記述的研究• 生態学的研究• 横断研究• ケースコントロール研究• コホート研究• コホート研究を活用したケースコントロール研究 記述的研究 記述的研究(descriptive study)の目的は、疾病・障害の特性を明らかにすることです。 この目的を達成するために、記述的研究では新しいデータや既存の資料から疾病・障害の頻度・分布に関する何らかの仮説を設定します。 疾病・障害の頻度・分布の記述は時間、場所、人間のフレームで行います。 生態学的研究 生態学的研究(ecological study)の目的は、集団単位(世界、国家、都道府県、市町村など)で疾病・障害に関係する要因の関連を明らかにすることです。 この目的を達成するために、生態学的研究では既存の資料をデータにし、特性の異なる集団を対象に疾病・障害の構造を精査していきます。 集団単位の調査なので、結果が個人に当てはまらない生態学的誤謬という問題がともないます。 横断研究 横断研究(cross-sectional study)の目的は、ある時点における要因間の関連性を検証することです。 この目的を達成するために、横断研究は1時点のデータを収集し、存在率=有病率、相関関係、構造的関連性を検討していきます。 横断研究はデータ収集がしやすいため多用されますけど、因果関係については確定的なことはいえないという問題がともないます。 ただし、統計的因果探索の技術がさらに向上すれば、横断研究でも因果関係について明確なことが言えるようになるかもしれません。 ケースコントロール研究 ケースコントロール研究(case-control study)の目的は、ケース群(疾病・障害あり)とコントロール群(疾患・障害ない)を対象に、曝露歴の有無を調べていくことによって疾患・障害の原因と結果の関連を検証することです。 その基本方法は下図の通りでして、現在から過去に遡って曝露の有無を調べるものになります。 ケースコントロール研究は横断研究と違って因果関係を検証できますが、次に述べるコホート研究に比べるとその証明力は低下します。 コホート研究 コホート研究(cohort study)の目的は、何らかの曝露がある人とない人を縦断調査して、出来事の発生状況を調べることです。 コホート研究は前向きコホート研究(prospective cohort study)と後ろ向きコホート研究(retrospective cohort study)があります。 前向きコホート研究は対象集団を時間経過にそって追跡調査する方法です。 後ろ向きコホート研究は、過去のデータから曝露群と非曝露群を比較検討する方法です。 前向きコホート研究は研究開始時点で曝露群と非曝露群を設定したうえで出来事が発生する程度を比較検討するのに対して、後ろ向きコホート研究は過去のデータから曝露群と非曝露群を設定して出来事の発生の程度を比較検討するところに違いがあります。 後ろ向きコホート研究とケースコントロール研究の違いは、前者が疾患・障害などの出来事の発生率を、後者が曝露の存在率を検討するところにあります。 コホート研究は因果関係の証明力が高いですけど、横断研究やケースコントロール研究などに比べて時間的、経済的な負担が多大です。 コホート研究を活用したケースコントロール研究 ケースコントロール研究はコホート研究に比べると実行しやすいものの因果関係の証明力に劣り、コホート研究はそれに対して因果関係の証明力が高いものの実行が難しいという問題があります。 そうした問題を解決する方法として、コホート研究を活用したケースコントロール研究があります。 コホート内ケースコントロール研究(case-control study within a cohort)• ケースコホート研究(case-cohort study) コホート内ケースコントロール研究はコホート研究の中でケースコントロール研究を行う方法です。 別名はネステッド・ケースコントロール研究 nested case-control study ,シンセティック・ケースコントロール研究 synthetic case- control study です。 ケースコホート研究もコホート研究の中でケースコントロール研究を行う方法です。 コホート内ケースコントロール研究とケースコホート研究はコントロール群の選択方法が違います。
次の利点と欠点 [ ] ケースコントロール研究は、すでに疾病を発生しているケースが利用できるため、疾病の発生を待つ必要はなく、に比べて時間もコストもかからない。 また、コホート研究が適さない稀な疾病(稀な疾病の場合、コホート研究では膨大な時間と費用をかけて、コホートの大部分の人が健康なままでいることを観察するだけとなる)に適している。 対象としている疾病の原因と考えられる要因を複数調べることができるという利点がある。 その反面、リスク要因に関する情報を過去にさかのぼって調べなくてはいけないので情報が不正確になりがちである。 代表的なものには、(recall bias)が挙げられ、ケースは「過去に原因として考えられている要因の曝露を受けたかどうか」をよく記憶しているが、疾病を発生していないコントロールは同じ曝露を受けていても記憶していないという偏りがしばしば見られる。 また、研究対象者の選択においても、コントロールの適切な選択は難しく、 ()(selection bias)についての検討が充分になされる必要がある。 例 [ ] 以下の例はによる奇形(フォコメリア phocomelia)を報告した博士の例である。 症例 奇形児を生んだ母親 対照 奇形児を生んでいない母親 計 サリドマイド服用 要因暴露あり 90人 2人 92人 サリドマイド非服用 要因暴露なし 22人 186人 208人 112人 188人 300人 この例は奇形を生んだ母親112人に質問し、過去にサリドマイドを服用した過去があるかを調査し、そののち奇形でない出産をした母親188人に同様な質問をして作成した表である。 と異なり、一般的にを直接求めることはできない。 これは対照群の大きさは事後に任意に決めることができるからであり、上の表の188人は合計を300人にするために選んできただけである、具体的には縦方向の比には意味があるが、横方向の比には意味がないからである。 曝露要因と疾病の関係は症例群の曝露オッズと対照群の曝露オッズを比較することで評価される。 評価にはオッズの比をとるので(曝露)(Odds Ratio と呼ばれる指標で評価する。 この例では以下のような高い値となる。 45454... 45454... 45454... 45454... 脚注 [ ] []• library. downstate. edu. 2015年9月3日閲覧。 Mitchell H. 柴田義貞 サリドマイド 日本計量生物学会ニュースレター第 103 号 2010. 参考文献 [ ]• 青山英康 監修「今日の疫学」第2版、真興社、2005年、• ロバート H. フレッチャーら著、福井次矢 監訳「臨床疫学 EBM実践のための必須知識」第2版、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2006年、 関連項目 [ ]• この項目は、に関連した です。 などしてくださる(/)。
次のケース・コントロール研究の特徴を理解しよう まずは、ケース・コントロール研究の特徴や、実施する際の注意点などについて解説します。 2つの群において、過去の要因が病気の有無にどう関係しているのかを明らかにすることが目的になります。 この研究では過去の情報収集とデータ分析が中心になるため、研究デザインの分類としては後ろ向きの観察研究になります。 対象者の割り付けが終われば、あとは自分たちのペースで研究を進めることができるため、時間的な制約は少ないといえるでしょう。 また、データ収集の途中で「やっぱり別の項目を見てみよう」など、あとから軌道修正しやすいことも特徴です。 これらの点から、 ケース・コントロール研究の難易度は低めであり、初めての臨床研究でも取り組みやすいといえます。 たとえば、ある関連因子を比較したい場合、過去のカルテ記事から情報収集する必要があります。 調査者は、自分の仮説をもとに研究デザインを考えているため、「こうあってほしい」という私的な考えが入る可能性があります。 また、コントロール群(病気をしていない群)を選ぶ場合に、ケース群(病気をしている群)と明らかに特性が違う集団から選択すると結果に大きく影響します。 調査におけるこれらの偏りはバイアスと呼ばれるもので、特にケース・コントロール研究では発生しやすいため注意が必要です。 ケース・コントロール研究では因果関係を明らかにできる ここでは、ケース・コントロール研究でどのように因果関係を明らかにするかについて解説します。 そのため、 実際に目星をつけた項目について関連性を確認することや、関連性が不明な項目を分析することになります。 既存のデータから分析する手法の1つに横断研究が挙げられますが、この研究デザインでは「どちらが原因なのか」についてはわかりません。 しかし、因果関係を調べる場合、単なる関連性だけでは不十分であり、どの程度影響しているのかを調べることが重要です。 また、 比較したい要因同士が影響し合っている(交絡因子)ことも考えられるため、1対1の関連ではなく、複数の要因があるなかでの分析が必要です。 ケース・コントロール研究で用いられる統計手法に ロジスティック回帰分析という手法があります。 この手法を用いると、有害事象の発生に対して、どの要因がどの程度関係しているかを明らかにすることができます。 その関係性の程度はオッズ比とよばれる数字で表すことができ、 オッズ比の高い要因の関連性が強いといえます。 あなたの疑問がカタチになる!具体的な活用例をご紹介します ケース・コントロール研究をどう進めていくか、筆者が実際に調査した内容を例に挙げてみます。 抑うつ発症により、自宅へ帰る意欲がなくなる、リハビリが進まなくなる、食事が取れなくなるなどさまざまな障害が出てくることが問題になっていました。 そこで筆者らは、「抑うつ発症に関係している因子はなにか?」、「その因子を明らかにすれば、事前に対策ができるのではないか?」と考えました。 患者さんと接するなかで、「家に帰ってもしたいことがない」、「どうせテレビの番をするだけだから」など、楽しみを見出せない方が多い印象を受けました。 そのため筆者らは、「入院前の社会的役割や趣味がない方は、術後に抑うつ状態を発症しやすい」と仮説を立てました。 関連要因には、年齢、術後合併症の有無、社会的役割の有無、趣味の有無などを設定した。 79 、術後合併症の有無8. 62、社会的役割2. 59の順であった。 これらの結果をもとに、筆者らは術後の抑うつ発症を防ぐ方法について多職種で考えました。 合併症に関しては、万全の体制で手術に臨んでも起こることがあるため、趣味の有無や社会的な役割について介入することにしました。 この例からわかるように、ケース・コントロール研究は臨床の疑問を解決する一助となります。 「多分こうだろう」と推定していることを、 客観的な数値をもって証明できることが臨床研究の醍醐味ではないでしょうか。 臨床研究の目的は、より良い医療サービスを提供すること 日々の業務が忙しいから時間が取れない、統計が難しいから自分にはできないと臨床研究を諦めてはいないでしょうか? 研究デザインの作成や倫理委員会の審査、データ分析など慣れないことが多くて尻込みするかもしれませんが、 その努力は患者さんの生活に結び付くものです。 そのなかでも、ケース・コントロール研究は比較的取り組みやすい領域です。 臨床で生じたあなたの疑問はまさにダイヤの原石です。 少しの勇気を出して磨き上げてみませんか? あわせて読みたい: 参考: 奥村高弘,他:趣味や社会的役割の喪失は心大血管術後の抑うつ発症に関与する. 心臓リハビリテーション 23(suppl):176,2017. 執筆者• 皆さん、こんにちは。 理学療法士の奥村と申します。 急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。 高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。 保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士.
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