フラボノイドはベンゼン環を含むフェニルプロパノイド(ケイヒ酸、赤い部分)系化合物ですが、シキミ酸を原料として、芳香族アミノ酸であるフェニルアラニンやチロシンを経て合成されます。 合成される経路は次のようですが、途中はかなり省略して経路だけを示してあります。 シキミ酸からカルコンへの合成経路 カルコンから種々のフラボノイドへの経路は次の式ですが、酵素によって反応が進みます。 カルコンから環が閉じてフラバノンになり、脱水したり二重結合ができたりして、フラバノイドができます。 カテキンは、ロイコアントシアニジンからできます。 縮合型タンニンは、これらのフラボノイドが結合(縮合)してできます。 カルコンからフラボノイドへの合成経路 フラボノイド flavonoids とは1,3-ジフェニルプロパノイド骨格を有する物質の総称ですが、そのうちでカルコン chalcones 、フラボン flavones 、フラボノール flavonols 、アントシアニジン anthocyanins 骨格を有するものが色素として存在します。 フラボノイドはポリフェノール化合物であり,花や葉等の色素として植物界に広く分布しています。 フラボノイドの基本骨格は15の炭素原子を有し,2つのベンゼン環が3つの炭素原子で結合されたものです。 その構造によって、可視部に吸収の無いものと、可視部に吸収があり色素になるものがあります。 次の表は、色素に関わらずフラボノイド化合物の分類を示している。 基本骨格 特徴と色素の例 カルコン Chalcones ベニバナに含まれる色素は紅色のカルタミン、黄色のサフラワーイエローがあり、カルコン骨格を有します。 糖が結合した配糖体なので水溶性の色素として、食品、化粧品の着色に用いられる。 UV 372 nm サフロミン safflomin フェノールと桂皮酸が結合した構造 ベニバナの花から得られるカルタミン 前駆物質である黄色素ポリオキシカルコンが空気酸化でキノン化されて、赤く発色したもの。 ( フラバノン Flavanone カルコンが異性化すると、フラバノンになります。 ヘスペレチン hesperetin は、レモンの果皮・果汁、ミカンの果皮に含まれます。 ナリンゲニン naringenin は、ザボンの果皮、ブンタンの果皮などに含まれます。 ヘスペレチン Hesperetin レモンやオレンジに含まれるフラボノイドで、UV 284 nmですから可視部は無色です。 フラボン Flavone フラバノンが脱水素してフラボンになります。 フラボノール Flavonol フラボノール ケルセチン quercetin はレタス,ブロッコリ、リンゴ果皮,イチゴ、タマネギ,茶,ソバ、プロポリスに含まれる。 ケルセチンの配糖体は rutin です。 ケンフェロール(kaempferol)はニラ,ブロッコリ、ダイコン,タマネギ、グレープフルーツ、プロポリスに含まれる。 ミリセチン(myricetin)はクランベリー,ブドウに含まれる。 ケンフェノール Kaempferol : リンゴ、オニオン、ニラ、柑橘類、ぶどうなどのさまざまな天然物に含まれるフラボノイド UVスペクトルでは、268 nmと312 nmに吸収があるが、可視部に吸収が無いので、無色です。 フラバノール Flavanol フラバノール 緑茶に含まれるで、UV吸収は、257, 289, 298 nmで、可視部には吸収がありません。 テアフラビン(Theaflavin(紅茶))は、カテキンが発酵過程で酸化したもの。 エピカテキン Epicatechin : エピカテキン Epicatechin (カカオ) エピガロカテキン Epigallocatechin (緑茶) エピカテキンガレート Epicatechin gallate (緑茶) エピガロカテキンガレート Epigallocatechin gallate。 アントシアニジン Anthocyanidins 花に含まれる色素で、pHにより色が変化します。 () アピゲニニジン apigeninidin: 475 nm, luteolinidin, 495 nm, AlCl 3: 546 nm イソフラボノイド Isoflavonoids イソフラボンを始めとするイソフラボノイドはフラボノイドの生合成経路から派生してできる。 1, 2-ジフェニルプロパノイド骨格を有し、フラボノイドからベンゼン環が移動(転位)してできる。 マメ科植物などに多く存在する。 醗酵していない豆腐などの大豆食品には配糖体daidzinで含まれ、味噌などの醗酵大豆食品には無糖体のdaidzeinとして含まれる。 大豆に含まれるイソフラボン。 フラボノイド重合体 Polymeric Flavanoids, Condensed Tannins フラボノイドが縮合して高分子化した縮合型タンニンです。
次のは 3-フェニル-プロパ-2-エン酸 3-phenyl-prop-2-enoic acid。 分子量は 148. 16、CAS登録番号は [621-82-9]。 植物界に広く存在する。 の双方をケイ皮酸と呼ぶことも多いが、狭義には E体のみをケイ皮酸と呼び、 Z体はアロケイ皮酸と呼ばれる。 アロケイ皮酸は不安定で容易に E体へと異性化する。 のによって作ることができるが、工業的にはとにを作用させるによって作られる。 ケイ皮酸はの一種であり、天然に存在するケイ皮酸は、がによる脱アミノ化を受けることで生成する。 主なケイ皮酸誘導体 [ ] ケイ皮酸のエステルのいくつかに、芳香を持つものが知られる。 いわゆるマツタケ臭、臭を持ち、香料、食品添加物などに利用される。 には溶けず、に溶ける。 、、などに含まれる。 いわゆる臭といわれる果実臭、バルサム臭を持ち、香料、食品添加物などに利用される。 水には溶けず、エタノールに溶ける。 水には溶けず、エタノールに溶ける。 水には溶けず、エタノールに僅かに溶ける。 などに熱時溶解する。 [ ].
次の唐辛子の辛味成分であるカプサイシンは、果実内の胎座(たいざ)・隔壁(かくへき)という組織の表皮細胞で合成されることが明らかにされています(一部の激辛品種では果肉でも合成されています)。 また、合成されたカプサイシンは同組織細胞内の液胞に蓄積されています。 カプサイシンの生合成経路 カプサイシンは上図のような生合成経路でつくられることが明らかにされており、「フェニルプロパノイド合成経路」と「分枝鎖脂肪酸合成経路」という2つの経路が内在します。 フェニルプロパノイド合成経路 フェニルプロパノイド合成経路は芳香族アミノ酸の「フェニルアラニン」を出発物質として、「桂皮酸」や「バニリン」といったベンゼン環をもつ様々な物質を合成する経路です。 カプサイシンの生合成では「フェニルアラニン」から最終的に「バニリルアミン」が合成されます。 余談ですが、フェニルプロパノイド合成経路は「カプサイシン」だけではなく、「フラボノイド」や「リグニン」といった他の二次代謝産物の中間生合成経路でもあります。 分枝鎖脂肪酸合成経路 分枝鎖脂肪酸合成経路は「バリン」あるいは「ロイシン」を出発物質として、「分枝鎖脂肪酸」を合成する経路です。 トウガラシの辛味成分には「カプサイシン」のほかに、「ジヒドロカプサイシン」や「ノルジヒドロカプサイシン」といった様々な類縁化学物質があります。 これらはまとめて「カプサイシノイド」と呼ばれていますが、その化学構造は分枝鎖脂肪酸の「炭素数(鎖の長さ)」や「2重結合の有無」にあります。 上図は、最も主要な辛味成分である「カプサイシン」の例であり、「バリン」から「8-メチル-6-ノネノイル酸」という分枝鎖脂肪酸が合成されます。 この「フェニルプロパノイド合成経路」と「分枝鎖脂肪酸合成経路」を経てそれぞれ合成された 「バニリルアミン」と「8-メチル-6-ノネノイル-CoA」が最終的に縮合 合体 することで、カプサイシンが合成されます。 カプサイシンの化学構造を「鍵(カギ)」に例えると、「鍵の取っ手」のような「バニリルアミン」と、「鍵穴に入る歯」のような「8-メチル-6-ノネノイル-CoA」が別々の生合成経路でつくられ、それらが最後に合体して一つの鍵、すなわち、カプサイシンが出来上がります。 【参照】・・Biochemistry and molecular biology of capsaicinoid biosythesis: recent advances and perspectives Arace-Rodriguez et al. 2019 投稿ナビゲーション.
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