東京慈恵会医科大森田療法センター臨床心理士長を務める法政大大学院人間社会研究科の久保田幹子教授に聞いた。 「典型的な状態として、不安を解消しようとして頻繁に情報をチェックするというものがあります。 10分おきにニュースをチェックして、それを周りに伝える人もいるようです。 しかし、そうした行為によって、逆に不安がかき立てられたりもします。 フェイクニュースやデマに踊らされるなど、不安をなくそうとする行動が、より不安を強め、冷静な対応ができなくなるのは、不安症の患者さんと似たような状態を示していると言えます」 不安症に分類される社交不安症やパニック症、また強迫症などが訴える不安は、いずれも誰もが持っている不安と悩みと共通する。 「例えば、仕事で失敗して上司に叱られた後、書類にミスがないか気になることは自然なことです。 それを100%払しょくしようとすることから、その不安にとらわれ、生活の中心が不安の払しょくにすり替わってしまうことで神経症へと発展してしまうのです」と、久保田教授は説明する。 SNSの普及がもたらした「漠然とした不安感」 さらに、近年の傾向として、何となく日常的に不安を覚えるという人が増えている。 「SNSはメリットが大きいのですが、一方である種の万能感のようなものを育ててしまう気がしています」(久保田教授) 買い物も、ネット通販で欲しいものがすぐ手に入る、知らない人と簡単につながれる、分からないこともネットで調べればすぐ分かるというように、情報通信技術の発達が私たちの生活様式を便利なものに大きく変えている。 そのため、少しでもうまくいかないといら立ちや不安感を抱いたり、悩みはなくても「自分だけができていないのでは」という焦りや劣等感を感じてしまったりする。 久保田教授は、「日本人は皆と一緒だと安心というところがあり、周囲の反応や評価、他者の行動といったことに引きずられやすく、曖昧な不安感を抱く傾向が強くなっているのかもしれません」と分析する。 「あるがまま」の自分を受け入れ不安と共存 では、そうした不安にどう向き合えばいいのだろうか。 100年ほど前、精神科医の森田正馬(1874~1938年)が生み出した理論に基づいて実践されているのが森田療法だ。 その人物像を、療法が生み出されたきっかけとともに紹介しよう。 森田は「あるがまま」を大切にした。 それは、気分や感情にとらわれず、今、自分がやるべき事を実行していく、目的本位の姿勢を示すことだという。 森田は高知県出身。 東京帝国大(現在の東大)で、我が国の近代精神病学の創立者と言われる呉秀三の門下生として学んだ。 呉は文豪、夏目漱石を診察していたほか、俳人の正岡子規とも交流があった。 そして、漱石の旧制第五高等学校(現在の熊本大)時代の教え子に、後に漱石の門下生となる物理学者、随筆家、俳人として知られる寺田寅彦がいる。 実は、同時期に森田も五高で学んでおり、寺田と親交があったことが知られている。 つまり、森田は共通の知人を通じて漱石や子規とつながっていたのだ。 そんな森田だが、学生時代は定期試験が近づくと不安感と動悸(どうき)に突然襲われていた。 病院で治療を受けるものの、症状が改善することはなかった。 自らの体験を振り返るうち、試験に向けて猛勉強している時は症状が出なかったことに気付く。 そこから、不安などを無理に抑え込まず、「あるがまま」の自分を受け入れ、目の前のことに集中することが症状の改善につながるのではないか、という考えに行き着く。 そして生まれたのが森田療法だ。 その後、東京慈恵会医院医学専門学校(現在の東京慈恵会医科大)精神科の初代教授に就任し、この療法が注目されていく。 前出の久保田教授が説明する。 「森田療法では『不安』」と『欲求』は表裏一体だという考え方をします。 人は不安や不快感など、自分のなかの受け入れがたい感情を何とか解決したいと思うわけですが、解消できるものとできないものがある。 不安をまず取り除きたいと考えれば、常に不安に注意が向き、逆にそれにとらわれてしまいます。 したがって、不安な気持ちを持ちながら、その背後にある本来の欲求に従って、できることから行動に踏み出してみる。 そうしたことを通して、症状の呪縛からの解放、そして自分らしい生き方や『あるがまま』の姿勢を身につけていくことを目指していくのです」 例えば、他人に嫌われるのではないかという心配は、人に好かれたいという気持ちの裏返しといえる。 神経症になる人は、「人に好かれるためには、嫌われるかもしれないという不安をすべて解決してから他人と付き合えば完璧な人付き合いができる」と考えてしまうので、まずこの不安を取り除こうとする。 その結果、他人との接触を回避するようになってしまう。 しかし、「好かれたい」という本来の欲求がある限り、不安をなくすことはできない。 つまり、不安を排除しようとして、逆に不安にとらわれてしまうことで日常生活がうまくいかなくなってしまうのだ。 久保田幹子「なぜ私たちは生きづらいのか」(2019年)講演資料より 「森田先生が一番強調しているのは『事実唯真(ただしん)』、つまり『事実本位』があります。 例えば、病気を恐れる気持ち自体は自然なことであり、怖いからこそ、そこで自分は何ができるかを探っていくのが事実に即した態度だというわけです」(久保田教授) では、欧米の認知行動療法とはどう違うのだろうか。 久保田教授は「欧米の精神療法は、不安を病理と捉え、それを『乗り越える』『取り除く』ことを目標にしますが、森田療法は不安と共存するという考え方をします。 そして、このような森田先生の考え方に、認知行動療法もどんどん近づいてきているように感じます。 アクセプタンス=自分を受け入れるとか、マインドフルネス=ありのままの自分を観察しよう、受け止めようというスタンスに変わってきています」と、解説する。 医療と自助グループが両輪 森田療法は、医療と自助グループの二つの柱からなる。 専門家の育成としては、20年以上前から療法の理論と実践についてのセミナーが全国で開催されており、医療従事者に限らず、心理専門職など多様な分野の人々が療法を習得し、医療のみならず、教育、産業などフィールドが拡大している。 医療では、東京慈恵医科大第三病院(東京都狛江市)に専門の入院施設があるほか、浜松医科大医学部付属病院(静岡県浜松市)やメンタルホスピタルかまくら山(神奈川県鎌倉市)、三島森田病院(同県三島市)などが入院患者を受け入れている。 また、慶応大病院(東京都新宿区)や各地のクリニックで治療が行われ、神経科だけでなく、皮膚科や耳鼻科、歯科、婦人科、整形外科など他の診療科の医師たちも森田療法を学んでいる。 例えば、皮膚科ではアトピー性皮膚炎、耳鼻科であれば耳鳴りやめまいなど、身体的な症状と精神的なストレスとの関連が考えられるケースの治療にも、その考え方が取り入れられている。 さらに、教育現場では、学生相談やスクールカウンセリングにも採用され、企業でもうつ病などで休職した人の復職支援に生かされている。 また、森田療法の大きな特徴になっているのが「自助グループ」の存在だ。 「森田先生自身が自ら神経症に悩み療法を生み出したということもあり、仲間同士で体験を共有して支え合い、より質の高い生活を送ろうとするためにあるのが自助グループの『生活の発見会』です。 森田療法の考え方を生かすためにも非常に重要で、医療と両輪になるものです」と話すのは、NPO法人「生活の発見会」の岡本清秋理事長だ。 現在、北海道から沖縄まで全国に約130の集談会と呼ばれる懇談会組織があり、約2000人の会員がいる。 「生活の発見会」は今年、創立50周年を迎えた。 神経症からの回復を目指している人だけでなく、回復してからも人生の「座右の銘」として理論を学び続ける会員がいるという。 同じ悩みを抱える者同士だからこそ、心を開きやすい側面もあると思います」と自助グループの意義を話す。 不安と付き合いながら、自分らしい生き方を手に入れる。 森田療法が生き方の指針ともいわれる理由がここにある。 不安と付き合いながら、よりよく生きる 今、世界は新型コロナウイルスの感染拡大に揺れている。 その中で、森田療法の考え方はどう生かせるのだろうか。 久保田教授は「このような状況下で人々が不安になるのは自然なことです。 その中で健康な生活を送るためには、まず何ができるかを考えることが大切です。 例えば、食生活を改善するとか、感染のリスクが少ない状況下で適度な運動を行うといったように、不安に対しても『あるがまま』に、そして、その裏側にある本来の欲求も『あるがまま』に受け止めながら、実際にできることから行動につなげていくことによって、悩みのなかに没入していた状態から脱することができます」と話す。 社会が混迷の度合いを深める中、相田みつをの言葉が国内外の人々の共感を集めている(提供:相田みつを美術館) 森田が唱えたのは「事実唯心」。 つまり「あるがまま」だ。 「森田先生は『不安をなくすことはできない、でも同時に欲求をあきらめることもできない』とも言っています。 だとしたら、自分は何をしていくかを自問自答していくことが、より良い人生につながるのではないでしょうか」(久保田教授) 近年、世界的に大ヒットしたアニメ「アナと雪の女王」の主題歌のタイトルは「ありのままで」だった。 そして、書家、詩人として知られる相田みつをの作品が国内だけでなく、翻訳され、海外の人々にもファンを増やしているという。 作品に通底しているのは「そのままでいい」というメッセージだった。 人生を登山に例えれば、「このルートで登らなければならない」と固執するのではなく、「回り道のようなほかの道もあるのではないか」と考えてみることも必要だろう。 森田療法には、そうした柔軟さがあり、複雑化する社会に戸惑う人々の内なる心に、希望の光を照らしているのかもしれない。
次の〈パレスホテル東京〉ではオンラインショップ限定で、ホテルメイドのブレッドを詰め合わせた「BAKERY BOX (ベーカリー ボックス)」2種、7種、10種のセットを販売。 ショップや朝食ブッフェで提供しているパンを焼きたての状態で冷凍し、おうちで解凍するだけでホテルの味を楽しめます。 今回は7種セットの「BAKERY BOX B」をお取り寄せしました。 〈パレスホテル東京〉焼きたてパンを冷凍した「BAKERY BOX B(7種セット)」。 〈パレスホテル東京〉こだわりの厳選ブレッドを焼きたての状態で冷凍し、美味しさをそのままぎゅっと閉じ込めた「BAKERY BOX B(7種セット)」。 噛む度に小麦とライ麦の旨みが広がる「パン ド カンパーニュ」や、フルーツの果肉が入ったフィリングをたっぷり乗せた「デニッシュ」など、ハード系ブレッドからスイーツ系ブレッドまで7種類の焼き立てパンが揃います。 BAKERY BOX B(7種セット)4,000円・送料込み。 1つずつ梱包されて冷凍便で到着。 「レーズンブレッド」や「パン ド カンパーニュ」など、大きいパンもすでにカットされているので、食べる前に解凍するだけでOK。 オーブンまたはトースターで直前に焼き直すか、30〜120分前に自然解凍するだけで食べられます。 ふんわり感を楽しみたい場合は自然解凍、サクッとした食感を楽しみたい場合はトースターやオーブンで焼くのがおすすめです。 ハード系からスイーツ系まで、7種もの贅沢なパン。 「パン ド カンパーニュ」は、北海道石狩郡新篠津村(しんしのつむら)の希少小麦「はるきらり」と北海道産ライ麦全粒粉を使用し、自家製天然酵母のみで焼き上げた一品。 麦の香ばしさに加え、酸味があるのでクラムチャウダーやスープなどに合わせるのがおすすめです。 「パン ド ミ ロワイヤル」は、ジャージー牛乳から熟成させたミルク発酵生地を使用したハイリッチな食パン。 室温解凍で食べるとふんわり、オーブンで焼いてから食べると表面はサクッと、中はもちっとした食感を楽しめます。 そのままでも良いし、ジャムなどを合わせてもおいしい。 焼いている最中に、ミルクの香りが部屋中に漂い、幸せな気分に浸れます。 牛乳にたっぷりレーズンを練り込んだ「レーズンブレッド」。 レーズンの甘味がじんわりと生地にも広がっていて、レーズンパン好きにはたまらない濃厚な一品です。 ブランデーやウィスキーなどに合わせてデザート感覚で楽しむのもおすすめ。 北海道石狩郡新篠津村の希少小麦「はるきらり」を100%使用した「バゲット」。 長時間熟成し、北海道産小麦の豊かな香りに仕上げました。 噛めば噛むほど小麦の甘みが口の中に広がります。 外はカリッと、中はふわっとしていて、食事に合わせやすい一品です。 しっとりと甘みのある「バターロール」。 バターの風味と卵のコクを感じるソフトパン。 自然解凍の時間が30分と短いのもポイントです。 フランス・イズニー地方のA. Pバターを使用した「クロワッサン」。 一口食べるとバターの甘みが口の中に広がり、とってもジューシー。 室温解凍でもサクッとしていて、冷凍パンなのが信じられないほど。 柔らかい食感が好きな方は室温解凍、よりサクサク感を楽しみたい方はトースターまたはオーブンで焼き直してください。 季節に合わせたフルーツの果肉をたっぷりのせた「デニッシュ」。 今回入っていたのはブルーベリー!サクサクした生地にジューシーなブルーベリーのバランスが抜群。 甘すぎず爽やかな果肉で、食べ終わっちゃうのがもったいほど……。 10種セットの「BAKERY BOX A(6,000円)」はデニッシュが2つ入っているので、スイーツ系パンがお好きな方は10種セットがおすすめです。 「BAKERY BOX 」なら贅沢なおうちブッフェも楽しめる。 「BAKERY BOX 」に合わせて、サラダやスープ、コーヒーを用意して、モーニングを充実させてみました。 7種類もあるので、どのパンを食べようかな〜と悩めるのも贅沢な時間。 おうちにいながら〈パレスホテル東京〉の味を楽しめ、宿泊した翌日のモーニングブッフェを楽しんでいるような気持ちに浸れますよ。 2種、7種、10種と少しずつラインナップの違う「BAKERY BOX 」。 ご自宅の冷凍庫事情と相談し、自分へのご褒美としてストックしてみてはいかがでしょうか。 〈パレスホテル東京〉「BAKERY BOX ベーカリー ボックス 」2種、7種、10種のセットを販売中。 03-3211-5315(ペストリーショップ 「スイーツ&デリ」)オンラインショップ 外部サイト.
次の用語 説明 ともに駆歩のことを指しますが、緩い駆歩をキャンター(canter)といい、襲歩または競走駆歩と呼ばれる速い駆歩をギャロップ(gallop)と呼んでいます。 イギリスなどではレースで楽に勝っ… 父母を一代目とした場合、三代目と四代目に同じ祖先(種牡馬)があると、その血量を18. 生産理論のひとつで、「フィッツラックの18. 帯道(径)とも言われます。 馬の社会は人間の社会と違って同じ父を持っても兄弟とは言いません。 種牡馬は、1年間に何10頭も種付けをすることもあり、これをすべて兄弟馬というと大変な数になってしまうからで、同じ母馬から生… レース中に故障や落馬など何らかのアクシデントを起こし、途中でレースを棄権すること。 走る時にどちらの脚を先に出すかで決まる脚。 右脚が先なら右手前、左足が先なら左手前と呼びます。 人間で言う、利き手のようなものです。 馬の競走能力を一時的に高め、または減ずる薬品(薬剤)が競馬施行規程第132条に規定されていて、これを投与されその影響があるとみなされる馬は、出馬投票が出来ません。 また、レース後1~3着ま… 騎手が鞍の上で、両膝で締めつけるようにして乗る時の膝を指します。 外国人騎手などで馬上で大きなアクションを見せる騎手がいますが、騎坐がしっかりしているからで、バランスを保つために重要です。 パドックや返し馬の時などに馬体に異常が発見され、出走を取り消すこと。 疾病や事故などによって出走を取り消す場合を競走除外といい、取り消した馬を競走除外馬と言います。 サラブレッドの場合、通常5代前までに同じ名前の馬が2度以上表れているものを近親交配と言い、近親繁殖とも。 異系交配に比べ優秀馬の出る確率が高いとされています。
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