検尿異常:尿沈渣とは ブックマーク: 試験紙による検尿は、おおまかに異常があるかどうかを調べる検査です。 そこで、次に行う検査が尿沈渣です。 尿沈渣でみえる成分を説明しましよう。 試験紙による血尿の判定には赤血球のなかのヘモグロビンという物質を測定します。 したがって、試験紙で血尿と判定された場合には、通常沈渣でも赤血球が認められます。 もし、試験紙の反応に比べ赤血球が少ない場合には、赤血球が壊れてしまったか(慢性糸球体腎炎などの病気がある場合、糸球体のろ過膜が破れて出てきた赤血球は壊れやすく、 大小不同であることが多い)、ヘモグロビン以外の物質、たとえば筋肉にあるミオグロビンという物質が誤って試験紙に反応したことが考えられます。 試験紙検査で白血球反応が出た場合、沈渣でも白血球が見られます。 しかし白血球にもいろんな種類があり、ばい菌が入つた場合には 好中球という白血球が見られます。 薬などのアレルギーなどで腎臓の病気が起こることがありますが、このような場合には 好酸球という種類の白血球が見られることがあります。 また、白血球が死んでいるか、生きているかも判定できます。 古い尿ではほとんどの白血球は死んでいますが、通常新鮮な尿では生きている白血球がほとんどです。 新鮮であるにもかかわらず死んだ白血球が多い場合(とくに女性に多い)には、尿が出てから混ざったことが考えられます。 円柱は 尿細管の中でできます。 健康な人でも尿のpHが低く(酸性尿)、尿が濃い場合には出ることがあります。 この場合にはヒアリン円柱という尿細管から分泌されるある種の蛋白質(タムフォルスファールムコ蛋白)が固まって、トコロテンのように出てくるものです。 しかし、このトコロテンの中にいろんな物が混じっている場合には異常です。 円柱は尿細管でできるものですから、異常な円柱が出る場合には尿細管、あるいはその上流の糸球体に病気があることを示しています。 したがって、異常な円柱があるかないかが、腎臓の中の病気か、尿路の病気かを区別するのに非常に重要なのです。 血尿があり、円柱の中にも赤血球が含まれている場合には、赤血球は糸球体から出たものと考えられ、慢性糸球体腎炎による可能性が強いことを示しています。 血尿がでていると言われた場合、円柱が出ていればまず腎臓内科、円柱が出ていなければまず泌尿器科と考えていただいても良いと思います。 しかし先に述へたように異常な円柱と判断するには、 新鮮な尿で、しかも 熟練した検査技師が必要です。 上皮細胞 尿細管を含め尿路の尿に接する部分は上皮細胞が被っています。 しかし上皮細胞は尿路の部位によって形が異なりますから、詳しく観察すればどの部位の上皮細胞か予測がつくことがあります。 一般に健康でも女性の尿には上皮細胞が多く見られることから、これらは排尿時に混ざったもので、尿道の出口部、膣などの上皮が混ざった可能性が多いと考えられます。 (専門医が見れば、女性の尿か、男性の尿かを見分けることができるくらいです)。 塩類 さまざまな塩類が結晶として沈渣で見られます。 中には結晶の種類だけで診断がつく病気もあります。 しかし最も大きな要因は尿の濃さです。 尿が濃いと溶けている塩類が排尿後温度が下がるに伴い、結晶を作るからです。 尿の新鮮さや沈渣検査を行う室温なども大きな要因です。 細菌 尿沈渣ではしばしば細菌を認めることがあります。 これがほんとうに病的なものかどうかの判断は難しいのですが、同時に白血球が混じっている場合には注意が必要で、ただちに細菌の種類を調べる検査を行う必要があります。 沈渣で細菌を特定できる場合も多く、すぐに治療につながります。 しかしすぐに種類がわからない場合には検査の結果を待っていては治療が遅れますから、通常最も多い細菌を想定して治療を開始します。 効果が不十分な場合には細菌の結果に合わせて、有効と考えられる抗生物質に変更します。 試験紙による検尿だけでは、たとえ異常が発見されたとしても、 どこの病気か? 原因は何か?までは推定することは困難な場合が多いのです。 試験紙で異常が認められた場合には、この尿の沈渣を調べます。 これによってさらに多くの情報が得られ、異常な部位や原因の予想がつくことがあるため、腎臓病の検査には欠くことの出来ない きわめて重要な検査です。 尿の沈渣は、排尿直後から時間とともに変化します。 このため調べる尿はできるだけ新鮮(排尿後数時間以内)でなければなりません。 翌日ともなると、かえって誤った判断をすることになる可能性があります。 一般の開業医では、医師自身が沈渣を見られる場合もありますが、多くは検査機関に委託します。 この際、排尿から検査までの時間と、委託検査機関の沈渣に対する熟練度が問題となります。 夕方受診して、沈渣が翌日であればほとんど意味がありません。 典型的な慢性腎炎( 慢性糸球体腎炎)の患者さんの尿沈渣は、大小不同な赤血球とともに 円柱と呼ばれるその名の通り円柱型のものが見えます。 このような円柱は健康な尿には見られません。 その他、白血球、各種の塩類、細菌、上皮細胞(癌細胞まで見つけられることがあります)など、尿沈渣は情報の宝庫であり、 腎臓病の診断や治療効果を見る上でもかかせない大事な検査です。 【関連記事】.
次の検尿異常:尿沈渣とは ブックマーク: 試験紙による検尿は、おおまかに異常があるかどうかを調べる検査です。 そこで、次に行う検査が尿沈渣です。 尿沈渣でみえる成分を説明しましよう。 試験紙による血尿の判定には赤血球のなかのヘモグロビンという物質を測定します。 したがって、試験紙で血尿と判定された場合には、通常沈渣でも赤血球が認められます。 もし、試験紙の反応に比べ赤血球が少ない場合には、赤血球が壊れてしまったか(慢性糸球体腎炎などの病気がある場合、糸球体のろ過膜が破れて出てきた赤血球は壊れやすく、 大小不同であることが多い)、ヘモグロビン以外の物質、たとえば筋肉にあるミオグロビンという物質が誤って試験紙に反応したことが考えられます。 試験紙検査で白血球反応が出た場合、沈渣でも白血球が見られます。 しかし白血球にもいろんな種類があり、ばい菌が入つた場合には 好中球という白血球が見られます。 薬などのアレルギーなどで腎臓の病気が起こることがありますが、このような場合には 好酸球という種類の白血球が見られることがあります。 また、白血球が死んでいるか、生きているかも判定できます。 古い尿ではほとんどの白血球は死んでいますが、通常新鮮な尿では生きている白血球がほとんどです。 新鮮であるにもかかわらず死んだ白血球が多い場合(とくに女性に多い)には、尿が出てから混ざったことが考えられます。 円柱は 尿細管の中でできます。 健康な人でも尿のpHが低く(酸性尿)、尿が濃い場合には出ることがあります。 この場合にはヒアリン円柱という尿細管から分泌されるある種の蛋白質(タムフォルスファールムコ蛋白)が固まって、トコロテンのように出てくるものです。 しかし、このトコロテンの中にいろんな物が混じっている場合には異常です。 円柱は尿細管でできるものですから、異常な円柱が出る場合には尿細管、あるいはその上流の糸球体に病気があることを示しています。 したがって、異常な円柱があるかないかが、腎臓の中の病気か、尿路の病気かを区別するのに非常に重要なのです。 血尿があり、円柱の中にも赤血球が含まれている場合には、赤血球は糸球体から出たものと考えられ、慢性糸球体腎炎による可能性が強いことを示しています。 血尿がでていると言われた場合、円柱が出ていればまず腎臓内科、円柱が出ていなければまず泌尿器科と考えていただいても良いと思います。 しかし先に述へたように異常な円柱と判断するには、 新鮮な尿で、しかも 熟練した検査技師が必要です。 上皮細胞 尿細管を含め尿路の尿に接する部分は上皮細胞が被っています。 しかし上皮細胞は尿路の部位によって形が異なりますから、詳しく観察すればどの部位の上皮細胞か予測がつくことがあります。 一般に健康でも女性の尿には上皮細胞が多く見られることから、これらは排尿時に混ざったもので、尿道の出口部、膣などの上皮が混ざった可能性が多いと考えられます。 (専門医が見れば、女性の尿か、男性の尿かを見分けることができるくらいです)。 塩類 さまざまな塩類が結晶として沈渣で見られます。 中には結晶の種類だけで診断がつく病気もあります。 しかし最も大きな要因は尿の濃さです。 尿が濃いと溶けている塩類が排尿後温度が下がるに伴い、結晶を作るからです。 尿の新鮮さや沈渣検査を行う室温なども大きな要因です。 細菌 尿沈渣ではしばしば細菌を認めることがあります。 これがほんとうに病的なものかどうかの判断は難しいのですが、同時に白血球が混じっている場合には注意が必要で、ただちに細菌の種類を調べる検査を行う必要があります。 沈渣で細菌を特定できる場合も多く、すぐに治療につながります。 しかしすぐに種類がわからない場合には検査の結果を待っていては治療が遅れますから、通常最も多い細菌を想定して治療を開始します。 効果が不十分な場合には細菌の結果に合わせて、有効と考えられる抗生物質に変更します。 試験紙による検尿だけでは、たとえ異常が発見されたとしても、 どこの病気か? 原因は何か?までは推定することは困難な場合が多いのです。 試験紙で異常が認められた場合には、この尿の沈渣を調べます。 これによってさらに多くの情報が得られ、異常な部位や原因の予想がつくことがあるため、腎臓病の検査には欠くことの出来ない きわめて重要な検査です。 尿の沈渣は、排尿直後から時間とともに変化します。 このため調べる尿はできるだけ新鮮(排尿後数時間以内)でなければなりません。 翌日ともなると、かえって誤った判断をすることになる可能性があります。 一般の開業医では、医師自身が沈渣を見られる場合もありますが、多くは検査機関に委託します。 この際、排尿から検査までの時間と、委託検査機関の沈渣に対する熟練度が問題となります。 夕方受診して、沈渣が翌日であればほとんど意味がありません。 典型的な慢性腎炎( 慢性糸球体腎炎)の患者さんの尿沈渣は、大小不同な赤血球とともに 円柱と呼ばれるその名の通り円柱型のものが見えます。 このような円柱は健康な尿には見られません。 その他、白血球、各種の塩類、細菌、上皮細胞(癌細胞まで見つけられることがあります)など、尿沈渣は情報の宝庫であり、 腎臓病の診断や治療効果を見る上でもかかせない大事な検査です。 【関連記事】.
次のご質問ありがとうございます。 経験17年以上になる看護師です。 お仕事は毎日緊張の連続だろうと想像できますが、わからないことを学習する姿勢は素晴らしいと思います。 では、ご質問についてお答えしていきます。 尿蛋白・尿糖・潜血・ウロビリノーゲンを調べます。 これは尿を試験管に入れ、遠心分離器で500Gと呼ばれる回転数で5分間回転し、沈殿した有形成分に染色液を入れたのち、顕微鏡で観察する検査です。 赤血球・白血球・上皮・円柱・細菌・塩類などを調べます。 次に、尿沈渣で細菌が検出される原因について考えてみましょう。 まず、採尿時の細菌の混入にはどのようなことが考えられるのかをお話します。 女性の場合、膣内には常在菌が多数存在しますので、この細菌が尿中に混入して尿沈渣で細菌が検出されることがあります• 性別を問わず尿道付近には大腸菌などの細菌が多数存在しており、採尿時にそれらの細菌が混入し尿沈渣で細菌が検出されることがあります 以上のことから、採尿の際の注意点として、尿道周辺の清潔と中間尿の採取が重要です。 次に、採尿後の保存状態によって細菌が増える原因について考えてみましょう。 病院の外来などで採尿後すぐに検査をする場合を除いては、採尿から検査所に検体が移動するまでに時間がかかる場合があります。 その際、検体の保存状態によっては細菌が増えてしまいます。 採尿後における常温での長時間放置や、検体を移動する際に適正な温度管理がされていない場合です。 以上のことから、採尿後すぐに検査が行えない場合には冷所保存を行い、細菌の繁殖を防ぐようにすることが大切です。 お話してきたようなことが原因で、尿沈渣では細菌が検出されることがあります。 尿路感染症がある場合は、尿沈渣で細菌だけではなく白血球が含まれている場合が多いです。 また、患者さんの臨床症状も判断の重要なポイントになります。 医師は、尿検査結果や患者さんの臨床症状などを総合的に判断して診断を行います。 看護師は、患者さんの症状について十分な観察を行い、的確に医師に報告することが大切です。 おわりに.
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