隈 研吾[くま・けんご] 建築家、東京大学特別教授。 隈研吾建築都市設計事務所を設立。 Carbonne) コロナ後の世界がどのように変化するかを予測してみると、建物や都市を構築する価値観として、「自由」であることが何よりも重視されるようになるだろう。 「誰もが好きな場所で暮らせる」といった自由がテーマとなり、テクノロジーがそれを可能にするのではないだろうか。 20世紀型のオフィスや工場、都市は集中することに価値があった。 容積緩和で超高層ビルの建設を可能にする特区を設け、経済の活性化を図るといった考え方もその一つだ。 「大きな箱」に人が集まって働くことが効率的だと考えられてきた。 これからは「一極集中主義」と「経済活性化」が一体という考え方が成立しなくなる。 これまでも推奨されたコンパクトシティーのイメージが少し変わり、徒歩や自転車で移動できる圏内で働いたり、生活したりすることが求められるようになるだろう。 こうした公共空間にWi-Fiなど通信網が整備され、人が自由に行き交うようになれば、生活スタイルも変わる。 求められるのは、どんな用途にも使える建築物だ。 昼間はオフィス、夕方以降はイベントや食事のスペースとして活用できるような、目的によって柔軟に運用できる空間が必要になる。 空間を用途に分けて活用する「ゾーニング」のルールを緩くしていかないと、これからの都市に対応できない。 こうした観点から都市をデザインし直す動きが出てくるだろう。 ベンチャー投資 アニス・ウッザマン氏 期待領域は非接触の配達、オンラインの対話、医療、教育 アニス・ウッザマン[Anis Uzzaman] 米ベンチャーキャピタルのペガサス・テック・ベンチャーズCEO。 同社は170社に投資。 米国で修士、日本で学士、博士号を取得した 今も世界で50件前後の投資案件を並行して走らせており、4月にはモバイル動画の米Quibi(クイビ)に40億円近く投資した。 宇宙会社の米スペースXにも25億円ほど追加で投じている。 スタートアップの資金調達は一般的に1サイクルが12~18カ月。 新型コロナが早期収束すると思えず、コロナ下で一度は資金調達しないといけない。 経営者が運営を見直せないスタートアップは潰れる。 こうした生き残りテストは強い会社と弱い会社を市場が区分けし我々にとってチャンスになる。 コロナ禍がスタートアップ業界を大きく変えるのは間違いない。 今後、成長が望めるのは在宅の作業を便利にする領域。 例えばオンライン上でデータをやり取りしたり、ホログラム(立体映像)技術で部屋にいるように見せたりする技術。 今の「Zoom」や「Teams」よりも円滑なコミュニケーションを実現する会社も出てくるだろう。 非接触の配達サービスは今後、買い物の一般的な形として広がっていくはずだ。 遠隔医療を支える技術ではインドネシアのヘルステックサービス会社「Alodokter」の時価総額が急上昇した。 オンライン教育で双方向のプラットフォームを軽いソフトで実現できる企業も成長する。 社会の問題点への理解は進んだと思う。 その一つがリスク分散。 各国は自立しようとしており、サプライチェーンを自国内に戻す動きはその表れだ。 高齢化が進む日本や欧州では、AIとロボットの技術が進化するだろう。
次の新型コロナウイルス感染拡大の影響で、テレワークを導入する企業は増えています。 感染拡大の前後で、テレワークの状況はどのように変わりつつあるのか。 そして、パンデミック終息後も、テレワークという働き方は浸透していくのか。 テレワークをはじめ、働き方を変革するためのICT環境の提供を行っている、内田洋行 ネットワークビジネス推進統括部長の村田義篤氏 むらた・よしあつ に聞きました。 どのような点が障壁となっていたのでしょうか 企業側、従業員側がテレワークの必要性を認識し、それを実践する意志が弱かったことが、最も大きな障壁であったと考えています。 そして雇用・人事制度やICT環境の整備の遅れも、その要因であったと言えるでしょう。 また多くの企業では、リーマンショックにより内部統制が強化され、厳格な業務ルールが敷かれました。 そして、その実行手段として「紙」と「印鑑」という物理的な手段を用いるケースがまだまだ主流です。 今回のパンデミックでも、こういった「電子化の遅れ」という課題に直面している企業が少なくないと思います。 まさに「ハンコを押して請求書発行」や「FAXの送受信」のために、出勤せざるを得ないという状況が見られます。 なぜ前述された障壁を乗り越えることができたのでしょうか? 緊急事態宣言による外出自粛要請などを受けて、多くの企業で在宅勤務やシフト勤務が進みました。 企業側が社員の安全や健康を優先し、人事制度や業務ルールの変更改善に動いたことが大きいと思います。 また、グローバル展開している大手企業やIT関連企業など、そもそもテレワークを実践していた企業が、2月中旬ごろから首都圏を中心に在宅勤務を推奨し、リードしていたことも背景にあると考えています。 一方で、対面による業務が多い業種や、工場勤務者、物流などの従事者にとって、テレワークの必然性は弱いのが現実です。 また中小企業はテレワーク環境を導入する資金や人材・ノウハウに乏しくなりがちですから、さまざまな支援が必要になるでしょう。 経営者の視点・労働者の視点から、どのような効果があったと思われますか? パンデミックに限らず、台風・大雨、地震などの天災に見舞われたときの「事業継続」は経営者にとって大きな課題です。 今回は国内の一部で起きる災害のような「局所的な発生」ではなく、世界で広がるウイルスの感染拡大という「同時多発的な発生」という極めて過酷な経験。 今後対応すべき課題がかなり浮き彫りになっていると思います。 経営者の視点から見ると、これらの課題が浮き彫りになることで、「BCP」 事業継続計画 の整備など、持続的成長への対応策が本格的に実践しやすくなるでしょう。 また従業員側の視点では、今までテレワークを「やりたくてもやれなかった」「効果が分からなかった」方々を中心に「意外とできる仕事が多い」という実感があったと思います。 「働き方改革」の狙いである「育児・介護」や「時短勤務」など、ワークライフバランスがとりやすい価値観へ一変するのではないでしょうか。 テレワーク導入当初に企業が抱えがちな課題とその対策について教えてください 最も重要な課題・対策は、セキュリティ・リスクの回避です。 これまでも各企業でセキュリティ対策は講じられてきたと思いますが「テレワーク対応型の通信ネットワークやサーバ環境」というよりも「セキュリティを重視した、クローズドなネットワーク・サーバ環境」を前提とした対策が多くを占めていました。 またクライアントのPC環境もデスクトップが中心で、ようやくノートパソコンやタブレットに移行している、というところが近年でも少なくありません。 そして実際にテレワークを実践する従業員側も、リテラシーの乏しいケースがあります。 例えば「初めて自宅のWifiを使って仕事をしてみた! 」という方は、Windows10のアップデートなど、自衛的にセキュリティ対策を行う必要があります。 従業員のリテラシー維持も課題となってきます。 直近では、企業のテレワーク管理者側がテレワーク環境の拡大に追いつけていません。 特にテレワーク用の機器 タブレットPCやヘッドセット の在庫がほとんどなく、一時の「トイレットペーパーの品切れ状態」となっています。 アフターコロナ、テレワークの在り方はどう変わる? テレワークは定着していくと思いますが、出社して仕事をする方は増えると思いますし、すべての業務がテレワークに変容することはないと思います。 今回の事態を受けて「テレワークで代替できる業務は何か? 」という事象を全体で共有できたことで、「出勤・対面で行うべき職務」「テレワークでできるタスク」は明らかになってきました。 例えば、お客様とのやりとりで「既にご依頼いただいた内容を直近1カ月、どのように展開していくか」というお話はWEB会議でもできるかもしれません。 しかし、夏以降、もしくは秋以降、どういった新たな戦略をもって展開していくか、という話になると、WEB会議では難しい、と私自身考えています。 いくらWEB会議で顔が見え、話が出来ると言っても、表情の機微は感じ取りにくいですし、込み入った議論がしにくく、話がまとまりにくいように感じます。 相手と対面できない今だからこそ、出社してする仕事の意義を再確認できるとも思います。 そして、仕事を行う"時間"や"場所"は何が最適か、自律的に考えて行動できる方がビジネスの世界では生き残っていくでしょうし、そのように進化しなくてはならないと私は考えます。 今回課題となった事象を整理し、暫定措置であった場合も含め、雇用・人事制度や業務ルールの見直しを行う必要があると思います。 それに伴って、IT環境 クラウド化やネットワークやセキュリティ を強化すること、そして人手で行っていた業務の電子化 ワークフローシステム、RPA、電子印鑑など を急ピッチで進めることも求められます。 また、弊社ではリモートワークのツールである「Microsoft Teams」のWEBセミナーを開催したのですが、250名という定員いっぱいのご応募がありました。 カメラの位置設定や、顔がきれいに映るライトの当て方といったツールの活用法から、「こうすればセキュリティ上問題なく使える」という使い方まで、基本的な内容ですが、非常にニーズを感じます。 内田洋行テナントにおける「Microsoft Teams Web」会議実施件数の推移。 平均の実施数と比較し、最大で10倍以上の件数となっている WEB会議自体は現在相当数増えているものの、「初めてなので使い方が分からない」「正しい使い方が分からず、機密情報が漏れないか不安」といった声がまだまだありますので、こういった正しいツールの使い方も周知していく必要があるでしょう。 組織や人材も変わっていきます。 社員教育やBCP演習など、運用面でも持続的に注力していけるといいですね。 内田洋行 ネットワークビジネス推進統括部長 村田義篤 内田洋行にて12年間、営業部門でオフコンや勘定系システム販売に従事し、事業企画から経営企画に3年間、携わる。 その後ネットワーク系エンジニア部門を9年の統括を経験し 現在に至る。 現在は、ネットワークビジネス推進部を担当し、テレワークをはじめ、働き方を変革するためのICT環境の提供を行っている。 主にコラボレーションやコミュニケーション分野でグループウエアを熟知し、徹底的に使いこなすための対応ハードウエアや連携ソフトウエア、サービスそしてオフィス什器を含めた最適な場の提案をおこなっている。 その代表となるクラウドサービスSMARTROOMSは、大手企業を中心に400社11,000室の導入実績である 2020年3月現在。 予めご了承ください。 関連記事•
次の前回、ニューノーマルについて「変化が起きるには時間がかかり、問題は従来から起きていた経済的格差である」という。 今回は、その変化について詳細に検討していく。 すでに「アフター・コロナ後の世界はこうなる」という未来予測は数多く出ているが、その予測をいくつかの類型に分けて整理した上で、実際に起こり得る変化とそうでないものを区別していく。 具体的には、起こり得る変化を「 公衆衛生上の変化(一時的変化)」「 合理的変化」と「 規範・文化的な変容を伴う変化」に分類して、いくつかの具体的事例とともに検討する。 1つ目は新型コロナの感染拡大を防ぐための 一時的な生活習慣の変化であり、例えば「リモート飲み」のような行為を指す。 2つ目は、コロナ禍を契機として生まれた新しい変化ではあるが、「リモートワーク」のように、 個人や社会にとって合理的な変化であるため早期に定着する。 3つ目は、 一定度の合理的変化ではあるが、何かしらの文化・社会的規範な影響されるため、変化に長い時間がかかるものだ。 例えば、ライブに足を運んだり、宗教的な集会などが含まれる。 こうした分類は、政治学における著名な研究者であるロナルド・イングルハート(『文化的進化論 人びとの価値観と行動が世界をつくりかえる』勁草書房、2019年)の見解を踏まえるとわかりやすい。 まずは、彼の研究を簡単に見ておこう。 社会におこる変化 イングルハートによれば、戦後世界は大規模な戦争の不在や飢餓の減少によって、人々の価値観や世界観が大きく塗り替えられた。 それまで 経済や身体の安全(生存)が重視されたきたが、社会が安全になっていくにつれて、自己表現重視の価値観に切り替わっていった。 これによりジェンダー平等や外国人などへの寛容、表現の自由が重視されるようになった。 しかし、生存への安心感によって人々の価値観が決定する以外にも、歴史・文化的な要因も重要である。 マックス・ウェーバーなどの古典的論者は、科学的知識の普及に伴って、宗教的な営みは消えていくと考えたが、実際にはそうはならなかった。 『国家はなぜ衰退するのか』でよく知られるダロン・アセモグルとジェイムズ・ロビンソンによれば、国家の繁栄はより良い制度から生まれる。 しかし現実には、より良い制度が出来るまでにかかる時間は、国によって様々だ。 長期的には多くの国家が開かれた社会へと向かっていくだろうが、 文化的変化は経路依存であり、伝統は強固に社会を縛るため、開かれた国になるまでの時間は異なる。 このように考えると、コロナ禍のみで社会が劇的に変化していくと考えるのは安直だ。 短期的に起こりえる変化と、時間がかかる変化を区別する必要があり、後者については文化的・規範的な制約が大きな影響を及ぼす。 そこで、以下のように分類をおこない、変化の性質について見ていく。 変化の名称 変化の有無 変化のスパン 公衆衛生上の変化(一時的変化) なし ロックダウン後に戻る 合理的変化 あり 数年から5年間程度 規範・文化的な変容を伴う変化 あり 5年以上 公衆衛生上の変化(一時的変化) 公衆衛生上の変化は、一時的な変化に過ぎない。 これらは、コロナの感染拡大を防ぐため人々に強いられた行動様式ではあるが、非合理的であったり、極端な不便を強いることから、コロナの終焉と共にすぐに以前の状態へと戻る。 大規模なパンデミックが起こる頻度は高くないし(スペインかぜは100年前の出来事)、コロナが沈静化した後に人々は再び街に出ていくだろう。 以下の項目は、これにあたる。 ソーシャル・ディスタンシングや三密の実施 ソーシャル・ディスタンシングを取り続ける社会は多いだろうが、人々は忘れ、そして再びロックダウンが繰り返されるサイクルが起こるかもしれない。 いずれにしても、1-2年でワクチンなどが生まれれば、すぐにこうした文化は消え去る。 リモート飲みや離れた家族とのデジタル面会 これらはあくまで仕方なくおこなわれている行為だ。 選択肢としては増えていくだろうが、感染症が存在しなければ、これらが支配的な文化になる論理的理由は存在しない。 外出・外食の急減 レストランや小売にとってこれらが一時的な変化なのは朗報に見えるかもしれないが、実際は異なるだろう。 現実の店舗は、ますます付加価値を求められ、オンラインショッピング自体は増加していくため、引き続き産業としては苦境に陥るはずだ。 消費意欲の減退 単一のイベントが景気サイクルを変えることはない。 中長期的に景気は減速したり、強気相場を迎えるのは普遍的な法則だ。 こうした変化は、一律に以前の状態に戻っていくわけではない。 ソーシャル・ディスタンシングはワクチンや特効薬が出来るまで実施されるだろうが、消費意欲については外出自粛の終了とともに戻ってくるだろう。 どれだけ消費意欲が増えても、旅行の制限は各国政府の対応によって決定する。 しかし共通して言えることは、これらはラディカルな変化ではなく、あくまで一時的な行動制限にともなう変容に過ぎないということだ。 合理的変化 合理的変化は、コロナ禍による行動変容によって生じたもののうち、数年から5年程度の短期間で社会に定着する。 これらは規範や文化的な制約を受けづらく、技術的・制度的な制約がある場合、新たなビジネスモデルなどが生まれてくることで解消される。 以下の項目は、これにあたる。 リモートワークの増加・オフィススペースの削減 企業にとって、リモートワークを増やすことは合理的な選択だ。 賃料を削減し、固定費を下げることに繋がる。 シェアオフィスの利用が増えるかもしれないし、家で快適に仕事をするための様々なツール・サービスが伸びていくだろう。 出張の減少 アメリカのように都市間の距離が大きな国ではなくとも、今回のコロナ禍が出張を減らす口実になるだろう。 正社員からギグワーカー・非正規雇用への切り替え 固定費という意味では、正社員も不必要な存在だ。 アウトソーシングやギグワーカーの流れは最近になって生まれたものではないが、ますます加速するはずだ。 ハンコ文化の消滅 日本の悪名高きハンコ文化は、そう長くないうちに消え去るだろう。 オンライン教育の普及 この問題は、単純ではない。 例えば高等教育機関であれば、図書館や研究施設は引き続き物理的なスペースを要する。 オンラインで受けれる授業は増えるが、その効果に疑問も持たれるため、授業や聴講者のパフォーマンスを把握するための、何らかの指標や仕組みが登場するだろう。 オンライン診療 現状では規制されているものの、事業者も消費者も望んでおり、急速に進展していく可能性が高い• 政府・企業のデジタル化 政府のデジタル化が進むことを意外に思う人がいるかもしれないが、給付金の申請・給付をオンラインで完結させる必要があり、デジタル化への移行が進むきっかけになるかもしれない。 サプライチェーンのあり方 中国偏重への危機感から、サプライチェーンを国内に移したり、東南アジアなど各国に分散させる動きが出てくるだろう。 工場の機械化 経済を止めずに人々を危機から守るためには、その仕事をロボットにやらせることだ。 デリバリーやテイクアウトの増加 すでにデリバリーに特化したゴースト・レストランという業種が生まれているが、テイクアウトもおこなえる形態のゴーストレストランも出てくるだろう。 テック企業のインフラ化 2019年までは、寡占化して人々の個人情報を吸い上げるテクノロジー企業を批判する「テックラッシュ」という動きが強くなっていった。 Amazonやテクノロジー・ツールがインフラ化する中、こうした動きに変化が生まれるかもしれない。 ただし、そこに政府が介入する可能性もある。 メンタルヘルスの問題に対処する企業・サービスの増加 メンタルヘルスは、現代の最も大きな問題の1つだ。 ここに対する単一の賢いソリューションは生まれていない。 リモートワークが進むことで、こうした問題に向き合う企業は増えていくかもしれない。 健康管理の新たな形 中国では施設に入る際の検温が一般化しているが、これらはスマートフォンを通じて効率化されるかもしれない。 検温が一般化するのは規範的制約があるため、よりカジュアルな健康管理を指している。 オンラインショッピングの多様化 オンラインショッピングが便利であることには多くの人が気づいたが、より多様な購買のあり方が生まれてくる。 ウィンドウショッピング専門のメディアかもしれないし、デパートをオンラインに再現した、ショップのアグリゲーション・メディアかもしれない。 オンラインイベントの増加 オンラインでライブを同時視聴したり、Fortniteでイベントに参加することは、ますます当たり前になるだろう。 いずれも、コロナ禍によって生じた突発的な変化ではなく、従来からあった変化が決定的になっただけと言える。 コロナによる強制的な実施によって、変化の速度が早まった項目が該当する。 この記事は、ライセンスにもとづいた非営利目的のため、あるいは社会的意義・影響力の観点から無料で提供されているコンテンツです。 良質なコンテンツを取材・編集して翻訳を届けるため、コンテンツをサポートをしてくださいませんか? みなさまのメンバーシップは、良質な記事をライセンスして届けるための重要な収益源になります。 規範・文化的な変容を伴う変化 規範・文化的な変容を伴う変化は、一定度まで合理的な変化であるが、規範・文化的な変容を伴うため、変化に長い時間がかかる。 以下の項目は、これにあたる。 映画やライブ、スポーツなどエンターテインメントの消費のあり方 オンラインイベントの増加と矛盾するわけではない。 全てのイベントはオンラインで楽しめるものの、実際の場が持つ価値も大きいため、単にオンライン化されるだけで人々は満足しないだろう。 宗教的・思想的な目的を持った集会のオンライン化 韓国では新興宗教の集会でクラスターが発生したが、大人数が物理的な空間に集まることの危険性があったとしても、精神的な拠り所として集会や現実的な接触を伴うコミュニティーは、むしろ増えていく。 政府やテック企業への個人情報の提供 コロナ禍によって位置情報の取得がおこなわれているが、引き続きプライバシーへの懸念は強い。 時間が経てば人々の認識は変化するだろうが、政府が大胆な施策を講じる必要がある。 不必要な仕事・職種の削減、それによる高失業率への政府・社会による対処 人々は不必要な仕事が多くあることに気づいたが、社会全体で雇用を減らすことは大きな弊害を生む。 社会保障とあわせた問題であり、ベーシックインカムの議論とあわせておこなわれる必要がある。 田舎・地方への移住 リモートワークが進んだとしても、消費のあり方などが変容しない限り、都市から移住するインセンティブは限定的だろう。 消費から生産的な活動 人々は消費するだけでなく、自らDIYや食事などをつくるようになる。 生産したものを販売する人も増えていく。 これをビジネスチャンスとする企業は増えていくが、生産者がマジョリティになるには時間が必要かもしれない。 コミュニティーの再構築 ロックダウン中、隣人に買い物を助けてもらう状況が増えたものの、空洞化したコミュニティーが再構築されるには長い時間がかかる。 公園やパブリックスペースの増加 都市計画は見直されるかもしれないが、そこには長い時間を要する。 スマートシティなど中長期的に計画されているプロジェクトに影響が出るかもしれない。 中央政府と地方の行政の関係性 緊急事態宣言によって中央と地方政府の緊張関係が目立ったが、地方分権にいたるのは長い時間がかかる。 社会保障のあり方 ベーシックインカムの導入など、社会保障の在り方について散発的な議論はおこるだろうが、実現までの道は果てしない(2008年の金融危機にも見かけた議論だ)• 育児や介護などケアの領域の賃金上昇 社会にとって不可欠な仕事だと認識されたものの、実際に賃金・待遇が向上するためには時間がかかる。 ケアワーカーや社会のインフラに従事する人々の待遇が向上するためには、大きな社会不安が必要となるのかもしれない。 企業などが、政治やビジネスに加えて、疫学的リスクの評価をおこなう 短期的には疫学的リスクの評価がおこなわれるかもしれないが、中長期的には主流にはならない。 ただし多様なリスク評価が求められるトレンドが、静かに増加していく可能性はある。 子育てと在宅ワークの両立 在宅ワークが主流になると、子育てとの両立をサポートする企業・サービスが出てくる。 ただし在宅ワークが当たり前になってから時間をおいて生じる変化だろう。 自宅でもオフィスでもない仕事場・シェアオフィスの増加 規範的な制約というよりもセキュリティなど実務的な制約が大きいものの、リモートワークの浸透とともに生まれてくる。 こうした場所での仕事を上司や企業が認めるのかという規範も重要となる。 人口が過剰に集中した都市の再デザイン 地方への移住や都市計画の再編以外にも、都市自体を拡張することで人々を郊外に分散させる動きも生まれるだろうが、大きなトレンドになるかは疑問が残る。 合理的変化と規範・文化的な変容を伴う変化のちがい 合理的変化と規範・文化的な変容を伴う変化は、機械的に分けられるものではなく、両者の違いは曖昧だ。 例えば、ハンコ文化は合理的変化に含まれるが、実際には産業の従事者やロビイストの存在、懐古主義者などによって、短期的には抵抗を受けるかもしれない。 実際に変化が起きる上では、どちらの要素が多く含まれるかによって、変化の時期が決まっていくだろう。 また、合理的変化はビジネス領域に多く、規範・文化的な変容を伴う変化は人々のライフスタイルやエンタメのような領域に多いとも言える。 ビジネスにおける非合理的な意思決定はどの会社にも存在するものの、比較的それらは駆逐されやすい。 さいごに 未来予測は科学ではない。 シミュレーションや統計など社会科学的手法から未来の事象を検討することも可能だが、今回のように曖昧な領域では、あくまでも蓋然性の高い推測にとどまる。 そのため、変化までのスピードや起こり得るシナリオについて様々な意見・見解があるだろうが、ぜひSNSなどを通じてそれらを教えていただければ幸いである。 また、本予測について詳細な分析が必要な方は、筆者のよりご連絡いただきたい。 参考文献 How Nonprofits, Foundations, and Businesses Are Adapting to the Coronavirus Crisis Coronavirus Will Change the World Permanently. - POLITICO How will coronavirus change the world? - BBC Future How will the coronavirus change our lives? What Will Our Post-Coronavirus Normal Feel Like? Hints Are Beginning to Emerge - The New York Times ステルスウイルス蔓延時代における生活・働き方の変化とは.
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