おおむね晴天に恵まれたゴールデンウィーク。 多くの人がバーベキューをしたり観光に出かけたりと楽しげに過ごしているっぽい中、戦争や貧困の話ばかりし、高遠さんの持参したイラクのあまりにも悲惨な映像に言葉を失いながらも、やはり充実した日々だった。 一緒になんとか変えていこうという志を共にする人がたくさんいること。 そんなことを改めて確認できた。 さて、そんなゴールデンウィーク直前、「少年サンデー」という漫画雑誌で新連載が始まったことをご存知だろうか。 タイトルは「あおざくら 防衛大学校物語」。 物語は、3・11の光景から始まる。 「3・11 その時、国は動いた。 市民を守るために。 災害派遣、領土防衛、テロ問題、国際援助活動。 この物語は国の防衛を志した、若者たちの青春の物語」 そしてページをめくると見開きでタイトルと主人公の顔がドーンとあり、こんな文章が躍る。 「防衛大学校 それは、自衛隊幹部養成のための士官学校。 日本一厳しい大学校で若き防人のヒナ達が、魂燃やす」 そうしてシーンは高校の進路指導室に移る。 主人公は高校生の近藤勇美 このネーミング・・・。 勇美の前に座る先生は残念そうな顔で言う。 「お前の頭なら早慶狙えるんだがなー。 どうしてもダメか? 」 その言葉に、勇美は答えるのだ。 「勉強したいのは山々ですが あいにく自営業のウチには・・・学費がありません・・・」 先生は奨学金についても触れるものの、「学費を返すあてなんて・・・むしろ、若干でも家に入れたいくらいなのに」と勇美少年。 勉強ができて親思いの「非の打ち所のない」少年である。 そんな勇美少年は親がやっている食堂の手伝いもよくする好青年だ。 ある日、一人で店番していると3人の男がやってくる。 「進路決めた? 」と勇美に問う彼らは、「防大なんか、向いてそうだけどなぁ! 」とさり気なく勧めたりもする。 もちろん、彼らは自衛隊。 しかもその中の一人はもともと子どもの頃から知っていた「桂木さん」だったのだ。 が、逞しく成長した姿にそうとは気づかなかった勇美。 「東北の震災とか大活躍で、ちょくちょくTV写っててよー、立派になって」。 そんなふうに語る父の言葉に、「桂木さん」へのリスペクトは大きくなっていく。 高校を出て自衛隊に入り、誰かのために目的を持っている桂木さん。 自分はずっと勉強をして、この先何をするのだろう。 「何かでっかいことをしてやりたいって・・・誰かのために・・・そして自分のために・・・」 そんな時、都市開発で来年には店をたたむことを知らされる。 少しはお金が入るものの、店の借金にあてるのでほとんど残らない。 進学は絶望的。 幼馴染みの女の子には「一家心中」を心配される始末だ。 そこで先生が持ってきたのが防衛大の資料。 「桂木さん」が言っていた大学だ。 学べる内容は国際関係学、安全保障学、航空宇宙工学、防衛学など。 偏差値60以上を超える難関大学だが、「ここは受験料・入学金・学費が全て・・・0。 入学した段階で、特別職国家公務員の身分となり毎月手当がもらえる」。 その言葉に勇美は「タダで大学入れてお金が貰えるの!? 」「いくら!? 」と身を乗り出す。 「月十一万一千八百円、手取りで九万一千円くらいかな。 夏冬ボーナスが年額三十五万二千円か・・・」 勇美は決意する。 「これは・・・なんとしても受かってやる!! 」 そうして第1話にて勇美は防衛大に晴れて合格。 「それじゃ・・・お国のために、励んできます。 なんてな」と家を出るところで1話は終わる。 さて、ここまで読んで、どう思っただろうか。 安保法制を受け、多くの人が問題としてきた「経済的徴兵制」。 それが全国のコンビニで売られている漫画雑誌にて、これほどライトに描かれているのである。 誤解がないように言っておくが、防衛大や自衛隊が悪いと言っているのではまったくない。 この漫画を批判するつもりもない。 が、安保法制が成立し、施行され、奨学金に苦しむ大学生の存在が社会問題となり、そんな「奨学金を返済できない」人々を防衛省でインターンさせたらどうかという話が文科省の有識者会議で出て、「奨学金をエサに若者を軍隊に勧誘するアメリカと同じじゃないか」という批判を浴びたなどという経緯がある中で、このようなとてもよくできた漫画が雑誌の巻頭50ページを独占して連載をスタートさせているという現実に、なんだかクラクラしているのである。 少年サンデーは、多くの中学生や高校生が読んでいる。 全国、どこのコンビニでも売っている。 「経済的徴兵制」なんて言葉を知らない若者も、少年サンデーは知っている。 その影響力は、SEALDsや学者の人々をもってしてもおそらく太刀打ちできないだろう。 第1話のラストでは、防衛大内でのいじめを予感させるようなシーンも盛り込まれている。 この漫画がどんなふうに展開していくのか、注目していきたいと思っている。 (2016年5月11日「」より転載).
次の凛々しい乙女と近藤が表紙の11巻です。 地元に帰省した乙女。 気を張っていた生活から一転、実家ではのんびりと過ごしていた。 離婚して離れ離れに暮らすことになった子供たち、乙女と坂木のことを母親は気にしていたが、乙女から坂木が元気にやっていると聞いてひと安心する。 母親が今度は乙女の大学生活について聞くと、 乙女は「みんな夢に向かって頑張っている。 」と答える。 そんな彼女に母親が、自分の目標は見つかったのか尋ねると、 「人が夢になることもあるじゃないか。 」という近藤の言葉を思い出した乙女は、 「なりたい人がいる。 それを目指して後期も頑張る!」と答えた。 新年の誓い 年末に「来年からはメールを放置しません!」と松井に誓わされた近藤。 年も明けた新年。 松井と誓ってそうそう、大学の仲間たちからたくさんの「あけましておめでとう」メールが届いていた。 一生懸命返信を返しながら、みんなからのメッセージをみて、今まで以上に頑張ろうと気持ちを新たにする近藤であった。 感想 まず、坂木のLINEのアイコンについて突っ込まざるをえない。 背中の筋肉か! 坂木ファンをざわつかせること間違いなしの一コマでした。 兄に対する憧れで防衛大に入学した乙女。 夢がないという彼女に「自分の進路になるほどの憧れる人は簡単には現われない。 」と、 憧れの気持ちを否定しないままアドバイスをする近藤。 このシーンは乙女の中で何度もプレイバックされていますが、それだけ乙女にとって大事な出来事なんですよね。 ぜったい次から乙女ちゃんのターンがくるよなーと感じさせる回でした。
次の初めて会う人に「実はした経歴がある」と言うと、「辞めたことを後悔していないのか?」と聞かれることがあります。 私自身は、防大を辞めたことや辞めた時期に全く後悔はありませんし、防大に進んだことにも後悔はありません。 防衛大学校に行った時間が無駄だったと思わないのか 「辞めるのだったら、最初から行かなきゃいいのに。 そこで過ごした時間がもったいないとは思わないの?」と言われたこともあります。 防大に進んだことについても、全く後悔していません。 行っていた時間が無駄だったとも思っていません。 そもそも防大に進んだ理由が、幹部自衛官になりたいという純粋な動機ではなかったのです。 高校時代に受験勉強の目的を見失ってしまい、勉強に身が入らなかった。 結果として、東京の私立と防大にしか合格することができませんでした。 東京の私立は経済的には難しいと考え、浪人するか防大に進むかの選択が残った。 当時のふがいない自分では浪人してもダメだと自覚していたので、厳しいといわれる防大に行けば何か変われるのではないか、という思いで防大に進むことを決めました。 自衛官になるつもりも、ならないつもりも無かったのです。 とにかく、今とは全く違った厳しい環境に身を置けば、ふにゃふにゃした情けない自分が変われるかもしれないという淡い期待で防大に進みました。 結果として変われた、というかバージョンアップした自分を取り戻すことができました。 辞める時期が中途半端ですが、あの時期まで防大にいたからこそ見えた景色があり、得ることができたものがあります。 無駄な時間だったとは全く思っていません。 辞める時期がもっと早ければ良かったと思わないのか 私が中退したのは1年生の12月。 一番早い人なら4月2日には防大を去って行きます。 4月以降に辞める人は、ほぼ夏の7月までに防大を去ります。 夏までに中退すれば、その年の受験には何とか間に合わせることもできたでしょう。 「12月まで在校したせいで2浪相当になってしまったことは、無駄な1年の浪人だったとは思わないのか」と言われたこともあります。 浪人していた1年は実家にも戻らず、受験勉強しかしていませんでした。 目標に向かって余計なものを捨て全力を出し切る、という経験をすることができたのです。 全く無駄な1年だとは思っていません。 そもそも、防大に入った当初は「何だここは!」というカルチャーショックから始まったのです。 宿舎での生活はアホみたいにしんどいし、講義はやたら難しいし、ごちゃごちゃ考えている余裕はありませんでした。 全力を出し切る毎日でした。 最初のしんどい時期に自分で決めたことがあります。 「このしんどい時期には絶対に逃げ出さない。 この先どうするのか考えるのは、しんどい時期を乗り越えることができた時に考えることにする」ということを決意しました。 肉体的にも精神的にも、しんどい時期は過ぎたと感じたのは、夏休み明けの9月になってからです。 9月を過ぎてからやっと、「本当に自分は幹部自衛官として生きていくのか?この先どうする、どうしたいんだ」と自分に問いかけるようになりました。 私には、先輩や同級生が抱いているような国防への意識があまりに薄く「このまま幹部自衛官になる道は自分の進む道ではない」と、退校の決心ができたのがやっと12月だったのです。 夏前に辞めるという選択肢は自分の中にはなく。 心を決めるまで3カ月かかったけど、その時の私にはそれだけの時間が必要だったのです。 辞めた時期についても、全く後悔を感じたことはありません。 中退したことを本当に後悔していないのか 防大を中退した経歴を知ると、御親切な方々が色々なことを言ってくれます。 「だから、後悔なんてしていませんって」と言えるはずもなく、こんな感じで答えています。 幹部自衛官への道に未練はなかったのか 防大を辞めず、幹部候補生学校に進んで自衛隊に入れば幹部自衛官となります。 一般的な自衛官の方であれば、ごく一部の人が定年直前で到達する階級からのスタートです。 私が防大に進んだ時、自衛官に「なるつもり」も「ならないつもり」もありませんでした。 そんな状態で入校し、先輩や同級生が明確に幹部自衛官を志望している姿を見てきました。 私は職業軍人にはなれない、自分の道ではないと感じたのです。 幹部自衛官への道に未練なんてあるはずないです。 「違憲の軍隊と言われようとも、日陰モノであったとしても、誇り高く国防を担う覚悟がある」と本気で考えているような人達です。 本当に尊敬します、私には無理でした。 安定した職業キャリアや収入を捨てたことに後悔はないのか 自衛隊といえども公務員です。 安定した職業キャリアや収入がほぼ約束されていると言っていいでしょう。 「防大を辞めなければ、安定していたのに。 バカなの?」という意味のことを言われたこともあります。 安定を求める人には、私のとった行動は頭が悪いとしか言いようがないのでしょう。 でも、そんなんで楽しいの?と逆に聞きたいですが、節度ある人としてこんな感じて答えています。 確かに安定はしているかもしれない。 けれど一旦ことが起きれば、部下の命を危険にさらすような命令を下す必要があるかもしれない。 自分の命であれば、必要と思うなら危険にさらすことはできるかもしれない。 けれど、私には部下の命を背負う覚悟はなかった。 生活とか収入とかではなく、生命をかけることになる命令を下す覚悟を持つことができるかどうか、といことなのです。 「無理だ」と感じてしまった私は甘い、という批判は当然だと思いますが、できないものはできないのです。 安定とかそういう問題じゃないのですから、後悔なんてするはずありません。 防大を辞めずにいたら、今より良い人生だったとは思わないのか 「防大を辞めず幹部自衛官になっていたら、今よりも地位も名誉も収入も高く、より良い人生だったとは思わないのか。 もったいないと後悔していないのか」と言われたこともあります。 「うっさいな~。 俺の人生なんだから放っておいてくれ、あんたに何にも関係ないやん」とは口が裂けても言えません。 こんな感じで答えています。 私は防大に進んだことも、中退したことも後悔していません。 あの時期あの場所を経験できたからこそ、今の私があると感じています。 でこぼこで、遠回りでブサイクな人生に見えるかもしれませんが、悪くない道を歩んできたと感じています。 防大に進んだから経験できたこと、出会えた人、見えた景色があります。 防大を中退したから、進めた大学があります。 その大学で更に色々な経験ができ、素晴らしい同期と先輩や先生に出会えました。 防大を中退し大学に入り直したからこそ、構造設計を志すものとしては最高レベルに属する会社に入社することができました。 その会社に入ったからこそ、カミさんとの出会いがありました。 入った会社で体調を崩し病気退職したからこそ、少しは人に優しくなれた気がします。 高い収入とか地位とか安定は、まだまだ手に入れることはできていませんが、どうにかこうにか生きています。 やりたいこと、挑戦していることもあります。 不満が全くないわけじゃないですが、誰かのせいにしたり、過去の自分を後悔している程ヒマじゃありません。 今、こうやって少しでも前に進もうとできている。 昨日よりも今日、今日よりも明日は少しでも成長していたいと思い続けられている。 全てが、防大に進んで中退したことのおかげだと感じています。 他人におすすめできるような道ではありませんが、私自身にとっては悪くはない道なのです。 これから先も、今までと同じように、振り返り愛おしいと思うことはあっても、後悔しないように進んでいきたい。 これが、防衛大学校に進み、中退して得た最大のものです。 では、また 現在、週刊サンデーで連載中の「あおざくら」でしか、防大生活を知らない私がコメントします。 あなたが防大入学を後悔しない、失敗ではないと考えるのはそれでいいと思います。 ですが、やはり防大はあやふやな気持ちで入る場所ではなかったと思います。 なにせ官費で国防のために若者 十代から自衛官な子も含め を教育する機関ですから。 「あおざくら」では防大生活の後期、つまりあなたが辞めた後にさらに大変になるとのことが説明されています。 あなたは高くなるハードルを前に退いたのです。 ただ、それは恥ではありません。 人にはそれぞれの居場所というものがありますので。 幹部自衛官になればベターだったという人もいると思うけど、その職業は意識面でも選ばれし者がつくのでしょう。
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