ひたる と つかる は全く同じ意味ではありませんよ。 ひたる は自分の意思ではない場合に使いますが、つかるは自分の意思の場合でもそうでない場合でもどちらにも使うようです。 お風呂で湯舟に入ることを「お湯につかる」と言いますが「お湯にひたる」とは言いませんね。 洪水で床上浸水の状態を「水につかった」「水にひたった」これはどちらも言うようです。 さらに言えば つかる は つける と他動詞にできますが ひたる は他動詞化できません。 ここからも つかるの方が意思をより感じます。 この差が文学的表現をする時の違いに現れると思います。 「物思い」に「つかる」のか「ひたる」のかどちらでしょう。 ひとつにまとめられるものではありません。 「つかる」「ひたる」は共に、昔から日本にあった言葉ではないでしょうか? あとから入ってきた漢字「浸」と、その意味が似ていたことから、この漢字を当てはめたのだと思います。 両者の大きな意味として、 「つかる」は水中にある場合に、よく使われるのに対し、 「ひたる」は水中にある、という意味で使われます。 転じた表現、<喜びにひたる><感激にひたる>など、 全身がどっぷり、喜びや感激の中にある感じが、しませんか? 二つの言葉に分けたのではなく、 もとから二つの、別の意味の言葉があったと、考えたほうがいいと思います。 「つかる」にも、「ひたる」と同じ意味の用法はありますが、 長い歴史の中で、使い方が混乱した結果ではないでしょうか。 現在「ひたる」の方が「つかる」よりも、使用範囲は狭いです。 だからこそ、「ひたる」を使わなければ、表現できない気持ちというのも あるのかもしれませんね。 正確なこと、知っている方がいらっしゃれば、私も知りたいです!.
次の仰せつかるとは「 目上の人からの命令や指示を受けること」という意味です。 読み方は「おおせつかる」です。 ビジネスシーンでよく使われる言葉で、「AはBより~と仰せつかりました」という形で使います。 「言いつかる」という言葉が謙譲語となったのが「仰せつかる」です。 日常ではあまり「言いつかる」という言葉は使いませんが、「言いつける」という形に変えればなじみ深くなるのではないでしょうか。 「言いつかる」と「言いつける」では、主語と目的語が逆になります。 「言った人」が主語になるのが「言いつける」、「言われた人」が主語になるのが「言いつかる」です。 すなわち「言いつかる」を分かりやすく言うと「言いつけられる」となります。 そして、「言いつけた人」を尊敬して言う言葉が「仰せつかる」です。 それ故「言われた人」を主語としなければ、「仰せつかる」は使えないのです。 類似の言葉に「拝命する」があります。 「仰せつかる」とおおよそ同じ意味ですが、こちらは特に「官職に任命される」という意味で使われることが多い言葉です。 「拝」という漢字が「官を授かる」という意味を持っているので、これが「拝命」の主な意味となっています。
次の朝薫は万座毛の御庭を数歩進んで止まる。 正四品・ 糺明奉行相附 きゅうめいぶぎょうあいつけを 尚育王 しょういくおうから仰せつかったのはこの辺りだろうか。 … 池上永一『テンペスト2 花風の巻』 より引用• そう言って蒋誠は店の中に戻っていった。 今回僕僕から仰せつかったお使いは、どの草というわけではなかった。 湘潭に程近い百耳山のふもとにある祠から数えて右に何歩、上に何歩、とはっきり場所を指定されていたのである。 … 仁木英之『薄妃の恋 僕僕先生』 より引用• と、なかばむりやり、父に押しつけられたかたちで、バッグの中に入れ、フランスへ旅立った。 数年前の秋、テレビの仕事でレポーターを仰せつかったときのことである。 スポンサーが国立コニャック協会だったので、「コニャック酒のできるまで」が取材のメインテーマだった。 … 阿川佐和子『笑ってケツカッチン』 より引用• 伊太夫はすなわちお銀様の父である。 自分はこの人からお銀様の附添ならび監督を仰せつかって来たものである。 その大旦那様が、どうしてまた急に、こっちへお出むきになったのか知ら、なんにしてもこれは、取るものも取り敢えずに本陣へお伺いをしなければならないと、ともの者共に、そのまま折返して外出を言いつけてから、鏡に向って身なりを直し、髪を掻き上げたのも女の身だしなみです。 … 中里介山『大菩薩峠』 より引用• 祥子さんに荷物番を 仰 おおせつかったのだ、これらを置いていくわけにはいかない。 今野緒雪『マリア様がみてる 30 キラキラまわる』 より引用• でもって、その不幸な役を 仰 おおせつかったジョンが、おっこちかけたのよね。 小野不由美『悪霊シリーズ 5 悪霊になりたくない!』 より引用• 顔は青白く、白い口髭をはやし、血走って爛れたような小さな眼の上に、細く鉛筆で書いたような眉毛も白かった。 一日中、役人の部屋に腰掛けて、仕事を仰せつかるのを待っているのだった。 ムーニイの女将さんのほうは、肉屋の商売で残った金をまとめて、ハードウィック街に下宿屋を始めた。 … ジョイス/飯島淳秀訳『ダブリン人』 より引用• 松五郎頭がこの役を仰せつかって、すでに八方へ 組 くみの若い者を走らせている。 小吉は、前に出した莨盆から火をつけて、一服吸った。 … 子母沢寛『父子鷹 下巻』 より引用• そういう声が何人かからあがって、博雅がその役目を 仰 おおせつかったのである。 その件で、博雅が、晴明の許にやってきたのが、三日前であった。 … 夢枕獏『陰陽師鳳凰ノ巻』 より引用• なのに時間はすくない。 子どもの相手を 仰 おおせつかってその貴重な時を空費するのは、おれには 耐 たえられないのだ。 ただし、妹の和子君に対しては、おれは礼を尽くしているつもりである。 … 井上ひさし『ドン松五郎の生活』 より引用• いったい彼の何がそんなにいけなかったのかお解りだろうか。 むろんことわったとはいえ、自分の仰せつかった役を気軽に離れたことだろう。 しかも彼は明らかに、重そうな荷車を押すことは誉められるべき善行だと思っている。 … 玄侑宗久『禅的生活』 より引用• 御膳海苔の起源は不明であるが、寛永寺に海苔を上納するようになった方が古く、1661年~1662年の寛文年間の頃だといわれている。 寛永寺への御用は正木屋に始まり、後に永楽屋ほか4軒が仰せつかった。 江戸城への御用は永楽屋のみが担った。 土木工事などは、誰かが受け持たねばならぬものだが、それでも藩の力には大小がある。 運悪く小藩が仰せつかったら、その藩にとっては一大事だ。 しかし幕府に睨まれたのか、二度も仕事が回ってきた気の毒な藩の話も、まま聞く。 … 畠中恵『うそうそ』 より引用• やはり志願したいとかで、僕は、その方に先駆けを仰せつかったにすぎません。 カフカ/谷友幸訳『アメリカ』 より引用• それで彼は奴隷のように使われる身となり薪をひろってくるとか、そのほか骨の折れる仕事をみんなやらされていました。 そしてエリエルは彼に、そうした仕事を、無理にさせる役を仰せつかっていたのです。 カリバンが仕事をしないで怠けていると、エリエルは、こっそりとそばへいって、つねったり、時にはどろの中へ突きころがしたり、小ざるの姿になって現われて、歯をむいて見せたりするのでした。 … ラム/松本恵子訳『シェイクスピア物語』 より引用• しかし、折角海大に入ったのであるが、知久平は当初落胆した。 それは彼が臨時軍用気球研究会の幹事を仰せつかったからである。 … 豊田穣『飛行機王・中島知久平』 より引用• なにほんの、わが御主人ゾバイダ妃が、その若い美女を御覧になって、果たして世の評判が、その容色と輝かしさの度合を、大げさに言いふらしているのではないか、御自分の目で確かめてごらんになりたいというだけなのです。 それに、拙者がこのような御用を仰せつかったのは、何もこれが初めてではない。 あなた方は、あなたにしろ、嫁御にしろ、このような御所望に従ったとて、悔いることは更にない、いやそれどころではないことは、拙者がきっと保証してあげる。 … 佐藤正彰訳『千一夜物語 06』 より引用• それから彼らは、私の家までぶらぶら歩いて行って、石段の上に三十分もすわっていた。 私は、彼女に見張り番を仰せつかって、後に残ることになった。 「火事だとか洪水だとか、何が起こるかわからないから」と言うのだった。 … フィッツジェラルド/佐藤亮一訳『華麗なるギャツビー』 より引用• というか、大事な委員会の委員長を 幾 いくつか 仰 おおせつかっているがね、もうわしが具体的な内容にタッチするなんてことはないんだ。 単なる飾りものというわけだよ。 … 森博嗣『四季 4 冬』 より引用• 僕は生ビールの中ジョッキを注文したが、彼女は生レモンサワーというのを頼んでいた。 半分に切ったレモンが絞り皿とともに出て来て、僕がそれを絞る役を仰せつかった。 まずは乾杯を済ませ、それから料理を注文する。 … 乾くるみ『イニシエーション・ラブ』 より引用•
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