このうち、ペニシリン系はもっとも古くからさまざまな感染症に使われてきました。 とくに、ブドウ球菌や溶連菌、肺炎球菌などグラム陽性菌に強い殺菌作用があります。 さらに、合成ペニシリンのアンピシリンやアモキシシリンは天然のペニシリンが効かないインフルエンザ菌(インフルエンザ・ウイルスとは別もの)や大腸菌など一部の陰性菌にも有効です。 具体的には、咽頭炎や扁桃炎、気管支炎、中耳炎、麦粒腫(ものもらい)などに用いることが多いものです。 熱やノドの痛みを伴うカゼにもよく使います。 サワシリンやアモリンは、胃潰瘍の原因菌「ピロリ菌」の除菌療法にも適応します。 副作用は少なく、比較的安全な抗生物質です。 ただ、ショックを含め強いアレルギー症状に念のため注意してください。 ことに、アレルギー体質の人や、今までに薬による発疹などアレルギー症状を起こしたことのある人は要注意です。 そのような人は、必ず医師に報告しておきましょう(問診されるはずです)。 [PR] <メモ>• もともとの抗生物質は、カビなどの微生物が作りだす天然物質です。 1928年、イギリスの細菌学者フレミングが青カビからペニシリンを発見したのが最初です。 抗生物質は、いろいろな感染症の原因菌を殺菌し、間接的に炎症(腫れ)や痛みをとり、熱のある場合は解熱します。 熱やのどの痛みを伴うカゼを含め、各科領域で広く使われています。 病原菌そのものを退治するので、原因療法薬ということができます。 一般的に飲み薬は、咽頭炎や扁桃炎、中耳炎、鼻炎、気管支炎など比較的軽い感染症に使われます。 肺炎や腎盂腎炎、敗血症など重い感染症には、注射や点滴による治療がおこなわれます。 抗生物質や抗菌薬はウイルスには無効です(細菌とウイルスは別もの)。 インフルエンザやカゼなどウイルス性の病気には、本来効果がないのです。 けれど、細菌による二次感染時やその予防目的でよく処方されます。 ふだん健康な人の鼻カゼや軽いカゼには必要ありません。 抗生物質による副作用で多いのは、発疹などの過敏症状、吐き気や下痢などの胃腸症状です。 とくにペニシリン系やセフェム系の注射薬では、ショックにも十分注意します。 アレルギーのある人は、医師に報告しておいてください。 そのほか、血液障害、肝障害、腎障害などを起こすことがあります。 体に気になる変化があったときは、早めに医師に相談してください。
次のペニシリン系抗生物質の性質と特徴 抗菌薬を勉強するとき、最初に学ぶべきはペニシリン系抗生物質です。 フレミングが初めて発見した抗生物質がペニシリンであることから、抗生物質はすべてここからスタートします。 日本で使われるペニシリン系抗生物質は3つに分けることができます。 その3つとは古典的ペニシリン、アミノペニシリン、抗緑膿菌ペニシリンです。 以下でそれぞれの特徴や性質を確認していきます。 ペニシリン系抗生物質の種類 ・古典的ペニシリン ペニシリン系抗生物質での古典的ペニシリンとは、フレミングが発見した ペニシリンG(ベンジルペニシリン)のことを指します。 ペニシリンGが作用するのはグラム陽性球菌です。 グラム陽性球菌としては、黄色ブドウ球菌や化膿レンサ球菌、肺炎球菌が知られています。 肺炎球菌についても、同じように多くの耐性菌が確認されています。 基本的にはグラム陽性球菌に活用しますが、グラム陰性球菌の中でも淋菌や髄膜炎菌に対してペニシリンGは有効です。 ただし、淋菌はペニシリンGへの耐性化が進んでいることから、使用できないことも多いです。 なお、ペニシリンGが第一適応となるケースがあります。 それは、梅毒を治療するときです。 梅毒スピロヘータを治療するとき、他の抗菌薬よりもペニシリンGが効果的なのです。 抗生物質として最も古典的なペニシリンGですが、化膿レンサ球菌や肺炎球菌、髄膜炎菌、梅毒スピロヘータに対して現在でも活用することがあるのです。 ・アミノペニシリン 基本的に、 抗菌薬の開発が進むことでペニシリンの構造から離れていくと、グラム陽性菌への作用が弱まり、グラム陰性菌への作用が強まると考えてください。 アミノペニシリンは古典的ペニシリンの次に開発されたペニシリン系抗生物質であり、化膿レンサ球菌や肺炎球菌への働きは弱くなっています。 その代わり、グラム陰性桿菌の腸内細菌をカバーしています。 例外として、アミノペニシリンではグラム陽性球菌の中でも腸球菌に対しては効果が強くなっています。 これらアミノペニシリンとしては、アンピシリン・スルバクタム(商品名:ユナシン)、アモキシシリン(商品名:サワシリン)、アモキシシリン・クランブラン酸(商品名:オーグメンチン、クラバモックス)があります。 ・抗緑膿菌ペニシリン あらゆる細菌の中でも、緑膿菌は抗菌薬が効きにくい細菌として知られています。 そこで、 グラム陽性菌やグラム陰性菌、嫌気性菌に加え、緑膿菌への作用を示すペニシリン系抗生物質として抗緑膿菌ペニシリンが開発されています。 抗緑膿菌ペニシリンとしては、ピペラシリン(商品名:ペントシリン)、ピペラシリン・タゾバクタム(商品名:ゾシン)が知られています。 なお、あらゆる細菌に効果を示すわけではありません。 例えば、MRSAに対して抗緑膿菌ペニシリンは効果がありません。 ペニシリン系抗生物質の性質 ペニシリン系抗生物質は時間依存性の抗菌薬です。 また、PAEが短い(血中濃度が低くなると細菌は増殖を開始する)という性質のため、常にMICよりも高い血中濃度を維持しなければいけません。 ただ、ペニシリン系抗生物質の多くは半減期が1時間程度です。 そのため、1日に何回も投与しなければいけません。 通常は4~6時間おきの投与が必要だとされています。 適切な血中濃度を維持することで、薬の効果を最大限に得ることができ、さらには耐性菌の出現を防ぐことができます。 なお、中にはペニシリンに対してアレルギーを有している患者さんがいます。 この場合はペニシリンアレルギーを防ぐため、ペニシリン系抗生物質を他の抗菌薬に変えて投与しなければいけません。 どうしてもペニシリン系抗生物質を使用したい場合、少量から投与して徐々に投与量を増やすことで慣れさせていきます。 これを 脱感作といいます。 脱感作をすれば、ペニシリン系抗生物質を投与しても問題ありません。 ペニシリン系抗生物質の作用機序 細菌とヒトの細胞を比べたとき、細菌には細胞壁があるものの、ヒトの細胞には細胞壁がありません。 そこで、ペニシリン系抗生物質では、細胞壁の合成を阻害することでその作用を発揮します。 細胞壁がなければ、細菌の細胞内に水が流入してくるようになります。 その結果、細胞が膨張して破裂し、死滅していきます。 そのため、ペニシリン系抗生物質は殺菌性抗菌薬に分類されます。 細菌が細胞壁を合成するとき、ペニシリン結合タンパク質(PBP)という酵素が必要です。 そこで、ペニシリン系抗生物質はペニシリン結合タンパク質(PBP)に結合することで、その働きを阻害します。 これにより、細菌が死んでいきます。
次の世界で最初に発見された。 1929年A. がアオの一種の培養液中に,のを阻止する物質を発見し,ペニシリンと命名。 1940年E. らが臨床的に有効なことを報告(〈ペニシリンの再発見〉。 これにより1945年3人はノーベル生理医学賞)。 以来,種々の感染症の治療に常用されている。 アオカビの代謝産物として得られるものにはペニシリンG,X,Fなどがあり,Gは,連鎖球菌,肺炎球菌等のの感染症や,淋 りん 菌症,等のスピロヘータ症などに頻用 ひんよう される。 ペニシリンは体内のタンパクと結合してとなって,発熱,発疹,ショックなどの性過敏症を起こすことがある。 特にペニシリンショックはショックの一種で,発生頻度は数万回の投与に1回程度とされるが,死亡することも少なくない。 問診や免疫反応による予診,投与前後の安静保持等が必要。 1928年、イギリスの細菌学者フレミングが、ブドウ球菌の培養中に偶然アオカビが培地に混入してその周辺でブドウ球菌の溶菌現象がおこっているのを認め、このアオカビPenicillium notatumの培養液中に抗菌作用を示す物質のあることを発見、その物質をペニシリンと命名した。 しかし、熟練した化学者の協力がなく、治療価値を調べられる程度まで濾液 ろえき を精選濃縮することができないまま約10年間も放置されていた。 かくして1940年に至り、イギリスの病理学者フローリーと生化学者チェインらによって初めて粉末状に分離され、化学的に安定な形で使われるようになり、ヒトのグラム陽性菌感染症にすばらしい治療効果を示すことが実証され、抗生物質時代の幕開きとなった。 これをペニシリンの再発見とよんでいる。 ペニシリンは当初単一物質と考えられていたが、F、G、X、Kの4種が混在していることがわかり、そのうちG(ベンジルペニシリン)が生物学的活性および安定性において優れていることが明らかとなった。 現在、ペニシリンには天然(生合成)ペニシリンと合成ペニシリンとがあり、それぞれ経口用と注射用に分けられている。 天然ペニシリンには、主として注射用に使われるベンジルペニシリンカリウムやベンジルペニシリンプロカイン、経口用のベンジルペニシリンベンザチンやフェノキシメチルペニシリンカリウムがある。 一方、ペニシリンの母核である6-アミノペニシラン酸の合成に成功(1957)し、現在のペニシリン製剤の大部分は合成ペニシリンになった。 初めはペニシリンの欠点である耐性菌やアレルギーの発生の少ないものとして、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリンなどが開発されたが、現在ではグラム陽性菌ばかりでなく、グラム陰性菌にも有効なアンピシリンより始まる合成ペニシリンが主流を占め、アモキシシリン、タランピシリン、バカンピシリン、カルフェシリン、カリンダシリン、ヘタシリン、シクラシリン、カルベニシリン、スルベニシリン、チカルシリン、ピペラシリン、メズロシリンがあり、緑膿 りょくのう 菌にも有効なものが開発された。 [幸保文治] ペナム penam ともいう.1928年,A. Fleming はアオカビ Penicillium notatumがぶどう球菌などのグラム陽性菌の発育を阻害する物質をつくっていることを発見し,ペニシリンと名づけた.1940年にH. Florey,E. ChainとE. Abrahamは,粗精製したペニシリンに顕著な臨床効果があることを動物実験で示し,世界最初の抗生物質の誕生となった.ペニシリンは精製され,ペニシリンG,X,Fなどの類似物質の混合物であることがわかった.グラム陽性菌にすぐれた抗菌活性を示すが,グラム陰性菌の細胞膜まで到達しにくく,グラム陰性菌には効かない.作用機序は,細菌の細胞壁を構成するペニシリン結合タンパク質 層の架橋酵素 に結合して,この酵素の阻害により細菌を破壊する殺菌作用である.ヒトの細胞には細胞壁がないので,細菌のみに選択毒性を示す.ペニシリンショックとよばれるアレルギー性過敏反応を示すヒトがいることを除き,副作用はほとんどない.ペニシリンG ベンジルペニシリン は,耐性菌が出るまでは非常によく使用されていた.ペニシリンG:C 16H 18N 2O 4S 334. このドーマクの発見に先だつ1929年,イギリスのA. フレミングは,たまたま寒天培地上の黄色ブドウ球菌の集落が,その周辺にできたアオカビの集落によって溶けることを観察し,アオカビの培養濾液の中に各種細菌の発育を阻止する物質 ペニシリン のあることを報告した。 10年後,この報告から出発してイギリスのチェーンErnst B.
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