すみません。 私はトイレのあの「ガーッ」ってやるハンドドライヤーで乾いたためしがないんですが、そんな記事の話。 トイレに備え付けられる最新型のジェット式ハンドドライヤーは、通常タイプの温風ドライヤーの20倍、ペーパータオルの190倍以上の量のウイルスを拡散するという研究結果(2016) — WIRED. 実験は手を洗っていない 研究方法には以下の記載があります。 被験者は、手袋をはめた手を、50mlのファージ懸濁液(訳注:バクテリオファージMS2)で10秒間すすぎ、手洗いのプロセスに似せるために3回手を振ってから、手指乾燥のための装置のひとつを使った。 つまり、手洗いはせずに、うようよ汚い液の中に手を突っ込んでから行うという方法なので、それは前提としてどうなんだい、という話が出ていました。 これね、大前提が間違ってる。 ドライヤーを使うのは手洗ってからでしょ。 ウイルス塗りつけた手で拡散させる、は現実的じゃないでしょ。 手洗わずにドライヤーだけ使う? トイレの「ジェットドライヤー」はウイルスを大量に拡散する:調査結果 — 岩田健太郎 georgebest1969 これについては、論文の中では以下の記載があります。 However, in reality the general public and some healthcare professionals do not always follow the advice. Washing procedures can be poor and compliance rates low Knights et al. Unpublished data; Anderson et al. 2008. (医療機関では確かな手指洗浄が行われているが)しかし、実際には一般の人々や一部の医療従事者は、常にそのアドバイスに従うわけではありません。 洗浄の手順が不十分で、遵守率が低い場合があります。 同上 そもそも、現実的に考えれば手洗いが不十分な場合が多いのではないか、ということですね。 )」という質問に、「理論上、感染を引き起こすには1つのウイルス・細菌があればいい(In theory, you need one virus or one bacteria to cause an infection. )」としたうえで、こう答えています。 「彼らは石鹸を使わないし、ちょっとの水だけで洗う」Redwayは言う。 彼らがハンドドライヤーの前に立ったとき、「もし適切な洗浄が行われなかった場合、手に残ったものが何であろうと、排せつ物質になりうるし、そこらじゅうに吹き飛ばされることになるだろう」 まあ、その理屈は理解できますが、だったらもうちょっと現実に即した感じの前提を作ればよいような気もしますが… Redwayはティッシュ業界から援助を受けている ところが気になることに、当該研究の執筆者であるRedwayは、ヨーロッパのティッシュ業界から援助を受けています。 Keith Redway has received honoraria from the European Tissue Symposium for microbiological advice and travel expenses to attend meetings and conferences. Keith Redwayは微生物学分野での助言のためにETSから、会議とカンファレンスに出席するための旅費を受け取っている。 Redwayは、1994年の研究から、ティッシュ会社から依頼を受けており、その業界との関係は深いです。 ETSは、ヨーロッパのティッシュ関係の団体から構成されており、ティッシュ生産の90%を占めているそうです。 で、トップページにはこんな画像があります。 より 思いっきり、「 ペーパータオルはいいぞ!ただしハンドドライヤー、てめえはダメだ」という主張の数々が押し寄せてきています。 結論をことさら疑う必要はないかとは思うものの、その結論までの過程については、少々眉につばをつけて見た方がいいかもしれません。 みんな業界おかかえ研究 上記のことは、ガーディアン紙の記事を読むと大変よくわかるのですが、いささか長い英文なので、私の方でピックアップして記載すると、要はこのハンドドライヤーの話、 「ダイソンvs. ティッシュ業界」という構造のようなんですね。 しかし普及は遅く、圧倒的にペーパータオルが使われている状況が続いた中、2003年にダイソンが開発したAirbladeが革新的で、欧州ではそれを機にハンドドライヤーが広まり始めたようです。 より 日本では東京エレクトロンが特許をとっていましたが、切れた後は大手が参入したため、ちょっとここら辺の経緯はピンとこないところもありますが、比較的最近の話なんですね。 ダイソンはティッシュ業界の研究結果を手をこまねいてみていただけではありません。 自身の商品の衛生上の効果の研究を発表させたり、 いかにハンドドライヤーは環境的で、ペーパータオルは森林破壊につながっているか、 (研究内容はリンク切れ) みたいな主張にご執心の時期もありました。 そもそも、ガーディアンによれば、この業界から離れ独立した、「ハンドドライヤーかペーパータオルか」の研究は1つしかなく、この結論は「ペーパータオルの方が優れているだろう(paper towels are superior to electric air dryers)」なものの、実証実験ではなく、メタ分析的な研究であることにも留意が必要です。 ガーディアンには、ETSのシンポジウムに参加しようとしたダイソン関係者がトラブったこととか、いかにETSが扇動的にハンドドライヤーを否定しているかみたいなことも書いてありますが、気になる人は原文を読んでください。 ガーディアンは少々ダイソンの肩を持ちすぎなきらいはありますが。 he began, then started digging through the pocket of his coat. A jingle of keys emerged, then some coins, and finally, a crumpled sheet of paper towelling. 彼はコートのポケットを探り始めた。 鍵束をじゃらじゃらさせ、コインが数枚出て、ようやく、くしゃくしゃになったペーパータオルが出てきた。 まあ、結局結論としては、「ちゃんと手を洗え」に尽きるかとは思います。 <トイレ> トイレには以下のものを常備しであるので使用毎にふき取り消毒する。 便座クリーナー:便座、使用前後 アルコールティッシュ:水洗ボタン、水洗レバー、ドアノブ(ロック等手で触れる箇 所)、水道栓(手動式ハンドル類)、照明スイッチ ペーパータオル:手ふき用。 温風ジェット乾燥機は利用禁止。 P28 その根拠を何にしているのか気になるところですが、国立感染症研究所に記載があるのは今の日本の医療機関の事情を表しているように思えます。 論文についても、試みにCiNiiで検索してみると、 などが挙げられます。 「G-26 ハンドドライヤー使用時~」はハンドドライヤーでシェアを占める三菱電機の研究ことを考慮する必要があります。 他は一応大学のものですが、利益相反や妥当性まではなんともいえません。 ただ、日本の医療機関の傾向として、どうやらハンドドライヤーよりペーパータオルを推していることは感じられました。 その点もみなさんには考慮していただければと思います。 WIREDのよくないところは、この2016年の記事を、今頃になってツイッター上で無反省に再掲したことです。 一応追記として、ダイソンの反論も載せてはいますが、まあ、どうなんでしょうね。 コロナウイルス関連できっと載せたんだとは思いますけど。 以前、某ひろゆき氏が、「ウソをウソと見抜けない人は」と言っている画像がよく出回っていましたが、世の中そんなに白黒はっきりしていることだけじゃないので、なかなか難しいことでしょう。 むしろ、「俺だけは騙されんぞ」と肩ひじ張っている人の方が、色々な情報に振り回されてしまうんでないでしょうか。 こういう時は、好きなラーメンを語るのと一緒で、自分のお好みの情報をご自身で楽しむぐらいが健康的によいのではないかと思います。 : 「ティッシュ」という表現だとちょっと不正確な気がするんですが、他にわかりやすい訳も思いつかなかったので、今回はこれでいきます。 : HAND DRYING: A STUDY OF BACTERIAL TYPES ASSOCIATED WITH DIFFERENT HAND DRYING METHODS AND WITH HOT AIR DRIERS : Redway, a microbiologist, published his first paper on the subject in 1994, on commission from the Association of Makers of Soft Tissue Papers. 微生物学者のRedwayは、1994年の最初の論文から、ティッシュメーカーからの援助を受けています。 : : 一応問い合わせているので、結果がきたら追記します ibenzo.
次のPhoto By Shutterstock 文:FINDERS編集部 日々刻々と変化するコロナウイルスの動向が報じられる今、オフィスや商業施設など、あらゆるトイレに設置されたハンドドライヤーの使用の是非について、などで話題になっている。 によれば、感染症対策のため、トイレでの「温風ジェット乾燥機は利用禁止」とある。 確かにハンドドライヤーを使っている時に、勢いあまって顔にまでしぶきが飛び散ることがあるが、あまり気持ちのいいものではない。 実際、に掲載の論文「病院における手指温風乾燥機とトイレ環境の細菌汚染調査」でも、ハンドドライヤーの飛沫による細菌汚染が報告されている。 とはいえ、ハンドドライヤーとひと口にいっても、リーズナブルなものから数十万円の機種までさまざまあり、設置された場所によってメンテナンス状況もまちまちだ。 施設によってはメンテ不足で不衛生なハンドドライヤーもあれば、抗菌対応のハイスペックな機種もあるだろう。 たまたま立ち寄ったトイレに設置されたハンドドライヤーがどんなものか、出会い頭での判断は難しい。 こちらは、厚生労働省による、を記した啓発ポスター。 対策の基本は、「手洗い」「マスクの着用を含む咳エチケット」。 手洗いは正しく行い、十分に水で流し、清潔なタオルやペーパータオルでよく拭き取って乾かすことを推奨している。 コロナウイルスの収束が未だ見えない状況だからこそ、国が推進する感染症対策を参考にするのが今は無難だろう。
次のすみません。 私はトイレのあの「ガーッ」ってやるハンドドライヤーで乾いたためしがないんですが、そんな記事の話。 トイレに備え付けられる最新型のジェット式ハンドドライヤーは、通常タイプの温風ドライヤーの20倍、ペーパータオルの190倍以上の量のウイルスを拡散するという研究結果(2016) — WIRED. 実験は手を洗っていない 研究方法には以下の記載があります。 被験者は、手袋をはめた手を、50mlのファージ懸濁液(訳注:バクテリオファージMS2)で10秒間すすぎ、手洗いのプロセスに似せるために3回手を振ってから、手指乾燥のための装置のひとつを使った。 つまり、手洗いはせずに、うようよ汚い液の中に手を突っ込んでから行うという方法なので、それは前提としてどうなんだい、という話が出ていました。 これね、大前提が間違ってる。 ドライヤーを使うのは手洗ってからでしょ。 ウイルス塗りつけた手で拡散させる、は現実的じゃないでしょ。 手洗わずにドライヤーだけ使う? トイレの「ジェットドライヤー」はウイルスを大量に拡散する:調査結果 — 岩田健太郎 georgebest1969 これについては、論文の中では以下の記載があります。 However, in reality the general public and some healthcare professionals do not always follow the advice. Washing procedures can be poor and compliance rates low Knights et al. Unpublished data; Anderson et al. 2008. (医療機関では確かな手指洗浄が行われているが)しかし、実際には一般の人々や一部の医療従事者は、常にそのアドバイスに従うわけではありません。 洗浄の手順が不十分で、遵守率が低い場合があります。 同上 そもそも、現実的に考えれば手洗いが不十分な場合が多いのではないか、ということですね。 )」という質問に、「理論上、感染を引き起こすには1つのウイルス・細菌があればいい(In theory, you need one virus or one bacteria to cause an infection. )」としたうえで、こう答えています。 「彼らは石鹸を使わないし、ちょっとの水だけで洗う」Redwayは言う。 彼らがハンドドライヤーの前に立ったとき、「もし適切な洗浄が行われなかった場合、手に残ったものが何であろうと、排せつ物質になりうるし、そこらじゅうに吹き飛ばされることになるだろう」 まあ、その理屈は理解できますが、だったらもうちょっと現実に即した感じの前提を作ればよいような気もしますが… Redwayはティッシュ業界から援助を受けている ところが気になることに、当該研究の執筆者であるRedwayは、ヨーロッパのティッシュ業界から援助を受けています。 Keith Redway has received honoraria from the European Tissue Symposium for microbiological advice and travel expenses to attend meetings and conferences. Keith Redwayは微生物学分野での助言のためにETSから、会議とカンファレンスに出席するための旅費を受け取っている。 Redwayは、1994年の研究から、ティッシュ会社から依頼を受けており、その業界との関係は深いです。 ETSは、ヨーロッパのティッシュ関係の団体から構成されており、ティッシュ生産の90%を占めているそうです。 で、トップページにはこんな画像があります。 より 思いっきり、「 ペーパータオルはいいぞ!ただしハンドドライヤー、てめえはダメだ」という主張の数々が押し寄せてきています。 結論をことさら疑う必要はないかとは思うものの、その結論までの過程については、少々眉につばをつけて見た方がいいかもしれません。 みんな業界おかかえ研究 上記のことは、ガーディアン紙の記事を読むと大変よくわかるのですが、いささか長い英文なので、私の方でピックアップして記載すると、要はこのハンドドライヤーの話、 「ダイソンvs. ティッシュ業界」という構造のようなんですね。 しかし普及は遅く、圧倒的にペーパータオルが使われている状況が続いた中、2003年にダイソンが開発したAirbladeが革新的で、欧州ではそれを機にハンドドライヤーが広まり始めたようです。 より 日本では東京エレクトロンが特許をとっていましたが、切れた後は大手が参入したため、ちょっとここら辺の経緯はピンとこないところもありますが、比較的最近の話なんですね。 ダイソンはティッシュ業界の研究結果を手をこまねいてみていただけではありません。 自身の商品の衛生上の効果の研究を発表させたり、 いかにハンドドライヤーは環境的で、ペーパータオルは森林破壊につながっているか、 (研究内容はリンク切れ) みたいな主張にご執心の時期もありました。 そもそも、ガーディアンによれば、この業界から離れ独立した、「ハンドドライヤーかペーパータオルか」の研究は1つしかなく、この結論は「ペーパータオルの方が優れているだろう(paper towels are superior to electric air dryers)」なものの、実証実験ではなく、メタ分析的な研究であることにも留意が必要です。 ガーディアンには、ETSのシンポジウムに参加しようとしたダイソン関係者がトラブったこととか、いかにETSが扇動的にハンドドライヤーを否定しているかみたいなことも書いてありますが、気になる人は原文を読んでください。 ガーディアンは少々ダイソンの肩を持ちすぎなきらいはありますが。 he began, then started digging through the pocket of his coat. A jingle of keys emerged, then some coins, and finally, a crumpled sheet of paper towelling. 彼はコートのポケットを探り始めた。 鍵束をじゃらじゃらさせ、コインが数枚出て、ようやく、くしゃくしゃになったペーパータオルが出てきた。 まあ、結局結論としては、「ちゃんと手を洗え」に尽きるかとは思います。 <トイレ> トイレには以下のものを常備しであるので使用毎にふき取り消毒する。 便座クリーナー:便座、使用前後 アルコールティッシュ:水洗ボタン、水洗レバー、ドアノブ(ロック等手で触れる箇 所)、水道栓(手動式ハンドル類)、照明スイッチ ペーパータオル:手ふき用。 温風ジェット乾燥機は利用禁止。 P28 その根拠を何にしているのか気になるところですが、国立感染症研究所に記載があるのは今の日本の医療機関の事情を表しているように思えます。 論文についても、試みにCiNiiで検索してみると、 などが挙げられます。 「G-26 ハンドドライヤー使用時~」はハンドドライヤーでシェアを占める三菱電機の研究ことを考慮する必要があります。 他は一応大学のものですが、利益相反や妥当性まではなんともいえません。 ただ、日本の医療機関の傾向として、どうやらハンドドライヤーよりペーパータオルを推していることは感じられました。 その点もみなさんには考慮していただければと思います。 WIREDのよくないところは、この2016年の記事を、今頃になってツイッター上で無反省に再掲したことです。 一応追記として、ダイソンの反論も載せてはいますが、まあ、どうなんでしょうね。 コロナウイルス関連できっと載せたんだとは思いますけど。 以前、某ひろゆき氏が、「ウソをウソと見抜けない人は」と言っている画像がよく出回っていましたが、世の中そんなに白黒はっきりしていることだけじゃないので、なかなか難しいことでしょう。 むしろ、「俺だけは騙されんぞ」と肩ひじ張っている人の方が、色々な情報に振り回されてしまうんでないでしょうか。 こういう時は、好きなラーメンを語るのと一緒で、自分のお好みの情報をご自身で楽しむぐらいが健康的によいのではないかと思います。 : 「ティッシュ」という表現だとちょっと不正確な気がするんですが、他にわかりやすい訳も思いつかなかったので、今回はこれでいきます。 : HAND DRYING: A STUDY OF BACTERIAL TYPES ASSOCIATED WITH DIFFERENT HAND DRYING METHODS AND WITH HOT AIR DRIERS : Redway, a microbiologist, published his first paper on the subject in 1994, on commission from the Association of Makers of Soft Tissue Papers. 微生物学者のRedwayは、1994年の最初の論文から、ティッシュメーカーからの援助を受けています。 : : 一応問い合わせているので、結果がきたら追記します ibenzo.
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