自然気胸は若い痩せ型・長身の男性に多くみられる。 理由としては、急な成長に伴い肺も引き伸ばされて破れやすくなるため。 外傷性気胸 外傷 胸部打撲、圧迫、骨折、医療行為など により、肺または胸膜が損傷し、肺の空気が胸腔 胸膜腔 に漏れ出た状態。 自然気胸と同じく、空気により圧迫により、肺が虚脱する。 また、刺傷や爆傷などにより、胸壁に開放創ができると、外気と胸腔が交通し、胸腔内に空気がたまり肺が虚脱する開放性気胸がある。 気胸の症状 自覚症状• 呼吸困難• 咳嗽 身体所見• 皮下気腫• 呼吸音減弱・消失• 打診による鼓音• SpO2の低下 気胸の検査 胸部X線やCT検査で、肺の虚脱や空気の漏れ、縦隔偏位を認める。 縦隔偏位とは? まず、縦隔とは肺、胸椎、胸骨にかこまれたトコロで、左右の肺の間の部分のこと。 気胸で空気が漏れて胸腔内に空気が溜まっていくと、縦隔は圧迫されて、どんどん健側側に移動していく。 この縦隔が正常な位置から健側にズレた状態のことを縦隔偏位と言う。 気胸の重症度 X線やCT検査で、気胸の診断がつくのとともに、重症度を判定することが出来る。 気胸の重症度 軽度 肺尖が鎖骨の上にある状態 項目 軽度と高度の中間 項目 肺が全虚脱、または全虚脱に近い状態 気胸の合併症 緊張性気胸 肺または胸膜の損傷によって、一方弁が形成された結果、吸気が胸腔内へ一方的にどんどん漏出し、胸腔内圧の上昇により呼吸不全を来たす。 胸腔内圧の上昇に伴い、肺が完全に虚脱し、横隔膜が下がり、縦隔偏位、静脈還流も障害され、循環不全からショックに移行する場合もある危険な状態。 血気胸 胸腔内に空気だけではなく、血液が貯留した状態。 血液が貯留する原因としては、外傷によるもののほか、肺が虚脱するときに胸膜の血管癒着部が剥離し、出血することがある。 出血による貧血や血液低下を起こす場合があり、緊急性が高い場合には緊急手術の適応となる。 少量の出血であれば胸腔ドレナージにより空気や血液を排出し治療を行う。 再膨張性肺水腫 虚脱していた肺が、治療により一気に再膨張すると、肺血流が著しく増加して、血管が引きの伸ばされる。 それにより、血管透過性が亢進し、肺胞へ血管成分が漏出することで、肺水腫が起こる場合がある。 通常再膨張後、1時間~数時間で発症する。 再膨張性肺水腫が発症した場合には、呼吸困難な泡沫状痰、呼吸困難やSpO2の低下がみられるため、治療開始時は、注意して観察する。 気胸の治療 保存治療 軽症の場合は、外科的処置はせずに、安静と経過観察となる。 胸腔ドレナージ トロッカーカテーテルを胸腔内にドレーンを挿入し、低圧持続吸引器に接続して胸腔内に溜まった空気や血液を排泄する。 参照 胸膜癒着療法 胸腔ドレナージで改善しない場合に、胸腔内に直接、胸膜癒着薬 パシバニール を入れて、わざと炎症させることで側壁胸膜と臓側胸膜を癒着させる方法。 炎症させるので、2~3日痛みと発熱を伴うことがある。 肺部分切除術 胸腔ドレナージなどで改善しない場合や、再発を繰り返す場合、両側気胸では病変部位 ブラ・ブレブ の肺部分切除術が行われる。 この場合、侵襲の少ない胸腔鏡下手術 VATS:バッツ で行うことが多い。 気胸の観察ポイント 気胸の状態や重症度を確認する。 気胸にも自然気胸、外傷性気胸、緊張性気胸、血気胸などさまざまな病態があり、また肺の虚脱の程度や出血の程度によっても治療方針や起こりうる合併症のリスクが異なるため、まずは患者の病態を把握する。 X線・CT検査、血液検査の確認、患者の自覚症状や呼吸状態などを把握する。 呼吸状態の観察と適切な酸素投与 患者の呼吸様式、呼吸数、SpO2値、胸郭の動き 左右差 、呼吸音、呼吸困難感など呼吸状態の観察を行い、治療による症状の変化を確認していく。 気胸により換気障害を伴い、酸素投与している場合も多いので、酸素投与している場合には適切な方法で適切な量投与できているか呼吸状態と合わせて適宜確認する。 疼痛コントロール 気胸による痛みやドレーンに挿入に伴い胸痛を生じることが多い。 痛みは横隔膜の運動を妨げて、換気量を低下させたり、不安・不眠といった問題も生じてくるため、適宜鎮痛剤を使用し、疼痛コントロールを図る。 合併症の出現に注意する 血気胸や再膨張性肺水腫の合併症の危険性があるため、呼吸状態を含め全身状態の変化に注意して観察する。 特に再膨張性肺水腫は治療開始後1時間~数時間で発症するため、排液量と合わせて注意深く観察する。 胸腔ドレーンの観察 関連記事•
次の一年ほど前に人気グループ・嵐の相場雅紀 28 が胸痛、呼吸困難などで緊急入院、大騒ぎとなった。 診断された病名は、『肺気胸 はいききょう 』という耳慣れないもの。 肺に穴が開き、空気が漏れるだけでなく、再発を繰り返すなど厄介きわまりない病気だ。 相場自身も2回目の発症で、最近は若い人たちだけでなく、中高年者にも増えているという。 漏れ出た空気が心臓やもう一つの肺を圧迫すれば、胸痛などのほか不整脈、血圧低下なども引き起こし、死に至ることもある危険な疾患だ。 肺の病気と聞いて真っ先に思い浮かべるのが、世界的に死亡率が高く、今も増え続ける『肺がん』だろう。 だが、「肺を針で突かれたような痛さと息苦しさ」に見舞われる肺気胸も忘れてはいけない。 呼吸不全や肺炎など、合併症を引き起こす重大疾患であることに違いはないからだ。 この肺気胸は、日本癌学会のガイドラインによると20代、30代の若い男性に多く、体型的には痩せて胸の薄い若者がなりやすい、とされる。 症状は肺を包む肺胸膜 はいきょうまく の表面に薄い空気の袋ができる。 それを医学的には気腫性のう胞といい、一般にはブラ、またはブラフと呼ばれる。 まるでカエルの卵のようなものだが、破裂すると肺に穴が開き、そこから空気が漏れ出てしまう。 漏れ出た空気が胸腔内に溜まると、肺や心臓を圧迫し、痛みや呼吸困難などを引き起こす要因となり、患者にとっては耐えがたい苦しみとなる。 では、どのような時に発症するのか。 一般的には激しい運動や咳、あるいは気圧が低くなる飛行機の搭乗、スカイダイビングなどの理由が挙げられるが、専門医は「どれも決め手はない。 安静にしていたり、就寝中にも発病する」という。 東京総合クリニック・久富茂樹院長によると、気胸の種類は大きく分けると次の2つがあるという。 その一つは「自然気胸」。 前述したブラと呼ばれる気腫性のう胞という袋が破裂し、肺側胸膜に穴が開くことで発症する。 胸の痛みと息苦しさ、呼吸困難が突然起こり、年齢的には、青年期といわれる13歳から35歳くらいの間に発症することが多いとされる。 それも背が高く、痩せ型の男性に多いと言われ、その数は女性の7倍から10倍という。 症状としては、穴が開くことで漏れた空気によって肺が圧迫され、肺そのものが縮んでしまい、その後、十分に膨らむことができなくなる。 そして漏れた空気の量が多いほど、もう片方の肺が反対側へ強く圧迫され、心臓や血管も押しつけられてしまうことで胸の苦痛、咳き込みなどの症状が出る。 別名を「緊張性気胸」といい、症状的にはかなり危険な状態。 とくに再発を繰り返す人は、この時点で医療機関の正しい治療を受ける必要があると専門医は言う。 袋状のブラが肺の表面 肺の上方・尖部 になぜできるかについては、体質的なもの、大気汚染の関係、成長期で痩せ型だったからとか諸説ある。 しかしこれもまだ、はっきりした因果関係はわかっていない。 もう一種の「外傷性気胸」は、交通事故などのケガで折れた肋骨が胸に突き刺さり、穴が開いてしまう症状だ。 また気管内挿管などの検査や治療の際に、胸膜に穴を開けてしまうなど、何らかの外部要因で引き起こされる疾患を呼ぶ。 あわせて読みたい•
次の気胸の治療について 気胸には[1]安静、[2]胸腔ドレナージ、[3]手術、といった大きく3つの治療があります。 軽症の気胸の多くは安静のみで良くなります。 少し進んだ気胸は空気を抜いたり(脱気)、細い管を留置したり(胸腔ドレナージ)します。 気胸が再発しやすい(繰り返す)原因は、安静や胸腔ドレナージで治療しても気胸の原因であるブラが残っているためです。 安静や胸腔ドレナージでは約50%が再発します。 一方、手術は原因となるブラを切除する根治的な治療です。 しかし手術後に新しいブラができることがあるため、絶対に再発しないわけではなく5~10%が再発します。 手術が必要になるのは、• 安静や胸腔ドレナージで改善しない時• 出血している時(大量出血でショックになることもあります)• 両方の肺に同時に起こった時(息ができずにショックになることもあります)などです。 その他に、• 再発を繰り返す時• 初めての気胸でも重症な時(肺が著しくつぶれているなど)は手術の方がよいでしょう。 気胸の手術方法 手術は胸腔鏡という内視鏡(カメラ)を用いた胸腔鏡手術が主流です。 全身麻酔下に胸に1~2cmの穴(切開)を3個程作り、一つの穴からカメラを挿入しテレビモニターに写された画像を見ながら、他の穴から挿入した専用の器具を用いてブラを切除します。 当院では、特殊な気胸(肺がんや結核などが原因で肺が破れる気胸)を除くとほぼ100%が胸腔鏡手術です。 手術後は通常2~3日で退院が可能です。 特殊な気胸 女性に起こる特殊な気胸である月経随伴性気胸について説明します。 月経の時期に一致して気胸を繰り返すのが特徴で、原因はブラではなく肺や横隔膜にできる子宮内膜症と考えられています。 治療法も通常の気胸とは異なるため、女性の方で月経の頃に胸痛や咳、息切れなどがある方は一度専門医を受診されて下さい。 気胸は再発しやすい病気ですが、個々の患者さんに合った適切な治療法があります。 是非、呼吸器外科のある専門病院を受診されて下さい。 文責医師•
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