ピアジェ 発達 段階。 公認心理師・臨床心理士の勉強会: 公認心理師 2019

心理学用語解説:認知発達論【ピアジェの4段階説】|サイエンス.COM

ピアジェ 発達 段階

> > 43- ピアジェとフロイトの発達理論 ここでは認知的発達である「ピアジェの認知発達段階説」と、心理的発達である「フロイトの心理性的発達理論」をまとめます。 用語: Piaget / Freud,S / ピアジェの認知発達段階説 Piaget, Jean(ピアジェ)の認知発達段階説は、発達理論として非常に有名です。 ピアジェは、外界を認識する「 シェマ(スキーマ構造)」の質的変化が4つの段階を経て、子供の思考(認知機能)が発達していくと提唱しました。 下記に、4つの発達段階である「感覚運動期」、「前操作期」、「具体的操作期」、「形式的操作期」をまとめます。 感覚運動期: 0カ月〜24ヶ月(2歳) (永続性・表象機能の獲得) 感覚と運動の協応により外界に適応する時期で、行動に対する結果から少しづつ行動を修正して適応行動パターン シェマ を獲得します。 また、この時期に、「 対象物の永続性の理解」や「 表象機能」を獲得します。 オペラント条件付け的ですが、あくまで感覚運動的レベルです。 表象とは、対象のイメージのように、対象に対する抽出された情報を長期記憶に保持するために用いられる心理的な形式をいい、表象機能とは、目の前にないものを思い浮かべることを指します。 表象機能を示すものとしては「 延滞模倣」があります。 延滞模倣は、観察した行動を時間が経過したあとで再生する(真似する)ことです。 前操作期: 2歳〜7,8歳 (象徴機能の獲得・直観的思考・中心化) 「 象徴機能」が発達し、行動に現れる時期です。 象徴機能とは、現実にない物事を他のものに置き換えて表現する働きです。 「ごっこ」遊びや、言葉(意味されるもの)の表現に見られます。 象徴機能の後、4歳頃から「直観的思考」と呼ばれる段階に入り、推論に興味をもったり初期的な推論を行うようになります。 また、前操作期の特徴としては「 中心化(自己中心性)」が挙げられます。 中心化とは「自分の知覚情報ですべてを判断する傾向」を指し、他者の視点や立場に立つことができません。 具体的操作期: 9歳〜11,12歳 (論理的思考・脱中心化・保存性) 具体的な事物に対しての論理的思考(具体的操作)が、一応できるようになります。 「 脱中心化」が進み、自分と異なる他者の視点を持つようになります。 物の形や状態を変形させても重量や体積は変化しないという概念である「 保存性」や、ある変化を考えたとき、条件を変えるとその変化と逆の方向に変化が起こってもとの状態に戻る「 可逆性」について理解します。 形式的操作期: 12歳〜 (抽象的思考・仮説的思考) 命題に対して仮説を取り上げて演繹的に推論し真偽を検証することを形式的操作といい、それができるようになるのがこの時期です。 「 抽象的仮説的思考」が成立します。 フロイトの心理性的発達理論 Freud,S(フロイト)は、リビドー(性的エネルギー)が年齢に応じた身体諸器官を通じて放出されると考える「心理-性的・心理-生物学的発達論」を提唱しました。 Freud,Sは、心理的発達理論の各発達期における、「 固着」や「 退行」によって性格や病理を説明しました。 「 固着」とは、ある段階で刺激が不十分で欲求不満が大きいと次の段階に進めないことをさします。 「 退行」とは、ある段階で刺激が過剰だと、不適応を起こし、前の段階に戻ってしまい、その時期特有の行動をとることをさします。 防衛機制の一つです。 フロイトの心理的性的発達理論の5つの発達期である「口唇期」「肛門期」「エディプス期 男根期 」「潜伏期」「性愛期 (性器期)」をまとめます。 *固着、退行すると口唇期的性格(依存的で甘えん坊)が現れる。 肛門期 1歳〜3歳 排泄の「 トイレットトレーニング」の時期(親からの躾の内在化)です。 主張的能動的特徴の形成がされます。 *固着退行すると肛門期的性格(几帳面、厳格、けち)が現れる。 エディプス期 男根期 4歳〜6歳 「 エディプスコンプレックス」が生じ、性的な役割を形成する時期です。 潜伏期 6歳〜思春期 性欲動が抑圧され、社会的規範の学習や知的活動にエネルギーが注がれる時期です。 性愛期 (性器期) 思春〜青年期 口唇期、肛門期、エディプス期の部分的欲動が統合され、性器性欲が優位となります。 全人格を認めた性愛が完成する時期です。 エディプスコンプレックス: 「エディプスコンプレックス」とは、異性の親に対する性愛的愛着を抱き、同性の親に対するライバル意識や嫉妬を抱く現象をさします。 > 発達 >• 43- ピアジェとフロイトの発達理論•

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ジャン・ピアジェ~スイスの心理学者|保育の心理学

ピアジェ 発達 段階

子どもの行動を見ていたら、時たま理解できない言動を行うことがありますよね。 私の 子どもで言いますとどこかで言いましたがダンボールを食べたりするのが当てはまると思います。 この行動が何なのか?調べてみるとある学者の提唱にたどり着きました。 できる限りわかりやすく紹介しようと思います。 子育てをしていると、 大人では理解できない子どもの不思議な言動に悩まされることも多いのではないでしょうか? 「なんでそんなことするの!? この理論は、日本も含む 全世界の幼児教育の基盤となっている重要なもので、幼児教育の現場ではこの理論を元に毎日子供たちの成長を後押ししているのです。 保育園・幼稚園の先生は、この理論による発達段階の特性を踏まえた上で子どもと接しているからこそ、子どもも先生の言うことをしっかり理解してくれるのですね。 子どもの発達段階と認知の関係について学び、家庭での接し方に活かせるようになれば、きっとこれからの子育てが少し楽になりますよ。 スポンサーリンク 発達心理学者ジャン・ピアジェについて (画像引用:) ジャン・ピアジェ(1896~1980)はスイスの 発達心理学者です。 日本でも国家資格である保育士の試験では、必ずと言っていいほど、この理論についての問題が出題されています。 つまり、 子どもの教育に携わる上でしっかり理解しておくべきだと、国が認めているということです。 簡単にまとめると、ピアジェの考える幼児期の特徴は、以下のようなことが挙げられます。 子どもは それぞれの発達段階によって違う感じ方や考え方をする。 子どもの思考は直感的で、だからこそ想像力が豊かである。 子どもは周りの人とのかかわりや実際に自分で動いてわかったこと等を通して、より適切な対応ができるように発達していく。 子どもの発達には、生まれ持った素質や周りの環境だけが影響するのではなく、 子ども自身が自ら周りとかかわり続け、周りも反応を返す相互作用が不可欠である。 これは 家庭での子育てに活用する上でも、とても大切な要素です。 上記を踏まえて、ここからは具体的な話に進んでいこうと思います。 認知とは、 「既に知っていること」として頭にインプットするということ です。 よく目にするのは0歳~12歳ごろまでを4つの段階に分けているものですが、今回は保育士試験の勉強で用いられる、より詳しく5つの段階に分けているものをご紹介します。 こちらの方が細かな年齢別に区分けされていますので、 家庭での子育てに効果的に活かせると思います。 0~2歳:感覚運動的段階 ものすごいスピードで発達するこの段階を、ピアジェは更に6つに分けて考えています。 母乳を吸うための吸てつ反射、周りの音や刺激にビクッと反応するモロー反射などが有名ですね。 赤ちゃんの意志とは関係なく、生きるために本能的な無意識の反応を通して周りとのかかわりを持ちます。 噛み砕いて、分かりやすい例で言うと 吸てつ反射は• 口元に指を待っていくと、吸い付いてくる• 空腹になると、無意識で口が母乳を吸うように動く モロー反射は• 急に抱き上げると、ビクッと反応する• 逆に下に急に下ろしても、ビクッと反応する• 大きな音がすると、寝ててもビクッと反応する などが、あげられます。 また、そういった2つ以上の動作を連動させることができるようになり、見たものを掴もうとする動作をするようになります。 手足をバタバタさせる等、 偶然一度できた行動を繰り返す時期でもあり、それを通して 新しい動きを発見・認知していきます。 日常で、よく見られる行為は• 両手をにぎにぎして、自分の手だと認識する• 足の指も同じく掴んで、自分の物だと認識する• 拳を口に入れてなめてみることで自分の指を認識する など、目に入るもの この時期は自分のからだのパーツ を触ったり、口に入れることによって、自分の体だということを認知するのです。 例えば、おもちゃのガラガラを偶然掴んで振り回して音がしたことで、ガラガラに興味を持ち、また同じ動作を繰り返し行ったりすることが当てはまりますね。 そうやって 繰り返すことで、今度は自分と周りのものとの関係性を認知していきます。 この頃は、体も自分で動かせるようになり、行動範囲も広がります。 第二期で自分の手や足を認識した事で、今度は手足を使って周りに見える物を、興味心から触ってみたくなります。 勿論何が安全で、何が危険かは認知していません。 そこで、実際にさわってみた結果、楽しい!という感情や痛い!という感情を学んでいくのです。 例えば手で掴んだものを振り回して投げてみると、手の届かない場所にあるイスに当たる等です。 いないいないばぁ等の遊びができ始めるのがこの時期です。 例えば、積み木同士をぶつけ合うと鳴る音や感触と、積み木でクッションを叩いた時になる音と感触が違う、ということに気づくのです。 また、相手が嫌悪感を持っている。 と言う感情も読み取れるようになります。 ぬいぐるみに積み木をぶつけても、何もぬいぐるみは変わらない。 しかし、母親にぶつけると顔をしかめる。 何度か同じことをするうちに、母親は大きな声で「嫌」や「やめなさい」と否定する。 そこで、しても良いことと、悪いことの認識が始まるのです。 繰り返すことで、同じ行動でも対象物によって結果が変わることを理解できる時期 なのですね。 これは幼児期に、関わりあいを持つお友だちとの遊びに深く繋がります。 例えば、 お腹がすいた。 キッチンにはおやつがある。 どうすれば食べれるだろう? と思ったときに、母親にその気持ちを伝えようとする。 また、昨日まで当たり前にあったおもちゃなどが、見当たらない。 どうしても今それがほしい。 身近な大人にそれを伝えようとする。 私たちが子どもの頃からあるこどもちゃれんじはこどもの興味を引くのが上手です。 子どもの興味と合致すればのめり込んでくれます。 その体験談についてはこちらを参考にしてください。 遊びだけに限らず、歌を歌ったり、ダンスをしたり少しずつ記憶し、覚えた内容を繋げて、完成させる。 親が話していたことを記憶していて、数日後同じような口調で他の相手に話しかける。 幼児期によく見られる行動も、全て論理に乗っ取ったものだったのです。 4~8歳:直観的思考段階 自分を中心に考えることが特徴です。 自分の周りで起こる出来事を似たもの同士分類して関連付けたりと、 物事の共通部分を見つけ、体系立てて認知出来るようになります。 ただ、まだ論理的思考は出来ないので、例えばホールケーキを8つに切り分けると、切り分けた方が量が多くなったと思ってしまう 直観的思考で物事をとらえます。 8~12歳:具体的操作段階 小学校中盤~後半のこの時期になると、 論理的思考や推測が出来るようになっていきます。 前述の例でいくと、ホールケーキを8つに切り分けても量は変わらないことが理解できるようになり、他にも時間の概念なども持てるようになっていきます。 小学校の教科書にも似たような問題が取り入れられていますよね。 12歳以降:形式的操作段階 仮定の話や抽象的な話も理解できるようになっていきます。 実際に今存在しないことについての話でも、頭の中で具体化し、論理的・形式的に考えられるようになるのです。 子どもは自ら試行錯誤を繰り返すことで学んでいきます。 むやみに大人が口出しをして行動を制限してしまっては、子どもが持っている伸びしろを最大限活かすことができなくなってしまいます。 それを念頭に置いて、それぞれの段階での遊びと接し方について以下でご紹介します。 0~2歳:感覚運動的段階での遊びと接し方 前述したように、生まれてから最初のたった2年間で、 子どもの思考の発達は6つもの段階に区分けされます。 全ての段階において共通して大切なことは、 「まずはやってみる」「繰り返しやってみる」ことです。 生後少しすると手や足を口に入れたり、周りのものを口に入れたりしますよね。 親としては「汚い・危ないから辞めてほしい」とつい思ってしまいますが、これはこの時期の 子どもが物事を認知する上でとても重要な行動なのです。 ケガをする危険があったり大切なものなど、本当に口に入れてほしくないものは子どもの手の届かないところに置くようにしましょう。 できるだけ 子どもの行動を抑えないように、あたたかく見守ってあげてください。 柔らかいボールや音のするガラガラ、舐めたり触ったりすると様々な感触がするおもちゃなどもおススメです。 子どもが投げたり触ったりした時に たくさんの感覚的な刺激を感じることのできるおもちゃを用意してあげると、発達を促すことができます。 子どもがまだ発見していない新しい動きを大人がしてみせるのも有効ですが、もし興味を示さなくても強要はしないでくださいね。 生後9か月ごろからは、いないいないばぁや簡単な探し物ゲーム(おもちゃを背中側に隠して「どーこだ?」と探させる等)も楽しめますよ。 私たちが子どもの頃からあるこどもちゃれんじはこどもの興味を引くのが上手です。 子どもの興味と合致すればのめり込んでくれます。 その体験談についてはこちらを参考にしてください。 男の子なら大好きなヒーローになりきるヒーローごっこ、女の子なら人形や周りのものでお料理や子育てを見立てるおままごと等、 とことん没頭させてあげましょう。 いつも行かない場所へお出かけしたり、料理や家事を一緒に手伝ったりという経験も、子どもたちの大切なインプットになりますよ。 また、アニメや映画で見たシーンなど実在しないものを周りの友達との会話で共有して遊んだりし始めます。 この頃の子どもは力も強くなり大胆な動きができるようになる一方で、 注意力や危険を感じる力はまだ弱いです。 ケガや事故に繋がらないよう、 本当に危険を感じた時は大人が注意する必要も出てくるかもしれません。 子どもたちの遊びをさりげなく見守り、本当に必要な時のみ大人が注意喚起をすることで、子どもたちの 危険への意識も育てていけるといいですね。 8~12歳:具体的操作段階での遊びと接し方 この頃になると子どもたちだけの世界観でいろいろな遊びが繰り広げられていきます。 大人ができることは、これまで同様、 本当に必要な時のみ口を出し、基本は子どもの興味や想像力・思考に合わせて好きにさせてあげることだと思います。 たくさんのことに興味を持ち始める時期でもあるので、できるだけ多くの刺激に触れる機会をつくってあげるのもいいでしょう。 その中で少しでも興味を持ったことは、子どもが深掘りできる環境を用意できるとなお良いですね。 例えば、役場が主催する 小学生対象の体験ツアーもローカル情報誌などにたくさん募集情報が載っています。 参加費も手軽なものが多いので、活用してみてはいかがでしょうか。 もし出来そうであれば、 両親の職場や趣味の集まりに子どもを連れて行ってみるのもおススメです。 大人のコミュニティを覗かせてみるのも子どもにとっては刺激と発見に溢れていますよ。 12歳以降:形式的操作段階での遊びと接し方 中学校へ進学する頃には、ちょっと前まで親の後ろをちょこちょこ追いかけていた子どもたちも、一人前に自分の考えを持ち、主張するようになってきますよね。 もしかすると、思春期に突入して口すらきいてくれなくなるかもしれません… 中学校生活や部活等も始まり、なかなか家族みんなで行動することも少なくなると思います。 機会があれば、子どもが 何か新しい刺激や自分と違う意見をインプットできる環境づくりを頑張ってみてください。 例えば、 世間で話題の出来事について食事時に家族で話してみたり、普段とは違う環境に家族旅行で行ってみたり等です。 それが子どもの考える力を更に鍛えることに繋がります。 まとめ• 0歳から12歳ごろまでの子どもの思考は5つの発達段階で分けられ、 それぞれの段階で特徴が異なるため、成長の上で大切な遊びや大人の接し方も変わってくる。 全ての発達段階において共通して大切なことは、 大人が必要以上に口出ししないこと。 大人は発達段階に応じて適切なフォローを行っていくべき。 全てが発達に繋がっていて、各発達段階に応じた遊びや周りとのやり取りを通して徐々に成長していっているのだということがよくわかると思います。 大切なのは、 子どもが自ら考え行動し、大人は不必要に口を出さないことです。 時に、黙って見守ることに難しさや煩わしさを感じることもあるでしょうが、そこはぐっと抑えて、ぜひ子どもの成長を温かく見守ってあげてくださいね。 抱っこしても泣き止まない。 オムツを変えても泣き止まない。 ミルクをあげても泣き止まない。 これを読まれている皆さん、 子どものグズリ泣きに悩まされておりませんか? 子どものグズリ泣きっていつ起こるかわからないので本当に大変ですよね。 これが夜中でも続いて近所から 「うるさいわ!」 って 苦情が来たら気も滅入ってしまいますよね。

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ジャン・ピアジェ~スイスの心理学者|保育の心理学

ピアジェ 発達 段階

送る 心理学者ジャン・ピアジェ (1896~1980)をご存知ですか? スイスで生まれ育った彼は、生涯に50冊以上の本と500本以上の論文を著し、多くの学者に影響を与えた人物です。 心の発達を研究する「発達心理学(developmental psychology)」の分野で大きな功績を残し、その理論は今や世界中で知られています。 大学で教職課程を修めた人なら、教育心理学の授業で習ったかもしれませんね。 ピアジェが唱えた「発生的認識論(genetic epistemology)」は、学校の教員だけでなく、看護師や保育士を目指す人たちにも学ばれています。 その理由は、子どもが心身をどのように成長させていくかを知ることにより、子どもの発達を支援しやすくなるから。 子ども特有の言動に対して「どうしてそんなことするの?」とイライラせず、その意図を理解して適切に指導することができるようになるのです。 さて、ピアジェの理論を役立てることができるのは、教師や保育士だけではありません。 たとえば、親の意図しない行動を子どもがとったとしても、「この子はこうやって周りの世界を認識し、成長していくんだ」「大人が持っているような能力を、まだ獲得していないんだ」と納得し、肯定的に捉えることができるでしょう。 そこで今回は、心理学者ピアジェの唱えた理論のエッセンスを、できるだけ分かりやすくご紹介しますね。 心理学者ピアジェの人物像 ジャン・ピアジェは1896年、フランスとの国境に近い、スイスのヌーシャテルという街で生まれました。 父親のアルトゥールは歴史学と文献学を修め、ヌーシャテル大学では文学教授でした。 ピアジェはアカデミックな家庭で育ったといえます。 ピアジェは最初、生物学に興味を持っていました。 認識の発達に関する研究者の集まりである「ジャン・ピアジェ協会」によると、ピアジェは11歳のとき、白スズメについて短い論文を書いたそう。 これが研究者としてのキャリアの始まりです。 その後、ピアジェは研究を進めて軟体動物の研究で博士号を取得しました。 ピアジェは精神分析学に関心を持つようになり、フランスで心理学を学びます。 そして1921年、ジュネーヴにあるジャン=ジャック・ルソー教育研究所の所長として招かれ、教育学・児童心理学の研究を進めました。 彼は複数の大学で心理学や社会学などを教えつつ、1955年に発生的認識論国際センターを立ち上げ、1980年に亡くなるまでセンター長として研究を続けました。 私生活においては、1923年に結婚。 3人の子どもに恵まれ、彼らの知的発達を観察したそうです。 ピアジェの「発生的認識論」とは 応用言語学を専門にする大澤真也教授(広島修道大学)によると、ピアジェの発生的認識論において重要な概念のひとつが「段階的発達」だそう。 大澤教授は以下のように説明しています。 これは成人としての最終的な段階に達する前に、子どもは感覚運動期、前操作期、具体的操作期、形式的操作期の4つの段階を経るというものである。 発達の速さや達成度合いには個人差があるが、どのような環境であるかにかかわらず子どもはこれら4つの段階を普遍的な順序で経験していくと考えられている。 (引用元:CiNii|) では、子どもの知的発達における4つの段階を順に見ていきましょう。 感覚運動期(sensorimotor stage)(0~2歳) この段階の特徴は、「循環反応(circular response)」および「対象の永続性(object permanence)」だそう。 ブリタニカ国際大百科事典によると、循環反応とは「反応した結果が再び刺激となって同一あるいは類似の反応が反復されること」。 たとえば、ふと何かを触ってみたら感触が面白かったので、何度も触ってみる、といったことです。 次に、対象の永続性について。 たとえば、生まれてまもない子どもの眼前におもちゃがあったとして、大人がそれに布をかぶせて見えなくしてしまうと、子どもはおもちゃがなくなったと思ってしまいます。 しかし、感覚運動期の後半には、布をかぶせられて視界から消えても、子どもはおもちゃがまだそこにあると認識できるようになります。 これが、対象の永続性を理解しているということです。 なおピアジェは、この段階で赤ちゃんの「模倣行動(imitative behavior)」が発達すると論じました。 乳児心理学を専門とする大藪泰教授(早稲田大学)によれば、ピアジェの理論における模倣行動の発展水準は以下の3つに分類されます。 - 手の運動と発声の模倣期(~生後8カ月頃) 自分が見たり聞いたりできる、自分と相手の動作・発声のみを模倣できる。 - 顔の模倣期(生後8カ月~12カ月頃) 前段階と異なり、見ることのできない自分の表情を、相手の表情に近づけることができる。 - 延滞模倣期(生後18カ月~) 相手の動作を記憶し、あとから模倣できる。 前操作期(pre-operational stage)(2~7歳) この段階の特徴は「自己中心性(egocentrism)」と「中心化(centration)」だそう。 大澤教授によると、自己中心性とは「世界を主観的な視点からしか見ることができないこと」。 相手の立場で想像することができず、たとえば自分の知っていることは当然相手も知っているだろうと思い込んでしまうそうです。 また、中心化とは、ブリタニカ国際大百科事典によれば「対象のうち最も目立つ側面だけに注意を集中して、それ以外の部分を無視すること」。 たとえば、口径の広いビーカーに水が入っているとして、それを子どもの眼前で細長いビーカーに移し替えます。 すると、子どもは高くなった水面ばかりに意識が向き、水の量が増えたと思い込んでしまいます。 この思い込みは、中心化という特性によるものです。 また、前操作期の子どもがどう世界を認識するかについて、重要なキーワードが「実念論(realism)」「アニミズム(animism)」「人工論(artificialism)」の3つです。 自分が小さい頃を振り返ってみると、覚えがあるのではないでしょうか。 - 実念論:自分のものの見方が絶対的だと思い込む。 - アニミズム:非生物にも人間のような思考や感情があると思い込む。 - 人工論:自然物も人間が作ったと思い込む。 なお、前操作期はさらに、2~4歳を「象徴的思考期(symbolic function substage)」、4~7歳を「直観的思考期(intuitive thought substage)」と分けることができます。 象徴的思考期の子どもは、もののイメージを作り上げて頭のなかに保存し、あとで取り出して使うことができるようになります、つまり、目の前にないものを思い出し、絵に描いたりすることが可能なのです。 また、直観的思考期の子どもは、経験したことのない状況を説明するとき、絵本のような空想ではなく理性を用いるようになるそう。 たとえば、「家が地面から生えてきた」ではなく、「人間が材料を組み合わせて家を建てた」と言うようになります。 具体的操作期(concrete operational stage)(7~11歳) 英マンチェスター大学で心理学を教えているソール・マクロード氏によると、子どもはこの段階から論理的思考を獲得しはじめるそう。 しかし、抽象的なことや仮定についてはまだうまく考えられず、「みかん」や「机」のように具体的なものにのみ論理を当てはめることができます。 この段階で重要なのは、子どもが「保存(conservation)」の概念を理解できるようになることです。 つまり、容器に入った液体を別の容器に移し替えるなどして、ものの見た目が変わっても、ものの量や数が変わるわけではないことが分かるようになります。 たとえば、10個のおはじきを横1列に並べるとします。 子どもと数を確認したあと、おはじきを円状に並び替えます。 その上で子どもにおはじきの数を質問し、数えるまでもなく「10個」と答えられたなら、「数の保存」という概念を獲得しているのです。 形式的操作期(formal operational stage)(11歳〜) この段階になると、抽象的なものや仮定についても考えられるようになります。 マクロード氏によると、子どもが形式的操作期に入ったかどうかを確かめるには、「ケリーはアリーより背が高く、アリーはジョーより背が高いとしたら、身長がいちばん高いのは誰かな?」のような質問をするとよいそうです。 形式的操作期にいる子どもは、頭のなかだけで考えて答えを出すことができます。 一方、絵を描かないと分からない子どもは、まだ具体的操作期にいるのだそうです。 ピアジェの「構成論」とは ピアジェの理論が説明されるとき、しばしば「構成論(constructivism)」あるいは「構成主義」という言葉が使われます。 「~論」「~主義」という響きは、学術的で難しく聞こえるかもしれません。 簡単にご説明します。 まず、構成主義の反対は「実証主義(positivism)」です。 学習環境デザインを専門とする久保田賢一教授(関西大学)によると、実証主義の特徴は以下の通り。 実証主義の見方では、<現実>は人と独立して世界に実在している。 (中略)そして見つけ出した<現実>を<こころ>に正確に写し取ったものが「知識」であると考えられている。 人の<こころ>は本来空っぽであり、世界に実在する<現実>を<こころ>にコピーすることが学習であり、それを蓄積することで学習が進むと見なされる。 (引用元:J-Stage|) 一方、構成主義の特徴は以下の通りです。 構成主義では、<現実>は人が世界と交わることで構成されると考える。 つまり、人と独立した<現実>は存在しない。 (中略)「知る」とは、人がその<こころ>の中で世界をつくり出す過程に他ならず、その意味でも私たちの住んでいる世界は自分自身によりつくり出されたものである。 (引用元:同上) 教育の場において、実証主義と構成主義の違いははっきりと現れます。 実証主義の場合、教師の役割は、生徒の心に情報を「書き写す」ことです。 教師が生徒に問いを投げかけ、生徒が応答し、それに教師がフィードバックを与える。 この流れを繰り返すことで授業が進みます。 そのため、学習において生徒は受け身の存在だといえます。 一方で構成主義の場合、生徒は「積極的に意味を見つけ出すために主体的に世界と関わる存在」です。 そのため、学習とは「学習者自身が知識を構成していく過程」であり、「共同体の中での相互作用」を通じて行われるものだとされます。 つまり、生徒が能動的に学習できるようにするのが、構成主義的な教育です。 ピアジェの発生的認識論は、子どもが自分のなかで発達段階を形成していくのだと主張しているため、構成主義的な立場をとっているといえます。 なお、発達心理学を専門とする佐藤公治教授(北海道文教大学)によると、ピアジェの「相互作用説(interactivism)」においては、大人との相互作用(互いに働きかけ、影響を及ぼすこと)よりも年齢の近い子ども同士の相互作用が重視されています。 「同じような発達段階にあって、かつ自分とはやや異なった視点や認識の仕方をしている仲間」とメッセージをやりとりすることで「認知的葛藤(cognitive conflict)」が生まれるそう。 発達心理学を研究する林昭志氏(上田女子短期大学)によると、認知的葛藤とは、「いくつかの両立しがたい情報に接したときに、生ずる疑問、当惑、矛盾、驚きのことであり、すでにもっている既有知識と新しい知識の間に一定のずれがある場合に生ずるもの」。 認知的葛藤によって知的好奇心が発生し、物事をよりよく認識できるようになるそうです。 つまり、ピアジェの理論においては、子ども同士のコミュニケーションが認知発達に及ぼす影響が重視されているのです。 ピアジェ理論における「道徳」 ピアジェは、子どもの道徳観にも2つの発達段階があると主張しました。 - 他律的道徳観(5~9歳)(heteronomous morality) この段階の子どもは、道徳とは他人の作ったルールや法律に従うことで、それらは絶対に変えられないものだと思っています。 そして、ルールを破ると厳しい罰を受けなければならないと信じています。 他律的道徳観の特徴のひとつは、行動の意図よりも結果を重視して善悪を判断すること。 たとえば、親が掃除するのを手伝おうと思い、洗剤を大量にこぼしてしまったAちゃんと、洗剤で遊んでいたら少しだけこぼしてしまったBちゃんがいるとします。 他律的道徳観の段階にいる子どもに、どちらがより悪いか尋ねると、Aちゃんが悪いと答えるのです。 - 自律的道徳観(9~10歳)(autonomous morality) この段階の子どもが持つ道徳観は、自分自身のなかにあるルールに左右されるようになります。 また、自律的道徳観の段階にいる子どもは、絶対的な善悪は存在しないことを理解し、他人の視点からも考えられるようになるそう。 他人の意図や状況も考慮に入れ、ルールや道義的責任、罰などについての判断力が大人に近づくのです。 この段階の子どもは、行動の結果だけでなく意図も考慮して判断するようになるため、上記の質問ではBちゃんが悪いと答えるのが一般的だそうです。 2人の心理学者:ピアジェとヴィゴツキーとの違い ピアジェの理論を語る際、よく比較されるのがソビエト連邦の心理学者レフ・ヴィゴツキー(1896~1934)。 ヴィゴツキーは、いまや教育学を中心とした幅広い分野で知られている「発達の最近接領域(Zone of Proximal Development : ZPD)」を提唱したことで有名です。 看護学を専門とする島田智織教授(茨城県立医療大学)および江守陽子教授(岩手保健医療大学)は、ZPDを以下のように説明しています。 ZPDとは、すでに自分ひとりでできる活動と、今は他者の力を借りることで乗り越えられる領域のズレを指す。 このズレは、明日にはじぶんひとりでできるようになるという発達可能性を有した領域である。 端的に表現すると発達ののびしろということになるだろう。 ズレを解消しつつZPDを拡張していくことが学習者の発達だということになる。 (引用元:茨城県立医療大学|) さて、ピアジェの理論とヴィゴツキーの理論の大きな違いのひとつは、上述した「相互作用」についての考え方です。 ピアジェは、子どもの認知発達の過程において、大人との相互作用より子ども同士の相互作用を重視しました。 子どもは友だちとの対話を通し、自分とは異なる考えに触れることで、認知的葛藤を抱えます。 その葛藤を解決することにより子どもの認知が発達する、というのがピアジェの考えです。 つまり、相互作用というのは認知発達のきっかけでしかなく、相互作用が認知発達に直接の影響を及ぼしているわけではないのです。 一方、ヴィゴツキーの理論では、相互作用が子どもの認知発達に直接影響していると考えられています。 佐藤教授の言葉を借りれば、相互作用とは「新しい知識の形成のための情報を提供する場」。 そのため、相互作用の相手としては、子どもに新しい情報をもたらせるような大人・年長者が重視されます。 また、大澤教授の言葉では、ピアジェの理論において「子どもは自分自身で知識を作り上げていかなければならない」のに対し、ヴィゴツキーの理論における子どもは「 ZPDにおいて他人の助けを必要」としており、「最初は他人の助けを借りなければタスクを遂行することができない」ものの、やがて「自分の力で遂行できるようになる」のです。 ピアジェ教育とは ここまで見てきたように、ピアジェの提唱した理論は、さまざまな分野に影響を及ぼしています。 なかでも、ピアジェの考えを特に意識した教育は「ピアジェ教育」と呼ばれています。 愛知県で幼稚園・保育園を展開している学校法人・聖英学園は、同学園の特徴のひとつとしてピアジェ教育を掲げています。 同学園によると、ピアジェ教育とは以下のような教育です。 先生に教えられるのではなく、子どもがあそびの中で自分から働きかけ、その環境の手応えを感じ取り、豊かな刺激を受け取ることによって、子どもは自分自身を発達させていく創造的教育をピアジェ教育といいます。 ピアジェ教育は知識を身に付ける教育ではなく、知恵を出せる子どもを育てる教育です。 (引用元:学校法人 聖英学園|) ピアジェによって監修された教材を用いて幼児教育を行うことが「ピアジェ教育」と呼ばれることもあります。 ピアジェの理論を取り入れた教材を開発・販売している幼年教育出版株式会社は、ピアジェが直接監修した「世界唯一の教材」として「」を幼稚園・保育園向けに提供しています。 ピアジェ理論における発達段階に基づき、子どもが楽しみながら好奇心をもって取り組めるよう、体系的に構成されているそうです。 ピアジェを知るためにおすすめしたい本 ピアジェ自身についてもっとよく知りたい、ピアジェの理論をきちんと学びたいと思ったのなら、どれか一冊、本を通読してみるのがよいでしょう。 おすすめしたい書籍を2冊紹介します。 - ピアジェの理論のエッセンスを簡潔に説明するだけでなく、ピアジェの人物像や、ピアジェの理論がどのように受容されたかなどにも紙幅が割かれており、ピアジェについて全体的に知りたい人には最適の一冊です。 文体が丁寧で分かりやすいため、難解な専門書とは一線を画しています。 - ピアジェ自身による著書を訳したもの。 手にとりやすい文庫本です。 心理学だけでなく、哲学や数学の分野で論じている章もあり、一部は難解。 しかし、発達段階の部分だけでも、提唱者自身の言葉で読む価値はあります。 *** 子どもの発達について考えるなら、ぜひ知っておきたいピアジェの理論。 現代日本における保育や教育に大きな影響を及ぼしています。 親としても、ぜひ意識しておきたいものですね。 (参考) The Jean Piaget Society| CiNii| CiNii| コトバンク| コトバンク| Simply Psychology| Simply Psychology| Simply Psychology| Simply Psychology| J-Stage| J-Stage| MentalHelp. net| MentalHelp. net| Southwest Psychometrics and Psychology Resources| 北海道大学学術成果コレクション| 茨城県立医療大学| 学校法人 聖英学園| 学校法人 聖英学園| 幼年教育|.

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