先週金曜、定例会見を終えた東京都の知事が、一目散に向かった先は議員会館。 の代表と意見交換するためだった。 玉木によると、議題はコロナ対策に充てる地方交付金の配分。 財政力が考慮されるため、ゆとりのある都は感染者が多いのに配分額が少ない点を改善して欲しいとの陳情を受けたという。 告示が迫る都知事選の話し合いは「全くありません」と玉木は記者に答えたが、額面通りには受け取れない。 玉木は先月18日、コロナ対応を巡り「現場の司令官である知事を、応援することはあっても足を引っ張るようなことをやっていいのか」と発言。 小池支援に含みを持たせた。 また、希望の党で小池と共同代表を務めた経緯もある。 小池は1日、の逢坂誠二政調会長とも意見交換。 野党第1、2党の幹部と会談を重ねる狙いは、知事選に向け、いまだ統一候補を立てられない野党の分断、「敵か、味方か」を分けるためのリトマス試験紙なのではないか。 常に自分の敵か、味方かを明確に区別。 つくり出した「敵」を徹底的に攻撃し、闘う姿勢を見せることで大衆にも「敵」への憎悪を植えつける。 その憎しみのパワーを自らの支持へと昇華させるのが、小池の常套手段だ。 前回4年前の都知事選から今まで嫌というほど見せつけられてきた。 緊急事態宣言に伴う休業要請の対象業種を巡り、西村コロナ担当相を「敵」と見なし、「社長かと思ったら、天の声がいろいろ聞こえて中間管理職になった感じ」と世間の同情を買おうとしたのは記憶に新しい。 それまで小池も政権同様、五輪開催にしがみつき、コロナ対策は二の次。 それも決裁の手順を無視し、記録を正確に残さない形で、専門家会議の議事録すら残さない政権と同じ穴のムジナだ。 対応が出遅れたせいで、医療崩壊寸前という決定的な失政を犯した責任は棚上げし、五輪延期が決まった途端、一転とは開いた口がふさがらない。 小池は記者会見やテレビ行脚を重ね、自ら出演するCMまで作って「強いリーダー」を演じてきた。 CM制作につぎ込んだ都民の血税は約9億円。 目に余るコロナと電波の選挙利用だ。 まさに風見鶏知事の本領発揮。 彼女は一切、定見など持たず、ひたすら機を見るに敏なだけ。 いつだって自分にとって都合のよい側ばかりにつく。 、、……。 政界進出以来、小池は傍らに身を置く権力者をコロコロ代え、自分に都合のよい側に立ち続けた。 彼らに引き立てられることで着々と出世。 「政界渡り鳥」「権力と寝る女」とヤユする男社会全体を「敵」に見立てて、自分の「味方」を増やし、権力の階段を駆け上がってきたのである。 敵への復讐のためだけに権力を行使する女帝 「彼女は常に自分ありきではないでしょうか。 自分の言動が世間にどう受け取られるか、それによる『効果』だけを計算している。 政治家として、自分が生じさせた現実に対する責任を引き受けないように見えます」 そう語るのは、足かけ3年半、100人を超す関係者に取材を重ね、小池の実像に迫った著書「 」(文芸春秋社)を上梓したばかりのノンフィクション作家・石井妙子氏だ。 こう続ける。 「彼女の政治の源泉は『復讐』です。 過去に見下された『敵』を見返すために権力を行使する傾向があります。 その代表が石原慎太郎元都知事。 彼女の父親は昔、政治家になりたくて、国政への出馬歴もありましたが、その父親は石原さんの選挙を手伝ったことがあった。 しかし石原さんはそんな彼女の父を相手にしなかった。 その恨みが都知事就任後、石原さん追及の百条委員会設置につながったと思います」 小池はメディアも徹底して敵と味方に分断する。 総選挙直前の2017年9月、希望の党を結党したばかりの定例会見で小池から「排除」発言を引き出したジャーナリストの横田一氏が言う。 「あれ以来、会見で小池氏から一度も指名されなくなりました。 私に限らず、批判的な質問をした記者を彼女は敵とみなし、二度と当てません」 本紙記者も小池にやられた口だ。 4月6日の会見で五輪延期前のコロナ対策の不手際を問うと、小池は「オリンピックとの関係で御紙においては、そういう論を展開されているのかもしれませんが、それは全く関係がございません」とケンカ腰。 以来、指名されていない。 1面見出しに「小池 森退治」と書いた紙面を脇に抱え、わざわざメディアに見せるように登庁したのだ。 自分に都合のよい時だけ利用し、都合が悪くなれば排除する。 彼女の本性が如実に表れている。 昨年末から先週金曜まで私が参加した27回の会見で、10回以上も指名された記者が複数います。 4年前の知事選で公約に掲げた「満員電車ゼロ」「待機児童ゼロ」など「7つのゼロ」は「達成ゼロ」。 昨年4月の会見で「ペット殺処分ゼロを1年早く達成した」と言い張ったが、この発言には裏がある。 環境省が老齢や攻撃性のある犬猫などは「殺処分の数から除く」と基準を変更。 実際には146匹を殺処分しながら、都は「ゼロ」と見なしただけだ。 小池はその事実を伏せ、殺処分ゼロを強調したのである。 築地市場の豊洲移転も嘘の典型だ。 一度は「築地にも市場機能を残す」と約束。 実行しないことを追及されると「そんなことは言っていない」とシラを切り、自分の発言をなきものにした。 そして嘘に嘘を重ねた最たる例が、前出の石井妙子氏の新著で再燃した「カイロ大学卒」の学歴詐称疑惑である。 再び石井妙子氏が語る。 「自分の過去に対して平気で嘘をつく人は、未来に対して嘘をつくことにも抵抗がない。 その結果、期待した人々を裏切っても何とも思わないのです。 敵をつくり、強い言葉で攻撃し、民衆をあおる彼女の手法に、拍手喝采を送った側にも問題があります。 思えば長く続いた閉塞感から、国民が『強い』リーダーを求め続けたのが平成の時代でした。 コロナ禍で再び閉塞感が強まる中、政治家としての彼女を生み出した責任を考えるべきです」 出回る醜聞。 今なお独自の休業要請を強いながら、緊急事態宣言の解除と同時に協力金を打ち切る冷酷。 何よりも五輪延期で生じる数千億円もの追加費用の無駄。 この金をなぜ、都民の生活に使えないのか。 それでも有力な対立候補は不在で下馬評は圧勝ムード。 しかし、出馬を表明した元日弁連会長の宇都宮健児氏の主張は全てまっとうだ。 PCR検査拡充、休業補償の徹底、カジノ誘致反対、専門家の判断を仰ぎ、早い段階で五輪中止を決める。 「五輪の予算を使えば都民の命を救える」との訴えは傾聴に値する。 地味ながら、小池よりははるかにマトモな候補だ。 とにかく、小池圧勝なんて、とんでもない。 その阻止こそが、今度の都知事選の最大の焦点である。
次の東京都知事選挙の結果です。 366万1371票。 84万4151票。 65万7277票。 61万2530票。 17万8784票。 4万3912票。 2万2003票。 2万1997票。 2万738票。 1万1887票。 1万935票。 8997票。 5453票。 5114票。 4760票。 4145票。 4097票。 3997票。 3356票。 2955票。 2708票。 1510票。 現職の小池氏が、立憲民主党、共産党、社民党の支援を受けた宇都宮氏やれいわ新選組の山本代表、日本維新の会が推薦した小野氏らを抑えて、2回目の当選を果たしました。 小池氏は、兵庫県出身の67歳。 民放のニュースキャスターなどを経て、平成4年の参議院選挙で、当時の日本新党から立候補して初当選しました。 翌平成5年に衆議院議員に転じたあと、平成14年には自民党に入り、環境大臣や防衛大臣、党の総務会長などを歴任しました。 前回・4年前の都知事選挙では政党の支援を受けずに立候補し、自民・公明両党などが推薦した候補らを破って当選し、初めての女性の都知事になりました。 今回の選挙でも、小池氏は、政党の推薦や支持は求めませんでしたが、自民党は、独自候補の擁立を断念し、二階幹事長が支援する考えを示していたほか、公明党も実質的に支援しました。 また、小池氏は、新型コロナウイルス対応のため、知事としての公務を優先するとしたほか、人が密集することを避ける必要があるとして街頭演説は一切行わず、インターネットを通した運動に徹しました。 そして、新型コロナウイルスの第2波に備えるため、医療や検査体制を充実させていくことや、来年に延期された東京オリンピック・パラリンピックは簡素化して費用を縮減すると訴えました。 その結果、自民党や公明党の支持層に加え、宇都宮氏を支援した立憲民主党の支持層や、特定の支持政党を持たない無党派層などから幅広く支持を集めました。 今回の確定の投票率は、55. 00%で、前回4年前の選挙を4. 73ポイント下回りました。 小池氏は「都民の力強い支援に対し、大変うれしく感じると同時にこれから大切な2期目の重責を担っていく、その重さに大変責任を感じる。 喫緊の課題は何よりも新型コロナウイルス対策で、都民の皆様方の健康と命、暮らしを守っていきたい」と述べました。 新型コロナウイルスの対策として再び事業者に休業要請を行う可能性について、「緊急事態宣言下のように一斉にみんなが休むという形ではなく、かなりピンポイントで、全体での休業要請でない効果的な方法を進めていきたいと考えている」と述べました。 また「これからすぐ行わなければいけないのは補正予算の編成だ。 患者を多く受け入れてた医療機関はいま経営的にも大変厳しい状況にある。 これらを、国の補正予算を活用しながら補填(ほてん)していく。 そして第2波にも備えながら目下、進んでいることに対して3000億円規模になろうかと思うが、補正予算をしっかりあてていきたい」と述べました。 東京オリンピック・パラリンピックについて、「子どもやアスリートは来年に延期されたとはいえ大会を楽しみにして心待ちにしていると思う。 ある意味で、コロナに打ち勝った証になることを目標に、コロナ対策を進めていくのも一つだと思う。 都民の健康、命を守ることが最優先だが、ひとつのわかりやすい目標になろうかと思う」と述べました。 そのうえで「都としてもオリンピック・パラリンピック後のことも考えながらこれまで多大な投資もしてきた。 これらをいかすためにも、簡素化したり、いろいろやり方などをIOCと連携したりしながらどのように進めるかを検討し、大会を開催できるよう進めていきたい」と述べました。 都知事選挙には3回目の挑戦となった宇都宮健児さんは、午後8時すぎ、東京・新宿区の選挙事務所で支援者にあいさつし、「多くの都民の期待に応えたかったが、それが実現できなくて大変残念だ」と述べました。 そのうえで今回の選挙について「コロナの感染症が拡大する中で一定の制限を受けた選挙戦だったが、コロナ対策、オリンピック・パラリンピック、カジノ誘致の問題など、さまざまな都政に関する争点を明らかにすることができたと思っている」と述べました。 そして「今回のコロナ災害で、収入が減ったり、仕事やすまいを失ったり、生活や命が脅かされている人たちがたくさん出てきている状況がストレートに都政に届いていないと感じている。 そのような切実な課題が伝わるよう、小池さんにはぜひ風通しのよい都政を作っていただきたい」と述べました。 れいわ新選組の代表、山本太郎さんは、東京・新宿区の事務所で支持者にあいさつし、小池さんを山に例え、「強かった『百合子山』、高かった『百合子山』という感想だ。 私たちやほかの候補者に託していただいたたくさんの票があり、小池知事の課題は山積しているのだと思う」と述べました。 また、「2月から6月までのコロナによる損失は十分に補填されていない。 いま必要な手当てを行わずに、自分たちの金もうけのことを最前に置き、世の中を回している状況を止めるには、東京都知事になる以外にはなかった」と述べました。 その上で、「17日間、直接話を聞いていただいた人は1割にも届かないと思う。 多くの人にリーチするのは難しいと選挙のたびに思うが、諦めるわけにはいかない」と述べました。 熊本県の元副知事で、初めて都知事選挙に挑戦した小野泰輔さんは、午後8時すぎに東京・品川区の事務所で支持者にあいさつし、「民主主義をもっともっと前に進めていくこと、都民や国民が自分事として本当に政治に向き合って、どのような政治参加をしていけばよい社会、よい東京が作れるのか、子どもたちに誇れる日本を残せるのか、そういうことを考えるきっかけを作りたかった」と述べました。 そのうえで、「東京で新型コロナウイルスの感染者も増え続けている。 的確なマネジメントができているのかどうかもこれから小池さんは問われることになると思う。 どのようにこれから取り組んでいくのか、今回の選挙からスタートして都民の皆さんがしっかりと見ていく必要があると思う」と述べました。
次の『女帝 小池百合子』(石井妙子/文藝春秋) 2020年5月29日に発売されたが約2週間で15万部を突破し、ノンフィクションとしては異例のベストセラーとなっている。 本書では 小池百合子東京都知事の 学歴詐称について言及しており、出版元である文藝春秋が発行する「週刊文春」(6月4日号も『小池百合子 カイロ大首席卒業の嘘と舛添要一との熱愛』という記事を掲載し、この問題に言及している。 他方、カイロ大学は2020年6月8日付で、「1976年10月にカイロ大学文学部社会学科を卒業したことを証明する」との声明を発表した。 カイロ大学の声明が真実だとすれば、本書は真実に反する内容を発表したことになる。 今後、小池知事が「文春」に対してどのような対応をとるのかは定かではないが、仮に小池知事が「文春」を訴えた場合に、どのような展開を迎えるのかを法的な観点から検討してみよう。 小池知事が「文春」を訴える場合、名誉毀損に基づく損害賠償請求を求めることになる。 具体的には、慰謝料と謝罪広告を求めることになるだろう。 名誉毀損に基づく損害賠償請求は、「被害者の社会的評価が低下したこと」が要件であるが、「小池知事が学歴詐称をしている」という事実が、小池知事の社会的評価を低下させることは明白である。 だから、これは一見名誉毀損に相当するように思える。 これに対して「文春」側は「真実性の抗弁」および「相当性の抗弁」を反論として主張することができる。 つまり、真実と信じたことを報道したわけであるから無過失であり、名誉毀損による損害賠償請求に値しない、という主張である。 結論を言えば、文春側のこれらの抗弁のいずれかが認められれば、損害賠償請求が認められないということになる。 仮に小池知事が「文春」を提訴した場合には、このように真実性の抗弁や相当性の抗弁が主たる争点になると考えられる。 「真実性の抗弁」と「相当性の抗弁」 以下、「真実性の抗弁」と「相当性の抗弁」についてもう少し具体的に説明しよう。 真実性の抗弁とは、(1)摘示された事実が真実であること、(2)摘示された事実が公共の利害に関する事実に関するものであること、(3)事実摘示がもっぱら公益を図る目的であること、の3つの要素から成り立っている。 小池知事は、現在東京都知事という立場にあり、その資質の判断要素の一つである学歴を詐称しているという事実を公表することは、公共の利害に関するものである。 そして、小池知事が東京都知事として相応しいのかということを論じるために学歴詐称を公表したと考えられる(少なくとも、そのような主張をするであろう)ので、「もっぱら公益を図る目的」も認められる可能性は高い。 とすれば、「学歴詐称」が真実なのか否かが重要な争点となる。
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