概要 プリン体とは、細胞の成分である核酸を構成する物質の一種です。 核酸という言葉に馴染みはなくても、DNA(デオキシリボ核酸)という言葉には馴染みのある人は多いのではないでしょうか。 細胞はどんな動植物も持っていますので、基本的には動植物から作られるどんな食べ物にもプリン体は含まれています。 食べ物の中の細胞の数が多ければ多いほど、含まれるプリン体の数も多くなります。 尿酸はこのプリン体を分解する際、あるいは体内の細胞を作り変える際の老廃物として作られ、尿として体外に排出されます。 しかし、何らかの原因によってこの尿酸が過剰に生産されたり、体外に排出する力が弱くなったりすると、血液中の尿酸の濃度が高まり、高尿酸血症と呼ばれる病気を引き起こします。 高尿酸血症は痛風に代表される様々な病気を二次的に引き起こします。 ちなみに、高尿酸血症は圧倒的に男性に多い病気です。 これは女性ホルモンに尿酸を排出する作用があるためです。 症状 痛風の症状は、大人でも耐えられない、立っていられないほどの激しい痛みを特徴とします。 痛風という少し変わった病気の名前は、「風が吹いただけでも痛い」といわれたことに由来しているといわれます。 これは俗説であり、中国の医学で「全身の疾患」を意味する「風」という言葉から来ているというのが通説ですが、いずれにせよそのような俗説が生まれるほど激しい痛みであることは確かです。 痛風による痛み(痛風発作といいます)が起きると、同時に患部には腫れや赤みが起こり、熱を持ちます。 痛みは激烈ですが、1週間から2週間がたつとおさまり、痛みは完全に引いてしまいます。 しかし治ったと思って放置すると痛みは再発し、人によって期間はまちまちですが痛風発作が繰返されるようになります。 発作が慢性化してしまうとやがて関節そのものが変形して曲げにくくなってしまったり、尿酸値がさらに高くなることによって腎臓にも障害が起きたりすることがあります。 予防 ・食生活が大きく関わっている痛風 痛風はもともと西欧に特有の病気であり、日本には存在しないと考えられていました。 明治時代に来日し、日本の近代西洋医学の発展に尽くしたエルンスト・フォン・ベルツ(1849〜1913)は、「日本に痛風はない」と記録しています。 日本人はもともと粗食であり、プリン体が多く含まれている食品を口にする機会は庶民にはほとんどなかったといっても過言ではありません。 こうした食事情に変化が訪れたのは戦後の高度経済成長のころです。 経済の発展とともに食生活が急速に欧米化し、高脂肪・高たんぱく・高プリン体の食品を庶民も日常的に口にするようになったのです。 痛風は「ぜいたく病」とも呼ばれ、豪奢な食生活をしている人がかかる病気であるという認識がいまだに残っています。 しかし、現代においてはごく普通の人であってもかかる可能性のある病気だということをしっかり覚えておく必要があります。 ・プリン体の多い食品を避けよう 高尿酸血症および痛風を予防するためにはプリン体が多く含まれている食品をなるべく避ける必要があります。 プリン体の多く含まれている食品には、以下のようなものがあります。 干ししいたけ• 動物の内臓• 魚の干物(特に煮干し)• あんこうの肝 プリン体の含有量が多い食品の中には、一般に栄養豊富で健康に良いとされるものも含まれている点に注意する必要があります。 プリン体はどんな食品にも含まれている関係上、プリン体のみを減らすことは難しいです。 このため、高プリン体の食品を無理に避けるよりも食事の総量を減らすことが効果的です。 ・アルコールと痛風の関係 アルコールにもプリン体は含まれています。 馴染み深いものだと、特にビールには多く含まれています。 このため、近年では健康志向の高まりとともにプリン体をより低減したビールも発売されています。 しかし、アルコールにはそれ自体に尿酸値を高める作用があり、さらに利尿作用によって尿酸を濃縮する働きもあります。 加えて酒のつまみにはプリン体が多く含まれている食品が多いため、アルコールを多く摂取する人はさらに高尿酸血症および痛風になるリスクが高まります。 健康診断で尿酸値が高いと診断されたら、食生活だけでなく酒生活も見直しましょう。 おわりに 尿酸値が高くなるメカニズムと、高尿酸血症によってもたらされる代表的な病気である痛風の症状や予防法について解説しました。 痛風は代表的な現代病です。 健康診断で尿酸の値が高いと診断されたら、決して見逃さず医師に相談し、日々の食生活を見直しましょう。 この内容は医師の監修のもと制作していますが、健康に不安のある場合は、正確な診断・治療のために医療機関等を受診してください。
次の尿酸値の概要 この項目は、血液中の尿酸(UA の量を調べる検査です。 尿酸は、核酸(DNAやRNA)や生体内のエネルギー物質(ATP)の構成成分であるプリン体の最終代謝産物です。 血液中の尿酸は、腎糸球体でろ過され、尿細管でほとんどが再吸収されますが、一部は尿細管中に分泌されて尿中に排泄されます。 尿酸は、プリン体の生合成や核酸の異化により体内で1日に約700mgつくられています。 これに対して、食事からのプリン体摂取は尿酸にして、300~400mg程度です。 尿酸は、水に溶けにくく、7. そのため、血液中の尿酸がこれ以上に増えると、血液中には溶けることができないため、溶けきれない尿酸が組織へ沈着を起こすようになり、痛風や関節炎などの原因となります。 尿酸が作られるのが多くなったり、腎臓からの排泄が低下することによって血液中の尿酸値が高くなる状態が高尿酸血症です。 高尿酸血症の約20%が尿酸の生成が多くなる尿酸産生過剰型、約60%が腎臓からの排泄が低下する尿酸排泄低下型、約20%が両方をあわせもつ混合型となります。 尿酸値が高い値となる要因 1)遺伝 痛風や高尿酸血症の方のうち、約20%の方が体質などの遺伝的な要因で高値を示すことがあります。 2)食生活 プリン体のほとんどは、体内でつくられますが、食事からの摂取によっても上昇します。 プリン体の摂取と同様に、摂取カロリーも尿酸の上昇と関係があります。 なぜならば、痛風または高尿酸血症の約60%に肥満があり、肥満度が高い程、尿酸値が高い傾向があるからです。 このように、肥満と尿酸値は深い関係があるため、肥満の場合、高値を示す傾向があります。 3)アルコール アルコールは、尿酸の合成を促進し、また作られた尿酸の排泄を抑制する作用があるため、摂取することにより上昇しやすくなります。 4)ストレス ストレスは、一時的に尿酸を上昇させます。 5)病気によるもの 血液が壊される病気や腎機能の低下するような病気がある場合、尿酸値が上昇することがあります。 6)薬剤によるもの 一部の薬剤には尿酸値を上昇させるものがあります。 (一部の利尿薬、喘息薬 など) 各疾患と尿酸値 痛風 尿酸が高い状態(高尿酸血症)が長く続くと(5~10年)、尿酸の結晶が関節部分に析出・沈着して痛風発作を引き起こすようになります。 溶血性貧血、白血病 溶血性貧血、白血病などのように、細胞の破壊が亢進された状態の場合、細胞内の核酸の分解量が増加するため、尿酸の生成量も増加して高い値を示します。 腎不全 尿酸は、腎臓から尿中へ排泄されるため、腎障害がおこると尿中に排泄されにくくなり、血液中の尿酸値は高い値となります。 運動と尿酸値 適度な運動は、肥満改善などにとてもよく、尿酸値を低下させるにはとてもよいことですが、激しい運動は逆効果です。 通常ヒトの体は、運動したり体温を維持するためにエネルギーを必要とします。 このエネルギーにATPと呼ばれる高エネルギーリン酸化合物を使用しますが、使用されるとATPはADPとなります。 ほとんどの場合、このADPはATPに戻ってエネルギーを放出できる状態になります。 しかし、激しい運動をすると、このADPがATPに戻る作業が追いつかず、分解されてプリン体となり、結果的に尿酸へと分解されてしまいます。 生理的変動 性別による変動 男性の方が女性より高い値を示します。 女性の場合、閉経後になると男性の値に近づきます。 これは、女性ホルモン(エストロゲン)によるもので、エストロゲンは尿酸の排泄を促進する働きがあり、閉経によってエストロゲンの分泌が減少すると尿酸値が上昇し、男性の値に近づくようになります。 年齢による変動 小児の方が成人よりも低値を示します。 検査の目的 高尿酸血症・痛風を疑う時やその経過観察のため.
次のまず、 痛風を発症する人の約9割が男性だということをご存知でしょうか? これほど男女差がハッキリとしている病気も珍しいのですが、その理由もハッキリとしています。 その理由とは、 痛風の元となる尿酸の血中濃度(血清尿酸値)が、女性より男性の方がそもそも高いからです。 これは、女性の体に備わっている女性ホルモンが、腎臓からの尿酸排泄を促進する作用を持っているからだと言われています。 ということは、 閉経して女性ホルモンの分泌が減ると、男女間での尿酸値の差は少し小さくなるといえます。 そのため、男性はもちろん注意が必要ですが、閉経を迎えた後の女性も、同じように注意が必要な病気なのです。 実際、尿酸値や痛風の対策をする場合、多くの人がこの部分に気を付けますよね。 たとえば食事の場合、肉や海産物の摂取は尿酸値を上げて痛風を発症しやすくし、逆に野菜や乳製品の摂取は尿酸値上昇を抑えて痛風を予防すると言われています。 しかし、あまりに極端な食事管理(食事制限)は、長続きしません。 また、摂取する食品が偏ることで、かえって他の病気を招く可能性もないとは言えないでしょう。 それよりも気を付けたいのは、肥満です! なんと、 痛風を発症した患者さんの約6割には肥満がみられ、肥満度が大きいほど尿酸値も高くなると言われているのです。 また肥満は、 痛風の人に多くみられる合併症の大敵にもなるものなので、痛風を予防するために、そして他の病気を予防するためにも、標準体重をキープするよう心掛けることが大切となります。 上で遺伝的要因についても少し触れましたが、遺伝による痛風は全体の2割を占めていると言われています。 尿酸に関係する遺伝子は、 「影響が強い遺伝子」と 「影響が弱い遺伝子」の2種類に分けられます。 このような遺伝子を持っている場合は「遺伝病」と呼ばれたりもします。 ただ、このような遺伝子の変異を持っている人というのは非常に稀のため、ほとんどの痛風や高尿酸血症には関係しないそうです。 しかし、遺伝子自体がほとんどの痛風や高尿酸血症に関係しないのか?といえば、そうではありません。 後者の「頻度は高いが影響が弱い遺伝子」は、関係してきます。 これらの遺伝子には、腎臓の尿細管に発現して物質輸送に関係するものが多いと言われています。 また、消化管からの尿酸排泄に関係する遺伝子もあるそうです。 ただ、遺伝的要因によるものは自分でコントロールできないため、どうしようもありませんよね。 自分で管理ができる 食事や飲酒、尿酸値を下げる成分の摂取(サプリメントなど)で、環境要因をできるだけなくすことが重要といえます!.
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