大抵の人はことのことを知らないから、スピーカーケーブルの違いはブラインドテストで明確になると考え、太さが違うケーブルを「同じ長さ」に切りそろえて、取っ替え引っ替え比較視聴をやってしまう。 そして、 「これこそが、スピーカケーブルによる音の変化である」 「ケーブルで音が変わることを実証した」 と勘違いする。 極端に太さが違うケーブルを「同じ長さ」に切りそろえて比較すれば、差が出るのは当たり前のこと。 それはもちろん、ケーブルの音の差などではない。 ブラインドテストを試みると統計的に「有意差」が見つかることがある。 この結果から、 「オーディオは、何をやっても、音が変わるんだ」 という結論を出してしまう。 そんな人たちに、「計測でわからないものが、なぜ聴感でわかるのか?」と質問すれば、「未だ解明されていない、未知な部分があるんだ」ということにして考えるのをやめてしまう。 「オーディオは、何をやっても、音が変わる」 理由 例えば、ピンケーブルを変えて、音が変わったという統計的な結果を得たとする。 しかしそれは、ピンケーブルの音の差ではない可能性が高い。 なぜかというと、「ピンケーブルを変える」という操作をすると、 別のものが同時に変わってしまうため。 この「別のもの」とは何だろう。 それを理解するにはまず、比較試聴で聴く音が次の3つの総和になることを知る必要がある。 人間が聞く音=主観(心理的変動分)+ 物理的変動分 + 実際の変化 2 私たちが知りたいのは「実際の変化」。 ブラインドテストは「主観」を排除するが、「物理的変動分」については排除できない。 これが「別のもの」の正体だ。 この中身には次がある。 1.出力感度(音量)の変化 2.試聴点までの伝達特性の変化 3.スピーカの特性変化 4.接触抵抗の変化(ケーブル類の場合) 5.直流抵抗の変化(ケーブル類の場合) 出力感度(音量)の変化 出力感度(同じソースを再生した時の耳に届く音量)は機器によって違う。 チェンジのたびに校正信号を使って試聴点の音圧を正確に校正しなければならない。 ボリウムにギャングエラーがある場合はこれも調整して排除しなければらなない。 試聴点までの伝達特性の変化 人間の存在が伝達特性を乱す。 そこで自分はできるだけ吸音効果の高い服を着て、動けないよう椅子に拘束バンドで固定する。 友人にチェンジをお願いして作業が終わったら部屋から退出してもらう。 テスト中は頭を1センチたりとも動かしてはならない。 スピーカなど機器の特性変化 スピーカーの特性(f0、Qなど)が温度によって変わる [3]。 アンプやケーブルの特性も温度の影響を受ける。 これらの影響を無くすために、チェンジごとに十分な時間の「慣らし運転」が必要になる。 接触抵抗の変化と直流抵抗の変化 ケーブル類は抵抗値を精密に測って長さを調整する。 端子にはハンダ付けするか、コンタクトオイル など を使うなどして接触抵抗を十分小さくする(ケーブル抵抗の2桁以下)に管理しなければならない。 このように考えると、聴感で評価するための実験環境を整えることが困難なことがわかる。 ブラインドテストによって先入観を廃しても、有意な実験をすること自体、かなり難しい。 「試聴」でまともな評価は出来ない 音楽ソースを使って人間が聴感で判断するという評価方法は、最も「曖昧」で、「不正確」で、「信頼性の低い」方法である。 そもそも、耳や頭の形が個人によって違うため鼓膜に同じ音が届いていない。 上の式2で、主観と物理的変動分の2つを取り除いたら、「実際の変化」が見えるだろうか。 電源コード、ハンダ、トランスポートの実際の変化は、とても人間が知覚できるとは思えない。 結局、音の違いを知るためのテストは、計測器とテスト信号を用いるやり方が一番正確だ。 計測で変化が認められないことは、「 未だ解明されていない」「 未知な部分の影響」ではなくて、「 聴感においても変化がないことの証」にほかならない。 アンプやスピーカーケーブルの音は存在するか アンプやスピーカーケーブルでは物理的変動分の大きな要因としてDFがある。 ところが、スピーカケーブルやアンプを比較するためにDFを意識して抵抗値を揃えた例を見ない。 従い、従来実施されきたこれらの音の比較視聴は、単にDFの違いを聴いていたに過ぎないと考えている。 DFを一定にして(抵抗値を揃えて)ブラインドテストすれば、「アンプやケーブルに固有の音」などというものが存在しないことを証明できるはずだ [1][2]。 真空管アンプの音のカラクリ 真空管アンプのDFは一般に10以下だから、グラフ1から真空管アンプは低出力の割に低音が良く出て、響きが多い(過渡応答の悪い)音と予測できる。 これは一般に言われている真空管アンプの音の傾向と一致する。 「真空管アンプは、トランジスタアンプより10倍の駆動力がある」などという論評があるが、このような性質を知らない人が解釈した結果だろう。 半導体アンプに細いケーブルを組み合わせれば(DFを落とせば)、真空管アンプそっくりの音が、ずっと低歪で再現できるはずだ。 ブラインドテストで評価できるのはスピーカーだけ 結局、聴感でわかる差が出る機器はスピーカーくらいである。 他の機器の「実際の変化」は微妙で、物理的変動分の中に埋もれてしまって見えない可能性が高い。 <関連商品> デジタルで波形が記録された信頼できる音源CD。 ゲイン校正に役立ちます ゲイン校正に。 ブラインドテストに必須のアイテム <関連記事> 1.
次のステレオ誌 2019年6月号 130ページ 僕はいつも思っているのだが、全てのオーディオ製品は、ブラインドテストで評価されるべきである。 しかし、オーディオ評論家たちは、何かと理由をつけて、ブラインドテストを激しく嫌う傾向がある。 しかしながら、ステレオ誌はこれを実行した。 大したモノである。 …それにしても、ベルデン8470の実力は、ホンモノであろう。 一度、ヨルマデザインや、ノードストのスピーカーケーブルと対決させてみたいものだ。 当初8460を2mで使っていましたが、8470の7mを体験してしまうと、不自然さは否めないです。 8460を2mでは、箱鳴りとコーンの音が分離した、明らかにオーバーダンピングの兆候がありました。 これが、8470の7mになると、コーンと箱の一体感が生まれて、ナマ音に近い響きになってくるのです。 それは、「硬い・柔らかい」だけでは表現できない「最適制動の音焦点」です。 いかにナマ音に近いか? これがステレオの音を判断するモノサシです。 他のモノサシはありません。 「音のキレ」ってなんなんでしょう? 僕にはさっぱり何がどんな状態なのか、わかりません。 一聴して確かに音が違うことが分かりました。 現時点での感想は、 8460 2m 高域が鋭い。 ただし、鋭すぎて、あたかもツイーターから前方向に一直線に音が出ている感じになり、左右の広がりに欠けることがある。 全体的に輪郭が明瞭。 低域はタイト。 8470 7m 高域が厚く、ツイーターの横方向にも音が広がっている感じ。 全体的に音が丸い。 特に低域が緩く、遅いため、曲のテンポがやや遅くなったように感じる。 来たばかりなので暫定的な評価ですが、ブレークインが進んでもさほど変わらないようであれば、少しずつカットしていき、両方の良い点が最適なバランスで達成される長さを見つけるつもりです。 なお、私のリスニングルームは音響が悪く、各所に吸音材を設置していることも、上記音質の一要因であると思われますので、追記しておきます。 かなり悩ましい話になってきました。 ご想像の通り、トーンコントロールはフラットです。 また、USB-DACも、念のためEQ付きのものを買っていますが、こちらもフラットです。 悩ましいのは、私は凝り性なので、トーンコントロールを使ってしまうと、ほぼ確実にEQを使いたくなり、ドロ沼にはまり込んで、最終的に、自分が何をやっているのか分からなくなる状態になることは、明らかだからです。 トーンコントロールフラットのまま、インシュなどのセッティングを一通りやったうえで、なお音のバランスが気に入らない曲があるときは、スタジオエンジニアのせいにするほうが、自分の調整能力を嘆くよりも、精神的に良いです(笑) Linton Heritageの高域が抑え気味なのは明らかなので、それをどうするかですね。 そのような性格のスピーカーとして受け入れるかどうか。 難しい問題です。 宝クジがあたればPMCのスピーカーを買おうかな、と思ったりもしています。 オーディオの音は安定せず、何も弄らなくても音が変化します。 曜日や時間、温度、季節、体調、変動要因は多岐に渡り、これに加えて機器のバーンインや劣化が相まって、更にユーザーが弄り倒すので、何を聴いているのか分からない状態、というのが本音です。 なので、僕の場合は、常にキャラクターの違うスピーカーを持っています。 僕の場合、スピーカーは常に2セット、同じアンプにつなぐのが、スタイルです。
次の大抵の人はことのことを知らないから、スピーカーケーブルの違いはブラインドテストで明確になると考え、太さが違うケーブルを「同じ長さ」に切りそろえて、取っ替え引っ替え比較視聴をやってしまう。 そして、 「これこそが、スピーカケーブルによる音の変化である」 「ケーブルで音が変わることを実証した」 と勘違いする。 極端に太さが違うケーブルを「同じ長さ」に切りそろえて比較すれば、差が出るのは当たり前のこと。 それはもちろん、ケーブルの音の差などではない。 ブラインドテストを試みると統計的に「有意差」が見つかることがある。 この結果から、 「オーディオは、何をやっても、音が変わるんだ」 という結論を出してしまう。 そんな人たちに、「計測でわからないものが、なぜ聴感でわかるのか?」と質問すれば、「未だ解明されていない、未知な部分があるんだ」ということにして考えるのをやめてしまう。 「オーディオは、何をやっても、音が変わる」 理由 例えば、ピンケーブルを変えて、音が変わったという統計的な結果を得たとする。 しかしそれは、ピンケーブルの音の差ではない可能性が高い。 なぜかというと、「ピンケーブルを変える」という操作をすると、 別のものが同時に変わってしまうため。 この「別のもの」とは何だろう。 それを理解するにはまず、比較試聴で聴く音が次の3つの総和になることを知る必要がある。 人間が聞く音=主観(心理的変動分)+ 物理的変動分 + 実際の変化 2 私たちが知りたいのは「実際の変化」。 ブラインドテストは「主観」を排除するが、「物理的変動分」については排除できない。 これが「別のもの」の正体だ。 この中身には次がある。 1.出力感度(音量)の変化 2.試聴点までの伝達特性の変化 3.スピーカの特性変化 4.接触抵抗の変化(ケーブル類の場合) 5.直流抵抗の変化(ケーブル類の場合) 出力感度(音量)の変化 出力感度(同じソースを再生した時の耳に届く音量)は機器によって違う。 チェンジのたびに校正信号を使って試聴点の音圧を正確に校正しなければならない。 ボリウムにギャングエラーがある場合はこれも調整して排除しなければらなない。 試聴点までの伝達特性の変化 人間の存在が伝達特性を乱す。 そこで自分はできるだけ吸音効果の高い服を着て、動けないよう椅子に拘束バンドで固定する。 友人にチェンジをお願いして作業が終わったら部屋から退出してもらう。 テスト中は頭を1センチたりとも動かしてはならない。 スピーカなど機器の特性変化 スピーカーの特性(f0、Qなど)が温度によって変わる [3]。 アンプやケーブルの特性も温度の影響を受ける。 これらの影響を無くすために、チェンジごとに十分な時間の「慣らし運転」が必要になる。 接触抵抗の変化と直流抵抗の変化 ケーブル類は抵抗値を精密に測って長さを調整する。 端子にはハンダ付けするか、コンタクトオイル など を使うなどして接触抵抗を十分小さくする(ケーブル抵抗の2桁以下)に管理しなければならない。 このように考えると、聴感で評価するための実験環境を整えることが困難なことがわかる。 ブラインドテストによって先入観を廃しても、有意な実験をすること自体、かなり難しい。 「試聴」でまともな評価は出来ない 音楽ソースを使って人間が聴感で判断するという評価方法は、最も「曖昧」で、「不正確」で、「信頼性の低い」方法である。 そもそも、耳や頭の形が個人によって違うため鼓膜に同じ音が届いていない。 上の式2で、主観と物理的変動分の2つを取り除いたら、「実際の変化」が見えるだろうか。 電源コード、ハンダ、トランスポートの実際の変化は、とても人間が知覚できるとは思えない。 結局、音の違いを知るためのテストは、計測器とテスト信号を用いるやり方が一番正確だ。 計測で変化が認められないことは、「 未だ解明されていない」「 未知な部分の影響」ではなくて、「 聴感においても変化がないことの証」にほかならない。 アンプやスピーカーケーブルの音は存在するか アンプやスピーカーケーブルでは物理的変動分の大きな要因としてDFがある。 ところが、スピーカケーブルやアンプを比較するためにDFを意識して抵抗値を揃えた例を見ない。 従い、従来実施されきたこれらの音の比較視聴は、単にDFの違いを聴いていたに過ぎないと考えている。 DFを一定にして(抵抗値を揃えて)ブラインドテストすれば、「アンプやケーブルに固有の音」などというものが存在しないことを証明できるはずだ [1][2]。 真空管アンプの音のカラクリ 真空管アンプのDFは一般に10以下だから、グラフ1から真空管アンプは低出力の割に低音が良く出て、響きが多い(過渡応答の悪い)音と予測できる。 これは一般に言われている真空管アンプの音の傾向と一致する。 「真空管アンプは、トランジスタアンプより10倍の駆動力がある」などという論評があるが、このような性質を知らない人が解釈した結果だろう。 半導体アンプに細いケーブルを組み合わせれば(DFを落とせば)、真空管アンプそっくりの音が、ずっと低歪で再現できるはずだ。 ブラインドテストで評価できるのはスピーカーだけ 結局、聴感でわかる差が出る機器はスピーカーくらいである。 他の機器の「実際の変化」は微妙で、物理的変動分の中に埋もれてしまって見えない可能性が高い。 <関連商品> デジタルで波形が記録された信頼できる音源CD。 ゲイン校正に役立ちます ゲイン校正に。 ブラインドテストに必須のアイテム <関連記事> 1.
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