新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ消費や投資の回復を後押しする狙いで、ドイツ政府は追加の国債発行などで必要な資金を調達する見通しだ。 2日間にわたる交渉の末、連立与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)とドイツ社会民主党(SPD)が合意した。 子育て世代には子供1人あたり300ユーロの現金を支給する。 電気自動車への投資や普及を支援する一方で、ガソリン車やディーゼル車への補助金は見送った。 売り上げが大きく落ち込んだドイツ鉄道の支援や電気料金の引き下げなども盛り込んだ。 メルケル首相は記者会見でコロナ危機からの脱却に向けた「礎石」になるとの考えを示した。 ドイツ政府は3月に1560億ユーロの国債発行を伴う大規模な経済対策を発表したばかりだ。 経済安定ファンドによる債務保証分なども含めると7500億ユーロ程度という大規模な対策で、企業の資金繰りを支援して経済の崩壊を食い止めてきた。 今回の新たな対策は、新型コロナの感染の第1波をしのぎきり、経済が底入れしつつあることを受けた措置だ。 消費や投資の活性化に力点を置き、力強さに欠く経済の回復を下支えしたいという思惑がある。 ドイツが大規模な対策を矢継ぎ早に打ち出せるのは、これまで財政黒字を続けて、財政状況が極めて健全であることが大きい。 コロナ後の経済の回復は各国の財政に左右されやすいため、政府債務の国内総生産(GDP)比が高く大胆な経済対策に動きにくいイタリアなどとの格差が広がるとの懸念もある。
次の荻上チキさんはDigというニュース番組以来Session22も含めてほぼ全部聞いてきたと思います。 それくらいファンなので10分とはいえ、とても緊張しました。 それはさておき、初めてのラジオで10分話しただけでは伝えきれない部分もあり、せっかく調べたのでここで少しドイツの経済政策をお伝えします。 ただ、 この分野は私の専門ではないのでご注意ください。 ドイツの政策の目的はなによりも雇用維持 エネルギー政策、特に近年の政策では、ドイツの傾向は従来の雇用の維持に偏っています。 再エネ関連で生まれる大きな雇用を無視して従来産業のより小さな雇用を守るというスタンスはある意味徹底しています。 今回のコロナ対策についてもドイツの態度は失業者を保護するのではなく、失業させないことに重きをおいており、『雇用維持』の観点からまっとうなものだと思います。 国は総額7500億ユーロ(訳90兆円)規模の財源を用意しています。 そのため、日本の憲法にあたる基本法に定められた国の借り入れ制限を一時停止し、1500億ユーロの国債を発行します。 また救済基金向けに2000億ユーロの債権を発行を行い、資金を確保する予定です。 図:連邦財務省による経済対策パッケージのインフォグラフィック 出典:連邦財務省を著者翻訳(2020年4月4日取得) これを見ると対策は大きく2つ、 補助金と融資の確保です。 生活が少し苦しくなることは受け入れてもらうことが前提になっていると思います。 補助政策 企業向け補助 補助金は失業しないことを重視しています。 ですので、操業率が10%以上下がれば受給できます。 被雇用者については60%までを補償。 子供がいれば67%が補償されます。 さらに企業側は操業短縮した部分については社会保障費の負担が免除されます。 こちらはまず企業に支払われ、企業はこれを人件費支払いに当てることができます。 ですから休業中に実際に被雇用者が受け取れる額は企業によって違うはずです。 政府のこの図からは予算がわかりませんが、政府関係者は260億ユーロは確保していると発言したという報道がありました。 フリーランス、自営業、零細企業向け補助 こちらは社員5人まで(自営業、個人フリーランス含む)であれば3ヶ月分の運転資金(家賃、リース料等の月々の固定費)として9000ユーロ、10人までであれば15000ユーロが支払われます。 あくまで事業にかかるコストの負担であり、人件費はここから出してはいけないことになっています。 この支援には500億ユーロが確保されています。 図:連邦財務省による即時支援のインフォグラフィック 出典:連邦財務省を著者翻訳(2020年4月4日取得) ケースによっては組み合わせも可能 確定ではないものの、全体を読むと恐らく企業向け補助と零細企業向け補助は併用可能です。 人件費は企業向け補助から、それ以外の固定費は零細企業向け補助から捻出できるはずです。 融資プログラム 政府は2つの融資プログラムを要しています。 どちらも原則倒産回避向けと考えて良いでしょう。 経済安定化救済基金 全体で6000億ユーロが用意されていますが、うち1000億ユーロはKfWに回るため、基金自体は5000億ユーロです。 これが現在のパッケージの最大の部分です。 企業の売上が落ち、支払いが滞らないように緊急の融資を行います。 もちろん融資ですから、返済義務があります。 図:連邦財務省による救済基金のインフォグラフィック 出典:連邦財務省を著者翻訳(2020年4月4日取得)KfW KfWの融資プログラム ドイツには政府系銀行としてドイツ復興金融公庫(KfW)があります。 日本の政策投資銀行のような立場で銀行の銀行として機能し、政府が主導する政策の実行に必要な資金を低利子で貸し出す等しています。 エネルギー分野では省エネ改修を行うときなどに利用できるプログラムもあります。 低利子の上、返済免除という形で事実上の補助金となるケースもあります。 図:連邦財務省によるKfW融資のインフォグラフィック 出典:連邦財務省を著者翻訳(2020年4月4日取得) こちらのために臨時の資金として政府は1000億ユーロを要しています。 こちらも融資ですが、今回は政府が債務保証を従来より手厚く行い、それによって融資を実行しやすくしています。 これ以外に、スタートアップ向けに別途20億ユーロが用意されています。 スタートアップは従来の融資では条件を満たせないケースが多いため、そうしたスタートアップでも資金を獲得しやすくしています。 社会保障 ドイツの基本戦略は倒産させないことです。 しかし、それでも倒産する企業は必ず出てきます。 そこで、コロナ危機の間は社会保障の受け取り基準を緩和し、多くの人が素早く受給できるようにしています。 図:連邦財務省による社会保障のインフォグラフィック 出典:連邦財務省を著者翻訳(2020年4月4日取得) 審査なしで6ヶ月まで受け取ることができます。 また、社会保障、特に基礎補償と呼ばれる生活費等の支給を受けるには、社会住宅に入る、自家用車は持てないと言った基準がありますが、こうした基準も一時的に適用除外になります。 従って、自宅にとどまりつつ受給できます。 納税に係る支援 納税は多くの事業者、フリーランスにとって頭の痛い問題です。 ドイツでは所得税や法人税は前年度の売上に応じて今年度分は前払いするのが普通です。 しかし、前年度の売上をベースに計算されるため、今年収入が激減した場合に税金の前払いで資金が底を尽きる可能性があります(ドイツの税金は本当に高い)。 そこで、今年度に限り、前年度実績で引き落とさず、一時的に支払いを停止させることが認められます。 また、税金をしはらない場合には財産処分等の執行が行われますが、こちらも一時的に停止できます。 これらの措置は、コロナ危機後、つまり確定申告時に調整されます。 図:連邦財務省による社会保障のインフォグラフィック 出典:連邦財務省を著者翻訳(2020年4月4日取得) これらの対策は原則小規模事業者向けです。 大企業は耐える体力があるだろうと見込んでいると考えられます。 大企業は融資は受けられても補助はあまりありません。 フリーランスの生活費向け補助金 しかし、これらの補助金では自営業者やフリーランスは人件費や保険料などの生活費を賄うことが認められていません。 そこで、こうした零細企業で働く人達の人件費は州政府が補助を出すケースが多くなっています(これは現在行われている補助金の連邦レベルでの調和措置の前の話です。 4月6日以降は新しい仕組みに移行するので注意してください)。 例えばベルリンでは、自営業者、フリーランス、零細事業者は人件費として使える資金が5000ユーロ受け取ることができます。 これはベルリンに活動拠点があり、納税者番号を持っている人は原則受けられます(ドイツ人か、永住権保持者かと言ったことは今のところ問われていません)。 受けられないのは、コロナ以前に破産申請やその他の経済支援を受けており、コロナ危機のダメージによる収益減とは認められないケースです。 私のケース 私はフリーランスで普段は家で仕事するか通訳として外へ出ているため、固定費はほとんどかかりません。 ですので今回はベルリン都市州政府が支給する人件費のための補助金5000ユーロのみを申請しました。 ベルリン(ベルリンは特殊で自治体1つで州と同じ権限が与えられると都市州です)は、政府が所有する州銀行に傘下にあるベルリン投資銀行が実務を請け負っています。 ドイツでは国の決めた施策も実行は州政府に任せられていることが多いため、この方法は特殊なものではありません。 また、州によって実働部隊は異なるようです。 ベルリンでは投資銀行がオンライン申請の仕組みを作り、3月28日より申請受付を開始しました。 私は開始後しばらくして申請のオンライン行列に並びました。 50000番の少し手前でしたが、開始翌日に申請を行うことができ、数日で5000ユーロが振り込まれました。 ホッとしました。 これはあくまで一時金であり、申請は一回のみ認められます。 また、コロナ危機のダメージが少なかった場合には確定申告時に調整し、返納する必要もあるようです(この5000ユーロは収入として課税対象です)。 この国の補助金に何をどれだけ上乗せするかは州によって大きく異なります。 デュッセルドルフやケルンのあるノルトライン・ヴェストファーレン州は芸術家だけにさらに2000ユーロを補助したようです。 他にも支援が受けられる企業の規模を10人から100人に拡大している州もあります。 ドイツは自営業者が多く、その中でもセグメントとして最も大きいのが自営の芸術家です。 彼らの支援こそ最も迅速に行う必要があると考えられたのが今回の支援の背景にあるのでしょう。 図:ドイツの自営業者の数(セグメント別、2019年、フリーランス除く、単位は1000人) 出典:Statista 一番下33万2014人が自営の芸術家 報道ベースですが、現時点までで支援を申請している人や企業は政府の想定を大幅に上回っており、確保した資金のうち、即時支援は恐らく不足すると言われています。 また融資の方も応募が殺到しており、こちらも当初予算より大きくする必要がありそうです。 また、補助金は10人以下の事業者が原則対象なので中小企業にも融資でなく補助金を求める声も上がっています。 これらが今後どのように反映されるかは現時点ではわかりません。 医療分野への支援 最後に事前に質問を頂いていたが、番組内で聞かれなかったものとして、医療分野への支援を上げておきます。 医療分野には以下の支援が与えられています。 ・35億ユーロを予防接種や防護装備 ・55億ユーロを感染拡大対策へ ・医療従事者への支援 ・病院等支援 ・マスク等のEU圏外への輸出禁止 以上、ラジオ番組のために調べたものから政府ウェブサイトのインフォグラフィックを参考にまとめました。 これはあくまで政府の取り組みであり、実際にドイツで申請を考える方はきちんと自分で調べてください。 よろしくおねがいします。 参考文献 連邦財務省 著者はドイツで10年以上に渡り、エネルギーや環境政策の調査を行い、クライアントに報告書をまとめたり、提案を行ってきました。 本ブログは抽象的ながら必要な背景情報を提供しておりますが、具体事例について興味があったり、ビジネスに関心がある方は下記までお気軽にお問い合わせください。 nishimura a umwerlin.
次の記事によれば、DKVは2014年に人工知能(AI)を取締役に指名して話題となり、AIを用いて医療金融などの世界潮流を分析している一風変わった企業であるという。 そのDKVのHPを見ると、コロナに対して安全な国(Safety Countries)のトップ10は表1のようになっている。 1位がイスラエル、2位がドイツ、3位が韓国で、日本が9位にランクインしている(4月16日時点)。 イスラエルが首位になっている理由として、同国最大級のシュバ病院のアーノン・アフェク副院長は、「(中東情勢が不安定化する中で)イスラエルでは不測の事態に備えて平時から訓練しているため、病院や軍、警察などがどう対処すべきか熟知している」ことを理由に挙げている(前掲記事)。 2位のドイツはコロナ感染者数が12万7584人もいるが、死亡者を3254人に抑えることができている。 韓国や中国はすでにコロナ感染者数の抑え込みに成功しており、台湾とシンガポールのコロナ死亡者は10人以下であり、コロナを制御できている。 そのようななかで、日本が9位にランクインしている。 これをどう解釈すればいいのだろうか? 9位というのは、本当にコロナ対策の日本の実力を示したランクなのだろうか? 一方、コロナのリスクの高い国(Risk Countries)のトップ10は表2の通りであり、1位がイタリア、2位が米国、3位が英国、4位がスペイン、5位がフランスなどとなっている。 これら欧米諸国は、コロナによる死亡者数が多いこともあり、皮膚感覚としても、まあまあ納得できる。 最も支援が手厚い国ランキングで日本が3位 さらに、DKVのHPによれば、コロナ対策に関して最も支援が手厚い政府(Most Supportive Government)として、1位にドイツ、2位に米国、そして3位に日本がランクインしている。 これには、相当な違和感を覚える(表3)。 まず日本は、諸外国と比べると PCR検査数が異常なほど少ない。 また、緊急事態宣言を出すのが遅すぎた。 さらに緊急事態宣言による休業要請の対象をめぐって、政府と地方自治体が揉めた。 加えて、売上や所得が減少した中小企業に200万円、個人事業主に100万円を支給すると言っているが、どれもこれもハードルが高く、手続きが煩雑で、本当に困っている人々に届くのかわからない。 4月16日には、与党の公明党が安倍首相に直接、「所得制限無しで1人10万円現金給付」を迫り、これが通ったが、いつ払われるかわからない。 このように、日本政府が迷走していることを挙げだしたらキリがない。 したがって、何をどう勘案したら、最も支援が手厚い国の第3位に日本がランクされるのか、DKVのAIの正気(アルゴリズムか?)を疑いたくなる。 以上のように、DKVのAIがはじき出したランキングをそのまま鵜呑みにすることはできないが、同社のHPには、コロナに対して安全な国1位のイスラエル、2位のドイツ、そして9位の日本について、どのような項目を評価したかが掲載されている。 この3カ国の比較は、大いに意味があると思われる。 そこで本稿では、その詳細を報じたい。
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