徒然草第52段 徒然草 (上) 第52段 仁和寺にある法師、年寄るまで石清水を拝まざりければ、 仁和寺にある法師、年寄るまで石清水を拝まざりければ、心うく覚えて、ある時思ひ立ちて、たゞひとり、徒歩より詣でけり。 極楽寺・高良などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり。 さて、かたへの人にあひて、「年比思ひつること、果し侍りぬ。 聞きしにも過ぎて尊くこそおはしけれ。 そも、参りたる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、神へ参るこそ本意なれと思ひて、山までは見ず」とぞ言ひける。 少しのことにも、先達はあらまほしき事なり。 にある法師: 仁和寺に居た僧侶。 は、京都市右京区御室にある真言宗御室派総本山。 仁和4年(888)宇多天皇の創建という。 まで石清水を拝まざりければ: 年取るまで石清水八幡神社に参詣したことがないので。 「石清水八幡神社」は、京都府八幡市にある山上の神社。 木津川・宇治川・桂川の合流点、淀川の始点付近、天王山の反対側の山上にある。 覚えて: 心残りに思っていたので。 ・高良などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり: <ごくらくじ・こうらなどおがみて>と読む。 極楽寺は、石清水にあった神仏混交の寺院。 また、高良は高良神社で、石清水八幡の付属の神社。 この仁和寺の僧は、付属の神社と神仏混交の寺院を参詣して「かばかり=これだけだと思って」帰ってきてしまったのである。 の人にあひて: 仲間 の人に向かって。 仁和寺の同僚の僧侶でもあるか? たる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど: みんなぞろぞろと山の上の方に登っていくので、何があるのかしらんと、私も興味があったけれど、。 本意なれと思ひて、山までは見ず: この僧侶は、極楽寺と高良神社が石清水八幡と思っていたので、ついでに山に登るのは神聖さに対する一種の冒涜行為と思っていたのである。 にも、先達はあらまほしき事なり: まあ、こんな簡単なことでも、指導者というものが必要なのだ。 世の中、この「仁和寺にある僧」のような民衆が圧倒的に多いのではないか? そうでなければ、これ程までにご粗末な世の中にはならなかったはずで。 次段ともならんで、本集中でもっとも有名な一段。 にんなじにあるほうし、としよるまでいわしみずをおがまざりければ、こころうくおぼえて、あるときおもいたちて、ただひとり、かちよりもうでけり。 ごくらくじ・こうらなどをおがみて、かばかりとこころえてかえりにけり。 さて、かたえのひとにあいて、「としごろおもいつること、はたしはんべりぬ。 ききしにもすぎてとうとくこそおわしけれ。 そも、まいりたるひとごとにやまへのぼりしは、なにごとかありけん、ゆかしかりしかど、かみへまいるこそほいなれとおもいて、やままではみず」とぞいいける。 すこしのことにも、せんだつはあらまほしきことなり。
次のそんな「よく分からない」用語の中でも、今回は冬~春によく見かける 「しぼりたて」「あらばしり」「おりがらみ」の3つを解説していきたいと思います。 これらはいずれも冬の「新酒」シーズンに関係があります。 この3つがいったい何なのか、そしてどんな味わいなのかを説明しつつ、後半ではおいしい銘柄も紹介します。 さて、申し遅れましたが私は「しょうゆ愛好家」(最近テレビでこう表現されました)として醤油に関するブログや「醤油手帖」という本を書いている杉村啓です。 醤油などの調味料だけでなく、お酒にまつわる本もたくさん書かせていただいています。 ソレドコでは、、との違い&それぞれのおすすめ銘柄の紹介など、日本酒関連の記事を数々書かせていただきました。 今回は「しぼりたて」「あらばしり」「おりがらみ」という名前がついた日本酒について解説していきます。 【もくじ】• 「新酒」はフルーティーな香り、フレッシュな甘さが特徴 「しぼりたて」「あらばしり」「おりがらみ」の前に 「新酒」について説明する必要があります。 新酒と聞くと、文字通り「新しいお酒」とだけ思うかもしれません。 しかし、この「新酒」という言葉はちょっとだけややこしさを持っています。 広い意味での新酒、狭い意味での新酒の2パターンがあるのです。 広い意味での「新酒」 日本酒の世界には「酒造年度」というものがあります。 広い意味での「新酒」は、「その酒造年度に造られたお酒」という意味です。 お米が1年を過ぎると「古米」になるのと同じと考えるといいでしょう。 お米から造られるお酒なので、同じように呼んでいるのですね。 狭い意味での「新酒」 もう少し狭い意味では、「その年に造られた『新米』で造ったお酒」を指します。 だいたい3月くらいまでに造られたお酒を「新酒」と呼ぶ傾向があります。 新米自体にも、実は「原料玄米が生産された当該年の12月31日までに容器に入れられ、若しくは包装された玄米(精米されていても良い)」という定義があります。 「新酒」の味わいの特徴はフレッシュさ 秋から冬にかけてよく見る新酒は、狭い意味の方の新酒です。 特徴はなんといっても 「華やかでフルーティー、フレッシュな甘さと酸味がある」こと。 この時期は、個人的には「日本酒が最もおいしい季節(と、多くの人が感じている)」ではないかと思うのです。 というのも、近年人気があるお酒はまさに華やかでフルーティーで、フレッシュな甘さと酸味があるもの。 そのまま新酒に当てはまります。 実際、この季節に販売される新酒を「夏や秋にも飲みたい」といった声を、一度だけでなく何度か聞いたことがあります。 それだけ人気が高いお酒でもあるのです。 新酒の季節に飲めるお酒 新酒の季節には「新酒」も含めておいしいお酒が出回ります。 ここでは巷でよく見る3つを紹介します。 1つめ:しぼりたて これは言葉からイメージしやすいですよね。 まず、どろどろに発酵している「もろみ」を日本酒(液体)と酒粕(固体)に分離することを「搾り(しぼり)」と言います。 通常のお酒の「火入れ」はしぼった際に1回、貯蔵してお酒を落ち着かせて瓶詰めの前に1回、と合計2回行うのですが、それを1度も行わないお酒を「生酒」と呼びます。 そしてその生酒の1つが「しぼりたて」で、火入れをせず、貯蔵もほとんどしないで出荷されるお酒です(蔵によって定義が異なります)。 フレッシュでできたての味を楽しめるのがポイントです。 【まとめ】 「あらばしり」(荒走、新走)には2つの意味がある。 1つは、もろみをしぼる際、最初に出てくる部分のこと。 おり(浮遊物)が混じっており、ピリッと濃厚な味わいが楽しめる。 もう1つは、その年に収穫された新米で造ったお酒のこと。 3つめ:おりがらみ 最後は「おりがらみ」。 搾ったお酒をろ過する際に、どうしても細かい「おり」が残っています。 通常のお酒は、この浮遊物を沈殿させるなどの方法で取り除く「おりびき」という作業を行います。 ですが、あえて「おり」を残したままにするお酒もあります。 これが「おりがらみ」。 「おり」が残っている分、 コクのある味わいを楽しめます。 あとは若干の 微発泡感があるのも特徴でしょうか。 「おりがらみ」も、基本的には新酒の季節に出荷されます。 近年では 「うすにごり」として夏に販売されることもありますが、冬に多く出ます。 【まとめ】 「おりがらみ」とは、しぼったお酒をろ過する際に「おり」という浮遊物をあえて取り除かず残したお酒のこと。 コクのある味わい、微発泡感が特徴。 夏に「うすにごり」という名前で出回ることもある。 「しぼりたて」「あらばしり」「おりがらみ」の3つを紹介しました。 じつは、これらの要素は兼ね備えることができます。 例えば「しぼりたて」かつ「おりがらみ」のお酒もあります。 「あらばしり」かつ「おりがらみ」などもありますね。 もちろん、そのお酒はそれぞれの特徴を併せ持つことになります。 銘柄紹介 今回は「しぼりたて」「あらばしり」「おりがらみ」のお酒で、かつ「楽天市場」で入手できるものを紹介します(2020年1月現在)。 記事をご覧になったタイミングと銘柄によっては売り切れていたり、販売が終了していたりすることもあるかもしれません。 ですが、お酒との出会いは一期一会。 とくに季節物はタイミングを逃すと手に入りにくいので、気になったら買ってみることをオススメいたします。 【もくじ】• 【しぼりたて】笑四季(えみしき)Sensation White 純米 生酒 R1BY(滋賀県・笑四季酒造株式会社) 「笑四季(えみしき) Sensation White 純米 生酒 R1BY」はしぼりたての新酒です。 フレッシュでフルーティーな香りと、柔らかな酸味と強めのコク、軽快なキレを持っています。 やや甘めのお酒ですね。 甘さが強すぎないため、和食とばっちり合いそうです。 ちなみに、R1BY(Reiwa 1 Brewery Year)というのは「令和元年醸造年度」に造られたお酒という意味です。 したがって、本稿執筆時(2020年1月)のタイミングでは「新酒」になるのですね。 【しぼりたて】一ノ蔵 特別純米生原酒 しぼりたて(宮城県・株式会社一ノ蔵) 新酒しぼりたてらしいフレッシュな酸味と、柔らかな甘み、そして豊かなコクと旨味を感じます。 単体で飲んでもいいし、料理と合わせてもいい。 食べ飽きないご飯のように、飲み飽きないお酒です。 ラベルを見てみると「米(宮城県産)」としか書かれていませんが、どんなお米を使っているかというと、なんとササニシキなのです。 日本酒はお酒を造るために品種改良が重ねられた酒造好適米というお米(山田錦や雄町などが有名)を使って醸すことが多いのですが、食べるための食米でも造ることができます。 この「一ノ蔵 特別純米生原酒 しぼりたて」も、食米のササニシキを醸してできたお酒。 ササニシキを純米吟醸酒並の精米歩合55%まで磨いているのですね(玄米を100%として、55%になるまで削った状態という意味。 お米は外側ほど栄養分が多く、複雑な味わいを持っています。 磨けば磨くほど雑味の少ない味わいになります)。 【しぼりたて】真澄 しぼりたて生原酒 純米吟醸 あらばしり(長野県・宮坂醸造株式会社) 口当たりがよく、華やかな香りとあわさってとても飲みやすいお酒。 甘味もあるのですが、酸味もほどよくあり、後味をスパッと切ってくれます。 このキレの良さが、料理とも合わせやすくしてくれているのですね。 そのまま飲んでもいいですし、クラッカーやチーズといった軽いおつまみと合わせて飲むといつまでも飲み続けられそうです。 このお酒の名前にある「あらばしり」は、「新走」と書く方のあらばしりです。 つまりその年に収穫された新米で造ったお酒ということ。 もろみからお酒をしぼるときの最初の部分ではありません。 ちょっとややこしいですが、新走かつしぼりたてのお酒です。 ちなみに、2015年から「真澄 あらばしり」は純米酒として造られていたのですが、2018年からは純米吟醸酒に変更され、さらに2019年11月から今のラベルになりました。 【あらばしり】山法師 純米吟醸あらばしり生(山形県・六歌仙酒造株式会社) やや清涼感のある爽やかな香りで、口に含むと優しい旨味と酸味が広がります。 やや荒々しさやピリッとした炭酸を感じるのは、あらばしりならでは。 飲み心地が良くて、クイクイと飲んでしまいます。 こちらの「山法師 純米吟醸あらばしり生」は、山形県が開発した酒造好適米「出羽燦々(でわさんさん)」を使って醸されたお酒。 酒造好適米は、主に食べるために栽培される食米(コシヒカリなど)と比べると粒が大きく、中心に「心白(しんぱく)」と呼ばれる白っぽい部位があるのが特徴です。 白く見えるのは小さな隙間がたくさんあるからで、この隙間に麹菌がうまく入り込み、中心までしっかり醸すことができるので良いお酒になるのです。 酒造好適米としては山田錦や雄町などが有名ですが、最近では各県でさまざまな酒造好適米が開発されていて、おいしいお酒作りに一役かっています。 【しぼりたて】亀泉 純米吟醸 生原酒 CEL24 R1BY(高知県・亀泉酒造株式会社) 「CEL24」というのは、高知県が開発した酵母の名前です。 日本酒は原材料を見ると「米・米麹」が書かれていて、お米が味の決め手と思っている人も多いかもしれません。 しかし酵母も味に大きく影響します。 麹菌がお米のでんぷんを糖分に分解した後、その糖分を酵母がアルコールに発酵させます。 そのときに、酵母が香りの成分などを生み出すのですね。 香りも味わいを決定づける大きな要素です。 その香りを左右する酵母は、味に大きく影響するのです。 ではこの「CEL24」という酵母がどんな香りを生み出すのかというと、これがリンゴやパイナップルを思わせるような非常にフルーティーな香り。 甘味と酸味のバランスが絶妙で、白ワインを思わせるような味わいです。 実際、周囲のワイン好きはこのお酒が好きであることも多いです。 令和元年醸造なので、本稿執筆時(2020年1月)には「しぼりたて」として販売されていました。 【しぼりたて】越路吹雪 新酒しぼりたて 純米吟醸原酒(新潟県・高野酒造) ここまでも少し出てきましたが、「原酒」というのは、しぼったまま加水をしていないお酒のことを言います。 できたての日本酒はアルコール度数が高めなので、少量の水を加えて(誤解を恐れずに言えば「薄めて」)度数を調整することがあります。 「もったいない!」と思うかもしれませんが、少し水を加えることでまろやかに、飲みやすくなることも多いのですね。 ただ、水を加えるとアルコール度数だけでなく、味わいも少し薄まります。 そのため、濃厚な味わいが好まれる現代では 「原酒」を好んで飲む人も多いのです。 この「越路吹雪 新酒しぼりたて 純米吟醸原酒」は、しぼりたてならではの荒々しさや濃厚さも楽しめるよう原酒になっているお酒です。 フルーティーな香りと、やや辛口な味わいで、後味はスッキリ。 販売ページには「蟹をつまみに飲む新酒は最高に美味です!」と書かれていたのですが、ちょっと蟹を用意できませんでした。 代わりにラム肉と合わせたのですが、これも非常に良かったです! 【おりがらみ】豊醇無盡(ほうじゅんむじん)たかちよ 緑ラベル 無調整生原酒 おりがらみ(新潟県・高千代酒造) おりがらみならではの濃厚な旨味と甘味、そして酸味のバランスがよく、フルーティーな香りと合わさって、さながら グレープフルーツを彷彿させる味わいです。 おちょこで飲むのも良いですが、ワイングラスなどに入れると香りが際立ってまた味わいが変わりますよ。 「豊醇無盡(ほうじゅんむじん)」とは、簡単にいうと「香りが高く豊かなお酒が、限りない」という意味合いになります(無盡は無尽の旧字)。 「新潟県のお酒は淡麗辛口」というイメージを覆すべく、高千代酒造が造っているシリーズです。 このお酒の特徴の一つは「扁平精米(へんぺいせいまい)」という精米方法で磨いたお米を使っていること。 通常の方法で精米していくと、お米は球体に近づいていくのですが、この扁平精米という特殊な精米方法を使うと、楕円形でラグビーボールのような形を保ったまま周りを磨けるのです。 通常の精米方法に比べて、あまり磨かなくても(精米歩合の数字が大きくても)、周囲の雑味につながる部位を効率よく削り落とすことができるのが特徴です。
次のそんな「よく分からない」用語の中でも、今回は冬~春によく見かける 「しぼりたて」「あらばしり」「おりがらみ」の3つを解説していきたいと思います。 これらはいずれも冬の「新酒」シーズンに関係があります。 この3つがいったい何なのか、そしてどんな味わいなのかを説明しつつ、後半ではおいしい銘柄も紹介します。 さて、申し遅れましたが私は「しょうゆ愛好家」(最近テレビでこう表現されました)として醤油に関するブログや「醤油手帖」という本を書いている杉村啓です。 醤油などの調味料だけでなく、お酒にまつわる本もたくさん書かせていただいています。 ソレドコでは、、との違い&それぞれのおすすめ銘柄の紹介など、日本酒関連の記事を数々書かせていただきました。 今回は「しぼりたて」「あらばしり」「おりがらみ」という名前がついた日本酒について解説していきます。 【もくじ】• 「新酒」はフルーティーな香り、フレッシュな甘さが特徴 「しぼりたて」「あらばしり」「おりがらみ」の前に 「新酒」について説明する必要があります。 新酒と聞くと、文字通り「新しいお酒」とだけ思うかもしれません。 しかし、この「新酒」という言葉はちょっとだけややこしさを持っています。 広い意味での新酒、狭い意味での新酒の2パターンがあるのです。 広い意味での「新酒」 日本酒の世界には「酒造年度」というものがあります。 広い意味での「新酒」は、「その酒造年度に造られたお酒」という意味です。 お米が1年を過ぎると「古米」になるのと同じと考えるといいでしょう。 お米から造られるお酒なので、同じように呼んでいるのですね。 狭い意味での「新酒」 もう少し狭い意味では、「その年に造られた『新米』で造ったお酒」を指します。 だいたい3月くらいまでに造られたお酒を「新酒」と呼ぶ傾向があります。 新米自体にも、実は「原料玄米が生産された当該年の12月31日までに容器に入れられ、若しくは包装された玄米(精米されていても良い)」という定義があります。 「新酒」の味わいの特徴はフレッシュさ 秋から冬にかけてよく見る新酒は、狭い意味の方の新酒です。 特徴はなんといっても 「華やかでフルーティー、フレッシュな甘さと酸味がある」こと。 この時期は、個人的には「日本酒が最もおいしい季節(と、多くの人が感じている)」ではないかと思うのです。 というのも、近年人気があるお酒はまさに華やかでフルーティーで、フレッシュな甘さと酸味があるもの。 そのまま新酒に当てはまります。 実際、この季節に販売される新酒を「夏や秋にも飲みたい」といった声を、一度だけでなく何度か聞いたことがあります。 それだけ人気が高いお酒でもあるのです。 新酒の季節に飲めるお酒 新酒の季節には「新酒」も含めておいしいお酒が出回ります。 ここでは巷でよく見る3つを紹介します。 1つめ:しぼりたて これは言葉からイメージしやすいですよね。 まず、どろどろに発酵している「もろみ」を日本酒(液体)と酒粕(固体)に分離することを「搾り(しぼり)」と言います。 通常のお酒の「火入れ」はしぼった際に1回、貯蔵してお酒を落ち着かせて瓶詰めの前に1回、と合計2回行うのですが、それを1度も行わないお酒を「生酒」と呼びます。 そしてその生酒の1つが「しぼりたて」で、火入れをせず、貯蔵もほとんどしないで出荷されるお酒です(蔵によって定義が異なります)。 フレッシュでできたての味を楽しめるのがポイントです。 【まとめ】 「あらばしり」(荒走、新走)には2つの意味がある。 1つは、もろみをしぼる際、最初に出てくる部分のこと。 おり(浮遊物)が混じっており、ピリッと濃厚な味わいが楽しめる。 もう1つは、その年に収穫された新米で造ったお酒のこと。 3つめ:おりがらみ 最後は「おりがらみ」。 搾ったお酒をろ過する際に、どうしても細かい「おり」が残っています。 通常のお酒は、この浮遊物を沈殿させるなどの方法で取り除く「おりびき」という作業を行います。 ですが、あえて「おり」を残したままにするお酒もあります。 これが「おりがらみ」。 「おり」が残っている分、 コクのある味わいを楽しめます。 あとは若干の 微発泡感があるのも特徴でしょうか。 「おりがらみ」も、基本的には新酒の季節に出荷されます。 近年では 「うすにごり」として夏に販売されることもありますが、冬に多く出ます。 【まとめ】 「おりがらみ」とは、しぼったお酒をろ過する際に「おり」という浮遊物をあえて取り除かず残したお酒のこと。 コクのある味わい、微発泡感が特徴。 夏に「うすにごり」という名前で出回ることもある。 「しぼりたて」「あらばしり」「おりがらみ」の3つを紹介しました。 じつは、これらの要素は兼ね備えることができます。 例えば「しぼりたて」かつ「おりがらみ」のお酒もあります。 「あらばしり」かつ「おりがらみ」などもありますね。 もちろん、そのお酒はそれぞれの特徴を併せ持つことになります。 銘柄紹介 今回は「しぼりたて」「あらばしり」「おりがらみ」のお酒で、かつ「楽天市場」で入手できるものを紹介します(2020年1月現在)。 記事をご覧になったタイミングと銘柄によっては売り切れていたり、販売が終了していたりすることもあるかもしれません。 ですが、お酒との出会いは一期一会。 とくに季節物はタイミングを逃すと手に入りにくいので、気になったら買ってみることをオススメいたします。 【もくじ】• 【しぼりたて】笑四季(えみしき)Sensation White 純米 生酒 R1BY(滋賀県・笑四季酒造株式会社) 「笑四季(えみしき) Sensation White 純米 生酒 R1BY」はしぼりたての新酒です。 フレッシュでフルーティーな香りと、柔らかな酸味と強めのコク、軽快なキレを持っています。 やや甘めのお酒ですね。 甘さが強すぎないため、和食とばっちり合いそうです。 ちなみに、R1BY(Reiwa 1 Brewery Year)というのは「令和元年醸造年度」に造られたお酒という意味です。 したがって、本稿執筆時(2020年1月)のタイミングでは「新酒」になるのですね。 【しぼりたて】一ノ蔵 特別純米生原酒 しぼりたて(宮城県・株式会社一ノ蔵) 新酒しぼりたてらしいフレッシュな酸味と、柔らかな甘み、そして豊かなコクと旨味を感じます。 単体で飲んでもいいし、料理と合わせてもいい。 食べ飽きないご飯のように、飲み飽きないお酒です。 ラベルを見てみると「米(宮城県産)」としか書かれていませんが、どんなお米を使っているかというと、なんとササニシキなのです。 日本酒はお酒を造るために品種改良が重ねられた酒造好適米というお米(山田錦や雄町などが有名)を使って醸すことが多いのですが、食べるための食米でも造ることができます。 この「一ノ蔵 特別純米生原酒 しぼりたて」も、食米のササニシキを醸してできたお酒。 ササニシキを純米吟醸酒並の精米歩合55%まで磨いているのですね(玄米を100%として、55%になるまで削った状態という意味。 お米は外側ほど栄養分が多く、複雑な味わいを持っています。 磨けば磨くほど雑味の少ない味わいになります)。 【しぼりたて】真澄 しぼりたて生原酒 純米吟醸 あらばしり(長野県・宮坂醸造株式会社) 口当たりがよく、華やかな香りとあわさってとても飲みやすいお酒。 甘味もあるのですが、酸味もほどよくあり、後味をスパッと切ってくれます。 このキレの良さが、料理とも合わせやすくしてくれているのですね。 そのまま飲んでもいいですし、クラッカーやチーズといった軽いおつまみと合わせて飲むといつまでも飲み続けられそうです。 このお酒の名前にある「あらばしり」は、「新走」と書く方のあらばしりです。 つまりその年に収穫された新米で造ったお酒ということ。 もろみからお酒をしぼるときの最初の部分ではありません。 ちょっとややこしいですが、新走かつしぼりたてのお酒です。 ちなみに、2015年から「真澄 あらばしり」は純米酒として造られていたのですが、2018年からは純米吟醸酒に変更され、さらに2019年11月から今のラベルになりました。 【あらばしり】山法師 純米吟醸あらばしり生(山形県・六歌仙酒造株式会社) やや清涼感のある爽やかな香りで、口に含むと優しい旨味と酸味が広がります。 やや荒々しさやピリッとした炭酸を感じるのは、あらばしりならでは。 飲み心地が良くて、クイクイと飲んでしまいます。 こちらの「山法師 純米吟醸あらばしり生」は、山形県が開発した酒造好適米「出羽燦々(でわさんさん)」を使って醸されたお酒。 酒造好適米は、主に食べるために栽培される食米(コシヒカリなど)と比べると粒が大きく、中心に「心白(しんぱく)」と呼ばれる白っぽい部位があるのが特徴です。 白く見えるのは小さな隙間がたくさんあるからで、この隙間に麹菌がうまく入り込み、中心までしっかり醸すことができるので良いお酒になるのです。 酒造好適米としては山田錦や雄町などが有名ですが、最近では各県でさまざまな酒造好適米が開発されていて、おいしいお酒作りに一役かっています。 【しぼりたて】亀泉 純米吟醸 生原酒 CEL24 R1BY(高知県・亀泉酒造株式会社) 「CEL24」というのは、高知県が開発した酵母の名前です。 日本酒は原材料を見ると「米・米麹」が書かれていて、お米が味の決め手と思っている人も多いかもしれません。 しかし酵母も味に大きく影響します。 麹菌がお米のでんぷんを糖分に分解した後、その糖分を酵母がアルコールに発酵させます。 そのときに、酵母が香りの成分などを生み出すのですね。 香りも味わいを決定づける大きな要素です。 その香りを左右する酵母は、味に大きく影響するのです。 ではこの「CEL24」という酵母がどんな香りを生み出すのかというと、これがリンゴやパイナップルを思わせるような非常にフルーティーな香り。 甘味と酸味のバランスが絶妙で、白ワインを思わせるような味わいです。 実際、周囲のワイン好きはこのお酒が好きであることも多いです。 令和元年醸造なので、本稿執筆時(2020年1月)には「しぼりたて」として販売されていました。 【しぼりたて】越路吹雪 新酒しぼりたて 純米吟醸原酒(新潟県・高野酒造) ここまでも少し出てきましたが、「原酒」というのは、しぼったまま加水をしていないお酒のことを言います。 できたての日本酒はアルコール度数が高めなので、少量の水を加えて(誤解を恐れずに言えば「薄めて」)度数を調整することがあります。 「もったいない!」と思うかもしれませんが、少し水を加えることでまろやかに、飲みやすくなることも多いのですね。 ただ、水を加えるとアルコール度数だけでなく、味わいも少し薄まります。 そのため、濃厚な味わいが好まれる現代では 「原酒」を好んで飲む人も多いのです。 この「越路吹雪 新酒しぼりたて 純米吟醸原酒」は、しぼりたてならではの荒々しさや濃厚さも楽しめるよう原酒になっているお酒です。 フルーティーな香りと、やや辛口な味わいで、後味はスッキリ。 販売ページには「蟹をつまみに飲む新酒は最高に美味です!」と書かれていたのですが、ちょっと蟹を用意できませんでした。 代わりにラム肉と合わせたのですが、これも非常に良かったです! 【おりがらみ】豊醇無盡(ほうじゅんむじん)たかちよ 緑ラベル 無調整生原酒 おりがらみ(新潟県・高千代酒造) おりがらみならではの濃厚な旨味と甘味、そして酸味のバランスがよく、フルーティーな香りと合わさって、さながら グレープフルーツを彷彿させる味わいです。 おちょこで飲むのも良いですが、ワイングラスなどに入れると香りが際立ってまた味わいが変わりますよ。 「豊醇無盡(ほうじゅんむじん)」とは、簡単にいうと「香りが高く豊かなお酒が、限りない」という意味合いになります(無盡は無尽の旧字)。 「新潟県のお酒は淡麗辛口」というイメージを覆すべく、高千代酒造が造っているシリーズです。 このお酒の特徴の一つは「扁平精米(へんぺいせいまい)」という精米方法で磨いたお米を使っていること。 通常の方法で精米していくと、お米は球体に近づいていくのですが、この扁平精米という特殊な精米方法を使うと、楕円形でラグビーボールのような形を保ったまま周りを磨けるのです。 通常の精米方法に比べて、あまり磨かなくても(精米歩合の数字が大きくても)、周囲の雑味につながる部位を効率よく削り落とすことができるのが特徴です。
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