、人間教育を掲げなくても、スポーツの中にその要素は含まれていますから。 誤解を恐れずにいえば、もっと、無責任でいいと思います。 自分でこの選手はどうすることもできないと思ったら、あきらめて、他の先生や親に頼ればいい。 「私にはもう無理です」と。 自分の能力を超えてがんばっちゃうから、思わず、手を上げてしまう気がしてならないんですよね。 一生懸命になり過ぎない。 そうすれば、必然的に暴力はなくなる気がしますね。 写真・鈴木七絵/文藝春秋 (中村 計,元永 知宏).
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