みどりいろのツム マイツム100。 【最安値挑戦!】 【第2類医薬品】【送料無料】 防除用殺虫剤 5L(水性乳剤) ULV乳剤E 金鳥 ジカ熱対策 デング熱 駆除 伝染病媒介蚊

Readymade Furniture

みどりいろのツム マイツム100

(1) 毎年恒例『うを徳』。 丸6年、月に二度ペースが人気が出て月一度に、、。 (2)、(3) 『猪股』、『ラチュレ』は、遠からず人気沸騰し、予約すら取りづらくなること間違いなし。 凄かった! 旨かった! でも、入れなくなったら行かない。 行くなら今のうち! (4) さしたる修業経験こそないものゝ、気楽で舌に馴染むビストロ料理を出す春日部駅前『Bien』。 箪笥店三代目主人は、料理好き、話好き。 自慢のパンは東京の名店より落ちるし、牛肉はOZ、と、食材は一流店に見劣りする。 だが、そんな、 ・「気軽で一寸だけ気の利いたビストロ」 それでよい。 月に二度は予約なしにひょっこり覗く。 (5) 『からくさ』。 笑顔の眩しい夫婦二人の細々とした商いに心和む。 (6)、(7) 王子のリアルレトロ、惣菜の『三吉』に、街場中華『福楽』。 何より建物がそゝるし、主人の人柄に癒される。 味は至って"普通"。 その"普通"、"当たり前"が、今や、「風前の灯火」。 (8) 向島の料亭御用達煎餅『いりむら』: 看板も見当たらず、外観はボロボロの駄菓子屋そのもの。 値が高騰しても紀州備長炭を使い続ける心意気。 (9) 鰻の『味治』: 家族ばかりの商い。 好きな店だが、もはや、自力で予約を取ってまで行く気なし。 (12) 館林『恵三』は某誌で紹介され、人気沸騰確実。 向島(むかふじま)『』ゟ(より)『』を經由(へ)て、 寺島町(てらしまゝち)『』に、、。 暖簾(のれん)潛(くゞ)るは大畧(およそ)五ヶ月(いつゝき)ぶり。 (つけばまへ)の客人(きやく)は老骨(それがし)唯一人(たゞひとり)。 十年前(とゝせまへ)なら某(それがし)の他(ほか)、 絶(た)へて人(ひと)の姿(すがた)を不見(みざる)が常態(つね)なれど、 かゝる(けしき)は久方(ひさかた)ぶり。 (おやかた)も當時(そのかみ)を懐舊(なつかしむ)。 しかはあれど、 "(むかふじまひやつくわゑん)"ゟ(より)歸途(かへるみちすがら)、 偶(たま)さかフラり立寄(たちよ)るとか、 近鄕近在(ちかく)の民(たみ)の午餔處(ひるめしどころ)には不能囘歸(もどりえぬ)。 「(こぼれたるみづは、もとのうつはにもどりがたし)」 (おやかた)も懐古(そのかみをなつかしむ)と云へど、 これは 黃泉(よみ)ゟ(より)死者(しにたるもの)を戻(もど)すに同等(ひとし)く、 "(いざなぎ)"の失錯(しくじり)を反復(くりかへ)すが限界(せきのやま)。 食材(たね)の 優秀(ひいで)たるは萬民(よろづのたみ)認(みと)むるところなれど、 虚飾(いらぬかざり)と 複雜怪奇(やゝこし)き 調劑(あぢつけ)を排(す)て、 " 必要最小限(いらぬものも、たすべきものもな)き" 烹調法(やりかた)は、 「 理會(わかる)者(もの)にのみ分(わ)かる。 」と云ふもの。 就中(わきても)、 "(うしほじる)"と"(むなぎ)"は 鮓店(すしや)の巓(いたゞき)。 否(いな)! 名店(なのあるみせ)の" 會席膳(くわいせきぜん)"と競(くら)べても、 俄頃(にはか)に、 精麁(よしあし)・ 雌雄(をすめす)を 難判別(わかちがた)きほど。 " 美酒佳肴(よきさけによきさかな)"の數々(かずかず)、 加旃(しかのみならず)、" 龍肝豹胎(うみやまのよきあぢ)"は常態(つね)のこと。 就中(わきても)、此度(こだみ)は"(あかえいのきも)"まで、、。 「長州萩(ながとのくにはぎ)の濵(はま)に揚(あ)がりしもの」と云ふ。 " 肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはざるほどのおどろき)"、 とまでは行(ゆ)かぬにせよ、 珍味(よにもめづらしきあぢ)なるは確實(たしか)。 (あしか)、馬鹿(うましか)、 饗應(もてなし)歟(か)? 「扨(さて)その經緯(いきさつ)は?」と問(と)はるれば、 「如此如此(かくかくしかじか)、、)」と應答(いら)ふる他(ほか)なし。 この他(ほか)、合馬(あふま)の"(たかむな)"、"(なまのぼらこ)"、 羅臼(らうす)の"(ますのすけ)"に、"(まつばがに)"までも、、。 桌上型 電腦(つくゑのうへなるエレキそろばん)が 異常動作(ふてくされ)、 亂暴狼藉(あばれまはりて、をちこちとりちらか)し、一無方策(てもつけられず)。 復舊(もとにもどす)は輒(たやす)からず。 二日(ふつか)三日(みつか)、、、五日(いつか)かけて、ほゞ復舊(もとのすがたに)。 備忘錄(おぼゑがき)も紛失(なく)し、 記憶(おぼえ)曖昧模糊(あやふや)、劵(けん)ならダフ屋(だふや)、 "菽乳(とうふ)"沽(か)ふなら坊(まち)の零細豆腐店(ちいさなとうふや)がよい。 "淮南(とうふ)" 昆布溏油(こぶだし)、""は跣(はだし)。 そいや、當家(こちら)の"(わん)"も 昆布溏油(ひろめだし)。 適度(ほどよ)く調劑(あぢつけ)が施(ほどこ)され、 この、最上(このうへな)き 淸湯(すましゞる)に 調和(よくあふ)。 濟(す)ませ、黄昏(たそがれ)の『』より辭別(いとまごひ)。 8~F5. 「豐穣(ゆたか)なる白藏(あき)の幸(さち)」を喰(く)ひそびれ、 はや、水(みづ)も凍(い)てつく 玄英(ふゆ)。 名殘(なごり)の"(むなぎ)"は"遠州 濱名湖(とほとうみはまなこ)"。 實(げ)に、 天下無雙(よにくらぶるものな)きは(こみやおやかた)の"(からすみ)": 適度(ほどよ)く熟成(う)れ、 芯(なか)は、なほ" 輭(やはらか)さ"と" 瑞々(みづみづ)しさ"を保持(たもつ)。 美味佳肴(よきあぢ)揃(ぞろ)ひなること、 「 何(いづ)れ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」のごとき景状(ありさま)なれど、 當日(このひ)の 白眉(はくび)は、 " 活天然對蝦(いけてんねんくるまえび)"用(つか)ひし"(たまごやき)"。 實言(まこと)、 「 海内一(ひのもといち)の" 雞卵炙(たまごやき)"」と斷言(よぶをはゞからず)。 (こみやおやかた)も亦(また)、 「 會心作(くわいしんさく)」と自慢(むねをはる)、靑陽(はる)はまだ先(さき)。 55kg)。 木砧(まないた)の上(うへ)の"(ほしがれひ)"は朝〆(あさじめ)。 噛(か)むほどに、心持(こゝち)よき齒觝觸(はあたり)を隨伴(ともな)ひ、 風韻(かをり)・ 旨味(うまみ)が浮騰(ほとばし)る。 就中(わきても)、(えんがは)には肝裂魄飛(きもさけたましひみにそはず)。 とは半點(いさゝか)大袈裟(おほげさ)なれど、 "(ほしがれひ)"も"(むなぎ)"も、實言(まこと)、美味(よきあぢ)。 "(うしほじる)"の美(あぢよき)は勿論(いふもさらなり)。 素材(そざい)秀逸(よし)、技倆(うで)さらに優秀(よし)。 此度(こだみ)の 米醋(よねず)と 粕醋(かすゞ)の配合比(わりあひ)は、 「六(ろくぶ):四(しぶ)」との説明(よし)。 粕醋(かすゞ)は"(やまぶき)"など三種(みくさ)の混合(まぜあはせ)。 舎利(すめし)に限定(かぎ)るなら、 試行錯誤中(みちなかば)歟(か)? 劈頭(いやさき)に、"(ぬたなます)"。 名殘(なごり)の"(ほたるいか)"を最惜(いとをし)みつゝ、 (ばかゞひ)と(くでうねぎ)を醋未醤(すみそ)にて堪能(あぢはふ)。 何(なん)でも「(ちどりす)」との説明(よし)。 (ふしみたうがらし)と(ちりめんざこ)の煮物(にもの)には、 破顏(かをほころば)さゞるべからず。 (こみやおやかた) 特有(ならでは)の優(やさ)しき味(あぢはひ)。 實(げ)に、これを 家苞(いへつと)ゝして囘(かへ)りたきところ。 未開(いまだひらかざる)"(ぬなは)":、 水晶(すいしやう)のごとき"それ"には「肝裂魄飛(きもさけたましひみひそはず)」。 近接(ちかより)て詳細(つぶさ)に觀察(み)るに、 實言(まこと)、 嬰兒(みどりご)の如(ごと)き(すがたかたち)。 備前 小島灣(びぜんこじまわん)の 鰻(むなぎ)は"(志らやき)"。 雲州 宍道湖(いづもしんじこ) の鰻(むなぎ)にも負(ま)けぬ美味(よきあぢ)。 「 今季一(こんきいち)」 と云ふも、 强(あなが)ち嘘僞(うそいつはり)にあらず。 土州(とさ)の(しまあぢ)、上總 竹岡(かみつかさたけをか)の(たちうを)、、 「 百花繚亂(いづれあやめかゝきつばた)」。 早晚(いづれ)(あやめ)は(ひと)の(つま)。 (まづまわさび)は刺躬(さしみ)の" つま"。 そも、"(ときしらず、おほめます)"なるもの、 高貴(やむごとなき)こと、鮏(さけ)の夥計(なかま)でも頂點(いたゞき)。 これを(きしうびんちやうたん)に炙(あぶりや)きて頂戴(いたゞく)。 ,(すなはち)、"(しほやき)"。 不味(あぢあし)き理(ことわり)もなし。 かくて、「 虎咽狼呑(むさぼりつく)」せば、 身・皮(みかは)の竟(をは)り。 信州篠ノ井(しなのしのゝゐ)の 山菜(さんさい)も今季(ことし)で最後(をはり)。 尾張(をはり)に駿州(するが)遠州(とほとほみ)、 駿河灣(するがわん) 遠州(とほとほみ) 櫻蝦(さくらえび)の"(てんぷら)"。 佛陀(ほとけ)の骨(ほね)に鮓(すし)の米(こめ)、 「舎利(しやり)」と喚做(よびな)す鮓業界(このせかい)。 米醋(よねず)に粕醋(あかず)、(よこゐ)に(なかの)。 水果(くだもの)、悉(ことごと)く"清露(シロップ、みつゞけ)"と做(な)す。 " 鮮(なま)"でも" 糖漿(みつゞけ)"でも、最上級品(いとよきもの)ばかり。 就中(わきても)、 琉球(りうきう)"(ピーチパイン)"は「 龍肝豹胎(まれにみるうまさ)」。 因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり): ======================================= 【 殽(さかな)】: ・"醋未醤和(すみそあへ)" 薩州出水(さつまいづみ)の"墨烏賊(すみいか)" 土州(とさ)"(しはうちく)" ・"煮付(につけ)" 江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)の"稚鰷(ちあゆ)" 信州篠ノ井(しなのしのゝゐ)の"楤芽(たらのめ)" 信州篠ノ井(しなのしのゝゐ)の"漉油(こしあぶら)" ・駿河灣(するがわん)櫻蝦(さくらえび)の"天麩羅(てんぷら)" ・(ときしらず、おほめます)"鹽燒(しほやき)" ・"刺躬(さしみ)" 淡路(あはぢ)"星王餘魚(ほしがれひ)" 蝦夷地釧路(えぞちくしろ)の"蝦夷馬糞霊螺子(えぞばふんうに)" ・"雞卵燒(たまごやき)" 【 鮓(すし)】: ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の"鮪(しび)"、中肥肉(ちゆうあぶ) ・"櫻鱒(さくらます)" ・薩州出水(さつまいづみ)の"春子鯛(かすごだひ)" ・薩州出水(さつまいづみ)の"眞鰺(まあぢ)" ・江戸灣(えどわん)の"鳥蛤(とりがひ)" ・"小鰭(こはだ)"="鯯(このしろ)"の稚魚(をさないを) ・蝦夷地(えぞち)"富山蝦(とやまえび)" ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の"鮪(しび)"、肥肉(あぶ) ・薩州出水(さつまいづみ)の"墨烏賊(すみいか)" ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の"鮪(しび)"、醬油漬(しやうゆづけ) ・越中富山(ゑつちゆうとやま)の"白蝦(しろえび)"+陸州(むつ)"蚫(あはび)" 【 椀(しるもの)】: ・"花山椒鍋(はなざんせうなべ)" 和州(やまと)"花山椒(なるはじかみのはな)" 上總竹岡(かみつかさたけをか)の"白帶魚(たちうを)" 泉州(いづみ)"水茄子(みづなす)" "防風(はますかな)? 8 備前(びぜん) 兒島灣(こぢまわん)の"(むなぎ)"などの 初物(はつもの)! "(むなぎ)"には(つりばり)までと云ふ邂逅(めぐりあはせ)。 炙(あぶりやき)に用(つか)ふ 備長炭(しろずみ)も、 " 日向備長炭(ひむかびんちやうたん)から"(きしうびんちやうたん)"に、、。 勿驚(おどろくなかれ)、 "(よこゐ)"の"(よへゑ)"が 製造中止(もはやつくらず)とのこと。 已(や)むことを得(え)ずして、 "(やまぶき)"+"(えどたんねんず)"を代替(かへとなす)。 "(たまごやき)": 天然對鰕(てんねんくるまえび)に 鰕黃(えびみそ)まで擂込(すりこ)み、 顏色(いろ)・ 味(あぢ)・ 風韻(かをり)とも 實(げ)に、 皇帝(すめらみこと)の風格(おもむき)。 豐前(ぶぜん)" 城下鰈(しろしたがれひ)"骨邊肉(あら)の"(うしほじる)"には、 肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはず)。 最貴(いとやむごとな)き"(なるはじかみのはな)"まで散見(ちらりほらり)。 そのほか、 一(ひと)つとして不味(あぢあしき)は無(なし)。 倩(つらつら)、昔日(むかし)の 記録(ふみ・ゑ)を繙(ひもと)くに、 足掛十年(あしかけとゝせ)、此度(こだみ)で 百三十二囘目(ひやくさんじふにかいめ)。 周知(あまねくしら)るゝ、掉尾(いやはて)の果實(くだもの)と云ふ形式(かたち)、 徐々(ゆるやか)に確立(なりし)ものと氣附(きづ)く。 嘗(かつ)ては、 果子(くだもの) なきこともあり、 手製(みづからつくり)し(あまみ)を提供(ふるま)ふことも、、。 (おやかた)に據(よ)らば、 「 手間(てま)でもあり、賓(まらうど)も果實(くだもの)を怡(よろこ)ぶ」と。 と云ふのは、" 菓子(くわし)"の 歴史(れきし)とは逆向(さかしま)。 ========================================= のであり、 古(ふる)く夏華(もろこし)より傳來(つたは)りし"(からくだもの)"、 その後(のち)の"(なんばんぐわし)"を含(ふく)め、 砂糖(さたう)を用(つか)ふやうに、、。 江戸初期(えどのはじめごろ)【】には、 各種(さまざま)なる" 菓子(くわし)"が紹介(しめさ)れ、 沙糖(さたう)用(つか)ふものも過半(なかばをこす)。 " 蕨餠(わらびもち)"に 不使用之(これをつかはざる)は後世(のち)も同(おな)じ。 「 海鼠(こ)の 生殖巢(こ)」故(ゆゑ)、" 海鼠子(このこ)"。 之を淹し、"醬"と爲る者也。 香美、不可言(いふべからず)。 ・・・・(中畧)・・・・ 其膓中、赤黃色有て、糊の如きの者を、" 海鼠子(このこ)"と名く。 亦佳し。 ======================================== " 海鼠子(このこ)"に三種(みくさ)あり、 i. ,(すなはち)、" 生(なま)"、" 半生(はんなま)"、" 乾(ひもの)"、これなり。 その容(かたち)から、 乾(ひもの)は"(ばちこ)"と喚做(よびな)さる。 老骨(それがし)、" 生(なま)"を最喜歡(なによりこのむ)。 肥前(ひぜん)大村(おほむら)の"(あをなまこ)"に、 能州(のと)"(あかなまこ)と云ふ競(あらそひ)。 生(なま)の 海鼠(こ)故(ゆゑ)、人(ひと)は" 生海鼠( なまこ)"と呼(よ)ぶ。 明白(あきらか)に"(あをなまこ)"が吉(よい)。 虎鯸(とらふく)の"(しらこ)": 巨大(いとおほきな)る"(しらこ)"を六等分(むつにわけ)、 振鹽(ふりじほ)をして、 備長炭(しろずみ)にて 叮嚀(ねんごろ)に炙(あぶ)る。 不味(まづ)からう道理(わけ)もなし。 "(からすみもち)"また然(しか)り。 雞(とり)が啼(な)く 東國(あづまのち)では稀(まれ)なる" 丸餈(まるもち)"。 「 越後(ゑちご)のもの」と云ふ。 " 烏魚子(からすみ)"の華美(よきあぢ)なるは勿論(いふもさらなり)。 この日(ひ)の(しるもの)は、正(まさ)に靑陽(はる)。 筑前(ちくぜん) 八女(やめ) の(たけのこ)、(うど)、(うるい)、 椒芽(きのめ)の吸口(すひくち)も爽(さは)やか。 愚按(おもふに)、『』の 椀(しるもの)は 天下無雙(よにならぶものなし)。 雲州(いづも) 宍道湖(しんじこ)の"(むなぎ)"を堪能(あぢは)ひ、 薩州(さつま) 出水(いづみ)の"(まあぢ)"に、 伯州(はうき) 境港(さかひみなと)の"(まつばがに)"、 掉尾(いやはて)は、 阿州(あは)"(いちご)" にて掉尾(しめ)。 この日(ひ)の廚(つけば)には、"肥前(ひぜん)五島(ごたう)の 垢穢(くゑ)"に、 "子籠(こゞもり)の 公魚(わかさぎ)"、雌雄(めすとをす)" 楚蟹(すはへがに)"。 はや、 "(ふきのたう)"に加(くは)へ、 "(わん)"には、 笋(たけのこ)と 麪條魚(しらうを)に 椒芽(きのめ)。 一足(ひとあぢ)早(はや)き 靑陽(はる)の宴(うたげ)。 對照的(これとはさかしま)、 名殘(なごり)の、"(がに)"に、"濱名湖(はまなこ)の(むなぎ)"。 やはり 鰻魚(むなぎ)は龝(あき)が吉(よい)。 同席(せきをおなじくせ)し 臺灣(あちら)の食通(かた)と 蟹談義(かにばなし)。 稚拙(つたな)き漢語・英語(あちらのことば)にて會話(やりとり)するに、 「(すはへがに)は 蟹身(み)、(もろこしもくづがに)は 蟹黃(かにみそ)」 と互(たが)ひに打點頭(うちうなづ)く。 結局(とゞのつまり)、 彼儕(かれら)とは日語(ひのもとのことば)が最適(よい)。 "(からすみ)二種(ふたくさ)"の内(うち)の(ひとつ)は、 「仕入値(しいれね)瓩(キロ)六萬五千圓(ろくまんごせんゑん)」。 奴僕(やつかれ)、 熟成(ひの)淺(あさ)き二萬五千圓(にまんごせんゑん)が嗜好(このみ)。 「 酒足飯飽(ごちさうさまでござつた)!」 前述(くだん)の臺灣(たいわん)よりの貴人(たふときひと)も、 同意之(これにうなづく)。 雌雄(をすめす)(すはへがに)の姿(すがた)も、、。 やはり不可缺(かゝせぬ)江州 琵琶湖(あふみびはこ)の(もろこ)。 三段腹卍(さんだんばらまんじ)、遣繰算段(やりくりさんだん)四苦八苦(しくはつく)。 無理强(むりじ)ひせし"(たまごやき)": (いも)を(す)り、(くるまえび)、(たまご)を加(くは)へ、 日向備長炭(しろずみ)にて 叮嚀(ねんごろ)に燒成(やきあぐ)るぞ尤(いと)をかし。 感謝感激(かんしやかんげきひなあられ)もなき三段腹卍(さんだんばらまんじ)。 この日(ひ)、 唸(うな)り、腕組(うでをく)み、うち點頭(うなづ)きしは"(たきあはせ)"。 (しやうごいんだいこん)、(きんときせりにんじん)、 各々(おのおの)調味(あぢつけ)して、 火候(ひいれ) 完璧(ひのうちどころなし)。 山葵(わさび)にも瞠目(めをみはる)ほか術(てだて)なし。 卸金(おろしがね)を變(か)へ、 鮫皮(さめがは)にも 無遜色(ひけをとらぬ)滑(なめ)らかさと黏(ねば)り。 同(おな)じ山葵(わさび)でこれほどまでに變貌(かはる)とは、、。 信州(しなの)ゝ(まつたけ)に、鵡川(むかは)の(しゝはむ)、 柚(ゆ)を 吸口(すひくち)とし、(わん)となす。 (まつたけ)は勿論(いふまでもなく)、 (しゝはむ)の超絶美味(くらぶるものなきうまさ)に絶句(ことばをうしなふ)。 1kg)と演述(い)ふ、 淡路(あはぢ)(まつかはがれひ)にも悶絶(たましひみにそはず)。 (さしみ)、(すし)、(しる)の遣繰(やりくり)三段活用(さんだんかつやう)。 (へそくり)、(やきぐり)、(I agree)。 小人(それがし)嗜(この)む陶藝家(やきものし)(はせがはなつ): その(さら)と(ちよく)を存分(こゝろおきな)く堪能(あぢはふ)。 蝦夷(えぞ) 釧路(くしろ)の(さまうを)、 肥後(ひご) 球磨川(くまがは)の(こもちあゆ)、 蝦夷(えぞ)(まつたけ)などの美味(よきあぢ)こそあれ、 當日(このひ)の白眉(はくび)は雲州(いづも) 宍道湖(しんじこ)の(むなぎ)。 2kg)と理想(ねがふべき)大(おほ)きさ。 活〆(いけじめ)されたるものなれど、 猶(なほ)身(み)は活(い)きて庖丁(はうちやう)に頼哩(あらが)ふ。 脆皮(もろきかは)に蕩(とろ)けんばかりの(み)。 素材(そざい)も然(さ)ることながら、 偏(ひとへ)に(こみやおやかた) の技倆(うで)に依存(よる)。 實言(まこと)、 今季一(こんきいち)の美味(うまさ)。 蝦夷(えぞ) 余市(よいち)の(あんきも)も、 時季(いまどき)には稀有(めづらし)きほどの濃密(あぢのこ)さ。 實(げ)に、 「 海(うみ)の鵞鳥肝(フォアグラ)」と號(い)ふも諾(うべ)なる哉(かな)! 今季初(はじめて)の栗(くり): 常州(ひたち) 友部(ともべ)の栗(くり)を(しぶかはに)と爲(な)す。 善哉(よき)、善哉(よき)! 野州(しもつけ)(しろいちじく)は今一(いまひとつ)。 此度(こだみ)も尋常(つね)のごとく、 山海珍味(うみやまのさち)盡(づ)くし。 4kg)(あかしだひ)は 特異(とびきり)。 やはり、 二枚漬(にまいづけ)~ 三枚漬(さんまいづけ)が適切(よい)。 のたうち、脚(て)を伸(の)ばし、師傅(おやかた)が指(ゆび)に(あらが)ふ。 その三分之一(さんぶんのいち)を、さらに三人(みたり)で再分割(わかちあ)ふ。 , 鰻九分之計(むなぎをこゝのつにわくるはかりごと)。 "(しゝがたにかぼちや)"は、 (あまながたうがらし)、(ゆふがほ)とゝもに、烹(に)て餐(くら)ふ。 近會(ちかごろ)の甜(あまみ)の强(つよ)き 唐茄(かぼちやうり)に比較(くら)べ、 淡麗(あはくきよらか)なる味(あぢはひ)。 今季一(こんきいちばん)、" 雲州宍道湖(いづもしんじこ)の(むなぎ)"。 脆皮(もろきかは)、 皮下(かはのした)の 明膠(ゼラチン)と 膩(あぶら)、 さらには、蕩(とろ)けんばかりの 身肉(み)の 三層(みかさね)。 風味(あぢかをり)と 齒觝觸(はごたへ・したざはり)も 三段活用(みかさね)。 これには、辭(ことば)を失(うしな)ふほか術(てだて)なし。 佐渡嶋(さどがしま) 鮪(しび)も、 "(ちゆうあぶ)"、"(あかみしやうゆづけ)"、"(あぶ)"と、 强力(いとつよき) 三段火箭(みかさね)。 因(ちな)みに、 "(あぶ)"は(しろずみ)以て叮嚀(ねんごろ)に炙(あぶ)る。 氷見(ひみ)は寒鰤(かんぶり)、野球(やきう)は素振(すぶ)り、 鮪(しび)の膩(あぶ)には"炙(あぶ)り"が奢(まさ)る。 漬塲(つけば)には、 五十三匁(200g)を超(こ)す、勢州 桑名(そのてはくはな)の(ほんはまぐり)。 魚市塲(うをいちば)に 文蛤(はまぐり)多(おほ)しと云へど、 (ほんはまぐり)は稀有(まれ)。 九十九里(くじふくり)~ 鹿島灘(かしまなだ)に漁(すなどら)れ、 高名(なだか)き鯗店(すしや)にて用(つか)はるゝは、(てうせんはまぐり)。 努々(ゆめゆめ)、兩者(このふたつ)を混同(あやま)つこと勿(なか)れ。 當日(このひ)の(くはなのほんはまぐり)は 大(おほ)きさも頂點(いたゞき)。 4kg)。 その 身(み)の厚(あつ)さ、一寸(いつすん)にも及(およ)ぶ。 五枚(ごまい)に下(お)ろさば、厚(あつ)さを忘(わす)れ、 雪(ゆき)よりもなほ白(しろ)きその(み)に陶然(ことばをうしなふことしばし)。 秋毫(つゆ)無議論(まよふまでもな)く、「今季一(こんきいちばん)」! 必(かならず)しも得手(えて)とせぬ(しびあぶらみ)も、 日向備長炭(しろずみ)に炙(あぶ)られ、 臼齒(おくば)どころか、舌先(したさき)に崩潰(もろくもくづれさる)。 風韻(かをり)また佳絶(すばらしきもの)。 (あら)は、 骨邊肉(あら)を(うしほじる)、 身(み)は(すし)にて餐(くら)ふ。 いづれも、至高(このうへな)き鮮(うまみ)。 「 夜(よる)の怪人(ひと)」の噂(うはさ)をして辭別(いとまをこふ)。 眼前(めのまへ)に解體(ふわけ)されゆくは、(しろしたがれひ)、 i. 倩(つらつら)この(しろしたがれひ)を吟味(うかゞ)ふに、 (えんがは)の鮮(うまみ)は格別(ことのほか)。 (きも)には朝〆(あさじめ)固有(ならでは)の 美味(よきあぢ)。 蝦夷地 余市(えぞちよいち)(あんきも)をも凌駕(しのぐ)ほど。 次(つ)いで、久方(ひさかた)ぶりの"(たまごやき)"に舌鼓(したつゞみ)。 およそ 雞卵燒(たまごやき)なるもの、 鮓店(みせ)に依(よ)り、鮓職人(ひと)に應(よ)り、多種多樣(さまざま)。 これぞ、僕(やつかれ)最喜歡(このうへなくこのむ)"(たまごやき)"!! "(うしほじる)"また然(しか)り。 愚按(やつがれおもふに)、 鮓店(すしや)の椀(わん)としては、尾根(をね)のそのまた頂點(いたゞき)。 相州 葉山(さがみのくにはやま)"(あふりいか)": 漫(みだり)に黏(ねば)る食感(はごたへ・したざはり)が特徴(しるし)なれど、 實(げ)に、心持(こゝち)良(よ)き齒觝觸(はあたり)。 平身低頭(ひたすらうやま)ふべきは、 薄(うす)く削(そ)ぐ庖丁技(はうちやうわざ)。 "肥後 天草(ひごあまくさ)の(むなぎ)"は今二(いまふた)つ。 やはり、鰻(むなぎ)餐(くら)ふなら龝(あき)が最善(よい)。 "(かすご)"・"(こはだ)"の醋〆(すじめ)は今樣(いまをときめくやりかた)。 瑞瑞(みづみづ)しく、 鮮(うまみ)口中(くちのなか)へと浮騰(ほとばし)る。 舎利(すめし)はさらに 白醋(しろず)を多(おほ)めに、、。 如何(いか)ほどの混合比(まぜかた)を最適解(いとをかし)とする歟(か)? 今(いま)なほ、 試行錯誤中(あれやこれやとこゝろみつゝあるところ)。 「 當家(うち)は白身(しろみ)が主體(おも)なれば、、」とのよし。 しかし、掉尾(いやはて)の 土瓶蒸(どびんむし)は「 旨過(うます)ぎ」。 これ、 必(かな)ずしも賞賛(ほめことば)に非(あら)ず。 子曰(あのかたのたまは)く、「 過猶不及 (すぎたるはなほおよばざるがごとし)」 車鰕(くるまえび)、 文蛤(はまぐり)、 櫻鰕(さくらえび)、 香茹(しいたけ)。 これほどまでに 濃厚(あぢこ)きものが重(かさ)なると首捻(くびゝぬ)るほかなし。 心(こゝろ)の片隅(かたすみ)に蟠(わだかまり)を抱(かゝ)へ、 當家(こちら)『』に、、。 劈頭(いやさき)の"(わん)"から、 "(あをさすのもの)"、"(ふき)"、 "(はなざんせうなべ)"、、。 漫(みだり)に"鮮(うまみ)"を足(た)すことなく、 必要最小限(ぎりぎり)の調味(あぢつけ)。 それでも猶(なほ)、 秋毫(つゆ)無所不足(たらざるところな)きは、 偏(ひとへ)に、(こみやけんいちおやかた) が技倆(うで)。 對價(しはらひ)は『』が幾分高(いくぶんたか)く、 居心地(ゐごゝち)と 綜合的滿足度(みちたりかた)を競(あらそ)ふなら、 やはり、『』に軍配(ぐんばい)。 この先(さき)、 未來永劫(とこしへ)に續(つゞ)かんことを祈念(いの)る。 4~F2. 8 時季(いまごろ)固有(ならでは)、 " 四万十川(しまんとがは)の「」 有馬煮(ありまに)"、 "(しろしたがれひ)"、 i. ,(すなはち、)豐後(ぶんご)下(ひのでじやうした) 眞子鰈(まこがれひ)。 "越中 滑川(ゑつちゆうなめりかは)(ほたるいか)"に"(ふきみそ)"、 " 山州(やましろ)の 笋(たけのこ)"は"(いひむし)"と"(やきもの)"。 しかし、この日(ひ)の白眉(とびぬけてすぐれたるもの)は、 豐後 佐賀關(ぶんごさがのせき)の(いさき)。 丸々(まる)と肥滿(こえふと)り力士(りきし)のごとき太鼓腹(たいこばら)。 膩(あぶら)に冨(と)み、鮮(うまみ)も顯著(あらは)。 これほどの 雞魚(いさき)なら、 " 鹽燒(しほやき)"に好適(よし)、" 煮附(につけ)"でもまた可以(よし)。 小人(それがし)に 虎狼之意(とらおほかめのこゝろ)有之(これあり)。 否(いな)! "(たてがみいぬ)"、"(はげわし)"、" 毛賊(こそどろ)"の類(たぐひ)。 この日(ひ)は稀有(まれにみ)るほどの 山海八珍(うみやまのさち)盡(づ)くし。 活(いけ)が、"(もろこ)"、"(はなさきがに)"、 朝〆魚(あさじめうを)として、"(あかしだひ)"、"(めぬけ)"、 さらに、"(とらふぐしらこ)"に、"(ながをかのたけのこ)"、、。 獅子(しゝ)の眼(め)掠(かす)めての竊喰(ぬすみぐひ)。 實(げ)に、" 密夫(まをとこ)"の心境(こゝち)ぞしたりける。 "(いけのもろこ)"は初(はじめて)、 茹上(うであげ)"(はなさきがに)"の旨(うま)さは勿論(いふもさらなり)。 やはり、この日(ひ)の白眉(とりわけすばらしきしな)こそ、"(めぬけ)": 巷間(ちまた)では「超高級魚(いとたかきねのうを)」と云ふ。 (めぬけのたぐひ)夥(あまた)あれど、 就中(わきても)、最貴(すぐれてたふと)きが"(あかうをだひ)"とも。 小人(それがし)、幼(いとけな)き砌(みぎり)、 赤貧如洗(あらふがごときまづしさ)なれば、 "(たひ)"も"(ふぐ)"も口(くち)にせし前例(ためし)なく、 "(さまうを)"すら膓(はらわた)なき 魚乾(ほしうを)。 偶(たま)の"差味(しびさしみ)"を除外(のぞ)くなら、 "(かぢき)"、"(まだら)"、 そして何(なに)より前述(くだん)の"(あかうをだひ)"。 すなはち、六十年前(むそとせまへ)なら「 下魚中(げうをのなか)の下魚(げうを)」。 それが、瓩(キロ)一萬三千圓(いちまんさんぜんゑん)と云ふから愕(おどろ)き。 7kg)の大(おほ)きさとのことなれば、 すなはち、沽(あたひ)、大畧(およそ)、六萬一千圓(ろくまんいつせんゑん)ぼど。 價格(ね)はともかく、その味(あぢはひ)は絶品・至高(このうへなきもの)。 陳腐(ありきたり)の譬喩(たとへ)ながら、 "(きちじ)"を その儘(まゝ)巨大化(おほきく)したるがごとき形(なり)。 幼少時(いとけなきころ)の 煮附(につけ)を想像(おもひゑがき)しに、 "(ながをかたけのこ)"とゝもに 最上(いとよ)き椀(わん)に、、。 堪(たま)りかね、 絶句(ことばをうしなふ)こと霎時(しばし)。 周圍(まはり)からも、一齊(ひとし)く、絶賛(はげしくほめたゝ)ふる聲(こゑ)。 善哉(よきかな)、善哉(よきかな)! 今朝(けさ)〆たばかりの(あかしだひ)は、 未熟成(いまだうれず)と云へど、 眞鯛(まだひ)固有(ならでは)の芳香(かをり)。 臼齒(おくば)に 噛締(かみし)むるや、 鮮(うまみ)浮騰(ほとばし)りて、四角八方(をちこち)に旋(かけめぐ)る。 心做(こゝろな)し歟(か)? 舎利(すめし)も、 不尋常(つねなら)ず嗜好(このみ)に適合(あふ)。 粒(つぶ)が立(た)ち、しかも、 舌(した)に滑(なめ)らか。 膨滿(はらふく)るゝ豫兆(きざし)もなく辭別(いとまごひ)。 其處(そこ)には、病(やまひ)癒(い)えたる友(とも)の顏(かほ)も、、。 漬塲(つけば)に鎭坐(おは)しますは、 (たらばがに)、(くぢらのうねす)に(あかしだひ)。 劈頭(いやさき)に"(くるみいりほしがき)"と"(からすみ)"。 雙方(ともに)見覺(みおぼ)えあり! 次(つ)いで、湯氣(ゆげ)の立(た)つ(かすていらたまご)。 (くれなゐ)鮮烈(あざかや)なる 車蝦(くるまえび)が顯著(めだつ)。 "(ぶりのわらやき)"には"(どんこかんろに)"。 鰤(ぶり)は 米藁(こめわら)にて炙(あぶ)り、 大蒜(おほひる)を利(き)かす。 當家(こちら)固有(ならでは)の味(あぢはひ)。 冬茹(どんこ)は半點(いさゝか)甜(あま)め歟(か)? 扨(さて)、" 鯨鯢畝須(くぢらうねす)の(わん)": 底(そこ)に 蝦薯蕷(えびいも)が沈(しづ)み、 山椒木芽(きのめ)が浮(う)く。 風味佳絶(たぐひまれなるすばらしきあぢかをり)なれど、 鯨鯢肉(くぢらにく)、 臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ひて止(や)むことなし。 (しろすみ)に炙(あぶ)りたる"(たらばがに)"、 さらには、"(ぱぷりかむうす)"と、 豫想(おもひ)に寸毫(つゆ)と違(たがは)ぬ味(あぢ)・風韻(かをり)。 卍(まんじ)、善哉(よき)、善哉(よき)! 倩(つらつら)舎利(すめし)を窺(うかゞ)ふに、 以前(まへ)に比較(くら)べて 顏色(いろ)淡(あは)し。 (よこゐ)"(よへゑ)"を減量(へら)し、 (なかの)"(しらぎく)"を増量(ふや)したとの説明(はなし)。 掉尾(いやはて)に、 今季初(このふゆはじめて)の"(いちご)": 阿州(あは)の誇(ほこ)る 草莓(いちご)の皇帝(すめらみこと)。 その名(な)に相違(たがは)で、 櫻(さくら)と 桃(もゝ)の芳香(かをり)を有(も)つ。 宴(うたげ)は、掃愁帚(さけ)を除(のぞ)き如下(つぎのごとし)。 對價(あたひ)、三萬二千四百圓也(さんまんにせんよんひやくゑんなり)。 今年(ことし)はこれを一人(ひとり)で啖(くら)ふ。 大雜把(あほまか)なる内容(うちわけ)は、(かくのごとし)。 當家(こちら)の御節料理(おせちれうり)は、 七年連續(なゝとせつゞけて)、 七度目(なゝたびめ)で最後(いやはて)。 これで永遠(とは)の離別(わかれ)。 引戸(ひきど)を開(ひら)くと、(むしろ)には 小人(それがし)一人(ひとり)。 三年前(みとせまへ)ならいざ知(し)らず、 近會(ちかごろ)では稀有(めづらし)きこと。 「 今季一(こんきいち)」、 と號(い)ふ"(まつたけ)"は、陸州(むつ) 岩手(いはて)の産(もの)。 その 優雅(みやび)この上(うへ)なき風韻(かをり)に霎時(しばし)陶醉(ゑふ)。 これが夷僚(ゑびす)に理解(わから)ぬとは疑問(くびかし)ぐる。 9kg)。 中骨(なかぼね)には 明石鯛(あかしだひ)固有(ならでは)の(こぶ)。 朝締(あさじ)めゆゑ、 鮮(うまみ)は未熟(これから)ながら、 齒觝觸(はあたり)拔群(むれよりぬきんいでたり)。 時季(とき)ならず、半點(いさゝか)脂(あぶら)稀薄(うすめ)。 今(いま)や、「 鰻(むなぎ)の皇(すめらみこと)」と賞賛(もてはや)さるゝも、 かくのごとき 淡白(あぢあは)き(もの)も、、。 愈々(いよいよ)盛(さか)りに向成(なりな)んとするは、 蝦夷(えぞ)仙鳳趾(せんぱうし)の"(まがき)"。 やはり「 眞蠔(まがき)の頂點(いたゞき)」 " (ぶり)"も蝦夷地(えぞち)より 越後(ゑちご)へと遷移(うつる)。 "(わゝさい)"と號(よびな)すは、 最小(いとちいさ)なる 白菜(はくさい)。 房總(ばうさう)の 花生(なんきんまめ)""も美味(よきあぢ)。 この日(ひ)も平生(つね)のごとく尋常(つね)のごとし。 4 染垂阿爺(しみたれおやぢ)卍(まんじ)、 「 唐墨(からすみ)」の報(しらせ)に觸(ふ)れ、俄頃(にはか)に色(いろ)めきたつ。 慌(あは)てふためき、鈔(ぜに)を工面(くめん)、 鼻息(はないき)荒(あら)く(たまのゐ)へと驀地(まつしぐら)。 その容(さま)、 將棋(しやうぎ)の(やり)かと疑(うたが)はれ、 西班牙(イスパニア)の(たけきうし)、 英國(エゲレス)(てならひ)の(とつかんこぞう)に髣髴(さもにたり)。 劈頭(いやさき)に、 加賀藕(かゞはちすのね)と 鮟鱇肝臟(あんきも)を摘(つ)まみ一安堵(ひとおちゐ)。 次(つ)いで早(はや)くも" 唐墨(からすみ)"の登場(おでまし)。 素材(そざい)そのものは『』が上(うへ)歟(か)? 芯(しん)嫩(やはらか)にして、 未完成(いまだならず)。 當家(こちら)の 烏魚子(からすみ)は、その 變化(かはりやう)を愉(たの)しむもの。 5kg)。 「今季(こんき)二番目(にばんめ)」 と、主人(あるじ)自慢(むねをは)る巨大鰻(いとおほきなるむなぎ)。 (えどうまれうはきのかばやき)、 陸州生鰻白燒(むつうまれむなぎのしらやき)。 今(いま)まさに時季(とき)を得(え)て炙(や)くのは輙(たやす)く、 「 "はしり"なら四十分(よんじつぷん)のところ、纔(わづ)かに二十分(にじつぷん)」 法國渡來(ふらんすわたり)の 黒無花果(くろいちじく)、 "(Viollette de sollies)": これまた今季初(こんきはじめて)。 未熟(いまだうれず)、 甜(あまみ)・芳香(かをり)ともに不足(いまひとつ)。 因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。 (しろあまだひ): 魚市塲(うをいちば)では" 白川(しらかは)"と喚做(よびな)すが通例(つね)。 魥(さしみ)に好適(よし)、 椀(わん)にまた佳良(よし)。 その あまりの美味(よきあぢ)に、自(おの)づと頬(ほゝ)も緩(ゆる)む。 "(かもなす)の 揚滲(あげびた)し": 尋常(つね)のことながら、 味覺(した)は怡(よろこ)び、胃腑(い)は驅(か)け巡(めぐ)る。 吾輩(われ)夢心持(ゆめごゝち)で啖之(これをく)ふ。 鰻(むなぎ)は、 宍道湖(しんじこ)に 八郎潟(はちらうがた)。 各々(おのおの)、 白炙(しらやき)、 蒲炙(かばやき)となす。 時季(とき)を得(え)て、鮮(うまみ)頂點(いたゞき)を極(きは)めんとす。 因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。 劈頭(いやさき)の小皿(こざら): 松茸(まつたけ)、 丹波黒(たんばぐろ) 菽(えだまめ)、 花生(なんきんまめ)、 水菜(みづな)を溏油(だし)に烹(に)たるもの。 「 うむ、これこれ、これッ!」、と膝(ひざ)を敲(う)つ。 「師傅(おやかた)、やはり、 東都(あづま)に稀有(まれ)なる名匠(たくみ)!」 鹽(しほ)を抑制(おさ)へ、 鰹(かつを)の馨(かをり)、昆布(こんぶ)の旨味(うまみ)を控(ひか)へ、 なほ、不足(たらざるところ)皆無(なし)。 松茸(まつたけ) 完一本(まるいつぽん)に麪麭粉(ぱんのこな)塗(まぶ)し、 炸之(これをあぶらにあ)ぐるがごときは、 徒(いたづら)に門牙(まへば)に挾(はさ)まり、 臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ふばかりの惡趣味(いまいまし)き烹調法(やりかた)。 活(いけしやこ)の 茹上(ゆであげ): 溜池(ためいけ)『』など、 「 活(い)ける蝦蛄(しやくなげ)、若(わか)き小僧(みならひ)を走(はし)ら」せ、 茹(う)でゝ、これを鮓(すし)と爲(な)す肆(みせ)も在(あ)るには存在(あり)。 當家(こちら)の小宮親方(こみやおやかた)、 能(よ)くこの技法(わざ)を自家藥籠中(みにつけ、わがものとなせ)り。 この日(ひ)の茹上(ゆであげ)は、 瞬間(またゝくうち)に沸騰水(にえたぎれるゆ)に潛(くゞ)らすもの。 これを 迅速(すばや)く冷水(ひやみづ)に取(と)り、 冷(さ)ますことあらで、その儘(まゝ)齧附(かじりつ)く。 その容(さま)、 (ひぐま)の(かはさかのぼるさけ)を貪(むさぼ)り啖(くら)ふがごとし。 眞美味也(いとうまし、 マ・ジ・ヤ・バ・ク・ネ・ッ)! 芯(しん)は半生(はんなま)にして、その肉(み)なほ活(い)くるがごとし。 " 漬込(つけこみ)"は勿論(いふまでもなく)、 尋常(なみ)の" 茹上(ゆであげ)"をも凌駕(はるかにしの)ぐ。 「 この塲(ば)での即興(おもひつき)」と、恥(は)ぢ、謙遜(へりくだ)る。 俗(よ)に言ふ「 定番(おはこ)」を重視(おもん)じつゝ、 時折(ときをり)、暴(にはか)に閃(ひらめ)き、創作(あらたなるものあみだす)。 師傅(おやかた)、徒者(たゞもの)に非(あら)ず! " 根室(ねむろ)の 秋刀魚(さんま)"。 " 指身(さしみ)"と、" 肝臟附(きもつき) 秋刀魚飯(さんまめし)"で堪能(いたゞく)。 " つくり身(み)"は、三枚(さんまい)に下(お)ろし、 骨(ほね)を去(さ)り、肉(み)に 鹿子庖丁(かのばうちやう)入(い)れたるのみ。 生薑醤油(はじかみじやうゆ)を滲(つ)け、口中(くちのなか)に抛込(はうりこ)むや、 膩(あぶら)混(ま)じりの旨味(うまみ)炸裂(はじけちる)。 その容(さま)、(ほうせんくわ)に接觸(ふ)るゝや否(いな)や、 その種子(たね)の四角八方(あちこち)に飛散(とびち)るに似(に)たり。 因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。 4 "(ほや)"に惡臭(あしきにほひ)なきことに駭(おどろ)く。 小人(それがし)、生來(うまれてよりこのかた)(ほや)は得手(えて)とせず。 その縁由(ことのよし)如何(いかに)とならば、 (ほや)固有(ならでは)の強(つよ)き臭氣(くさみ)にあり。 惡臭(あしきかをり)なき"(ほや)"は、 纔(わづ)かに、津輕(つがる)『』なる家(ところ)で口(くち)にせしのみ。 この日(ひ)の"(ほや)"はそれに匹敵(ならぶ)。 師傅(おやかた)曰(いへら)く「 鮮度(あたらしさ)の相違(たがひ)」 "琵琶湖(びはこ) 稚鮎(ちあゆ) 魚凍(ゼリよせ)"の、 尋常(つね)とは異(こと)なる烹調法(たつき)を訝(いぶか)る。 小宮親方(こみやおやかた)應答(いらへ)て曰(いは)く、 「 因循守舊(マニエリスム)を打破(うちやぶ)らんがため」 " 蝦夷昆布森(えぞこんぶもり)の蠔(かき)"にも愕(おどろ)く。 「 これが眞夏(まなつ)の眞蠔(まがき)とは、、、」 と、絶句(ことばをうしなふ)こと霎時(しばし)。 "蝦夷 根室(えぞねむろ)の 新秋刀魚(しんさんま)"もまた同樣(しかり)。 この大(おほ)きさにして、この脂肪(あぶら)。 その美味(あぢ)、口(くち)にせずとも、一目瞭然(ひとめであきらか)。 惜(を)しむらくは、肉(み)が薄(うす)く、 脆皮(もろきかは)ならざること。 " 鮏卵(さけのはらこ)"は 生(なま)。 その塲(ば)で煮切(にきり)に潛(くゞ)らせ、即坐(すぐさま)鮓(すし)となす。 これを臼齒(おくば)に噛(か)みしむるや、 旨味(うまみ)口中(くちのなか)へと浮騰(ほとばし)る。 因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。 2kg)。 1kg)。 前囘(まへ)の" 兒島灣(こぢまわん)"が半點(いさゝか)上(うへ)歟(か)? 此度(こだみ)うち點頭(うなづ)きしは、" 小蕪菁(こかぶら)"への火候(ひいれ)。 そもそも、 蕪菁(かぶら)なるもの、 蘿蔔(すゞしろ)とは對照的(ことな)り、 火(ひ)の通(とほ)り易(やす)きもの。 懐石(くわいせき)・ 割烹(かつぱう)の 蕪菁(かぶら)は過柔(やはらかすぎ)。 愚按(やつがれおもふに)、 和食(わしよく)なら 糠漬(ぬかづ)け、 洋食(やうしよく)なら 煸炒(ソテ)が吉(よし)。 烹之(これをに)るは蕪菁(かぶら)の個性(もちあぢ)を毀損(そこな)ふばかり。 これに膝(ひざ)を叩(たゝ)き、その情由(わけ)を薀(たづ)ぬれば、 「かゝる 火候(ひいれ)を着想(ひらめ)きし契機(きつかけ)、 修業先(わざをならひおぼえしさき)や他家(よそ)に非(あら)ず。 」 「寧(むし)ろ、 その濫觴(みなもと)、法國菜(ふれんすれうり)にあり。 」 實(げ)にも! 當家(こちら)で一際(ひときは)名高(なだか)き" 鰻白燒(むなぎ志らやき)": 脆皮(かはサクサクにもろく)、 その 身(み)を蕩(とろ)けんばかりに炙(や)くは唯一無二(よそになきもの)。 これもまた、 法國菜(ふれんすれうり)の秘儀(ひめわざ): "(ポアレ)"こそ 手本(てほん)・ 嚆矢(さきがけ)。 能(よ)くこれに倣(なら)ひ、やがて自家藥籠中(みづからのものと)したるは、 嘗(かつ)て、小人(それがし)に物語(ものがたり)せし記憶(おぼえ)あり。 因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。 この日(ひ)の溏油(だし、)は、 (あら)の骨邊肉(あら)より抽出(ひきいだ)せしもの。 これを制作(つく)るには、 西洋時辰儀(せいやうどけい)にして 八時間(はちじかん)要(かゝ)ると云ふ。 " 魚凍(にこゞり)"と" 紅椒(パプリカ)ムウス"が二層(ふたへにをりか)さなり、 實言(まこと)、口(くち)に美味(あまし)! しかし、この日(ひ)の白眉(きはめつき)は、 "備州(きびのくに) 兒島灣(こじまわん)の 鰻(むなぎ)"。 やはり、當家(こちら)、 " 蒲燒(かばやき)"ではなく、" 白燒(志らやき)"が吉(よし)。 首級(みしるし)もまた 頗(すこぶ)る味覺(した)に旨(あま)く、 貪之(これをむさぼ)りて飽(あ)くことなし。 小柱(こばしら)もまた、その手(て)は 桑名(くはな)の大(おほばかゞひ)。 因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。 實言(まこと)、「飯足酒飽(ごちさうさまにござる)!」 上總國(かずさのくに) 大原(おほはら)。 當地(このち)で 蚫(あはび)と云ふと、 鮓店(すしや)が眼精(まなこ)の色(いろ)を變(か)ふる"(まだかあはび)"。 この日(ひ)は大(おほ)きな"(くろあはび)"。 "(まだかあはび)"ともまた異(こと)なる風韻(かをり)。 嫩(やはらか)ながらも、適度(ほどよ)き齒應(はごた)へを殘(のこ)す。 " たまげ茄子(なすび)"が絶味(このうへなきうまさ)には絶句(ことばをうしなふ)。 扨(さて)、この日(ひ)の白眉(はくび)"(ほしがれひ)"。 1kg)と云ふ大物(おほもの)。 鰈(かれひ)は、大(おほきなるもの)能(よ)く小(ちいさなるもの)を制(せい)す。 身(み)佳味(よし)、縁側(えんがは)さらに絶味(よし)。 播州(はりまのくに)三田(さんだ)にも負(ま)けぬ 羽州(では)の 蓴菜(ぬなは)。 その顏色(いろ)は翡翠(ひすい)かと疑(うたが)はれ、 その舌觸(したざは)りの滑(なめ)らかさたるや、 「 極樂淨土(ごくらくじやうど)の果凍(にこゞり)もかくやあらん」と思(おも)ふほど。 季(とき)至(いた)らず、色(いろ)なほ淡(あは)き" 西瓜(すいか)"。 因州(いなば)・伯州(はうき)の山海(うみやま)の僥倖(さち)を用(つか)ひ、 これを割烹(さきてに)るを活業(なりはひ)とする方(かた)よりの音物(おくりもの)。 訝(いぶか)りつゝ口(くち)にするや、驚異的(おどろくばかり)の甜(あまさ)。 これ、獸(けだもの)が世(よ)の風習(ならひ)。 この晝飧(ひる)の小人(それがし)は正(まさ)しく"(はげわし)"。 " (あら)"、"(ぶだうえび)"、" 宍道湖(しんじこ)の 鰻(むなぎ)"、 と、前日(まへのひ)の 殘留物(のこりもの)には、 美味(うまきもの)・珍味(めづらしきも能)の數々(かずかず)。 最初(いやさき)に" 毛蟹(けがに)白瓜卷(しろうりまき)"。 黄身酢(きみず)の圓(まろ)やかさに駭(おどろ)く。 千鳥酢(ちどりす)は出汁(だし)にて割(わ)るりたるものと云ふ。 尋常(つね)のことながら、優(やさ)しき味(あぢはひ)。 當家(こちら)の玄關先(げんくわんさき)に 山椒(さんせう)の木(き)あり。 この日(ひ)、 木の芽(きのめ)はこの木(き)より摘(つ)み、 潮汁(うしほじる)の 吸口(すひくち)としてあしらふ。 若(わか)く嫋(たを)やかなる風韻(かをり)。 築地市場(つきぢ)には稀有(まれ)なる" (ぶだうえび)": 標準和名(たゞしくは)、" (ひごろもえび)"。 本來(もともと)の"(ぶだうえび)"は、 駿河灣(するがわん)にて 極稀(きはめてまれ)に漁(すなど)らるゝものと云ふ。 "(ぼたんえび)"同樣(と、おなじく)、 "踊(をど)り"では甜(あまさ)を難感(わかりがた)く、 「 死(し)ゝて權(しばらく)置(お)き、膠粘(ねば)るほどが吉(よい)」。 慥(たしか)に、味(あぢ)は"(ぼたんえび)"に似(に)る。 疑念(うたがひ)もなく、今季一(こんきいち)。 「 煮(に)る」、「 炙(や)く」が多(おほ)き"(あかむつ)": 鮓種(すしだね)としてもなかなかのもの。 豫想(おもひ)に秋毫(つゆ)と相違(たがは)ぬは、 " 賀茂茄子(かもなす)"、" 琵琶湖(びはこ) 稚鮎(ちあゆ)"の美味(うまさ)。 最後(いやはて)に、 四種(よくさ)にも及(およ)ぶ" 水果(みづぐわし)"; 佐藤錦(さたうにしき)、日向(ひむか) 芒果(まんご)、 臺灣茘枝(たいわんれいし)、 冰酪(あいすくりん)、これなり。 野獸肉(のゝけだものがしゝ)も加(くは)へ、 山幸(やまさち)を存分(こゝろおきな)く堪能(あぢはひつくしぬ)。 楤芽(たらのめ)、 (こしあぶら)、 屈(こゞみ)、 蕨(わらび)、 (くろかは)、 蕗薹(ふきのたう)、 蕗(ふき)、 (ぎやうじやにんにく)、 (のびる)、 山獨活(やまうど)、(やまうこぎ)、(にりんさう)、 藤花(ふじのはな)、 (はないかだ)、 花山椒(はなざんせう)、 蒲公英(たんぽゝ)、などなど。 東都(えど)に囘(かへ)りて二日後(ふつかのゝち)の宴會(うたげ)。 この日(ひ)もまた山菜(さんさい)塗(まみ)れ。 花山椒(はなざんせう)に加(くは)へ、 (こしあぶら)、(かたかご)、(ずいき)、(おほばぎぼし)。 季(とき)を得(え)たる魚介(うを・かひ)として、 銀寶(ぎんぱう)、 城下鰈(しろしたがれひ)、 初鰹(はつがつを)、 稚鮎(ちあゆ)、 鳥貝(とりがひ)、その手(て)は鹿島(かしま)の 燒蛤(やきはまぐり)。 因(ちな)みにこの蛤(はまぐり)は(てうせんはまぐり)。 銀寶(ぎんぱう)への 火候(ひいれ)は完璧(ひとつとしてあやまちなし)。 加熱(ねつがくは)ゝり、(こらあげんせんゐ)が(ぜらちん)と化(な)り、 臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ふことなく、咽喉(のみど)に踊(をど)る。 星鳗(あなご)に勝(まさ)るとも劣(おと)らぬ美味(よきあぢ)。 鳥貝(とりがひ)と 城下鰈(しろしたがれひ)の 肝臟(きも)と云ふ、 駭(おどろ)くべき搭配(くみあはせ)。 實(げ)に、「 爲虎傅翼(とらにつばさをそふるがごとし)」。 折(をり)しも、張替(はりかへ)たばかりの疉(たゝみ)に心躍(こゝろをど)らせ、 隅(すみ)の席(むしろ)に一安堵(ひとおちゐ)。 "(つかはらしらこだけ)"、 "琵琶湖(びはこ)、子持(こも)ち (ほんもろこ)、 四万十川(しまんとがは)の (ごり、=あふみよしのぼり)"、 " 滑川螢烏賊(なめりかはほたるいか)"、" 駿河灣櫻蝦(するがわんさくらえび)"など。 體長(みのたけ)、三寸五分(さんずんごぶ)を超(こ)え、 四寸(よんすん)に垂(なんな)んとする"(ほんもろこ)": 備長炭(しろずみ)に炙(あぶ)り、その儘(まゝ)貪(むさぼ)り餐(くら)ふ。 實言(まこと)、美味也(よきあぢなり)! " 塚原白子筍(つかはらしらこだけ)"は勿論(いふもさらなり)。 " 若筍煮椀(わかたけにわん)"美味(よし)、 " 筍豆腐(たけのこどうふ)"を木芽未醤(きのめみそ)にて啖(くら)ふもまた吉(よし)。 「筍(たけのこ)では、" 合馬(あふま)"と雙璧(ふたつにならぶ)」との定評(はなし)。 巧妙(たくみ)に油炸(あ)げられたる" 螢烏賊(ほたるいか)"に" 櫻蝦(さくらえび)": " 螢烏賊(ほたるいか)"の天麩羅(てんぷら)は初(はじめて)。 火候(ひいれ)絶妙(ほどよ)く、 膓(わた) もまた複雜玄妙(ふかくいつくしみあるあぢはひ)。 勿論(いはずもがな)の" 櫻蝦(さくらえび)": " 櫻蝦(さくらえび)"天麩羅(あ)ぐる舖(みせ)夥(あまた)あれど、 寸毫(つゆ) 雞卵(かひご)に頼(たよ)らで、 最上質(いとよ)き麪粉(うどんこ)を薄衣(うすごろも)に用(つか)ふ。 尋常(つね)のごとく、 頗(すこぶ)る美味(うま)き"薩州 出水(さつしういづみ)の 眞鰺(まあぢ)": 瓩(きろ)七千圓(なゝせんゑん)と云ふ。 その價格(ね)、野生鰻(てんねんむなぎ)に肉薄(せま)る威勢(いきほひ)。 天降川(あもりがは)の 天然物(てんねんもの)は 唐揚(からあげ)、 (はつとり)のものは 椀(わん)と 肝臟刺身(きもさし)に、、。 その他(ほか)、 (びはひがい)、 鳴門鯛(なるとだひ)、 明石章魚(あかしだこ)、 箱館(はこだて)の 蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)、銚子(てうし)の 梶木(かぢき)、 陸中(りくちゆう) 鰆(さはら)、山城(やましろ) 菜花(なばな)などなど。 小宮親方(こみやおやかた)歎息(ためいきつ)きて云ふやう: 「 隈(くま)なく魚河岸(かし)一帶(あたり)を探索(さがしもと)むれど、 琵琶湖(びはこ)の" (もろこ)"、" 稚鮎(ちあゆ)"、 絶(た)えてその姿(すがた)を見(み)ず!」 「已(や)むことを得(え)ずして、この" (ひがい)"なる魚(うを)に、、」 との辯明(はなし)。 勿驚(おどろくなかれ)、 吾儕(わなみ)のみならず、親方(おやかた)も初(はじめて)となむ。 今(いま)は昔(むかし)、 明治 天皇(めいじのすめらみこと)、これを大(おほ)いに賞賛(ほめたゝ)へたまひ、 後世(のち)、 " "に" 鰉"なる字(じ)を當(あ)てるやうになりき、との故事(はなし)あり。 これを炭火(すみび)に炙(あぶ)りて" 鹽燒(しほや)き"となす。 香魚(あゆ)固有(ならでは)の芳香(かぐはしきかをり)こそなけれ、 その 身(み)の肌理細(きめこまか)さ、嫋(たを)やかさたるや、 若年魚(わかあゆ)に肉薄(せま)るほど。 但(たゞ)し、骨(ほね)の硬(かた)さは" (かじか)"竝(なみ)。 捌(さば)くや、 (なるとこぶ)も顯著(あらは)。 皮(かは)と皮下(かはした)の旨味(うまみ)に驚愕(おどろく)。 扨(さて)、" 水魚(すつぽん)": " 油炸(からあげ)"好吃(よし)、" 肝臟刺身(きもさし)"美味(よし)、 " 椀(わん)"また佳味(よし)。 その味(あぢはひ)、先頃(さきごろ)訪問(たづ)ねし『』より上(うへ)か? 椀(わん)は、平生(つね)のごとく、 調味料(あぢつけ)は、纔(わづ)かに、 淡口醤油(うすくち)と 酒(さけ)のみ。 昆布(こんぶ)に頼(たよ)らで、 生薑(はじかみ)の佐(たす)けを受(う)けず。 裙邊(えんぺら)に、陶然(われをわす)ること霎時(しばし)。 久方(ひさかた)ぶりの" 雞卵燒(たまごやき)": 燒(や)き方(かた)は 、毎囘(そのつど)隱々(かすか)に搖(ゆ)らぎ、 その搖(ゆ)れを心持(こゝち)よきものとして堪能(あぢはふ)。 この日(ひ)は、 瑞々(みづみづ)しく、柔(やは)らかく、舌(した)に滑(なめ)らか。 菜(れうり)の内容(うちわけ)は冩眞(ゑ)のごとし。 掃愁帚(さけ)を含(ふく)め、一萬四千圓也(いちまんよんせんゑんなり)。 今春(ことし)より、 柳刄(やなぎば)は、 堺(さかい)の鍛冶名匠(かじのたくみ)の手(て)になる、 (ほんやき)(きやうめんしあ)げとなる。 掛軸(かけじく)を髣髴(おもは)す桐筥(きりばこ)入(い)り。 5kg)。 仲卸(なかおろし)より、態々(わざわざ)" 星鰈(ほしがれひ)"を避(さ)け、 選(え)りすぐりたるほどの逸品(よきしな)。 刺身(さしみ)、 潮汁(うしほじる)、 鮓(すし)、何(いづ)れも、 筆舌(ふでやことば)で(つ)くせぬ美味(うま)さ。 9kg)ばかりが最善(よい)」 とは云ふものゝ、この日(ひ)の" 眞鯛(まだひ)"は別格(とびきり)。 3kg)の旨(うま)さは勿論(いふもさらなり)。 備長炭(すみ)に 炙(あぶ)りて甜(あま)さを堪能(あぢは)ひ、 茹(ゆ)でゝ蟹内臟(かにみそ)と和(あ)へ絶味(すばらしきあぢ)に陶然(ゑふ)。 " 鰆(さはら)"の藁燒(わらやき): 尋常(つね)に倣(なら)ひて、 大蒜醤油(おほひるじやうゆ)を塗(まぶ)す。 めじ、 鰤(ぶり)、 鰹(かつを)に優(まさ るとも劣(おと)らぬ味(あぢはひ)。 この日の舎利は 米醋(よねず)。 活車蝦(いきくるまえび)の 雞卵焼(たまごやき)、美味(よきあぢ)なり。 【2016-10-01追記】: 昆布(こんぶ)が 利尻(りしり)から 羅臼(らうす)に、、。 【2016-07-30追記】: 竹岡沖(たけおかおき) 銀寶(ぎんぱう)、 桑名(くはな)の 蜆(しゞみ)など、、。 【2016-04-10追記】: 走(はし)りの 花山椒(はなざんせう)を愉(たの)しむ。 白身(しろみ)も 鮪(しび)も、 眞鰺(あぢ)、 鶏卵焼(たまごやき)も、 『』、『』を凌駕(はるかにしのぐ)。 此度(こだみ)は 新規(あらた)なる試行(こゝろみ)あり。 1) 鮟鱇肝(あんきも)を 燻(いぶ)す。 一(ひと)つは、 魚(うを)炙(あぶ)るに、瓦斯(がす)に頼(たよ)ること。 今一(いまひと)つは、 舎利(しやり)。 已(すで)に、 舎利(すめし)の 大(おほ)きさ、 水分量(みづけ)は改(あらた)まり、 此度(こだみ)は、 米醋(よねず)より 紅醋(あかず)へと變更(きりかへ)。 口(くち)に含(ふく)むや、 鳳仙花(ほうせんくわ)のごとくに四散(ほどけち)り、 瞬(またゝ)く中(うち)に臼齒(おくば)より吭(のみど)に到達(いた)る。 瓦斯(がす)より 備長炭(びんちやうたん)への轉換(きりかへ)は、 來年(きたるとし)の早々(はじめ)。 東道(あるじ)曰(いへら)く、「 馨(かをり)の佳(よ)さは、炭(すみ)ならでは。 」、 「吾(われ)、漸(やうや)う、 瓦斯(がす)の限界(かぎり)を曉得(さと)れり。 」 " 鹽(しほ) ぽんす"に" 橙鹽(だいだいじほ)"も新(あら)たなる試行(こゝろみ)。 鹽(しほ)は法蘭西(ふらんす)ゲランド産(さん)。 とまれ、 若(も)し、二(ふた)つの弱點(よはみ)解消(きえう)さば、 忽地(たちまち)、理想(のぞむべ)き姿(すがた)の舗(みせ)となるべし。 【2015-09-28追記】: 龜戸(かめゐど)の 御大盡(おだいじん)が希望(のぞみ)に從(したが)ひ、 この度(たび)、新設(あらたにまうけ)し" 御大盡(おだいじん) コース"。 " 丹州(たんば)の 松茸(まつたけ)"など、 價格(ね)の張(は)るものがザクザク。 無縁(ゆかりなし)とは云へ、 金二萬圓也(きんにまんゑんなり)。 最初(いやさき)は" 茸盡(きのこづ) くし": 松茸(まつたけ)、 本占地(しめぢ)、 黒茸(くろたけ)、 舞茸(まひたけ)。 徒(いたづら)に出汁(だし)の勝(か)つことのなき佳味(よきあぢ)。 丹州(たんば)の松茸(まつたけ)は纔(わづ)かばかりを味見(あぢみ)。 旨味(うまみ)彈(はじ)くる蝦夷 利尻(えぞりしり) 鮃(ひらめ)の 縁側(えんがは)。 羽州 八郎潟(ではゝちらうがた)の 鰻(むなぎ)は四百五十匁。 この日(ひ)は、 敢(あ)へて齒應(はごた)へを殘(のこ)す烹調法(やりかた)。 噛(か)むほどに、美味(うまみ)溢れて、口中(くちのなか)へど浮騰(ほとばし)る。 薩州(さつま) 出水(いづみ)の 眞鰺(あぢ)も、この日(ひ)は 酢〆(すじめ)。 『』、かつて四谷(よつや)に在(あ)りし『 纏』を彷彿(おもはす)。 倩(つらつら) 鰻(むなぎ)、 眞鰺(あぢ)を瞻(み)るに、小宮親方(おやかた)、 近來(ちかごろ)は、無人境(ひとなきところ)を獨行(ゆ)くがごとし。 ---------------------------------- 【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機 【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1. 8~2. 0 【2015-03-14追記】: 近會(ちかごろ)、 俄頃(にはか)に若(わか)き客(きやく)が増(ふ)へ、 剩(あまッ)さへ、異人客(いじんきやく)までと云ふ形勢(ありさま)。 古(ふる)くからの客(きやく)、地元(ぢもと)の民(たみ)が行(ゆ)きづらくなるは、 致(いた)し方(かた)のなきところか、、、。 ---------------------------------- 【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機 【鏡頭】:... 0 【2013-09-20追記】: 鯵ヶ澤(あぢがさは)の[ 魚荒](あら)、 大原 目高鰒(まだかあはび)、などなど。 [ 魚荒](あら)は久繪(くゑ)にあらず。 姿形 すがた は 鱸(すゞき)に似(に)、口味(あぢ)は 眞鯛(まだひ)を髣髴(おもはす)。 0 By Sony 【2013-05-25追記】: " 茄子(なす)の揚(あ)げ浸(びた)し"、" 淡竹(はちく)に水菜(みづな)"など。 鰻(むなぎ)は 琵琶湖(びはこ)。 " 城下鰈(しろしたがれひ)"は 指身(さしみ)、 潮汁、 握 りの三種(みくさ)。 〆は" 能登大納言(のとだいなごん)のアイス"。 ------------------------------------- 【照相機】:富士胶片(ふじふぃるむ) X-E1無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれすかめら) 【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena) 紅MC Pancolar 1. 4 【2013-03-10追記】: 此度 こだみ は琵琶湖(びはこ)の""、"(もろこ)"など。 頗(すこぶ)る美味(びみ)也。 名殘(なご)りの" 鰒(ふぐ)"に"炙(あぶ)り めじ"また佳(よ)し。 目新(めあたら)しきは岩手(いはて)の" 雁喰豆(がんくひまめ)"。 ------------------------------------- 【照相機】:富士胶片(ふじふぃるむ) X-E1無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれすかめら) 【鏡頭】 :Kern Macro Switar 1. 脂(あぶら)こそ少(すく)なめなれど舌觸(したざは)り頗(すこぶ)る滑(なめ)らか。 古來(いにしへより)、 江戸前海(えどまへうみ)の鰻(むなぎ)は 夏を盛りとす。 善哉(よきかな)、善哉(よきかな)! 【2012-06-23追記】: 【2012-06-10追記】: この日は京師(みやこ)より東下(あづまくだ)りせし(おやかた)と鉢合せ。 小宮(こみや)親方(おやかた)を交(まじ)へ四方山話(よもやまばなし)に花(はな)。 鰻(むなぎ)のほどよき大(おほ)きさ、海鰻(はむ)の産地(さんち)は勿論(いふにおよばず)、 師匠(おやかた)生(む)まれし能登(のと)の魚(うを)などとゞまるところを知らず。 【2012-05-12追記】: 喜界嶋(きかいじま) 大名笋(だいみやうだけ)、 琵琶湖 鰻二百十匁、 石川芋(いしかはいも)、明石鯛(あかしだひ)、 江戸灣(えどわん)の 鳥貝、 四万十川(しまんとがは)の 鮴(ごり)、 大和丸茄子(やまとまるなす)など。 出水(いづみ)と 淡路(あはぢ)の眞鰺(まあぢ)比(くら)べも、、。 【2012-05-04追記】: 此度(こだみ)は、 遠州濱名湖(ゑんしうはまなこ)の 鰻(むなぎ)、百六十匁、 豐州(ほうしう) 城下鰈(しろしたがれい)五百卅三匁(ごひやくさんじふさんもんめ)など。 江戸灣(えどわん)の穴子(あなご)に 大車蝦(おほくるまえび)はひさかたぶりの品。 紅椒(ぱぷりか)ムウスに咖啡(こおふィ)葛切(くづき)りは鮓屋らしからぬ品。 【2012-04-21追記】: 今季(こんき)の 初鰻(はつむなぎ)は、備州 兒嶋湖(びしうこじまこ)。 脂(あぶら)も少なく、龝(あき)盛りの鰻(むなぎ)とは雲壌(うんじやう)の相違(たがひ)。 しかはあれど、これぞ正眞正銘(まがふかたなき)天然物(てんねんもの)。 この日(ひ)の白眉(はくび)は" コンソメ"に" 蕨餠(わらびもち)"。 "コンソメ"は 牛脛肉に 芹菜(せろり)、 洋葱、 迷迭香(ろーずまり)など、 菜蔬(あをもの)・香艸、 胡椒、 百里香(たいむ)など香辛料(かうしんれう)を加へ、 さらに 鳴門鯛(なるとだひ)骨邊肉(あら)の 潮汁(うしほじる)を加へたる逸品(しな)。 居多(あまた)洋食屋ですら尻込みする" コンソメ"に挑(いど)むとは見上げたもの。 最初(いやさき)の" コンソメ"より 初鰻(はつむなぎ)、 握(にぎ)りを經(へ)て、 最後(いやはて)は 本蕨粉(ほんわらびこ)にて製(こしら)へたる"蕨餠(わらびもち)": 上にかゝるは 丹波黒豆の 黄粉(きなこ)にて、その旨さ、勿論(いふもさら)なり。 【2012-04-07追記】: この日の目當(めあ)ては今季初 塚原(つかはら)の" 白子筍(しらこだけ)"に、 " 備州(びしう) 白小豆(しろあづき)"の" 水羊羹(みづやうかん)"。 偶(たまさ)か、朝〆(あさじめ)したる鳥羽(とば)の" 星鰈(ほしがれひ)"と、 これまた今季初、肥州 八代(ひしうやつしろ)の" 鼈(すつぽん)"も、、。 倩(つらつら)筍(たけのこ)の優劣(いうれつ)を考察(かんがみ)るに、 塚原(つかはら)の" 白子筍(しらこだけ)"は、 " 長岡京(ながおかきやう)"の筍(たけのこ)と比(くら)べても、一枚上手なるべし。 寸毫(つゆ)えぐみや癖の類(たぐひ)あらで、寔(まこと)、筍の頂點(いたゞき)。 鳥羽(とば)の" 星鰈(ほしがれひ)": 縁側(えんがは)もさることながら、 潮汁(うしほじる)の出來榮えが類稀(たぐひまれ)。 半月前(はんつきまへ)の 明石鯛(あかしだひ)を凌(しの)ぎ、 一月前(ひとつきまへ)の" 城下鰈(しろしたがれひ)"に竝(なら)ぶほどの美味(うまきあぢ)。 惜(を)しむらくは、身(み)頗(すこぶ)る硬(かた)く大味(おほあぢ)なること。 "薩州 出水(さつしういづみ) 眞鰺"の甘美(うま)さは勿論(いふもさら)なり。 扨(さて)、" 備州 白小豆(しろあづき)"の" 水羊羹"に" 黒豆 あいすくりん": 實(げ)に、鮨屋(すしや)で供(いだ)すものとも思(おも)はれぬ出來(でき)。 就中(わきても)、" あいすくりん"は居多(あまた) 卵黄と ヴァニラビンズが光る一品。 【2012-03-25追記】: 此度 こだみ は、 長岡京(ながおかきやう)の 筍、 稚鮎、 明石鯛など。 閖上(ゆりあげ)の赤貝 あかゞひ は『』に續き、大地震(おほなゐ)の後二度目。 明石鯛(あかしだひ)は子持ちにて、やはり龝 あき の 紅葉鯛(もみぢだひ)に分。 待ち遠しきは 塚原(つかはら)の" 白子筍(しらこだけ)"。 牛乳(うしのちゝ)を 吉野葛にて固(かた)めたる" 牛乳豆腐(ぎうにゆうどうふ)"が、 この日の白眉(はくび)。 生の米粒(こめつぶ)のごとき塊(かたまり)を訝(いぶか)しく思ひ、これを問(と)ふと、 「自(みづか)ら編出(あみいだ)せしものにて、 葛(くづ)の粒(つぶ)にてござる」と。 【2012-03-11追記】: 銀寶(ぎんぽう)、 山獨活(やまうど)、 筍、走りの明石 櫻鯛(さくらだひ)。 それに、琵琶湖(びわこ)の" もろこ"。 潮汁(うしほじる)は時季(じき)も向去(さりなん)とする 鮃 ひらめ。 小振(こぶ)りなれど、口味(あぢ)はなかなかのもの。 【2012-02-19追記】: 漸(やうや)う生業(なりはひ)からも解放(ときはなた)れ、この日久々の『』。 最初(いやさき)は椀(わん)。 雲子(くもこ)、 菜花(なのはな)、 蘿蔔(すゞしろ)、吸口(すひくち)は柚子。 " 淀蘿蔔(よどだいこん)"と號(よびな)す 聖護院蘿蔔(しやうごいんだいこん)の一つ。 とは云へ、この日(ひ)の白眉(はくび)は" 城下鰈(しろしたがれひ)"。 身(み)は二百四十匁(にひやくよんじふもんめ、900g)と聊(いさゝ)か小振(こぶ)り。 この日の旦(あさ)活け〆にしたばかりなれば、旨味(うまみ)乏(とも)しきは明白(あきらか)。 さらば、亭主(あるじ)の捌(さば)く姿(すがた)を虚(うつ)ろに眺(なが)む。 刺身(さしみ)を箸(はし)に取(と)り、ゆるりこれを吟味(あぢは)へど、 冬の 青森鮃(あをもりひらめ)、龝(あき)の 明石鯛(あかしだひ)を仰(あふ)ぎ見、 星鰈(ほしがれひ)、否、高名(なだか)き鮨店(すしや)の 眞子鰈(まこがれひ)にも劣る。 時季(じき)に外れ、身の締まり、香氣(かをり)、旨味(うまみ)ともに今一つ。 " 城下鰈(しろしたがれひ)"と云ふは遍(あまね)く知(し)らるゝごとく、 豐後(ぶんご)は 城下海岸(しろしたのはま)にて漁(すなど)らるゝ眞子鰈(まこがれひ)。 まともに口(くち)にするはこれが初(はじめて)。 求むるまでもなく、阿吽(あうん)の呼吸(いき)にて供(いださ)れし" 潮汁(うしほじる)"。 上面(おもて)には珠(たま)のごとき油脂(あぶら)が浮(う)かみ、 湯氣(ゆげ)とゝもに、芳香(かぐはしきかをり)四方(よも)に漂(たゞよ)ふ。 これを口に含(ふく)むに、 ほどよき鹽加減(しほかげん)と無限(かぎりな)き旨味、 味覺(した)を搖(ゆ)さぶり、鼻竅(はな)を穿(うが)ち、吭(のんど)を貫(つらぬ)く。 想定外(おもひのほか)に柔(やは)らかく、舌(した)に滑(なめ)らか。 これを噛み締むれば、奧齒(おくば)に抗(あらが)ふ方策(すべ)もなく蕩(とろ)け、 骨(ほね)の周圍(まはり)より旨味(うまみ)滾々(こんこん)と溢(あふ)れ出(い)づ。 これを 舐(ねぶ)り、慈(いつく)しみ、最後(いやはて)の一滴(ひとしづく)まで飮み干す。 およそ、 鮃(ひらめ)の骨邊肉(あら)なるは、 朝(あさ)〆なれば硬(かた)く、舌に逆らひ、:旨味(うまみ)乏(とも)しきもの。 日を置くに從(したが)ひ旨味(うまみ)を増し、味はひを深(ふか)むるが通例(つね)。 眞鯛(まだひ)また然(しか)り。 俗(よ)に鮃(ひらめ)は生で啖(くら)ふがよく、鰈(かれひ)は煮るが何よりと云ふ。 とは云へ、大(おほ)きなる眞子鰈(まこがれひ)は鮃(ひらめ)に似(に)て、 煮ては舌(した)に逆(さか)らひ、鮨(すし)・刺身(さしみ)に好適(む)く。 この日の鰈(かれひ)は鮃・眞鯛と云ふより 鮎魚女(あゆなめ)に彷彿(さもにたり)。 【2011-10-19追記】: 備前(びぜん)兒嶋湖(こじまこ)の蝦蛄鰻(しやこむなぎ)など。 【2011-09-29追記】: 琵琶湖(びわこ)の鰻(むなぎ)など。 【2011-09-22追記】: 宍道湖(しんじこ)の鰻(むなぎ)など。 【2011-09-10追記】: 球磨川(くまがは)の鰻(むなぎ)など。 【2011-09-04追記】: 此度 こだみ は、『』なる新種(しんしゆ)無花果(いちじく)。 【2011-08-18追記】: 土州(としう) 鏡川(かゞみがは)の 鼈(すっぽん)。 生姜(はじかみ) を加(くは)へず、掃愁箒(さけ)も嘗(かつ)ての三分(さんぶん)の一(いち)。 纔(わづ)かな臭(くさ)みこそあれ、なかなかのもの。 鼈裙(えんぺら)、頭(かうべ)も、、。 【2011-08-10追記】: 四万十川の 鮎(あゆ)、 佐島(さじま)の 章魚櫻煮(さくらに)、土州(としう)の鰹、 蝦夷地(えぞち)釧路(くしろ)の秋刀魚(さんま)など。 家苞(いへつと)ゝして『 ばらちらし』。 秋刀魚(さんま)は身(み)も膓(わた) もなかなかの旨(うま)さ。 【2011-07-03追記】: 此度(こだみ)の白眉(はくび)は 紅椒(ぱぷりか) のムウス。 紅椒(ぱぷりか)の苦味)、凝乳(くりいむ)のまろやかさ、ほどよき鹽氣(しほけ)と非のうちどころなし。 握りとして、茹で上げ蝦蛄(しやこ)、三枚漬(さんまいづ)けの新子(しんこ)、 大原の蒸鮑(むしあはび)、明石鯛、佐島(さじま)の章魚(たこ)櫻煮(さくらに)など。 茹 で上 げ蝦蛄に舌鼓(したつゞみ)を打つは大約(およそ)一年(ひとゝせ)ぶり。 時季(じき)の穴子(あなご)はまづまづ。 【2011-06-15追記】: 此度(こだみ)は、『 四万十川の 香魚(あゆ)』、『 北上川の 山女(やまめ)』、 『丹後 舞鶴(まひづる)の 鳥貝』、『房州 勝浦(ばうしうかつうら)の 鰹(かつを)』、 『 淡路(あはぢ)の 鱧(はむ)』、『 江戸前(えどまへ)の 穴子(あなご)』など。 『吉野川』の鮎(あゆ)の比(くら)べ、四万十川(しまんとがは)には力強(ちからづよ)さ。 鰹(かつを)、 鰺(あぢ)にも優(まさ)るこの日の白眉(はくび)は 穴子 あなご。 皮(かは)甚 いと 柔(やは)らかにして、身(み)も崩(くづ)れんばかり。 身皮(みかは)の間(はざま)なる脂(あぶら)が舌に纏(まと)はりつゝ、 吭 のんど の奧に、、。 やはり 鰻(むなぎ)は龝(あき)、 穴子(あなご)は初夏(なつのはじめ)が何より。 【2011-06-03追記】: ・・・・・・(略)・・・・・・ 此度(こだみ)の酒菜(さかな)は、 吉野川の 鮎、京師(みやこ) 賀茂茄子(かもなす)、 壹岐(いき)の 岩牡蠣(いはがき)など。 鮎(あゆ)には楓(かえで)と 加賀太胡瓜(かゞぶときうり)があしらはれ目にも鮮やか。 これを貪(むさぼ)るに、身と膓(わた) より心持(こゝち)よき香(かをり)迸(ほとばし)る。 岩牡蠣(いはがき)はその儘(まゝ)でも旨(うま)く、ぽん酢(ず)もまた佳(よ)し。 賀茂茄子(かもなす)はほどよき齒應(はごた)へを殘(のこ)し、出汁(だし)も上々。 握(にぎ)りは生平(つね)のごとし。 出水(いづみ)の眞鰺(あぢ)は時季(じき)に適(かな)ひ旨さ口中(くち)に横溢(あふ)る。 肥後(ひご)の 本蛤(ほんはまぐり)も朝鮮蛤(てうせんはまぐり)と見紛(みまが)ふ大きさ。 天草(あまくさ)の車蝦(くるまえび)は俗(よ)に云ふ『 大車(おほぐるま)』。 【2011-04-28追記(拔粹)】: 蝦夷(えぞ) 苫小牧の 馬糞海膽、洛(みやこ) 塚原の 白子筍(しらこだけ)、 越中 富山の 喉黒(のどぐろ)などを貰(もら)ひ杯(さかづき)を傾(かたぶ)く。 握りで、鮃(ひらめ)縁側(えんがは)、眞鰺(まあぢ)、小鰭(こはだ)、黄肌(きはだ)、 赤貝(あかゞひ)、穴子(あなご)。 音(おと)に聞(き)く『 白子筍(しらこだけ)』を口にするはこれが初(はつ)。 鹽茹(しほゆ)でに見(み)えしかど、出汁(だし)を加(くは)へたるものとなむ、、。 滑らかなる舌觸(したざは)りは絹に似て、えぐみのなさは泉(いづみ)を髣髴(おもはす)。 慥(たしか)に笋(たけのこ)の皇(すめらみこと)。 喉黒(のどぐろ)は兜(かぶと)ばかりを擇(えら)み、ほどよく炙りて供(いださ)る。 豫(あらかじ)め降り鹽(じほ)が施(ほどこ)され、その旨味も一入(ひとしほ)。 遉(さすが)に 閖上(ゆりあげ)の赤貝はなく、 周防にて漁(いさ)りしものゝみ。 殼(から)を剥(む)き、肝(きも)を燒(や)き、身(み)と紐(ひも)は握りとなす。 【2011-04-17追記】: ・・・・・・(略)・・・・・・ 漬け場に目立つ 九十九里(くじふくり)の 朝鮮蛤に 鶏卵燒(たまごや)き。 車蝦と 山芋を擂り込み、 四十分かけて燒上(やきあ)げたるもの。 主人(あるじ)、『 大地震(おほなゐ)に遭ひて閖上(ゆりあげ)の赤貝など皆無』と、、。 掃愁箒(さけ)を貰ひ、酒菜(さかな)二種(ふたくさ)に主人(あるじ)心盡くしの品。 最初(いやさき)に、越中滑川(ゑつちゆうなめりかは)の螢烏賊(ほたるいか)。 獨活(うど)を添(そ)へ酢未醤(すみそ)で戴(いたゞ)く。 酒菜(さかな)として、品書きより、 琵琶湖(びわこ)の もろこ鹽燒(しほやき)と、 洛(みやこ)は 長岡京 筍(たけのこ)の炙り燒きを注文(たのむ)。 もろこは二寸斗(にすんばかり)の大(おほ)きさで子持(こも)ち。 築地(つきぢ)で琵琶湖(びわこ)の もろこを扱ふは纔(わづ)かに一軒のみとか。 穴子 肝煮(きもに)、走りの 淡路島(あはぢしま) 海鰻(はむ)落とし、 それに、海鰻(はむ)の あら汁(じる)は、 主人(あるじ)の好意(かうい)。 握り十二、鶏卵燒、玉薤(さけ)、酒菜(さかな)二種(ふたくさ)で八千二百圓也。 價格(ね)の廉きは、家族(うから)ばかりで商(あきな)ひ、廛(みせ)も持ち家なればこそ。 銀座『』とは互ひに先代(せんだい)よりの附き合ひとか。 主人(あるじ)、今は『』となりし紀尾井町時代をも知る。 京師(みやこ)の馨(かをり)漂ふは、先代女將(さきつおかみ)の生まれもさることながら、 偏(ひとへ)に主人(あるじ)の(しゆげふさき)にあり。 力みがなく、『某(それがし)、 鮨より懐石料理(くわいせき)が得手(えて)』とポツリ。 扨 さて 、鮓職人が力量 うで を餘すところなくあらはす 鶏卵燒(たまごや)き。 些(いさゝ)か滑(なめら)かさに虧(かく)と云ふとも、 車蝦(くるまえび)の色尤(いと)鮮烈(あざやか)にして味はひもまたなかなかに深淵(ふかし)。 昆布〆に用(つか)ふ昆布(こんぶ)は 利尻(りしり)と、これまた京風(きやうふう)。 江戸(えど)の鮨屋(すしや)では 眞昆布(まこんぶ)を用(つか)ふが通例(ならひ)。 煮切(にき)りは醤油(しやうゆ)七に味醂(みりん)三で配合(ま)ぜ、 出汁(だし)を加へたるもの。 驚(おどろ)くべきは主人(あるじ)の 記憶力(ものおぼえ)の凄(すご)さ。 四月(よつき)も前の客(きやく)の呑み啖ひしたるものをつぶさに憶(おぼ)えてをり、 剩(あまッ)さへ、話のやりとりまでもが審(つまびらか)。 【2010-12-04記(拔粹)】: 最初(いやさき)に掃愁箒(さけ)。 酒菜(さかな)は豊後(ぶんご) 冬茹(どんこ)の含(ふく)め煮(に)。 一日(いちにち)西洋時辰儀(せいやうとけい)にして六時間煮詰(につ)め、 それを幾日(いくにち)も繰(く)り返(かへ)すと云ふ驚(おどろ)くほどの手間隙(てまひま)。 次いで『星鰈(ほしがれひ)の卵巣(こ)』。 主人(あるじ)の修業先(しゆげふさき)は洛 みやこ 木屋町通り『』。 慥(たしか)に味附けは淡く、京師(みやこ)の割烹(かつぱう)を髣髴(おもはす)。 この星鰈(ほしがれひ)、常磐(じやうばん)のものにて、主人(あるじ)誇りの品。 握りは、星鰈(ほしがれひ)、星鰈縁側(えんがは)、眞鯖(まさば)、小鰭(こはだ)、 墨烏賊(すみいか)を煮切(にき)りと鹽(しほ)で、 鮪(しび)の赤身(あかみ)醤油漬(しやうゆづ)けに、赤身(あかみ)に近き脂身(あぶらみ)、 蛤(はまぐり)、卷き、煮穴子(にあなご)、燒穴子(やきあなご)、冬茹(どんこ)卷き。 途中(とちゆう)、唐墨(からすみ)に 蟹汁(かにじる)を挾(はさ)み、 握(にぎ)り十三(とあまりみつ)、卷物(まきもの)一つ、合はせて値(あたひ)八千五百圓也。 口惜(くちをし)きは 鶏卵燒(たまごや)きなきこと。 勿驚 おどろくなかれ 、各々(おのおの)品の價格 ね が黒板(こくばん)に審 つまびらか。 僕(やつかれ)のほか、絶(た)へて客(ひと)の姿(すがた)を見ず。 近傍 ちかく に寺多く、粗方(あらかた)休日(やすみのひ)の法事客(はふじきやく)とか。 饗應(もてなし)に用(つか)ふ廛(みせ)なれば、價段 ね を明かす道理(ことわり)なし。 唐墨(からすみ)は自家製。 鹽(しほ)ばかりで製造(こしら)へたるものとは明らかに異なる圓(まろ)やかさ。 その理(ことわり)を訊(たづ)ぬれば、 燒酎(せうちう)に暫し漬け込みたるものとのよし。 傍(かたは)らの 紅芯蘿蔔(こうしんだいこん)は鮨屋(すしや)には珍しき品。 要求(もとめ)に應(おう)じ、唐墨(からすみ)に添(そ)ふると、、。 そも、蘿蔔(すゞしろ)は徒(いたづら)に強き鹽氣(しほけ)を和(やはら)ぐるもの。 鹽(しほ)強(つよ)からざれば、そのまゝに味(あぢ)はふが何より。 こゝろみに紅芯蘿蔔一片(ひとひら)を齧(かじ)るに、爽やかなること梨(なし)に似たり。 萬願寺唐辛子(まんぐわんじたうがらし)も東都(えど)の鮨屋にはなき菜蔬(あをもの)。 舎利(しやり)は粒(つぶ)が立ち、舌(した)に滑(なめ)らか。 暖(あたゝ)かさは人肌(ひとのはだ)ほどならん。 酢は 尾州半田(びしうはんだ)の白酢に、纔(わづ)かながら 沙糖を用(つか)ふ。 甘酢(あまず)漬け生姜(はじかみ)の自家製(じかせい)なるは勿論(いふもさらなり)。 くどさなく、口直(くちなほ)しにはほどよし。 近會(ちかごろ)の に比(くら)ぶれば、聊か冷たく、酢も弱め。 山葵(わさび)は本物(ほんもの)ながら、高名(なのある)廛(みせ)には遠く及ばず。 主人(あるじ)の誇る『 星鰈(ほしがれひ)』は〆てより三日目(みッつかめ)。 この時季の、『』か『』の 鮃の美味(うまきあぢ)にはとてもとても、、。 『』なれば〆て間(ま)もなきものを厚(あつ)めに切りつく。 身が活き、噛み締むるほどに旨味(うまみ)奔(ほとばし)るが通例(つね)。 『 蛤(はまぐり)』は他店(よそ)で用(つか)ふ鹿島灘(かしまなだ) 朝鮮蛤とは異なり、 肥後(ひご)の濱(はま)にて漁(すなど)られし 本蛤(ほんはまぐり)。 これを『漬け込み』となし、 煮詰(につ)めを寸毫(つゆ)施(ほど)さずに味はふ。 僅(はつ)かながらも火の入り過ぎたるけはひこそあれ、なかなかの出來榮(できば)え。 主人(あるじ)が『今一つ』と羞(は)ぢらふ『 煮穴子(にあなご)』は江戸前(えどまへ)。 煮工合(にぐはひ)もほどよく、この時季(じき)としては、まづまづ。 最(いと)面白(おもしろ)きは『 燒穴子(やきあなご)』。 洛(みやこ)に倣ひて、 骨切(ほねき)りを行ひたる後これを炙(あぶ)る。 やはり『 燒穴子』に限るなら『 468』に一日(いちじつ)の長(ちやう)。 鶏卵(たまご)の代替(かはり)に『尤(いと)自信(じゝん)あるもの』と、問はゞ、 『含ませ煮の冬茹(どんこ)』を海苔(のり)に卷くは如何(いか)に、と、囘答(いら)ふ。 ぬばたまの黒さながらも、味は海苔卷きの干瓢(かんぺう)よりも穩(おだ)やか。 さても、握り鮨の華(はな)たる 光物(ひかりもの)ゝはと檢(あらた)むるに、 鯖(さば)はやゝ淺(あさ)め、小鰭(こはだ)は聊(いさゝ)か強き酢〆。 主人(あるじ)に據(よ)らば、鯖は、鹽(しほ)二時間半、酢(す)四十分、 小鰭 こはだ は、鹽(しほ)を五十分、酢(す)を四十分とか。 豐後(ぶんご)の鯖(さば)は、その身頗(すこぶ)る肥(こ)え、 脂(あぶら)は鹽(しほ)を蹴散(けちら)らし、酢を四方(よも)に彈き飛ばさんばかり。 小鰭(こはだ)には"卷き"より拵(こしら)へたる朧(おぼろ)を挾(はさ)む。 〆の強さたるや、九段下『』、烏森稻荷『』に次ぐ。 そも『』なる屋號(やがう)、 小宮徳造(こみやとくざう)が 魚屋に因む。 倅(せがれ) 健(たけし)、當地 このち に開きし鮨屋こそ『おすもじ處(どころ)』。 二代目(にだいめ)重病(おもきやまひ)に仆(たふ)れ、跡を繼ぎしが、三代目(さんだいめ)。 すなはち、現行(いま)の親方(おやかた) 小宮健一(こみやけんいち)その人(ひと)。 四度目(よたびめ)の『』。 當日(そのひ)電話(テレフヲン)するに、「 空席(あき)あり」との應答(いらへ)。 今猶(いまなほ)かくのごとき景状(ありさま)なる縁由(ことのよし)、 偏(ひとへ)に、" 川口(かはぐち)"と云ふ地(ところ)の牆壁(かべ)にあらん。 とは云へ、かの蒲田(かまた)『』の前例(ためし)もあり、 努々(ゆめゆめ)油斷大敵(きをぬくべからず)! 半年後(はんとせのち)、 「『』のごとき爲體(てゐたらく)にならぬ」とは、難斷言(いひきりがたし)。 " 熟成(ねかし・うらし)"を窮(きは)めんとするは、以前同樣(まへにおなじ)。 魚(うを)に依存(よ)り、大(おほ)きさに從(したが)ひ、 鹽(しほ)を振(ふ)り、時(とき)にその儘(まゝ)、 冰温(こほりのつめたさ)に寢(ね)かすこと數日間(いくにちか)。 " 劍先烏賊(けんさきいか)"で五日(いつか)、 " 鱸(すゞき)"、" 星鰈(ほしがれひ)"なら七日(なぬか)、 この日(ひ)の" 鮪(しび)"は五日(いつか)と云ふ工合(ぐあひ)。 鱸(すゞき)は、「 昆布〆(こぶじめ)歟(か)?」と訝(いぶか)るほど。 舎利(すめし)の美味(うま)さも不變(あひかはらず)。 陸奧(むつ)の 眞妻山葵(まづまわさび)の優秀(すば)らしさは、 豆州(いづ)のそれにも匹敵(ま)けぬほど。 季(とき)に恵(めぐ)まれずと云へど、" 鮪(しび)"もまた佳味(よきあぢ)。 創業(あきなひをはじめ)て以來(よりこのかた)、 築地(うをいちば)では、最上(いとよ)きものばかりを贖(か)ひ續(つゞ)け、 今(いま)や、 仲卸(なかおろし)が、 當家(こちら)のために極上(このうへなき)ものを確保(とりおき)するまでに、、。 " 鮪(しび)"、" 海膽(うに)"は勿論(いふまでもなく)、 その他(ほか)の鮨種(すしだね)も至高(とびきり)のものばかり。 この日(ひ)の" 紫海膽(うに)"にも「 築地一(つきぢいち)」の極印(きはめいん)。 一貫(ひとつ)原價(もとね)で四千五百圓(よんせんごひやくゑん)にもなると云ふ。 それを、 「四千圓(よんせんゑん)と云ふ破格値(あかじね)」 にて提供(いだす)とのよし。 小人(それがし)のみ、このありがたき提案(まうしいで)を辭退(ことわる)。 " 星鳗(はかりめ)"は 烹(に)て炮(あぶ)ると云ふ烹調法(やりかた)。 外見(みため)も食感(あぢはひ)も、 瀬戸内(せとうち)界隈(あたり)の燒穴子(やきあなご)に彷彿(さもにたり)。 僕(やつかれ)、やはり、古典的(むかしなが)らの" 煮穴子(にあなご)"が吉(よい)。 " 蝦蛄(しやこ)"も卵巣(たまご)を持(も)たぬものを、 眼前(めのまへ)にて茹(う)で上(あ)ぐるを嗜(この)む。 當家(こちら)の流儀(やりかた)、 風習(ならひ)の" 漬込(つけこみ)"とも半點(いさゝか)異質(ことなる)。 明々地(あからさま)に改良(よく)なりしが" 雞卵燒(たまごやき)"。 顏色(いろ)の變化(たがひ)は 甘蔗(さたう)を變更(かへ)たことに起因(よる)。 滑(なめ)らかなること絹(きぬ)のごとく、 嫩(やはらか)なること焦糖布甸(かすたあどぷでいんぐ)を髣髴(おもはす)。 劈頭(いやさき)から掉尾(いやはて)に至(いた)るまで、 一(ひと)つとして麁味(あぢあ)しきもの皆無(なし)。 只顧(ひたすら)旨(うま)く、唯々(たゞたゞ)味覺(した)を怡(よろこ)ばしむ。 とは云へ、 美味(うま)く濃厚(こ)きに過(す)ぐるとの恨(うら)みを殘(のこ)す。 8 「 雞卵燒(たまごやき)、進化(かはりぬ)。 」 との慥(たしか)なる噂(うはさ)を小耳(こみゝ)に挾(はま)み、 三度目(みたびめ)の訪問(おとづれ)。 此度(こだみ)は、 類稀(たぐひまれ)なる食通(たべて)を同伴(ともな)ひ、、。 劈頭(はじめ)から、 豬股親方(ゐのまたをやかた)の誇(ほこ)らしくも愉快(たの)しげなる聲(こゑ)。 」 「 今季最後(いやはて)の津輕海峽(つがるかいきやう)もの。 卷物(まきもの)など十七(とあまりなゝつ)に啤酒(びいる)を合(あは)せ、 對價(あたひ)、二萬圓(にまんゑん)斗(ばかり)。 前(まへ)に同(おな)じく、 過半(あらかた)、 輕(かろ)く鹽(しほ)して熟成(ね)かしたる素材(たね)。 「たゞし、 貝(かい)と蝦(えび)はその限(かぎ)りにあらず。 」 とは、師傅(おやかた)の辯(はなし)。 " 鰤(ぶり)"、" 眞鯛(まだひ)"、" 赤鯥(あかむつ)"、など、 背身(せみ)と 腹身(はらみ)を薄(うす)き削(そ)ぎてこれを合體(あはす)。 その縁由(ことのよし)、 「 僉(みな)、均一(おな)じ味(あぢ)にせばやと、、」となむ。 " 眞梶木(まかぢき)"も同樣(おなじ)ながら、 背身(せみ)二枚(にまい)。 " 小鰭(こはだ)"は、 市場(いちば)で厚(あつ)めのものを選擇(えら)み、 半身(はんみ)にして、更(さら)にこれを薄(うす)く開(ひら)き、 裏表(うらおもて)にして二枚(にまい)。 「 鹽(しほ)、 醋(す)、ともに 八十分(はちじつぷん)」 とは、 今時(いまどき)ありえぬほどの強烈(つよ)さ。 さりながら、 醋(す)の立(た)ち過(す)ぎを感(かん)じさせぬは驚歎(おどろき)。 「 十日間(とほか) 熟成(ねかしたるもの)」、 と證言(い)ふ淡路(あはぢ)の" 眞鯛(まだひ)"。 " 紅瞳(べにひとみ)"と號(よびな)す" 赤鯥(あかむつ)"には仰天(そらをあふぐ)。 元來(もとより)、 北陸(ほくりく)近邊(あたり)ではこれを" 喉黑(のどぐろ)"と稱(とな)ふ。 その美味(よきあぢ)たるや、もはや、 唸(うな)るほか術(てだて)なし。 どれもこれもが東道(あるじ)の誇(ほこ)り。 時季(とき)に適(かな)ふ至高(このうへなき)ものばかりを仕入(しい)れ、 これに、 鹽(しほ)を振(ふ)りて適宜(ほどよく)寢(ね)かし置(お)き、 時(とき)に、速(すみ)やかにこれを鮨種(すしだね)となす。 柵漬(さくづ)けたる 鮪(しび)は、 切附(きりつ)け、再度(ふたゝび)漬醤油(つけじやうゆ)に滲(ひた)し、 小柱(こばしら)などには、 醋洗(すあら)ひを施(ほどこ)す。 眞牡蠣(かき)は岩手(いはて) 赤嵜産(あかざきのもの)。 酒(さけ)、 味醂(みりん)、 昆布(こんぶ)による" 漬込(つけこみ)"のごときもの。 亭主(あるじ)言(い)ふやう: 「世(よ)に "昆布森(こんぶもり)"に優(まさ)る牡蠣(かき)なしと云へど、 今頃(いまごろ)のものは火(ひ)に遭(あ)ひて縮退(ちゞむ)が通例(つね)。 」 これに因(よ)り、 「" 昆布森(こんぶもり)"の牡蠣(かき)は十二月(じふにがつ)まで、 海膽(うに)は、 利尻(りしり) 馬糞海膽(ばふんうに)の最上品(いとよきしな)を、 春(はる)から夏(なつ)までに限定(かぎり)て用(つか)ふ。 」と、、。 " 穴子(あなご)"なき縁由(ことのよし)、また同樣(しかり)。 眞梶木(まかぢき)の旨(うま)さも時季(いまごろ)固有(ならでは)。 「 春(はる)には 三州(みかは)の" 淺蜊(あさり)"、、」、 と、心待(こゝろま)ちの樣子(そぶり)。 駭(おどろ)くほどに大(おほ)きな 野附(のつけ)の" 大星(おほゞし)"。 すなはち、 莫迦貝(ばかゞひ) 貝柱(かひばしら)番(つがひ)の一(ひとつ)。 僕(やつかれ)、 酢洗(すあら)ひせで、その儘(まゝ)に用(つか)ふが嗜(この)み。 纔(わづ)かに味(あぢ)の濃(こ)さを感(かん)じたは、 " 子持(こも)ち 槍烏賊(やりいか)"に" 手卷(てまき)の 鐵火(てつくわ)"。 槍烏賊(やりいか)は 半點(いさゝか)甜鹹(あまから)く、 手卷(てまき)は 煮切(にきり)過多(おほめ)。 味覺(した)の鋭(するど)き 同行者(つれ)より、 さらに、より詳細(こま)かき指摘(してき)あり。 とは云へ、 押(お)しなめて、どれもこれも美味(よきあぢ)。 就中(わきても)、 素材(すしだね)の上質(よ)さは折紙附(をりがみつき)。 " 鶏卵燒(たまごやき)"は 緑色(みどりいろ)が薄(うす)れ、 甜(あまみ)を増(ま)し、滑(なめ)らかさも向上(うはむき)たる兆(きざし)。 黍糖(きびたう)を 上白糖(じやうはくたう)に換(か)へ、 沙糖(さたう)を減(へ)らして 味醂(みりん)に、、」との説明(よし)。 " 海苔(のり)"は肥前(ひぜん) 有明(ありあけ)。 " 小鰭(こはだ)"も 有明(ありあけ)。 「 有明(ありあけ)の小鰭(こはだ)は海苔(のり)の味(あぢ)がする」、 とは東道(あるじ)が説(はなし)。 「ふらり、晝飧(ひる)にでも覗(のぞ)かばや」と意(おも)ひしかど、 「年末(としのすゑ)まで一席(ひと)つとして空(あき)なし」の景状(ありさま)。 寔(まこと)、 近會(ちかごろ)の鮓店(すしや)は尋常(よのつね)ならざるものあり。 かつて、" 御好(おこの)み"、すなはち、 賓(まらうど)の隨意(おもひのまゝ)に摘(つま)めた『』は、 " 御任(おまか)せ"のみと變貌(なりは)て、その名聲(たかきな)に胡坐(あぐら)。 先般(さきごろ)閉店(みせじまひ)せしばかりの『』また同樣(しかり)。 人(ひと)が客(ひと)を呼(よ)び、評判(うはさ)が評價(うはさ)を呼(よ)ぶ。 宛然(あたかも)、 雫(しづく)集(つど)ひて清水(しみづ)となり、川(かは)と變貌(な)り、 やがて瀑布(おほだき)と化(な)りて瀧壺(たきつぼ)に荒狂(あれくる)ふがごとし。 さすれば、當家(こちら)『』の遠(とほ)からず上(うへ)のごとく變化(な)るも、 最早(もはや)不可避(さけがた)き宿命(さだめ)。 氣(き)も漫(すゞ)ろ。 「有象無象(うざうむざう)の衆人(たみ)蝟集(むらが)る前(まへ)に、、」と、 この日(このひ)、矢(や)も楯(たて)もたまらず、 武州足立郡川口(むさしのくにあだちのこほりかはぐち)の地(ち)に、、。 大約(およそ)半年(はんとし)ぶり。 前囘(まへ)は六字(ろくじ)開始(はじまり)で客(かく)一人(ひとり)、 此度(こだみ)は五字(ごじ)開始(はじまり)で賓(まらうど)六人(むたり)。 「前日(まへのひ)は纔(わづ)か一人(ひとり)のみ」とのよし。 " 墨烏賊(すみいか)"九日(こゝのか)、" 眞鯛(まだひ)"は十日(とほか)。 " 皮剥(かはゝぎ)"、" 喉黑(のどぐろ)"なども熟成(うら)す。 とりわけ、" 眞梶木(まかじき)"は 廿日(はつか)と云ふ長期間(ながさ)。 但(たゞ)し、 " 蟹(かに)"、" 貝(かひ)"、" 蝦(えび)"は 速(すみ)やかに用之(これをつか)ふ。 どれもこれも、魂(たましひ)を消(け)すほどの旨(うま)さ。 就中(わきても)、" 喉黑(のどぐろ)"、" 皮剥(かはゝぎ)"、" 鮪(しび)"は、 呆(あき)れ果(は)て、笑(わら)ふ餘(ほか)術(てだて)なし。 唯一(たゞひとつ)、" 鶏卵燒(たまごやき)"の味(あぢはひ)は今一(いまひと)つ。 舎利(すめし)は、 小人(それがし)が嗜(この)みに秋毫(つゆ)異(こと)なるところなし。 粒(つぶ)が立(た)ち、しかも 舌(した)に滑(なめ)らか。 飯切(はんぎり)に混合(あ)はせて大約(およそ) 三十分(さんじつぷん)。 以爲(おも)ふに、輙(たやす)く席(せき)の取(と)れぬ 『』、『』、『』、『』 に拘泥(こだは)るより、 當日(そのひ)に空席(あき)のある當家(こちら)が理想(よい)。 鮨職人(すしゝよくにん)としての才能・力量(ちから)も稀有(まれにみるほど)。 小人(それがし)もまた、『』には一目(いちもく)二目(にもく)。 『』を 敬(うやま)ひつゝ、 己(おのれ)固有(ならでは)の流儀(やりかた)を探求(さがしもと)めんとするは、 傍目(はため)にも明白(あきらか)。 實(げ)に、 求道僧(みちをさがしもとむるもの)に異(こと)ならず。 實家(うまれたるいへ)が農業(こめづくりをなりはひとなす)にもかゝはらず、 實家(うち)や近所(ちかく)の米(こめ)に飽(あ)き足(た)らず、 彼此(をちこち)に好(よ)き鮓米(すしまひ)を求(もと)め、 (いひやま)の 米(こめ)へと到達(たどりつく)。 産(いひやまさん)" こしひかり"。 信州(しなのゝくに)(いひやま)は、 越後(ゑちごのくに) 魚沼郡(うをぬまのこほり)と隣接(となりあふ)。 「 舎利(すめし)には"魚沼産(うをぬまさん)"より好適(よい)」と斷言(いふ)。 鶏卵(かひご)は、 陸州(むつのくに)津輕郡(つがるのこほり) 鰺ヶ澤(あぢがさは)の地(ち)、 (はせがはしぜんぼくじやう)のもの。 " 鶏卵燒(たまごやき)"の 顏色(いろ)は獨特(ほかになきもの)。 鮪(しび)のみならず、 白身(しろみ)の類(たぐひ)も 熟成(うら)して用(つか)ふ。 白烏賊(しろいか)、すなはち 劍先烏賊(けんさきいか)、 鱸(すゞき)、 星鰈(ほしがれひ)など、何(いづ)れも 七日(なのか)ほど。 鮃(ひらめ)、 鰈(かれひ)の類(たぐひ)は、 平均的(なみ)の鮓店(すしや)なら、寢(ね)かしてもせいぜい三日(みッか)。 纖細(こまやか)なる 烏賊(いか)への 疱丁(はうちやう)は、 『』を髣髴(おもはす)。 とは云へ、『』とも『』とも異質(こと)なる味(あぢはひ)。 今(いま)や 熟成(うらし)の盛名(な)を擅(ほしいまゝ)にする『』: 小人(それがし)、 十年前(とゝせまへ)の陳腐(ありきたり)の烹調法(やりかた)を知(し)るのみ。 9kg)もの 星鰈(ほしがれひ)、 最上質(いとよ)き 利尻(りしり)の 蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)を用(つか)ふは、 寔(まこと)、豬股親方(ゐのまたをやかた)が 心意氣(こゝろいき)。 とは云へ、 鮨種(すしだね)の良(よ)し惡(あ)し、貴賤(たふとき・いやしき)は、 成形技術(かたちづくるわざ)と 舎利(すめし)に比較(くら)ぶれば、 些末(とるにたら)ぬこと。 上記(うへにしるせ)るごとく、 米(こめ)は産(いひやまさん)こしひかり。 三種(みくさ)の 紅醋(あかず)を混合(あは)せ、 沙糖(さたう)に頼(たよ)らで、旨味(うまみ)を抽出(ひきいだす)。 口(くち)に抛(はう)り込(こ)むや、 須臾(たちまち)解(ほぐ)れて、臼齒(おくば)に幾粒(いくつぶ)か留(とゞ)まる。 瞬時(すぐさ)ま崩壊(ほど)けながらも、 口中(くちのなか)に殘(のこ)る 米粒(こめつぶ)は 舌(した)に滑(なめ)らか。 一度(ひとたび)これを噛締(かみし)むるや、 瞬(またゝ)く中(うち)に咽喉(のみど)を通過(す)ぎて胃袋(いのふ)に、、。 鹽梅(しほとす)、 温度(あたゝかさ)も も適切(ほどよ)く、 これぞ、小人(それがし)庶幾(こひねが)ひてやまぬ舎利(すめし)そのもの。 『』、『』 の舎利(すめし)に肉薄(せま)る水準(たかみ)。 否(いな)、 漫(みだり)に主張(いひはる)こともせで、 能(よ)く、あらゆる鮨種(すしだね)にも調和(あ)はすことのかなふ、 " 最適解(よきおとしどころ)"やも知(し)れぬ。 『』には半點(いさゝか)及(およ)ばぬにせよ、 手附(てつ)きに無駄(むだ)はなく、迅速(すばやく)・精確(あやまちなきかたち)。 齢(よはひ)・ 春秋(つきひ)を重(かさ)ねれば、 即(すなはち)、 いづれ神業(かみわざ)の域(いき)に到達(いた)らん。 扨(さて)、この日(ひ)の流(なが)れ: 白烏賊(しろいか)に始(まじ)まり、鶏卵燒(たまごやき)に終(を)はる、 握(にぎ)り十七(とあまりなゝつ)、手卷(てまき)一(ひとつ)、 卷物(まきもの)一(ひとつ)からなる構成(くみたて)。 鮪(しび)が赤身(あかみ)と 肥肉(あぶらみ)合計(あは)せて五(いつゝ)。 更(さら)に 手卷(てまき)も、、。 老舖(しにせ)"(ひちやう)"よりの仕入(しいれ)。 これを過半(あらかた) 醤油漬(しやうづ)けとなす。 夏場(なつば)としては、稀(まれ)に見(み)る美味(びみ)。 敢(あ)へて" 房州産(あは)"を避(さ)け、 " 三陸産(さんりく)"を重用(おもん)ずと云ふ 鮑(あはび)も佳味(よきあぢ)。 " 胡麻鯖(ごまさば)"は 薄(うす)く三枚(さんまい)に引(ひ)き、 これをずらし 重(かさ)ねて用(つか)ふ。 この技法(やりかた)の嚆矢濫觴(さきがけ)は、 六本木(ろつぽんぎ)『』 鈴木隆久親方(すゞきたかひさおやかた)。 眞鰺(まあぢ): 豫(あらかじ)め 輕(かろ)く振(ふ)り鹽(じほ)を打(う)ち、 供(いだ)す直前(すぐまへ)に醋(す)に潛(くゞ)らす流儀(やりかた)。 この時季(じき)、しかも、薩州(さつまのくに) 出水(いづみ)の産(もの)。 穴子(あなご)は吾(あ)が嗜好(このみ)に合(あ)はず。 東都(えど)の" 煮穴子(にあなご)"と云ふより、 京坂(あちら)の" 燒穴子(やきあなご)"のごとき食感(はごたへ・したざはり)。 皮(かは)近(ちか)くより漂(たゞよ)ふ臭氣(くさみ)は皆無(なし)。 酒(さけ)・ 味醂(みりん)の類(たぐひ)を用(つか)ふことなく、 芝蝦(しば)と 薯蕷(いも)・ 甘蔗(たう)にて制作(こしら)へたる、 鶏卵燒(たまご): 件(くだん)の鶏蛋(たまご)の濃厚(こ)き口味(あぢ)こそ顯著(あらは)なれど、 やはり、『』の 鶏卵燒(たまご)が吉(よい)。 親方(おやかた)と、 やがて 御内儀(おかみ)となる許嫁(いひなづけ)の 呼吸(いき)も合(あ)ひ、 寔(まこと)、 心持(こゝち)よき限(かぎ)り。 繁盛(さかえ)て欲(ほ)しくもあり、混雜(こみあ)ふは辛(つら)きところでもあり。 東道(あるじ)曰(いへら)く、 「 一流店(なのあるみせ)で修業歴(わざをならひおぼえ)たる例(ためし)なし」と、、。 獨學(ひとりまな)びて祕技(ひめわざ)を會得(ゑとく)せしは、 木挽町(こびきちやう)『』など極纔(きわめてわづ)か。 押竝(おしな)めて、 この界隈(あたり)では、浦和(うらわ)『』を凌駕(しの)ぎ、 東都(えど)でも、『』、『』と比肩(かたをなら)ぶるほど。 今(いま)や、『』にも肉薄(せま)る威勢(いきほひ)。 F2 「今(いま)向絶滅(たへな)んとする 膀胱包(ヴェッシー、ばうくわう)づゝみ」 「庶幾(こひねが)はくは、一緒(とも)にこれを啖(くら)はん!」 とのありがたき誘(さそ)ひ。 「据膳(すゑぜん)喰(く)はねば肚(はら)が減(へ)る。 」 瞬時(またゝくいとま)もあらで、快諾(よろこびいさみてこれをうけたまはる)。 その容(さま)、 草花(くさばな)の風(かぜ)に靡(なび)き、 猫(ねこ)が木天蓼(またゝび)に酩酊(ゑ)ふがごとし。 新派法國菜(しんぱフランスれうり)が旗頭(はたがしら)、 ""が" ブレス雞(どり) 膀胱包(ばうくわうづゝ)み"は、 あまりに高名(なだかし)。 そも、" 膀胱包(ばうくわうづゝ)み"は 昔(いにしへ)より傳承(つたは)る技法(わざ)。 往古(そのかみ)以來(よりこのかた)多用(おほくもちゐ)られ、 現代(いまの)"(しんくうてうり)"へと連(つら)なる。 ラグビー蹴球(けまり)の球(たま)の歪(いびつ)なる縁由(ことのよし)、 偏(ひとへ)に 豬(ぶた)膀胱(ばうくわう)の形状(かたち) に由來(よる)。 誘(さそ)ひ主(ぬし)と東道(あるじ) 室田總主廚(むろたをやかた)とは、 舊知(ふるきなじみ)の間柄(あひだがら)。 (よしのたてるおやかた)の薫陶(をしへ・てほどき)を受(う)け、 古典法國菜(ふるきフランスれうり)に長(た)くるとの噂(うはさ)。 小人(それがし)、傳統(ふるきもの)を愛(め)づること、 宛然(あたかも)、 蝶(てふ)が花(はな)を戀(こ)ひ、 鰻(むなぎ)が坑(あな)に執着(とりすが)るに似(に)たり。 この日(ひ)の宴(うたげ)は、 アミューズに始(はじ)まり、前菜(オルドゥーヴル)、魚(ポアソン)、 肉(ヴィアンド)、菓子(デセール)なる構成(ながれ)。 但(たゞ)し、事情(わけ)ありて菓子(デセール)には到達(いた)らず。 最初(いやさき)に、 蘇格蘭産(スコットランドさん) 雷鳥(らいてう、グルーズ)と 琉球産(りうきうさん) 高麗雉(かうらいきじ、フェザ)の御披露目(おひろめ)。 桌子(つくゑ)には、狩獵(かり)にて殺害(あや)められし鳥(とり)二羽(には)。 詳細(つぶさ)にその顏色(かんばせ)を觀察(うかゞ)ふに、 海(うみ)よりも深甚(ふか)き遺恨(うらみ)を抱(いだ)き、 無念(むねん)極(きは)まりなき憤怒(いかり)の形相(ぎやうさう)。 、、と云ふは眞赤(まつか)な嘘僞(うそいつはり)。 さながら、 安(やす)らかに眠(ねむ)る童蒙(わらんべ)のごとし。 これを 攝氏(せつし)五・六度(ごろくど)にて熟成(ねかしうらす)。 雷鳥(らいてう)七日(なのか)、雉(きじ)十四日(とほかあまりよつか)。 前菜(オルドゥーヴル)? として、 " 梭魚(かます) 冷燻(れいくん)"に" パテ・アンクルト(パイ包み)"。 近會(ちかごろ)巷(ちまた)に跋扈(はびこ)るは、 " パテ"と詐稱(あざむ)き" パイ生地(きぢ)"用(つか)はぬ貨物(しろもの)。 當家(こちら)の" パテ・アンクルト(パイ包み)": 「 これぞ王道(わうのみち)」と賞賛(ほめたゝ)ふべき一品(ひとしな)。 倩(つらつら)その内容(なかみ)を窺(うかゞ)ふに、 鹿肉(かのしゝ)、 野豬肉(ゐのしゝ)、 熊肉(くまのしゝ)、 鵝肝(フォアグラ)、、。 およそ 魳(かます)と云ふは 水氣(みづけ)多(おほ)き魚(うを)なれば、 開(ひら)きて鹽(しほ)して乾(ほ)すが慣習(ならひ)。 鮓店(すしや)なれば" 棒鮓(ぼうずし)"と做(な)すが通常(つね)。 當家(こちら)、鹽(しほ)したる後(のち)、 冷燻(れいくん)を施(ほどこ)す。 その身(み)は柔(やは)らかく、適度(ほどよ)き水氣(みづけ)を保持(たもつ)。 實言(まこと)、 拔群(ひとにひいで)たる火入(ひい)れ。 ソースの美(うつ)しさも特筆大書(おほいにかきしるす)べきもの。 翡翠(ひすい)かと疑(うたが)はれ、(し)と錯覺(みまがふ)。 " 魚(ポアソン)"はと覽(み)るに、 傳統(いにしへよりつたは)る" ソール・ボン・ファム(したびらめ)"。 由緒(すぢめ)正(たゞ)しき法國魚料理(フランスうをれうり、ポアソン)。 纔(わづ)かながらも鹹(しほから)く、白葡萄酒(さけ)以(も)て漱(くちすゝ)ぐ。 扨(さて)、お次(つぎ)に控(ひか)へし" 膀胱包(ばうくわうづゝ)み": 調理前(てうりまへ)の"あの 惡臭(にほひ)"に首傾(くびかしぐ)るも、 膀胱(ばうくわう)を切開(きりひら)くや豹變(にはかにさまがはり)。 須臾(たちまち)周邊(あたり)に漂流(たゞよ)ふ妖(あや)しき馨(かをり)。 實(げ)に、 惡臭(あしきかをり)と 芳香(かぐはしきかをり)は 紙一重(かみひとへ)。 就中(わきても)、 松露(せうろ、トリュフ)がその證左(あかし)。 桌上(つくゑのうへ)には、分割(とりわけ)濟(ずみ)の銘々皿(めいめいざら)。 僕(やつかれ)、 雉(きじ、フェザ)・ 雷鳥(らいてう、グルーズ)とも、 口(くち)にするは此度(こだみ)でこれが二度目(にどめ)。 とは云へ、 高麗雉(かうらいきじ)は初(はじめて)。 それも 雌(めす)。 「 雌(めす)の食味(あぢ)は雄(をす)に優(まさ)る。 」 とは、御招(おんまね)き頂(いたゞ)きたる方(かた)の説(はなし)。 欝血(ちがたま)りて二週間(にしうかん)の長(なが)きに亙(わた)れど、 その身(み)は 想定外(おもひのほか)に白(しろ)く、臭氣(くさみ)もなし。 かくて、 只顧(ひたすら)、 手羽肉(てば)を喰(く)らひ、 腿肉(もゝ)を貪(むさぼ)る。 その容(さま)、惡鬼羅刹(あつきらせつ)に異(こと)ならず。 肉(にく)のみならず、 皮(かは)の美味(うま)さも一入(ひとしほ)。 慥(たしか)に、 雷鳥(らいてう)には 臭氣(くさみ)と 苦味(にがみ)が伴(ともな)ふ。 然(しか)はあれど、 『』 にて閉口(くちをとざ)したるほどの惡臭(あしきかをり)にあらず。 然(さ)れば、瞬(またゝ)く中(うち)に皿(さら)は空(から)と化(な)る。 膀胱(ばうくわう)と 雷鳥(らいてう)と云ふ 惡臭(あしきかをり)の共演(きそひあひ)。 實(げ)に、「 毒(どく)以(も)て毒(どく)を制(せい)す。 」 元來(もとより)、癖(くせ)のある馨(かをり)は嗜(この)むところ。 " くさや"、" 臭豆腐(しうどうふ)"、何(いづ)れも同様(しかり)。 故(ゆゑ)ありて、 菓子(デセール)を前(まへ)に辭別(いとまごひ)。 女洋菓子職人(パティシエール)の技藝(わざ)を見逃(みのが)したるは、 僕(やつかれ)一世一代(いつせいちだい)の大不覺(だいふかく)。 この女職人(パティシエール)「手煆煉(てだれ)」との評判(うはさ)あり。 桌子(つくゑ)には 純白(まし)き 亞麻布(リネン)の 桌布(テーブルクロス)。 亞麻布(あまぬの)の 餐巾(ナプキン)に加(くは)へ、 御絞(おしぼ)りまで、、。 麪麭(ぱん)を手掴(てづか)みする洋食(やうしよく)でこそ、 御絞(おしぼ)りは不可缺(かくべからざるもの)。 そも、 眞白(ましろ)き 亞麻布(リンネル)は 裝飾(かざり)にあらず。 周圍(まはり)を柔(やは)らかに照(て)らし返(かへ)す效果(きゝめ)あり。 鮓店(すしや)の 檜(ひのき)もこれに同(おな)じ。 高脚杯(ぐらす)も 皿(さら)も、 菜(れうり)を活(い)かす上質品(よきもの)。 白瓷器(はくじ)若(も)しくは玻璃(がらす)の碟(さら)に ソースを垂(た)らし、 小賢(こざか)しき繪畫(ゑ)を描(ゑが)く近會(ちかごろ)の作法(やりかた)とは、 雲壤(くもとつちほど)の相違(たがひ)。 漫(みだり)に賓(ひと)の眼(め)を欺(あざむ)くは廚師(いたまへ)に非(あら)ず。 當家(こちら)、かゝる 小手先(こてさき)の技藝(わざ)とは無縁(ゆかりなし)。 肉用(にくやう) 餐刀(ナイフ)の 利(するど)さ、使(つか)ひ易(やす)さ、 適切(たゞし)き 碟(さら)の温度(あたゝかさ)、 悉(ことごと)く、小人(それがし)が琴線(こゝろ)に觸(ふ)れて止(や)むことなし。 金屬洋食器(カトラリ)の設置法(おきかた)は 英國式(エゲレスしき)。 仰向(あふむ)けとし刻印(こくいん)を表(おもて)となすは、 當家(こちら)老板(あるじ)固有(ならでは)の創意工夫(やりかた)にて、 「(おやかた)は 法國式(フランスしき)」とのよし。 野獸(のゝけだもの)、 野鳥(のゝとり)を扱(あつ)ひながらも、 突(つ)き進(すゝ)むは 正統(せいとう)にして 王道(わうだう)。 菜(れうり)、 器(うつは)、 金屬洋食器(カトラリ)、 接客(もてなしぶり)、 何(いづ)れも然(しか)り。 4 掉尾(いやはて)の粕壁(かすかべ)『』。 「 同(おな)じ屋號(な)で、 神田神保町(かんだじんぼうちやう)へと移轉(うつるべし)」との情報(よし)。 「櫛齒(くしのは)の毀(こぼ)るゝが如(ごと)く」とは正(まさ)にこのこと。 僕(やつがれ)相知(なじみ)の肆(みせ)が、一軒(ひとつ)、また一軒(ひとつ)。 「またにたま」。 "また"に一箇(ひとつ)は(このおかた)。 "また"に一杯(いつぱい)、(しがらきやき)。 、、と云ふ次第(わけ)にて、 "(サルシッチャ)"+"(えびかづらのさけ)"+"(あいすくりん)"、 〆に"(エスプレッソ)"。 對價(あたひ)、三千八十圓也(さんぜんはちじふゑんなり)。 主菜(しゆさい)の一皿(ひとさら)"(サルシッチャ)": 今更(いまさら)言(い)ふも憚(はゞか)るが、 それにしちャ、滿更(まんざら)でもなき味(あぢはひ)。 舌鼓(したつゞみ)からの(はらつゞみ)、(ばさら)で辭去(さらば)。 8~F4 東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1. 此度(こだみ)は""に"(あかきえびかづらのさけ)"、 對價(あたひ)、三千三百円也(さんぜんさんびやくゑんなり)。 通例(つね)のごとき 琺瑯鍋(はふらうなべ)。 ""には種々(さまざま)あれど、「"風(ふう)"」との由(こと)。 「""專用(せんやう)」と云ふ"(あかきえびかづらのさけ)": 『』ほどではないにせよ、 (ビイドロのうつは)には適度(ほどよ)き大(おほ)きさもあり、 能(よ)く 優雅(みやび)なる風味(あぢかをり)を輔(たす)く。 これを一口(ひとくち)飮(や)り、 上記(くだん)の 四色(よいろ)の 禽獸肉(とりけだものゝしゝ)を齧(かぢ)るに、 各(それぞれ)の個性(もちあぢ)を保持(たもち)つゝ、 " 臛(あつもの)"としてこの"(なんばんわたりりのさけ)"に調和(つりあふ)。 (たけゐおやかた)の" 羹(あつもの)"もさることながら、 心殘(こゝろのこ)りは 拂郎西察(おふらんす)舶來(わたり)の"(あいすくりん)"。 こればかりは、 何國(いづく)の如何(いか)なるものより華美(よきあぢ)ゆゑ、 今后(これよりのち)、難儀(こまる)、絡(から)まる、跽(かしこまる)。 8 久方(ひさかた)ぶりの『』。 移轉話(よそにうつるはなし)が二轉三轉(こちらがまろびて、あちらにかはり)、 暫(しばらく)は當地(このち)にての商賣(あきなひ)。 而(しか)して、捲土重來(きたるべきひにまきまへしをねらふ)。 此度(こだみ)は、 "(かきグラタン)"+"(もゝいろのえびかづらのさけ)"、 甜點(あまみ)として、"(あいすくりん)"、 對價(あたひ)、二千五百三十圓也(にせんごひやくさんじふゑんなり)。 "(かきグラタン)"には二色(ふたいろ)の"(チーズ、かんらく)"。 その内(うち)の一種(ひとつ)が"(あをかびのかんらく)"。 (しぶがき)、(かごかき)、靴磨(くつみがき)。 (かごかき)に鞜(くつ)不要(いらず)。 箱根山(はこねやま)の(くもすけ)草鞋履(わらぢばき)。 (つくばのやま)(しろくのがま)は四面鏡張(かゞみばり)。 己(おのれ)の醜姿(みにくきすがた)に垂(た)らす蝦蟇(がま)の膩汗(あぶらあせ)。 さすがに"(がまのあぶら)"は斷念(あきら)め、 " 鮮蠔(なまがき)"の次點(つぎ)に"(かきのあぶらあげ)"、 "(グラタン)"はその下(した)、と云ふのが卑見(それがしがみかた)。 "(グラタン)"に用(つか)ふ"(かんらく)"としては、 沒個性(くせのなき)ものが適當(よ)く、 "(あをかびのかんらく)"の匂(にほひ)は、 " 鮮蠔(なまがき)"の" それ"と 衝突(ぶつかりあ)ひて不融合(とけあふことなし)。 宛然(あたかも)、 虎(とら)に草(くさ)、象(ざう)に雞(にはとり)を給餌(あたふる)がごとし。 やはり、虎(とら)には雞(にはとり)、象(ざう)には草(くさ)が適合(よい)。 " 鮮蠔(なまがき)"の 配搭調劑(とりあはせ・あぢつけ)は "葷(なまぐさ)"なるべからず。 8 東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1. 「" K澄S河 (けいすみえすかは)"へは來年(きたるとし)。 」 「なれど、 正式契約(はんをつく)には未到達(いまだいたらず)。 」 との説明(はなし)。 " 甘味(デセール)"として"(もゝのソルベ)"を選擇(えらむ)。 "(あかきえびかづらのさけ)"を加(くは)へ、 對價(あたひ)、二千一百六十圓也(にせんいつぴやくろくじふゑんなり)。 雞(とり)も種々雜多(とりどり)、自由選擇(よりどりみどり)。 (にとり)、(はつとり)、本名(な)は染谷(そめや)。 目脂(めやに)、(まつやに)、三流大學(すべりどめ)。 四脚(よつあし)を、嫌(きら)ふ(せきとり)二本脚(にほんあし)。 (とりかは)は"(あれ)"の若(ごと)く、 嫩(やはらか)き(み)は乙女(をとめ)の 耳朶(みゝたぶ)を髣髴(おもは)す。 蔬菜(あをもの)、 蕈菇(きのこ)の等類(たぐひ)は、 燉(にこま)れて口味(あぢ)が滲(し)み、實(げ)に優(やさ)しき味(あぢはひ)。 "(もゝのソルベ)"は初(はじめて)。 やはり、"(まんごソルベ)"か"(あいすくりん)"が吉(よい)。 "(こうちや)"はと吟味(み)るに、 (は)から推定(し)て、"(ダージリン)"とは異(こと)なるもの歟(か)? 8 東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1. 菜單(しながき)に""もあれど、 何(なに)を喰(く)ふかと、沈吟(しあん)しどころ、此處(こゝ)『』。 「茲(こゝ)は(ほたて)の兒(こ)にすべし!」とて、 "(ちいさなほたてがひ)と蔬菜(あをもの)ゝ(あかなすじたて)"に、 "(しろきえびかづらのさけ)"を加(くは)へ、 對價(あたひ)、一千八百九十圓也(いつせんはつぴやくきふじふゑんなり)。 赤色(あかきいろ)の琺瑯鍋(はふらうなべ)には、 "(ちいさなほたてがひ)"のほか、 "(せりにんじん)"、" 蘿蔔(おほね)"、" 西蘭花(はなめやさい)"、など。 その 口味(あぢはひ)、生平(つね)に無所相違(つゆことなるところなし)。 愈々(いよいよ)、 翌月(あくるつき)には閉店(みせをしめ)、 花(はな)の東都(おえど)の 根津(ねづ)、or、 門前仲町(もんなか)に、、。 「 おめおめ當地(このち)に囘歸(もどる)まじ!」との決意(はら)。 あと一~二度(ひとたび、ないし、ふたゝび)訪問(あしをはこぶ)ことになる歟(か)? 8 東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1. 法國(おふらんす)の 名菜(なだがきめし)なるは勿論(いふもさらなり)。 肉(にく)の部位(ぶい)は風習(ならひ)の 頬(ほゝ)。 " 薔薇(むはら)"歟(か)? 、" 糖酒葡萄乾(さけづけのほしえびかづら)"歟(か)? 冰酪(あいすくりん)として" 糖酒葡萄乾(ラム・レザン)"を選擇(えらむ)み、 "(あかきえびかづらのさけ)"を加(くは)へ、 對價(あたひ)、三千四百五十六圓也(さんぜんしひやくごじふろくゑんなり)。 "(ラム・レザン)"とは、 葡萄乾(ほしえびかづら)を(さたうきびしぼりかすざけ)に漬(つ)け、 これを 冰酪(あいすくりん)として製(こしら)へたるもの。 珍(めづら)しき 白葡萄(しろきえびかづら)。 劈頭(いやさき)に"(ブッフ・ブルギニオン)": 不硬(かたからず)、 さりとて、 徒(いたづら)に嫩(やはらかき)に走(はし)ることなき 火候(ひいれ)。 醢醯(しほけとすみ)亦(また)適切(ほどよし)。 (かとらり)は法蘭西(おふらんす)""牌(じるし)。 叉子(にくさし)に抑(おさ)へ、 餐刀(めしがたな)以て截(き)り、 赤葡萄酒(あかきえびかづらざけ)の(たれ)は 湯匙(ちりれんげ)に拯(すく)ふ。 佳味(よきあぢ)、佳味(よきあぢ)! " 糖酒葡萄乾(ラム・レザン)"の"(あいすくりん)"なるもの、 當家(こちら)では初(はじめて)。 責(せめ)て怡(よろこ)ぶ(さどこうしやく)。 〽荒海(あらうみ)や、佐渡(さど)に飛翔(とびか)ふ(とき)の聲(こゑ)。 〽あら巧(うま)や、(さど)の欣喜雀躍(よろこ)ぶ(むち)の音(おと)。 、、と云ふは 眞赤(まつか)な虚文(うそ)・戲(たはふれ) にて、 〽あら旨(うま)や、(おやかた)烹飪(つく)る(なべ)の味(あぢ)。 8 東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1. 此度(こだみ)は、"(かりィめし)"を選擇(えらむ)ことに、、。 別料金(おひぜに)して、" 冰酪(あいすくりん)"を二種(ふたいろ)にして貰(もら)ひ、 對價(あたひ)、一千二百九十六圓也(いつせんにひやくきふじふろくゑんなり)。 最初(いやさき)に、 盌(まり)の(かりィ)を米飯(こめのいひ)に #BCMKR! 平生(つね)に無處相違(ことなるところなし)! 落膽(きおち)するでもなく、感歎(ためいきもらす)譯(わけ)でもなく、、。 (たけゐおやかた)、 やはり" 咖哩(かりィ)"より" 煮込(にこみ)"が得意(えて)歟(か)? 冰酪(あいすくりん)二種(ふたいろ)は、 "(あいすくりん)"に"(まんごそるべ)"。 これも亦(また)、 平生(つね)に無處相違(つゆとたがふところなし)! 善哉(よきかな)、善哉(よきかな)、。 漢字(もろこしのもじ)にて記(しる)されたる"(まんゑふがな)"。 (えびかづらのさけをいるゝびいどろのうつは): その内容(なかみ)は冷水(つめたきみづ)。 玻璃(びいどろ)の表面(おもて)に 水滴(しづく)が附着(つ)き、 水温(みずぬる)み、軈(やが)て、大(おほ)きく(さま)、「 いとをかし」。 8~F4 東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1. 周知(あまねくしら)るゝごとく、 " ゐのしゝ"とは「"豬( ゐ)"の"肉( しゝ)"」にて、" ゐ"とはその 鳴聲(なきごゑ)と云ふ。 大和言葉(やまとことば)には 一音(ひとつのおと)多(おほ)し。 例示(ためしにあぐる)なら、" 木"、" 子"、" 小、" 粉"、" 此、" 海鼠"は孰(いづれ)も" こ"。 愚老(やつがれ)が淺學(さるぢゑ)では、その理(ことわり)不詳(つまびらかならず)。 " 豬"も" 井"も、ともに" ゐ"と發音(くちよりおとにしていだす)。 "( Notation、かきしるしかた)": 天竺(てんじく)發明(あみいだせ)し"(くらゐどりきすうはう)"、 "(やうしきさんじゆつきがう)"、そして、"(もろこしもじ)"。 悉(ことごと)く 學問進歩(ちゑとまなびのあゆみ)に不可缺(かくべからざるもの)。 そも、諸學(もろもろのちゑ)、萬(よろづ)食物(くちにするもの)、 夏華(もろこし)の恩惠(めぐみ)に無關係(かゝはらざる)は稀(まれ)。 「 無震旦(もろこしなくして)、無東瀛(ひのもとなし)」。 就中(わきても)(かんじ)は「その 象徴(しるし)」とでも云ふべき存在(もの)。 ともあれ、 野豬肉(ゐのしゝ)なるもの、 本朝(わがくに)では往古(いにしへ)より好(この)まれ、 時(とき)に、" 牡丹(ぼたん)"、" 山鯨(やまくぢら)"、" 藥(くすり)"と稱(とな)へ、 大賞味之(おほいにこれをあぢは)ふが風習(ならひ)。 かくて、菜單(しながき)より、 "("たちばな"はみてそだちし"くさゐなぎ"と"あをもの"ゝにこみ)"に、 "(あかきえびかづらのさけ)"を合(あ)はせ、 對價(あたひ)、三千二十四圓也(さんぜんにじふしゑんなり)。 愚按(やつがれおもふに)、 野禽獸(のにすむとりけだもの) 啖(くら)ふには肉叢(しゝむら)が最善(よい)。 如何(いかに)せん、 この大(おほ)きさでは、 野豬(くさゐなぎ)の特徴(もちあぢ)を存分(こゝろゆくま)で難愉(たのしみがたし)。 此度(こだみ)は"(あかきえびかづらのさけ)"が上々(なかなか)。 「法國(おふらんす)(ブルゴーニュ)"Hautes 2012"」 との説明(よし)。

次の

Canadian Acoustics

みどりいろのツム マイツム100

商品特長 本剤の特長• 殺虫力、残効性に富み、安全性も高い製剤で、複雑な構造物に生息するゴキブリなど衛生害虫全般のULV施用に適しています。 ULV方式とはUltra Low Volume(濃厚少量噴霧)の略称で、少量の濃厚な薬液を昆虫に付着しやすい大きさの粒子(20ミクロン以下)にして空間噴霧する方法です。 短時間の処理で高濃度の薬液が空中にただようことによって隅々まで薬剤が浸透し、害虫駆除に極めて有効で作業能率も上ります。 濃厚な薬剤を噴霧しますので、殺虫効力が高く安全性に優れたピレスロイド系殺虫剤のみが専用殺虫剤として認可されています。 4ml~0. 6ml [高さ2. 5mとして床面積1㎡あたり1~1. 8ml~1. 2ml [高さ2. 6ml~2. 4ml [高さ2. 5mとして床面積1㎡あたり4~6ml] 使用方法• 害虫の生息場所に原液のまま、または水で希釈し濃厚少量噴霧機で20ミクロン程度の薬液粒子にして空間噴霧して下さい。 噴霧後、屋内を4~6時間、できれば一夜、密閉して下さい。 濃厚少量噴霧機(ULV機) マイクロジェット 使用上の注意 【注意-人体には使用しないこと】 【してはいけないこと】 (守らないと副作用・事故などが起こりやすくなる)• 薬剤を口や目に入れないで下さい。 小分けしたり、水で希釈するときは、食品用の容器等、誤用の恐れのあるものを利用しないで下さい。 希釈の際は、水がはね返らないようにして均一に撹拌し、直接手でかき混ぜるようなことはしないで下さい。 希釈する容器は専用のものとし、他と兼用しないで下さい。 【相談すること】• 万一、誤って薬剤を飲み込んだ場合は、吐かせず直ちに医師の診療を受けて下さい。 薬剤の使用により頭痛、目や喉の痛み、咳、めまい、吐気、気分が悪くなった場合などには、直ちに使用を中止し、清浄な空気の場所で安静にして,医師の診療を受けて下さい。 医師の診療を受ける際には、本剤がピレスロイド系の殺虫剤であること、および使用薬剤の名称、成分名、症状、被曝状況について出来るだけ詳細に医師へ告げて下さい。 【使用に際しての注意】• 定められた用法、用量を厳守して下さい。 間違った使い方をされた場合、生じた事故についての責任は負うことができません。 アレルギー症状やかぶれ等を起こしやすい体質の人は、薬剤に触れたり作業に従事しないで下さい。 病人、特異体質者、妊婦、乳幼児などは、薬剤の影響のない場所に移動させて下さい。 使用目的以外の環境に影響を及ぼさないために乱用を避け、養殖池、井戸、地下水等を汚染する恐れのある場所、蜜蜂、蚕(桑)、水棲生物等に被害を及ぼす恐れのある場所では使用しないで下さい。 食品、食器、おもちゃ、愛玩動物、観賞魚、飼料、寝具、衣類等は、あらかじめ他へ移すかあるいは格納し、薬剤がかからないようにして下さい。 保護具(長袖の作業衣、作業帽、保護メガネ、保護マスク、保護靴、ゴム手袋など)および使用する噴霧機は,あらかじめよく点検整備して使用して下さい。 使用に際しては、必要量だけを分取し、その都度使い切って下さい。 本剤と他の薬剤とをむやみに混合したり、加熱したりしないで下さい。 適正な粒子を得るため、濃厚少量噴霧機の選択について十分にご留意下さい。 希釈した液は不安定なので、その都度必要量を調製し、また、直射日光の下に放置しないで下さい。 アルカリ性の下では分解しやすいので、石けん液等の混入を防いで下さい。 (あたためる際は、必ず容器の栓をはずしておいて下さい)• 塗装面や合成樹脂の中では、薬剤によって侵されやすいものがあるので注意して下さい。 また、濃厚希釈液の場合は、植物にかかると枯れることがあるので注意して下さい。 大理石やしっくい、白木等に薬剤が付着した場合は変色、変形することがあるので注意して下さい。 【使用中又は使用後の注意】• 保護具を必ず着用し、身体の露出部を少なくして薬剤を浴びないようにするとともに、できるだけ吸い込まないように注意して下さい。 また、長時間の作業は避けて下さい。 なお、噴霧後は、室内の空気を外気と交換させた後入室して下さい。 薬剤の調製、散布中は喫煙、飲食をしないで下さい。 使用中又は使用後にトイレに行くときは、手や顔をよく洗ってから行って下さい。 使用した後、あるいは皮膚に付いたときは、石けんと水でよく洗い、水でうがいをして下さい。 万一、薬剤が口、目などに入ったときは、直ちに水でよく洗い流して下さい。 作業中に大量の薬剤を浴びた場合には、直ちに汚染した衣類を脱ぎ、シャワーを浴びるなどして体に付着した薬剤を洗い落とし、清潔な衣類に着替えて下さい。 また、必要に応じて、医師の診療を受けて下さい。 本剤は魚毒性が強いので屋内の水槽や屋外の河川、池等へ直接かかるような散布は避けるとともに、使用後に残った希釈液や散布に用いた器材および使用済みの空容器を洗った液は、魚等が生息している場所に捨てないで下さい。 薬剤処理に用いた機械器具や使用済容器等は石けん水でよく洗い、特に噴霧器はよく手入れをしておいて下さい。 また、小児が器材等に触れないようにするとともに洗浄廃水や使用残液は作業現場から持ち帰り、処分に当たっては自治体の条例や指導に従って処分して下さい。 河川、湖沼、下水道等の水域や、地下水を汚染する恐れのある地中には捨てないで下さい。 作業時の衣服は、他の衣服と区別して洗濯し、保護具も洗剤でよく洗って下さい。 使用済みの空容器等は、石けん水でよくすすぎ、適切に処分して下さい。 使用済空缶は鉄クズ回収業者に処理を任せ、空缶を他目的に使用しないで下さい。 【保管上の注意】• 使用後、残った薬剤原液は、ラベル表示のある元の容器に密封し、施錠できる貯蔵庫で他のものと区別して保管して下さい。 また、関係者以外触れないようにして下さい。 食品、食器、飼料等と区別し、小児の手の届かない冷暗所に保管して下さい。 【その他の注意】• 漏洩した場合には、次のように処置して下さい。 1)吸収性の媒体、例えば砂、軽石、ボロ布、オガクズなどに吸着させ、広がりを阻止して回収して下さい。 2)火災の危険が生じた場合には、すべての火元を止め、火災の誘発を防止する措置を講じて下さい。 3)漏洩した薬剤が井戸、池、河川などの水系に流入した場合には、直ちに警察又は保健所に届け出て下さい。 使用に際してのご不明な点や事故等があった場合は、製造販売元へ連絡して下さい。 【貯蔵方法】• 遮光した気密容器.

次の

【ツムツム】緑のツムとはどれのこと?

みどりいろのツム マイツム100

(1) 毎年恒例『うを徳』。 丸6年、月に二度ペースが人気が出て月一度に、、。 (2)、(3) 『猪股』、『ラチュレ』は、遠からず人気沸騰し、予約すら取りづらくなること間違いなし。 凄かった! 旨かった! でも、入れなくなったら行かない。 行くなら今のうち! (4) さしたる修業経験こそないものゝ、気楽で舌に馴染むビストロ料理を出す春日部駅前『Bien』。 箪笥店三代目主人は、料理好き、話好き。 自慢のパンは東京の名店より落ちるし、牛肉はOZ、と、食材は一流店に見劣りする。 だが、そんな、 ・「気軽で一寸だけ気の利いたビストロ」 それでよい。 月に二度は予約なしにひょっこり覗く。 (5) 『からくさ』。 笑顔の眩しい夫婦二人の細々とした商いに心和む。 (6)、(7) 王子のリアルレトロ、惣菜の『三吉』に、街場中華『福楽』。 何より建物がそゝるし、主人の人柄に癒される。 味は至って"普通"。 その"普通"、"当たり前"が、今や、「風前の灯火」。 (8) 向島の料亭御用達煎餅『いりむら』: 看板も見当たらず、外観はボロボロの駄菓子屋そのもの。 値が高騰しても紀州備長炭を使い続ける心意気。 (9) 鰻の『味治』: 家族ばかりの商い。 好きな店だが、もはや、自力で予約を取ってまで行く気なし。 (12) 館林『恵三』は某誌で紹介され、人気沸騰確実。 向島(むかふじま)『』ゟ(より)『』を經由(へ)て、 寺島町(てらしまゝち)『』に、、。 暖簾(のれん)潛(くゞ)るは大畧(およそ)五ヶ月(いつゝき)ぶり。 (つけばまへ)の客人(きやく)は老骨(それがし)唯一人(たゞひとり)。 十年前(とゝせまへ)なら某(それがし)の他(ほか)、 絶(た)へて人(ひと)の姿(すがた)を不見(みざる)が常態(つね)なれど、 かゝる(けしき)は久方(ひさかた)ぶり。 (おやかた)も當時(そのかみ)を懐舊(なつかしむ)。 しかはあれど、 "(むかふじまひやつくわゑん)"ゟ(より)歸途(かへるみちすがら)、 偶(たま)さかフラり立寄(たちよ)るとか、 近鄕近在(ちかく)の民(たみ)の午餔處(ひるめしどころ)には不能囘歸(もどりえぬ)。 「(こぼれたるみづは、もとのうつはにもどりがたし)」 (おやかた)も懐古(そのかみをなつかしむ)と云へど、 これは 黃泉(よみ)ゟ(より)死者(しにたるもの)を戻(もど)すに同等(ひとし)く、 "(いざなぎ)"の失錯(しくじり)を反復(くりかへ)すが限界(せきのやま)。 食材(たね)の 優秀(ひいで)たるは萬民(よろづのたみ)認(みと)むるところなれど、 虚飾(いらぬかざり)と 複雜怪奇(やゝこし)き 調劑(あぢつけ)を排(す)て、 " 必要最小限(いらぬものも、たすべきものもな)き" 烹調法(やりかた)は、 「 理會(わかる)者(もの)にのみ分(わ)かる。 」と云ふもの。 就中(わきても)、 "(うしほじる)"と"(むなぎ)"は 鮓店(すしや)の巓(いたゞき)。 否(いな)! 名店(なのあるみせ)の" 會席膳(くわいせきぜん)"と競(くら)べても、 俄頃(にはか)に、 精麁(よしあし)・ 雌雄(をすめす)を 難判別(わかちがた)きほど。 " 美酒佳肴(よきさけによきさかな)"の數々(かずかず)、 加旃(しかのみならず)、" 龍肝豹胎(うみやまのよきあぢ)"は常態(つね)のこと。 就中(わきても)、此度(こだみ)は"(あかえいのきも)"まで、、。 「長州萩(ながとのくにはぎ)の濵(はま)に揚(あ)がりしもの」と云ふ。 " 肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはざるほどのおどろき)"、 とまでは行(ゆ)かぬにせよ、 珍味(よにもめづらしきあぢ)なるは確實(たしか)。 (あしか)、馬鹿(うましか)、 饗應(もてなし)歟(か)? 「扨(さて)その經緯(いきさつ)は?」と問(と)はるれば、 「如此如此(かくかくしかじか)、、)」と應答(いら)ふる他(ほか)なし。 この他(ほか)、合馬(あふま)の"(たかむな)"、"(なまのぼらこ)"、 羅臼(らうす)の"(ますのすけ)"に、"(まつばがに)"までも、、。 桌上型 電腦(つくゑのうへなるエレキそろばん)が 異常動作(ふてくされ)、 亂暴狼藉(あばれまはりて、をちこちとりちらか)し、一無方策(てもつけられず)。 復舊(もとにもどす)は輒(たやす)からず。 二日(ふつか)三日(みつか)、、、五日(いつか)かけて、ほゞ復舊(もとのすがたに)。 備忘錄(おぼゑがき)も紛失(なく)し、 記憶(おぼえ)曖昧模糊(あやふや)、劵(けん)ならダフ屋(だふや)、 "菽乳(とうふ)"沽(か)ふなら坊(まち)の零細豆腐店(ちいさなとうふや)がよい。 "淮南(とうふ)" 昆布溏油(こぶだし)、""は跣(はだし)。 そいや、當家(こちら)の"(わん)"も 昆布溏油(ひろめだし)。 適度(ほどよ)く調劑(あぢつけ)が施(ほどこ)され、 この、最上(このうへな)き 淸湯(すましゞる)に 調和(よくあふ)。 濟(す)ませ、黄昏(たそがれ)の『』より辭別(いとまごひ)。 8~F5. 「豐穣(ゆたか)なる白藏(あき)の幸(さち)」を喰(く)ひそびれ、 はや、水(みづ)も凍(い)てつく 玄英(ふゆ)。 名殘(なごり)の"(むなぎ)"は"遠州 濱名湖(とほとうみはまなこ)"。 實(げ)に、 天下無雙(よにくらぶるものな)きは(こみやおやかた)の"(からすみ)": 適度(ほどよ)く熟成(う)れ、 芯(なか)は、なほ" 輭(やはらか)さ"と" 瑞々(みづみづ)しさ"を保持(たもつ)。 美味佳肴(よきあぢ)揃(ぞろ)ひなること、 「 何(いづ)れ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」のごとき景状(ありさま)なれど、 當日(このひ)の 白眉(はくび)は、 " 活天然對蝦(いけてんねんくるまえび)"用(つか)ひし"(たまごやき)"。 實言(まこと)、 「 海内一(ひのもといち)の" 雞卵炙(たまごやき)"」と斷言(よぶをはゞからず)。 (こみやおやかた)も亦(また)、 「 會心作(くわいしんさく)」と自慢(むねをはる)、靑陽(はる)はまだ先(さき)。 55kg)。 木砧(まないた)の上(うへ)の"(ほしがれひ)"は朝〆(あさじめ)。 噛(か)むほどに、心持(こゝち)よき齒觝觸(はあたり)を隨伴(ともな)ひ、 風韻(かをり)・ 旨味(うまみ)が浮騰(ほとばし)る。 就中(わきても)、(えんがは)には肝裂魄飛(きもさけたましひみにそはず)。 とは半點(いさゝか)大袈裟(おほげさ)なれど、 "(ほしがれひ)"も"(むなぎ)"も、實言(まこと)、美味(よきあぢ)。 "(うしほじる)"の美(あぢよき)は勿論(いふもさらなり)。 素材(そざい)秀逸(よし)、技倆(うで)さらに優秀(よし)。 此度(こだみ)の 米醋(よねず)と 粕醋(かすゞ)の配合比(わりあひ)は、 「六(ろくぶ):四(しぶ)」との説明(よし)。 粕醋(かすゞ)は"(やまぶき)"など三種(みくさ)の混合(まぜあはせ)。 舎利(すめし)に限定(かぎ)るなら、 試行錯誤中(みちなかば)歟(か)? 劈頭(いやさき)に、"(ぬたなます)"。 名殘(なごり)の"(ほたるいか)"を最惜(いとをし)みつゝ、 (ばかゞひ)と(くでうねぎ)を醋未醤(すみそ)にて堪能(あぢはふ)。 何(なん)でも「(ちどりす)」との説明(よし)。 (ふしみたうがらし)と(ちりめんざこ)の煮物(にもの)には、 破顏(かをほころば)さゞるべからず。 (こみやおやかた) 特有(ならでは)の優(やさ)しき味(あぢはひ)。 實(げ)に、これを 家苞(いへつと)ゝして囘(かへ)りたきところ。 未開(いまだひらかざる)"(ぬなは)":、 水晶(すいしやう)のごとき"それ"には「肝裂魄飛(きもさけたましひみひそはず)」。 近接(ちかより)て詳細(つぶさ)に觀察(み)るに、 實言(まこと)、 嬰兒(みどりご)の如(ごと)き(すがたかたち)。 備前 小島灣(びぜんこじまわん)の 鰻(むなぎ)は"(志らやき)"。 雲州 宍道湖(いづもしんじこ) の鰻(むなぎ)にも負(ま)けぬ美味(よきあぢ)。 「 今季一(こんきいち)」 と云ふも、 强(あなが)ち嘘僞(うそいつはり)にあらず。 土州(とさ)の(しまあぢ)、上總 竹岡(かみつかさたけをか)の(たちうを)、、 「 百花繚亂(いづれあやめかゝきつばた)」。 早晚(いづれ)(あやめ)は(ひと)の(つま)。 (まづまわさび)は刺躬(さしみ)の" つま"。 そも、"(ときしらず、おほめます)"なるもの、 高貴(やむごとなき)こと、鮏(さけ)の夥計(なかま)でも頂點(いたゞき)。 これを(きしうびんちやうたん)に炙(あぶりや)きて頂戴(いたゞく)。 ,(すなはち)、"(しほやき)"。 不味(あぢあし)き理(ことわり)もなし。 かくて、「 虎咽狼呑(むさぼりつく)」せば、 身・皮(みかは)の竟(をは)り。 信州篠ノ井(しなのしのゝゐ)の 山菜(さんさい)も今季(ことし)で最後(をはり)。 尾張(をはり)に駿州(するが)遠州(とほとほみ)、 駿河灣(するがわん) 遠州(とほとほみ) 櫻蝦(さくらえび)の"(てんぷら)"。 佛陀(ほとけ)の骨(ほね)に鮓(すし)の米(こめ)、 「舎利(しやり)」と喚做(よびな)す鮓業界(このせかい)。 米醋(よねず)に粕醋(あかず)、(よこゐ)に(なかの)。 水果(くだもの)、悉(ことごと)く"清露(シロップ、みつゞけ)"と做(な)す。 " 鮮(なま)"でも" 糖漿(みつゞけ)"でも、最上級品(いとよきもの)ばかり。 就中(わきても)、 琉球(りうきう)"(ピーチパイン)"は「 龍肝豹胎(まれにみるうまさ)」。 因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり): ======================================= 【 殽(さかな)】: ・"醋未醤和(すみそあへ)" 薩州出水(さつまいづみ)の"墨烏賊(すみいか)" 土州(とさ)"(しはうちく)" ・"煮付(につけ)" 江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)の"稚鰷(ちあゆ)" 信州篠ノ井(しなのしのゝゐ)の"楤芽(たらのめ)" 信州篠ノ井(しなのしのゝゐ)の"漉油(こしあぶら)" ・駿河灣(するがわん)櫻蝦(さくらえび)の"天麩羅(てんぷら)" ・(ときしらず、おほめます)"鹽燒(しほやき)" ・"刺躬(さしみ)" 淡路(あはぢ)"星王餘魚(ほしがれひ)" 蝦夷地釧路(えぞちくしろ)の"蝦夷馬糞霊螺子(えぞばふんうに)" ・"雞卵燒(たまごやき)" 【 鮓(すし)】: ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の"鮪(しび)"、中肥肉(ちゆうあぶ) ・"櫻鱒(さくらます)" ・薩州出水(さつまいづみ)の"春子鯛(かすごだひ)" ・薩州出水(さつまいづみ)の"眞鰺(まあぢ)" ・江戸灣(えどわん)の"鳥蛤(とりがひ)" ・"小鰭(こはだ)"="鯯(このしろ)"の稚魚(をさないを) ・蝦夷地(えぞち)"富山蝦(とやまえび)" ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の"鮪(しび)"、肥肉(あぶ) ・薩州出水(さつまいづみ)の"墨烏賊(すみいか)" ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の"鮪(しび)"、醬油漬(しやうゆづけ) ・越中富山(ゑつちゆうとやま)の"白蝦(しろえび)"+陸州(むつ)"蚫(あはび)" 【 椀(しるもの)】: ・"花山椒鍋(はなざんせうなべ)" 和州(やまと)"花山椒(なるはじかみのはな)" 上總竹岡(かみつかさたけをか)の"白帶魚(たちうを)" 泉州(いづみ)"水茄子(みづなす)" "防風(はますかな)? 8 備前(びぜん) 兒島灣(こぢまわん)の"(むなぎ)"などの 初物(はつもの)! "(むなぎ)"には(つりばり)までと云ふ邂逅(めぐりあはせ)。 炙(あぶりやき)に用(つか)ふ 備長炭(しろずみ)も、 " 日向備長炭(ひむかびんちやうたん)から"(きしうびんちやうたん)"に、、。 勿驚(おどろくなかれ)、 "(よこゐ)"の"(よへゑ)"が 製造中止(もはやつくらず)とのこと。 已(や)むことを得(え)ずして、 "(やまぶき)"+"(えどたんねんず)"を代替(かへとなす)。 "(たまごやき)": 天然對鰕(てんねんくるまえび)に 鰕黃(えびみそ)まで擂込(すりこ)み、 顏色(いろ)・ 味(あぢ)・ 風韻(かをり)とも 實(げ)に、 皇帝(すめらみこと)の風格(おもむき)。 豐前(ぶぜん)" 城下鰈(しろしたがれひ)"骨邊肉(あら)の"(うしほじる)"には、 肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはず)。 最貴(いとやむごとな)き"(なるはじかみのはな)"まで散見(ちらりほらり)。 そのほか、 一(ひと)つとして不味(あぢあしき)は無(なし)。 倩(つらつら)、昔日(むかし)の 記録(ふみ・ゑ)を繙(ひもと)くに、 足掛十年(あしかけとゝせ)、此度(こだみ)で 百三十二囘目(ひやくさんじふにかいめ)。 周知(あまねくしら)るゝ、掉尾(いやはて)の果實(くだもの)と云ふ形式(かたち)、 徐々(ゆるやか)に確立(なりし)ものと氣附(きづ)く。 嘗(かつ)ては、 果子(くだもの) なきこともあり、 手製(みづからつくり)し(あまみ)を提供(ふるま)ふことも、、。 (おやかた)に據(よ)らば、 「 手間(てま)でもあり、賓(まらうど)も果實(くだもの)を怡(よろこ)ぶ」と。 と云ふのは、" 菓子(くわし)"の 歴史(れきし)とは逆向(さかしま)。 ========================================= のであり、 古(ふる)く夏華(もろこし)より傳來(つたは)りし"(からくだもの)"、 その後(のち)の"(なんばんぐわし)"を含(ふく)め、 砂糖(さたう)を用(つか)ふやうに、、。 江戸初期(えどのはじめごろ)【】には、 各種(さまざま)なる" 菓子(くわし)"が紹介(しめさ)れ、 沙糖(さたう)用(つか)ふものも過半(なかばをこす)。 " 蕨餠(わらびもち)"に 不使用之(これをつかはざる)は後世(のち)も同(おな)じ。 「 海鼠(こ)の 生殖巢(こ)」故(ゆゑ)、" 海鼠子(このこ)"。 之を淹し、"醬"と爲る者也。 香美、不可言(いふべからず)。 ・・・・(中畧)・・・・ 其膓中、赤黃色有て、糊の如きの者を、" 海鼠子(このこ)"と名く。 亦佳し。 ======================================== " 海鼠子(このこ)"に三種(みくさ)あり、 i. ,(すなはち)、" 生(なま)"、" 半生(はんなま)"、" 乾(ひもの)"、これなり。 その容(かたち)から、 乾(ひもの)は"(ばちこ)"と喚做(よびな)さる。 老骨(それがし)、" 生(なま)"を最喜歡(なによりこのむ)。 肥前(ひぜん)大村(おほむら)の"(あをなまこ)"に、 能州(のと)"(あかなまこ)と云ふ競(あらそひ)。 生(なま)の 海鼠(こ)故(ゆゑ)、人(ひと)は" 生海鼠( なまこ)"と呼(よ)ぶ。 明白(あきらか)に"(あをなまこ)"が吉(よい)。 虎鯸(とらふく)の"(しらこ)": 巨大(いとおほきな)る"(しらこ)"を六等分(むつにわけ)、 振鹽(ふりじほ)をして、 備長炭(しろずみ)にて 叮嚀(ねんごろ)に炙(あぶ)る。 不味(まづ)からう道理(わけ)もなし。 "(からすみもち)"また然(しか)り。 雞(とり)が啼(な)く 東國(あづまのち)では稀(まれ)なる" 丸餈(まるもち)"。 「 越後(ゑちご)のもの」と云ふ。 " 烏魚子(からすみ)"の華美(よきあぢ)なるは勿論(いふもさらなり)。 この日(ひ)の(しるもの)は、正(まさ)に靑陽(はる)。 筑前(ちくぜん) 八女(やめ) の(たけのこ)、(うど)、(うるい)、 椒芽(きのめ)の吸口(すひくち)も爽(さは)やか。 愚按(おもふに)、『』の 椀(しるもの)は 天下無雙(よにならぶものなし)。 雲州(いづも) 宍道湖(しんじこ)の"(むなぎ)"を堪能(あぢは)ひ、 薩州(さつま) 出水(いづみ)の"(まあぢ)"に、 伯州(はうき) 境港(さかひみなと)の"(まつばがに)"、 掉尾(いやはて)は、 阿州(あは)"(いちご)" にて掉尾(しめ)。 この日(ひ)の廚(つけば)には、"肥前(ひぜん)五島(ごたう)の 垢穢(くゑ)"に、 "子籠(こゞもり)の 公魚(わかさぎ)"、雌雄(めすとをす)" 楚蟹(すはへがに)"。 はや、 "(ふきのたう)"に加(くは)へ、 "(わん)"には、 笋(たけのこ)と 麪條魚(しらうを)に 椒芽(きのめ)。 一足(ひとあぢ)早(はや)き 靑陽(はる)の宴(うたげ)。 對照的(これとはさかしま)、 名殘(なごり)の、"(がに)"に、"濱名湖(はまなこ)の(むなぎ)"。 やはり 鰻魚(むなぎ)は龝(あき)が吉(よい)。 同席(せきをおなじくせ)し 臺灣(あちら)の食通(かた)と 蟹談義(かにばなし)。 稚拙(つたな)き漢語・英語(あちらのことば)にて會話(やりとり)するに、 「(すはへがに)は 蟹身(み)、(もろこしもくづがに)は 蟹黃(かにみそ)」 と互(たが)ひに打點頭(うちうなづ)く。 結局(とゞのつまり)、 彼儕(かれら)とは日語(ひのもとのことば)が最適(よい)。 "(からすみ)二種(ふたくさ)"の内(うち)の(ひとつ)は、 「仕入値(しいれね)瓩(キロ)六萬五千圓(ろくまんごせんゑん)」。 奴僕(やつかれ)、 熟成(ひの)淺(あさ)き二萬五千圓(にまんごせんゑん)が嗜好(このみ)。 「 酒足飯飽(ごちさうさまでござつた)!」 前述(くだん)の臺灣(たいわん)よりの貴人(たふときひと)も、 同意之(これにうなづく)。 雌雄(をすめす)(すはへがに)の姿(すがた)も、、。 やはり不可缺(かゝせぬ)江州 琵琶湖(あふみびはこ)の(もろこ)。 三段腹卍(さんだんばらまんじ)、遣繰算段(やりくりさんだん)四苦八苦(しくはつく)。 無理强(むりじ)ひせし"(たまごやき)": (いも)を(す)り、(くるまえび)、(たまご)を加(くは)へ、 日向備長炭(しろずみ)にて 叮嚀(ねんごろ)に燒成(やきあぐ)るぞ尤(いと)をかし。 感謝感激(かんしやかんげきひなあられ)もなき三段腹卍(さんだんばらまんじ)。 この日(ひ)、 唸(うな)り、腕組(うでをく)み、うち點頭(うなづ)きしは"(たきあはせ)"。 (しやうごいんだいこん)、(きんときせりにんじん)、 各々(おのおの)調味(あぢつけ)して、 火候(ひいれ) 完璧(ひのうちどころなし)。 山葵(わさび)にも瞠目(めをみはる)ほか術(てだて)なし。 卸金(おろしがね)を變(か)へ、 鮫皮(さめがは)にも 無遜色(ひけをとらぬ)滑(なめ)らかさと黏(ねば)り。 同(おな)じ山葵(わさび)でこれほどまでに變貌(かはる)とは、、。 信州(しなの)ゝ(まつたけ)に、鵡川(むかは)の(しゝはむ)、 柚(ゆ)を 吸口(すひくち)とし、(わん)となす。 (まつたけ)は勿論(いふまでもなく)、 (しゝはむ)の超絶美味(くらぶるものなきうまさ)に絶句(ことばをうしなふ)。 1kg)と演述(い)ふ、 淡路(あはぢ)(まつかはがれひ)にも悶絶(たましひみにそはず)。 (さしみ)、(すし)、(しる)の遣繰(やりくり)三段活用(さんだんかつやう)。 (へそくり)、(やきぐり)、(I agree)。 小人(それがし)嗜(この)む陶藝家(やきものし)(はせがはなつ): その(さら)と(ちよく)を存分(こゝろおきな)く堪能(あぢはふ)。 蝦夷(えぞ) 釧路(くしろ)の(さまうを)、 肥後(ひご) 球磨川(くまがは)の(こもちあゆ)、 蝦夷(えぞ)(まつたけ)などの美味(よきあぢ)こそあれ、 當日(このひ)の白眉(はくび)は雲州(いづも) 宍道湖(しんじこ)の(むなぎ)。 2kg)と理想(ねがふべき)大(おほ)きさ。 活〆(いけじめ)されたるものなれど、 猶(なほ)身(み)は活(い)きて庖丁(はうちやう)に頼哩(あらが)ふ。 脆皮(もろきかは)に蕩(とろ)けんばかりの(み)。 素材(そざい)も然(さ)ることながら、 偏(ひとへ)に(こみやおやかた) の技倆(うで)に依存(よる)。 實言(まこと)、 今季一(こんきいち)の美味(うまさ)。 蝦夷(えぞ) 余市(よいち)の(あんきも)も、 時季(いまどき)には稀有(めづらし)きほどの濃密(あぢのこ)さ。 實(げ)に、 「 海(うみ)の鵞鳥肝(フォアグラ)」と號(い)ふも諾(うべ)なる哉(かな)! 今季初(はじめて)の栗(くり): 常州(ひたち) 友部(ともべ)の栗(くり)を(しぶかはに)と爲(な)す。 善哉(よき)、善哉(よき)! 野州(しもつけ)(しろいちじく)は今一(いまひとつ)。 此度(こだみ)も尋常(つね)のごとく、 山海珍味(うみやまのさち)盡(づ)くし。 4kg)(あかしだひ)は 特異(とびきり)。 やはり、 二枚漬(にまいづけ)~ 三枚漬(さんまいづけ)が適切(よい)。 のたうち、脚(て)を伸(の)ばし、師傅(おやかた)が指(ゆび)に(あらが)ふ。 その三分之一(さんぶんのいち)を、さらに三人(みたり)で再分割(わかちあ)ふ。 , 鰻九分之計(むなぎをこゝのつにわくるはかりごと)。 "(しゝがたにかぼちや)"は、 (あまながたうがらし)、(ゆふがほ)とゝもに、烹(に)て餐(くら)ふ。 近會(ちかごろ)の甜(あまみ)の强(つよ)き 唐茄(かぼちやうり)に比較(くら)べ、 淡麗(あはくきよらか)なる味(あぢはひ)。 今季一(こんきいちばん)、" 雲州宍道湖(いづもしんじこ)の(むなぎ)"。 脆皮(もろきかは)、 皮下(かはのした)の 明膠(ゼラチン)と 膩(あぶら)、 さらには、蕩(とろ)けんばかりの 身肉(み)の 三層(みかさね)。 風味(あぢかをり)と 齒觝觸(はごたへ・したざはり)も 三段活用(みかさね)。 これには、辭(ことば)を失(うしな)ふほか術(てだて)なし。 佐渡嶋(さどがしま) 鮪(しび)も、 "(ちゆうあぶ)"、"(あかみしやうゆづけ)"、"(あぶ)"と、 强力(いとつよき) 三段火箭(みかさね)。 因(ちな)みに、 "(あぶ)"は(しろずみ)以て叮嚀(ねんごろ)に炙(あぶ)る。 氷見(ひみ)は寒鰤(かんぶり)、野球(やきう)は素振(すぶ)り、 鮪(しび)の膩(あぶ)には"炙(あぶ)り"が奢(まさ)る。 漬塲(つけば)には、 五十三匁(200g)を超(こ)す、勢州 桑名(そのてはくはな)の(ほんはまぐり)。 魚市塲(うをいちば)に 文蛤(はまぐり)多(おほ)しと云へど、 (ほんはまぐり)は稀有(まれ)。 九十九里(くじふくり)~ 鹿島灘(かしまなだ)に漁(すなどら)れ、 高名(なだか)き鯗店(すしや)にて用(つか)はるゝは、(てうせんはまぐり)。 努々(ゆめゆめ)、兩者(このふたつ)を混同(あやま)つこと勿(なか)れ。 當日(このひ)の(くはなのほんはまぐり)は 大(おほ)きさも頂點(いたゞき)。 4kg)。 その 身(み)の厚(あつ)さ、一寸(いつすん)にも及(およ)ぶ。 五枚(ごまい)に下(お)ろさば、厚(あつ)さを忘(わす)れ、 雪(ゆき)よりもなほ白(しろ)きその(み)に陶然(ことばをうしなふことしばし)。 秋毫(つゆ)無議論(まよふまでもな)く、「今季一(こんきいちばん)」! 必(かならず)しも得手(えて)とせぬ(しびあぶらみ)も、 日向備長炭(しろずみ)に炙(あぶ)られ、 臼齒(おくば)どころか、舌先(したさき)に崩潰(もろくもくづれさる)。 風韻(かをり)また佳絶(すばらしきもの)。 (あら)は、 骨邊肉(あら)を(うしほじる)、 身(み)は(すし)にて餐(くら)ふ。 いづれも、至高(このうへな)き鮮(うまみ)。 「 夜(よる)の怪人(ひと)」の噂(うはさ)をして辭別(いとまをこふ)。 眼前(めのまへ)に解體(ふわけ)されゆくは、(しろしたがれひ)、 i. 倩(つらつら)この(しろしたがれひ)を吟味(うかゞ)ふに、 (えんがは)の鮮(うまみ)は格別(ことのほか)。 (きも)には朝〆(あさじめ)固有(ならでは)の 美味(よきあぢ)。 蝦夷地 余市(えぞちよいち)(あんきも)をも凌駕(しのぐ)ほど。 次(つ)いで、久方(ひさかた)ぶりの"(たまごやき)"に舌鼓(したつゞみ)。 およそ 雞卵燒(たまごやき)なるもの、 鮓店(みせ)に依(よ)り、鮓職人(ひと)に應(よ)り、多種多樣(さまざま)。 これぞ、僕(やつかれ)最喜歡(このうへなくこのむ)"(たまごやき)"!! "(うしほじる)"また然(しか)り。 愚按(やつがれおもふに)、 鮓店(すしや)の椀(わん)としては、尾根(をね)のそのまた頂點(いたゞき)。 相州 葉山(さがみのくにはやま)"(あふりいか)": 漫(みだり)に黏(ねば)る食感(はごたへ・したざはり)が特徴(しるし)なれど、 實(げ)に、心持(こゝち)良(よ)き齒觝觸(はあたり)。 平身低頭(ひたすらうやま)ふべきは、 薄(うす)く削(そ)ぐ庖丁技(はうちやうわざ)。 "肥後 天草(ひごあまくさ)の(むなぎ)"は今二(いまふた)つ。 やはり、鰻(むなぎ)餐(くら)ふなら龝(あき)が最善(よい)。 "(かすご)"・"(こはだ)"の醋〆(すじめ)は今樣(いまをときめくやりかた)。 瑞瑞(みづみづ)しく、 鮮(うまみ)口中(くちのなか)へと浮騰(ほとばし)る。 舎利(すめし)はさらに 白醋(しろず)を多(おほ)めに、、。 如何(いか)ほどの混合比(まぜかた)を最適解(いとをかし)とする歟(か)? 今(いま)なほ、 試行錯誤中(あれやこれやとこゝろみつゝあるところ)。 「 當家(うち)は白身(しろみ)が主體(おも)なれば、、」とのよし。 しかし、掉尾(いやはて)の 土瓶蒸(どびんむし)は「 旨過(うます)ぎ」。 これ、 必(かな)ずしも賞賛(ほめことば)に非(あら)ず。 子曰(あのかたのたまは)く、「 過猶不及 (すぎたるはなほおよばざるがごとし)」 車鰕(くるまえび)、 文蛤(はまぐり)、 櫻鰕(さくらえび)、 香茹(しいたけ)。 これほどまでに 濃厚(あぢこ)きものが重(かさ)なると首捻(くびゝぬ)るほかなし。 心(こゝろ)の片隅(かたすみ)に蟠(わだかまり)を抱(かゝ)へ、 當家(こちら)『』に、、。 劈頭(いやさき)の"(わん)"から、 "(あをさすのもの)"、"(ふき)"、 "(はなざんせうなべ)"、、。 漫(みだり)に"鮮(うまみ)"を足(た)すことなく、 必要最小限(ぎりぎり)の調味(あぢつけ)。 それでも猶(なほ)、 秋毫(つゆ)無所不足(たらざるところな)きは、 偏(ひとへ)に、(こみやけんいちおやかた) が技倆(うで)。 對價(しはらひ)は『』が幾分高(いくぶんたか)く、 居心地(ゐごゝち)と 綜合的滿足度(みちたりかた)を競(あらそ)ふなら、 やはり、『』に軍配(ぐんばい)。 この先(さき)、 未來永劫(とこしへ)に續(つゞ)かんことを祈念(いの)る。 4~F2. 8 時季(いまごろ)固有(ならでは)、 " 四万十川(しまんとがは)の「」 有馬煮(ありまに)"、 "(しろしたがれひ)"、 i. ,(すなはち、)豐後(ぶんご)下(ひのでじやうした) 眞子鰈(まこがれひ)。 "越中 滑川(ゑつちゆうなめりかは)(ほたるいか)"に"(ふきみそ)"、 " 山州(やましろ)の 笋(たけのこ)"は"(いひむし)"と"(やきもの)"。 しかし、この日(ひ)の白眉(とびぬけてすぐれたるもの)は、 豐後 佐賀關(ぶんごさがのせき)の(いさき)。 丸々(まる)と肥滿(こえふと)り力士(りきし)のごとき太鼓腹(たいこばら)。 膩(あぶら)に冨(と)み、鮮(うまみ)も顯著(あらは)。 これほどの 雞魚(いさき)なら、 " 鹽燒(しほやき)"に好適(よし)、" 煮附(につけ)"でもまた可以(よし)。 小人(それがし)に 虎狼之意(とらおほかめのこゝろ)有之(これあり)。 否(いな)! "(たてがみいぬ)"、"(はげわし)"、" 毛賊(こそどろ)"の類(たぐひ)。 この日(ひ)は稀有(まれにみ)るほどの 山海八珍(うみやまのさち)盡(づ)くし。 活(いけ)が、"(もろこ)"、"(はなさきがに)"、 朝〆魚(あさじめうを)として、"(あかしだひ)"、"(めぬけ)"、 さらに、"(とらふぐしらこ)"に、"(ながをかのたけのこ)"、、。 獅子(しゝ)の眼(め)掠(かす)めての竊喰(ぬすみぐひ)。 實(げ)に、" 密夫(まをとこ)"の心境(こゝち)ぞしたりける。 "(いけのもろこ)"は初(はじめて)、 茹上(うであげ)"(はなさきがに)"の旨(うま)さは勿論(いふもさらなり)。 やはり、この日(ひ)の白眉(とりわけすばらしきしな)こそ、"(めぬけ)": 巷間(ちまた)では「超高級魚(いとたかきねのうを)」と云ふ。 (めぬけのたぐひ)夥(あまた)あれど、 就中(わきても)、最貴(すぐれてたふと)きが"(あかうをだひ)"とも。 小人(それがし)、幼(いとけな)き砌(みぎり)、 赤貧如洗(あらふがごときまづしさ)なれば、 "(たひ)"も"(ふぐ)"も口(くち)にせし前例(ためし)なく、 "(さまうを)"すら膓(はらわた)なき 魚乾(ほしうを)。 偶(たま)の"差味(しびさしみ)"を除外(のぞ)くなら、 "(かぢき)"、"(まだら)"、 そして何(なに)より前述(くだん)の"(あかうをだひ)"。 すなはち、六十年前(むそとせまへ)なら「 下魚中(げうをのなか)の下魚(げうを)」。 それが、瓩(キロ)一萬三千圓(いちまんさんぜんゑん)と云ふから愕(おどろ)き。 7kg)の大(おほ)きさとのことなれば、 すなはち、沽(あたひ)、大畧(およそ)、六萬一千圓(ろくまんいつせんゑん)ぼど。 價格(ね)はともかく、その味(あぢはひ)は絶品・至高(このうへなきもの)。 陳腐(ありきたり)の譬喩(たとへ)ながら、 "(きちじ)"を その儘(まゝ)巨大化(おほきく)したるがごとき形(なり)。 幼少時(いとけなきころ)の 煮附(につけ)を想像(おもひゑがき)しに、 "(ながをかたけのこ)"とゝもに 最上(いとよ)き椀(わん)に、、。 堪(たま)りかね、 絶句(ことばをうしなふ)こと霎時(しばし)。 周圍(まはり)からも、一齊(ひとし)く、絶賛(はげしくほめたゝ)ふる聲(こゑ)。 善哉(よきかな)、善哉(よきかな)! 今朝(けさ)〆たばかりの(あかしだひ)は、 未熟成(いまだうれず)と云へど、 眞鯛(まだひ)固有(ならでは)の芳香(かをり)。 臼齒(おくば)に 噛締(かみし)むるや、 鮮(うまみ)浮騰(ほとばし)りて、四角八方(をちこち)に旋(かけめぐ)る。 心做(こゝろな)し歟(か)? 舎利(すめし)も、 不尋常(つねなら)ず嗜好(このみ)に適合(あふ)。 粒(つぶ)が立(た)ち、しかも、 舌(した)に滑(なめ)らか。 膨滿(はらふく)るゝ豫兆(きざし)もなく辭別(いとまごひ)。 其處(そこ)には、病(やまひ)癒(い)えたる友(とも)の顏(かほ)も、、。 漬塲(つけば)に鎭坐(おは)しますは、 (たらばがに)、(くぢらのうねす)に(あかしだひ)。 劈頭(いやさき)に"(くるみいりほしがき)"と"(からすみ)"。 雙方(ともに)見覺(みおぼ)えあり! 次(つ)いで、湯氣(ゆげ)の立(た)つ(かすていらたまご)。 (くれなゐ)鮮烈(あざかや)なる 車蝦(くるまえび)が顯著(めだつ)。 "(ぶりのわらやき)"には"(どんこかんろに)"。 鰤(ぶり)は 米藁(こめわら)にて炙(あぶ)り、 大蒜(おほひる)を利(き)かす。 當家(こちら)固有(ならでは)の味(あぢはひ)。 冬茹(どんこ)は半點(いさゝか)甜(あま)め歟(か)? 扨(さて)、" 鯨鯢畝須(くぢらうねす)の(わん)": 底(そこ)に 蝦薯蕷(えびいも)が沈(しづ)み、 山椒木芽(きのめ)が浮(う)く。 風味佳絶(たぐひまれなるすばらしきあぢかをり)なれど、 鯨鯢肉(くぢらにく)、 臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ひて止(や)むことなし。 (しろすみ)に炙(あぶ)りたる"(たらばがに)"、 さらには、"(ぱぷりかむうす)"と、 豫想(おもひ)に寸毫(つゆ)と違(たがは)ぬ味(あぢ)・風韻(かをり)。 卍(まんじ)、善哉(よき)、善哉(よき)! 倩(つらつら)舎利(すめし)を窺(うかゞ)ふに、 以前(まへ)に比較(くら)べて 顏色(いろ)淡(あは)し。 (よこゐ)"(よへゑ)"を減量(へら)し、 (なかの)"(しらぎく)"を増量(ふや)したとの説明(はなし)。 掉尾(いやはて)に、 今季初(このふゆはじめて)の"(いちご)": 阿州(あは)の誇(ほこ)る 草莓(いちご)の皇帝(すめらみこと)。 その名(な)に相違(たがは)で、 櫻(さくら)と 桃(もゝ)の芳香(かをり)を有(も)つ。 宴(うたげ)は、掃愁帚(さけ)を除(のぞ)き如下(つぎのごとし)。 對價(あたひ)、三萬二千四百圓也(さんまんにせんよんひやくゑんなり)。 今年(ことし)はこれを一人(ひとり)で啖(くら)ふ。 大雜把(あほまか)なる内容(うちわけ)は、(かくのごとし)。 當家(こちら)の御節料理(おせちれうり)は、 七年連續(なゝとせつゞけて)、 七度目(なゝたびめ)で最後(いやはて)。 これで永遠(とは)の離別(わかれ)。 引戸(ひきど)を開(ひら)くと、(むしろ)には 小人(それがし)一人(ひとり)。 三年前(みとせまへ)ならいざ知(し)らず、 近會(ちかごろ)では稀有(めづらし)きこと。 「 今季一(こんきいち)」、 と號(い)ふ"(まつたけ)"は、陸州(むつ) 岩手(いはて)の産(もの)。 その 優雅(みやび)この上(うへ)なき風韻(かをり)に霎時(しばし)陶醉(ゑふ)。 これが夷僚(ゑびす)に理解(わから)ぬとは疑問(くびかし)ぐる。 9kg)。 中骨(なかぼね)には 明石鯛(あかしだひ)固有(ならでは)の(こぶ)。 朝締(あさじ)めゆゑ、 鮮(うまみ)は未熟(これから)ながら、 齒觝觸(はあたり)拔群(むれよりぬきんいでたり)。 時季(とき)ならず、半點(いさゝか)脂(あぶら)稀薄(うすめ)。 今(いま)や、「 鰻(むなぎ)の皇(すめらみこと)」と賞賛(もてはや)さるゝも、 かくのごとき 淡白(あぢあは)き(もの)も、、。 愈々(いよいよ)盛(さか)りに向成(なりな)んとするは、 蝦夷(えぞ)仙鳳趾(せんぱうし)の"(まがき)"。 やはり「 眞蠔(まがき)の頂點(いたゞき)」 " (ぶり)"も蝦夷地(えぞち)より 越後(ゑちご)へと遷移(うつる)。 "(わゝさい)"と號(よびな)すは、 最小(いとちいさ)なる 白菜(はくさい)。 房總(ばうさう)の 花生(なんきんまめ)""も美味(よきあぢ)。 この日(ひ)も平生(つね)のごとく尋常(つね)のごとし。 4 染垂阿爺(しみたれおやぢ)卍(まんじ)、 「 唐墨(からすみ)」の報(しらせ)に觸(ふ)れ、俄頃(にはか)に色(いろ)めきたつ。 慌(あは)てふためき、鈔(ぜに)を工面(くめん)、 鼻息(はないき)荒(あら)く(たまのゐ)へと驀地(まつしぐら)。 その容(さま)、 將棋(しやうぎ)の(やり)かと疑(うたが)はれ、 西班牙(イスパニア)の(たけきうし)、 英國(エゲレス)(てならひ)の(とつかんこぞう)に髣髴(さもにたり)。 劈頭(いやさき)に、 加賀藕(かゞはちすのね)と 鮟鱇肝臟(あんきも)を摘(つ)まみ一安堵(ひとおちゐ)。 次(つ)いで早(はや)くも" 唐墨(からすみ)"の登場(おでまし)。 素材(そざい)そのものは『』が上(うへ)歟(か)? 芯(しん)嫩(やはらか)にして、 未完成(いまだならず)。 當家(こちら)の 烏魚子(からすみ)は、その 變化(かはりやう)を愉(たの)しむもの。 5kg)。 「今季(こんき)二番目(にばんめ)」 と、主人(あるじ)自慢(むねをは)る巨大鰻(いとおほきなるむなぎ)。 (えどうまれうはきのかばやき)、 陸州生鰻白燒(むつうまれむなぎのしらやき)。 今(いま)まさに時季(とき)を得(え)て炙(や)くのは輙(たやす)く、 「 "はしり"なら四十分(よんじつぷん)のところ、纔(わづ)かに二十分(にじつぷん)」 法國渡來(ふらんすわたり)の 黒無花果(くろいちじく)、 "(Viollette de sollies)": これまた今季初(こんきはじめて)。 未熟(いまだうれず)、 甜(あまみ)・芳香(かをり)ともに不足(いまひとつ)。 因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。 (しろあまだひ): 魚市塲(うをいちば)では" 白川(しらかは)"と喚做(よびな)すが通例(つね)。 魥(さしみ)に好適(よし)、 椀(わん)にまた佳良(よし)。 その あまりの美味(よきあぢ)に、自(おの)づと頬(ほゝ)も緩(ゆる)む。 "(かもなす)の 揚滲(あげびた)し": 尋常(つね)のことながら、 味覺(した)は怡(よろこ)び、胃腑(い)は驅(か)け巡(めぐ)る。 吾輩(われ)夢心持(ゆめごゝち)で啖之(これをく)ふ。 鰻(むなぎ)は、 宍道湖(しんじこ)に 八郎潟(はちらうがた)。 各々(おのおの)、 白炙(しらやき)、 蒲炙(かばやき)となす。 時季(とき)を得(え)て、鮮(うまみ)頂點(いたゞき)を極(きは)めんとす。 因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。 劈頭(いやさき)の小皿(こざら): 松茸(まつたけ)、 丹波黒(たんばぐろ) 菽(えだまめ)、 花生(なんきんまめ)、 水菜(みづな)を溏油(だし)に烹(に)たるもの。 「 うむ、これこれ、これッ!」、と膝(ひざ)を敲(う)つ。 「師傅(おやかた)、やはり、 東都(あづま)に稀有(まれ)なる名匠(たくみ)!」 鹽(しほ)を抑制(おさ)へ、 鰹(かつを)の馨(かをり)、昆布(こんぶ)の旨味(うまみ)を控(ひか)へ、 なほ、不足(たらざるところ)皆無(なし)。 松茸(まつたけ) 完一本(まるいつぽん)に麪麭粉(ぱんのこな)塗(まぶ)し、 炸之(これをあぶらにあ)ぐるがごときは、 徒(いたづら)に門牙(まへば)に挾(はさ)まり、 臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ふばかりの惡趣味(いまいまし)き烹調法(やりかた)。 活(いけしやこ)の 茹上(ゆであげ): 溜池(ためいけ)『』など、 「 活(い)ける蝦蛄(しやくなげ)、若(わか)き小僧(みならひ)を走(はし)ら」せ、 茹(う)でゝ、これを鮓(すし)と爲(な)す肆(みせ)も在(あ)るには存在(あり)。 當家(こちら)の小宮親方(こみやおやかた)、 能(よ)くこの技法(わざ)を自家藥籠中(みにつけ、わがものとなせ)り。 この日(ひ)の茹上(ゆであげ)は、 瞬間(またゝくうち)に沸騰水(にえたぎれるゆ)に潛(くゞ)らすもの。 これを 迅速(すばや)く冷水(ひやみづ)に取(と)り、 冷(さ)ますことあらで、その儘(まゝ)齧附(かじりつ)く。 その容(さま)、 (ひぐま)の(かはさかのぼるさけ)を貪(むさぼ)り啖(くら)ふがごとし。 眞美味也(いとうまし、 マ・ジ・ヤ・バ・ク・ネ・ッ)! 芯(しん)は半生(はんなま)にして、その肉(み)なほ活(い)くるがごとし。 " 漬込(つけこみ)"は勿論(いふまでもなく)、 尋常(なみ)の" 茹上(ゆであげ)"をも凌駕(はるかにしの)ぐ。 「 この塲(ば)での即興(おもひつき)」と、恥(は)ぢ、謙遜(へりくだ)る。 俗(よ)に言ふ「 定番(おはこ)」を重視(おもん)じつゝ、 時折(ときをり)、暴(にはか)に閃(ひらめ)き、創作(あらたなるものあみだす)。 師傅(おやかた)、徒者(たゞもの)に非(あら)ず! " 根室(ねむろ)の 秋刀魚(さんま)"。 " 指身(さしみ)"と、" 肝臟附(きもつき) 秋刀魚飯(さんまめし)"で堪能(いたゞく)。 " つくり身(み)"は、三枚(さんまい)に下(お)ろし、 骨(ほね)を去(さ)り、肉(み)に 鹿子庖丁(かのばうちやう)入(い)れたるのみ。 生薑醤油(はじかみじやうゆ)を滲(つ)け、口中(くちのなか)に抛込(はうりこ)むや、 膩(あぶら)混(ま)じりの旨味(うまみ)炸裂(はじけちる)。 その容(さま)、(ほうせんくわ)に接觸(ふ)るゝや否(いな)や、 その種子(たね)の四角八方(あちこち)に飛散(とびち)るに似(に)たり。 因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。 4 "(ほや)"に惡臭(あしきにほひ)なきことに駭(おどろ)く。 小人(それがし)、生來(うまれてよりこのかた)(ほや)は得手(えて)とせず。 その縁由(ことのよし)如何(いかに)とならば、 (ほや)固有(ならでは)の強(つよ)き臭氣(くさみ)にあり。 惡臭(あしきかをり)なき"(ほや)"は、 纔(わづ)かに、津輕(つがる)『』なる家(ところ)で口(くち)にせしのみ。 この日(ひ)の"(ほや)"はそれに匹敵(ならぶ)。 師傅(おやかた)曰(いへら)く「 鮮度(あたらしさ)の相違(たがひ)」 "琵琶湖(びはこ) 稚鮎(ちあゆ) 魚凍(ゼリよせ)"の、 尋常(つね)とは異(こと)なる烹調法(たつき)を訝(いぶか)る。 小宮親方(こみやおやかた)應答(いらへ)て曰(いは)く、 「 因循守舊(マニエリスム)を打破(うちやぶ)らんがため」 " 蝦夷昆布森(えぞこんぶもり)の蠔(かき)"にも愕(おどろ)く。 「 これが眞夏(まなつ)の眞蠔(まがき)とは、、、」 と、絶句(ことばをうしなふ)こと霎時(しばし)。 "蝦夷 根室(えぞねむろ)の 新秋刀魚(しんさんま)"もまた同樣(しかり)。 この大(おほ)きさにして、この脂肪(あぶら)。 その美味(あぢ)、口(くち)にせずとも、一目瞭然(ひとめであきらか)。 惜(を)しむらくは、肉(み)が薄(うす)く、 脆皮(もろきかは)ならざること。 " 鮏卵(さけのはらこ)"は 生(なま)。 その塲(ば)で煮切(にきり)に潛(くゞ)らせ、即坐(すぐさま)鮓(すし)となす。 これを臼齒(おくば)に噛(か)みしむるや、 旨味(うまみ)口中(くちのなか)へと浮騰(ほとばし)る。 因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。 2kg)。 1kg)。 前囘(まへ)の" 兒島灣(こぢまわん)"が半點(いさゝか)上(うへ)歟(か)? 此度(こだみ)うち點頭(うなづ)きしは、" 小蕪菁(こかぶら)"への火候(ひいれ)。 そもそも、 蕪菁(かぶら)なるもの、 蘿蔔(すゞしろ)とは對照的(ことな)り、 火(ひ)の通(とほ)り易(やす)きもの。 懐石(くわいせき)・ 割烹(かつぱう)の 蕪菁(かぶら)は過柔(やはらかすぎ)。 愚按(やつがれおもふに)、 和食(わしよく)なら 糠漬(ぬかづ)け、 洋食(やうしよく)なら 煸炒(ソテ)が吉(よし)。 烹之(これをに)るは蕪菁(かぶら)の個性(もちあぢ)を毀損(そこな)ふばかり。 これに膝(ひざ)を叩(たゝ)き、その情由(わけ)を薀(たづ)ぬれば、 「かゝる 火候(ひいれ)を着想(ひらめ)きし契機(きつかけ)、 修業先(わざをならひおぼえしさき)や他家(よそ)に非(あら)ず。 」 「寧(むし)ろ、 その濫觴(みなもと)、法國菜(ふれんすれうり)にあり。 」 實(げ)にも! 當家(こちら)で一際(ひときは)名高(なだか)き" 鰻白燒(むなぎ志らやき)": 脆皮(かはサクサクにもろく)、 その 身(み)を蕩(とろ)けんばかりに炙(や)くは唯一無二(よそになきもの)。 これもまた、 法國菜(ふれんすれうり)の秘儀(ひめわざ): "(ポアレ)"こそ 手本(てほん)・ 嚆矢(さきがけ)。 能(よ)くこれに倣(なら)ひ、やがて自家藥籠中(みづからのものと)したるは、 嘗(かつ)て、小人(それがし)に物語(ものがたり)せし記憶(おぼえ)あり。 因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。 この日(ひ)の溏油(だし、)は、 (あら)の骨邊肉(あら)より抽出(ひきいだ)せしもの。 これを制作(つく)るには、 西洋時辰儀(せいやうどけい)にして 八時間(はちじかん)要(かゝ)ると云ふ。 " 魚凍(にこゞり)"と" 紅椒(パプリカ)ムウス"が二層(ふたへにをりか)さなり、 實言(まこと)、口(くち)に美味(あまし)! しかし、この日(ひ)の白眉(きはめつき)は、 "備州(きびのくに) 兒島灣(こじまわん)の 鰻(むなぎ)"。 やはり、當家(こちら)、 " 蒲燒(かばやき)"ではなく、" 白燒(志らやき)"が吉(よし)。 首級(みしるし)もまた 頗(すこぶ)る味覺(した)に旨(あま)く、 貪之(これをむさぼ)りて飽(あ)くことなし。 小柱(こばしら)もまた、その手(て)は 桑名(くはな)の大(おほばかゞひ)。 因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。 實言(まこと)、「飯足酒飽(ごちさうさまにござる)!」 上總國(かずさのくに) 大原(おほはら)。 當地(このち)で 蚫(あはび)と云ふと、 鮓店(すしや)が眼精(まなこ)の色(いろ)を變(か)ふる"(まだかあはび)"。 この日(ひ)は大(おほ)きな"(くろあはび)"。 "(まだかあはび)"ともまた異(こと)なる風韻(かをり)。 嫩(やはらか)ながらも、適度(ほどよ)き齒應(はごた)へを殘(のこ)す。 " たまげ茄子(なすび)"が絶味(このうへなきうまさ)には絶句(ことばをうしなふ)。 扨(さて)、この日(ひ)の白眉(はくび)"(ほしがれひ)"。 1kg)と云ふ大物(おほもの)。 鰈(かれひ)は、大(おほきなるもの)能(よ)く小(ちいさなるもの)を制(せい)す。 身(み)佳味(よし)、縁側(えんがは)さらに絶味(よし)。 播州(はりまのくに)三田(さんだ)にも負(ま)けぬ 羽州(では)の 蓴菜(ぬなは)。 その顏色(いろ)は翡翠(ひすい)かと疑(うたが)はれ、 その舌觸(したざは)りの滑(なめ)らかさたるや、 「 極樂淨土(ごくらくじやうど)の果凍(にこゞり)もかくやあらん」と思(おも)ふほど。 季(とき)至(いた)らず、色(いろ)なほ淡(あは)き" 西瓜(すいか)"。 因州(いなば)・伯州(はうき)の山海(うみやま)の僥倖(さち)を用(つか)ひ、 これを割烹(さきてに)るを活業(なりはひ)とする方(かた)よりの音物(おくりもの)。 訝(いぶか)りつゝ口(くち)にするや、驚異的(おどろくばかり)の甜(あまさ)。 これ、獸(けだもの)が世(よ)の風習(ならひ)。 この晝飧(ひる)の小人(それがし)は正(まさ)しく"(はげわし)"。 " (あら)"、"(ぶだうえび)"、" 宍道湖(しんじこ)の 鰻(むなぎ)"、 と、前日(まへのひ)の 殘留物(のこりもの)には、 美味(うまきもの)・珍味(めづらしきも能)の數々(かずかず)。 最初(いやさき)に" 毛蟹(けがに)白瓜卷(しろうりまき)"。 黄身酢(きみず)の圓(まろ)やかさに駭(おどろ)く。 千鳥酢(ちどりす)は出汁(だし)にて割(わ)るりたるものと云ふ。 尋常(つね)のことながら、優(やさ)しき味(あぢはひ)。 當家(こちら)の玄關先(げんくわんさき)に 山椒(さんせう)の木(き)あり。 この日(ひ)、 木の芽(きのめ)はこの木(き)より摘(つ)み、 潮汁(うしほじる)の 吸口(すひくち)としてあしらふ。 若(わか)く嫋(たを)やかなる風韻(かをり)。 築地市場(つきぢ)には稀有(まれ)なる" (ぶだうえび)": 標準和名(たゞしくは)、" (ひごろもえび)"。 本來(もともと)の"(ぶだうえび)"は、 駿河灣(するがわん)にて 極稀(きはめてまれ)に漁(すなど)らるゝものと云ふ。 "(ぼたんえび)"同樣(と、おなじく)、 "踊(をど)り"では甜(あまさ)を難感(わかりがた)く、 「 死(し)ゝて權(しばらく)置(お)き、膠粘(ねば)るほどが吉(よい)」。 慥(たしか)に、味(あぢ)は"(ぼたんえび)"に似(に)る。 疑念(うたがひ)もなく、今季一(こんきいち)。 「 煮(に)る」、「 炙(や)く」が多(おほ)き"(あかむつ)": 鮓種(すしだね)としてもなかなかのもの。 豫想(おもひ)に秋毫(つゆ)と相違(たがは)ぬは、 " 賀茂茄子(かもなす)"、" 琵琶湖(びはこ) 稚鮎(ちあゆ)"の美味(うまさ)。 最後(いやはて)に、 四種(よくさ)にも及(およ)ぶ" 水果(みづぐわし)"; 佐藤錦(さたうにしき)、日向(ひむか) 芒果(まんご)、 臺灣茘枝(たいわんれいし)、 冰酪(あいすくりん)、これなり。 野獸肉(のゝけだものがしゝ)も加(くは)へ、 山幸(やまさち)を存分(こゝろおきな)く堪能(あぢはひつくしぬ)。 楤芽(たらのめ)、 (こしあぶら)、 屈(こゞみ)、 蕨(わらび)、 (くろかは)、 蕗薹(ふきのたう)、 蕗(ふき)、 (ぎやうじやにんにく)、 (のびる)、 山獨活(やまうど)、(やまうこぎ)、(にりんさう)、 藤花(ふじのはな)、 (はないかだ)、 花山椒(はなざんせう)、 蒲公英(たんぽゝ)、などなど。 東都(えど)に囘(かへ)りて二日後(ふつかのゝち)の宴會(うたげ)。 この日(ひ)もまた山菜(さんさい)塗(まみ)れ。 花山椒(はなざんせう)に加(くは)へ、 (こしあぶら)、(かたかご)、(ずいき)、(おほばぎぼし)。 季(とき)を得(え)たる魚介(うを・かひ)として、 銀寶(ぎんぱう)、 城下鰈(しろしたがれひ)、 初鰹(はつがつを)、 稚鮎(ちあゆ)、 鳥貝(とりがひ)、その手(て)は鹿島(かしま)の 燒蛤(やきはまぐり)。 因(ちな)みにこの蛤(はまぐり)は(てうせんはまぐり)。 銀寶(ぎんぱう)への 火候(ひいれ)は完璧(ひとつとしてあやまちなし)。 加熱(ねつがくは)ゝり、(こらあげんせんゐ)が(ぜらちん)と化(な)り、 臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ふことなく、咽喉(のみど)に踊(をど)る。 星鳗(あなご)に勝(まさ)るとも劣(おと)らぬ美味(よきあぢ)。 鳥貝(とりがひ)と 城下鰈(しろしたがれひ)の 肝臟(きも)と云ふ、 駭(おどろ)くべき搭配(くみあはせ)。 實(げ)に、「 爲虎傅翼(とらにつばさをそふるがごとし)」。 折(をり)しも、張替(はりかへ)たばかりの疉(たゝみ)に心躍(こゝろをど)らせ、 隅(すみ)の席(むしろ)に一安堵(ひとおちゐ)。 "(つかはらしらこだけ)"、 "琵琶湖(びはこ)、子持(こも)ち (ほんもろこ)、 四万十川(しまんとがは)の (ごり、=あふみよしのぼり)"、 " 滑川螢烏賊(なめりかはほたるいか)"、" 駿河灣櫻蝦(するがわんさくらえび)"など。 體長(みのたけ)、三寸五分(さんずんごぶ)を超(こ)え、 四寸(よんすん)に垂(なんな)んとする"(ほんもろこ)": 備長炭(しろずみ)に炙(あぶ)り、その儘(まゝ)貪(むさぼ)り餐(くら)ふ。 實言(まこと)、美味也(よきあぢなり)! " 塚原白子筍(つかはらしらこだけ)"は勿論(いふもさらなり)。 " 若筍煮椀(わかたけにわん)"美味(よし)、 " 筍豆腐(たけのこどうふ)"を木芽未醤(きのめみそ)にて啖(くら)ふもまた吉(よし)。 「筍(たけのこ)では、" 合馬(あふま)"と雙璧(ふたつにならぶ)」との定評(はなし)。 巧妙(たくみ)に油炸(あ)げられたる" 螢烏賊(ほたるいか)"に" 櫻蝦(さくらえび)": " 螢烏賊(ほたるいか)"の天麩羅(てんぷら)は初(はじめて)。 火候(ひいれ)絶妙(ほどよ)く、 膓(わた) もまた複雜玄妙(ふかくいつくしみあるあぢはひ)。 勿論(いはずもがな)の" 櫻蝦(さくらえび)": " 櫻蝦(さくらえび)"天麩羅(あ)ぐる舖(みせ)夥(あまた)あれど、 寸毫(つゆ) 雞卵(かひご)に頼(たよ)らで、 最上質(いとよ)き麪粉(うどんこ)を薄衣(うすごろも)に用(つか)ふ。 尋常(つね)のごとく、 頗(すこぶ)る美味(うま)き"薩州 出水(さつしういづみ)の 眞鰺(まあぢ)": 瓩(きろ)七千圓(なゝせんゑん)と云ふ。 その價格(ね)、野生鰻(てんねんむなぎ)に肉薄(せま)る威勢(いきほひ)。 天降川(あもりがは)の 天然物(てんねんもの)は 唐揚(からあげ)、 (はつとり)のものは 椀(わん)と 肝臟刺身(きもさし)に、、。 その他(ほか)、 (びはひがい)、 鳴門鯛(なるとだひ)、 明石章魚(あかしだこ)、 箱館(はこだて)の 蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)、銚子(てうし)の 梶木(かぢき)、 陸中(りくちゆう) 鰆(さはら)、山城(やましろ) 菜花(なばな)などなど。 小宮親方(こみやおやかた)歎息(ためいきつ)きて云ふやう: 「 隈(くま)なく魚河岸(かし)一帶(あたり)を探索(さがしもと)むれど、 琵琶湖(びはこ)の" (もろこ)"、" 稚鮎(ちあゆ)"、 絶(た)えてその姿(すがた)を見(み)ず!」 「已(や)むことを得(え)ずして、この" (ひがい)"なる魚(うを)に、、」 との辯明(はなし)。 勿驚(おどろくなかれ)、 吾儕(わなみ)のみならず、親方(おやかた)も初(はじめて)となむ。 今(いま)は昔(むかし)、 明治 天皇(めいじのすめらみこと)、これを大(おほ)いに賞賛(ほめたゝ)へたまひ、 後世(のち)、 " "に" 鰉"なる字(じ)を當(あ)てるやうになりき、との故事(はなし)あり。 これを炭火(すみび)に炙(あぶ)りて" 鹽燒(しほや)き"となす。 香魚(あゆ)固有(ならでは)の芳香(かぐはしきかをり)こそなけれ、 その 身(み)の肌理細(きめこまか)さ、嫋(たを)やかさたるや、 若年魚(わかあゆ)に肉薄(せま)るほど。 但(たゞ)し、骨(ほね)の硬(かた)さは" (かじか)"竝(なみ)。 捌(さば)くや、 (なるとこぶ)も顯著(あらは)。 皮(かは)と皮下(かはした)の旨味(うまみ)に驚愕(おどろく)。 扨(さて)、" 水魚(すつぽん)": " 油炸(からあげ)"好吃(よし)、" 肝臟刺身(きもさし)"美味(よし)、 " 椀(わん)"また佳味(よし)。 その味(あぢはひ)、先頃(さきごろ)訪問(たづ)ねし『』より上(うへ)か? 椀(わん)は、平生(つね)のごとく、 調味料(あぢつけ)は、纔(わづ)かに、 淡口醤油(うすくち)と 酒(さけ)のみ。 昆布(こんぶ)に頼(たよ)らで、 生薑(はじかみ)の佐(たす)けを受(う)けず。 裙邊(えんぺら)に、陶然(われをわす)ること霎時(しばし)。 久方(ひさかた)ぶりの" 雞卵燒(たまごやき)": 燒(や)き方(かた)は 、毎囘(そのつど)隱々(かすか)に搖(ゆ)らぎ、 その搖(ゆ)れを心持(こゝち)よきものとして堪能(あぢはふ)。 この日(ひ)は、 瑞々(みづみづ)しく、柔(やは)らかく、舌(した)に滑(なめ)らか。 菜(れうり)の内容(うちわけ)は冩眞(ゑ)のごとし。 掃愁帚(さけ)を含(ふく)め、一萬四千圓也(いちまんよんせんゑんなり)。 今春(ことし)より、 柳刄(やなぎば)は、 堺(さかい)の鍛冶名匠(かじのたくみ)の手(て)になる、 (ほんやき)(きやうめんしあ)げとなる。 掛軸(かけじく)を髣髴(おもは)す桐筥(きりばこ)入(い)り。 5kg)。 仲卸(なかおろし)より、態々(わざわざ)" 星鰈(ほしがれひ)"を避(さ)け、 選(え)りすぐりたるほどの逸品(よきしな)。 刺身(さしみ)、 潮汁(うしほじる)、 鮓(すし)、何(いづ)れも、 筆舌(ふでやことば)で(つ)くせぬ美味(うま)さ。 9kg)ばかりが最善(よい)」 とは云ふものゝ、この日(ひ)の" 眞鯛(まだひ)"は別格(とびきり)。 3kg)の旨(うま)さは勿論(いふもさらなり)。 備長炭(すみ)に 炙(あぶ)りて甜(あま)さを堪能(あぢは)ひ、 茹(ゆ)でゝ蟹内臟(かにみそ)と和(あ)へ絶味(すばらしきあぢ)に陶然(ゑふ)。 " 鰆(さはら)"の藁燒(わらやき): 尋常(つね)に倣(なら)ひて、 大蒜醤油(おほひるじやうゆ)を塗(まぶ)す。 めじ、 鰤(ぶり)、 鰹(かつを)に優(まさ るとも劣(おと)らぬ味(あぢはひ)。 この日の舎利は 米醋(よねず)。 活車蝦(いきくるまえび)の 雞卵焼(たまごやき)、美味(よきあぢ)なり。 【2016-10-01追記】: 昆布(こんぶ)が 利尻(りしり)から 羅臼(らうす)に、、。 【2016-07-30追記】: 竹岡沖(たけおかおき) 銀寶(ぎんぱう)、 桑名(くはな)の 蜆(しゞみ)など、、。 【2016-04-10追記】: 走(はし)りの 花山椒(はなざんせう)を愉(たの)しむ。 白身(しろみ)も 鮪(しび)も、 眞鰺(あぢ)、 鶏卵焼(たまごやき)も、 『』、『』を凌駕(はるかにしのぐ)。 此度(こだみ)は 新規(あらた)なる試行(こゝろみ)あり。 1) 鮟鱇肝(あんきも)を 燻(いぶ)す。 一(ひと)つは、 魚(うを)炙(あぶ)るに、瓦斯(がす)に頼(たよ)ること。 今一(いまひと)つは、 舎利(しやり)。 已(すで)に、 舎利(すめし)の 大(おほ)きさ、 水分量(みづけ)は改(あらた)まり、 此度(こだみ)は、 米醋(よねず)より 紅醋(あかず)へと變更(きりかへ)。 口(くち)に含(ふく)むや、 鳳仙花(ほうせんくわ)のごとくに四散(ほどけち)り、 瞬(またゝ)く中(うち)に臼齒(おくば)より吭(のみど)に到達(いた)る。 瓦斯(がす)より 備長炭(びんちやうたん)への轉換(きりかへ)は、 來年(きたるとし)の早々(はじめ)。 東道(あるじ)曰(いへら)く、「 馨(かをり)の佳(よ)さは、炭(すみ)ならでは。 」、 「吾(われ)、漸(やうや)う、 瓦斯(がす)の限界(かぎり)を曉得(さと)れり。 」 " 鹽(しほ) ぽんす"に" 橙鹽(だいだいじほ)"も新(あら)たなる試行(こゝろみ)。 鹽(しほ)は法蘭西(ふらんす)ゲランド産(さん)。 とまれ、 若(も)し、二(ふた)つの弱點(よはみ)解消(きえう)さば、 忽地(たちまち)、理想(のぞむべ)き姿(すがた)の舗(みせ)となるべし。 【2015-09-28追記】: 龜戸(かめゐど)の 御大盡(おだいじん)が希望(のぞみ)に從(したが)ひ、 この度(たび)、新設(あらたにまうけ)し" 御大盡(おだいじん) コース"。 " 丹州(たんば)の 松茸(まつたけ)"など、 價格(ね)の張(は)るものがザクザク。 無縁(ゆかりなし)とは云へ、 金二萬圓也(きんにまんゑんなり)。 最初(いやさき)は" 茸盡(きのこづ) くし": 松茸(まつたけ)、 本占地(しめぢ)、 黒茸(くろたけ)、 舞茸(まひたけ)。 徒(いたづら)に出汁(だし)の勝(か)つことのなき佳味(よきあぢ)。 丹州(たんば)の松茸(まつたけ)は纔(わづ)かばかりを味見(あぢみ)。 旨味(うまみ)彈(はじ)くる蝦夷 利尻(えぞりしり) 鮃(ひらめ)の 縁側(えんがは)。 羽州 八郎潟(ではゝちらうがた)の 鰻(むなぎ)は四百五十匁。 この日(ひ)は、 敢(あ)へて齒應(はごた)へを殘(のこ)す烹調法(やりかた)。 噛(か)むほどに、美味(うまみ)溢れて、口中(くちのなか)へど浮騰(ほとばし)る。 薩州(さつま) 出水(いづみ)の 眞鰺(あぢ)も、この日(ひ)は 酢〆(すじめ)。 『』、かつて四谷(よつや)に在(あ)りし『 纏』を彷彿(おもはす)。 倩(つらつら) 鰻(むなぎ)、 眞鰺(あぢ)を瞻(み)るに、小宮親方(おやかた)、 近來(ちかごろ)は、無人境(ひとなきところ)を獨行(ゆ)くがごとし。 ---------------------------------- 【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機 【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1. 8~2. 0 【2015-03-14追記】: 近會(ちかごろ)、 俄頃(にはか)に若(わか)き客(きやく)が増(ふ)へ、 剩(あまッ)さへ、異人客(いじんきやく)までと云ふ形勢(ありさま)。 古(ふる)くからの客(きやく)、地元(ぢもと)の民(たみ)が行(ゆ)きづらくなるは、 致(いた)し方(かた)のなきところか、、、。 ---------------------------------- 【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機 【鏡頭】:... 0 【2013-09-20追記】: 鯵ヶ澤(あぢがさは)の[ 魚荒](あら)、 大原 目高鰒(まだかあはび)、などなど。 [ 魚荒](あら)は久繪(くゑ)にあらず。 姿形 すがた は 鱸(すゞき)に似(に)、口味(あぢ)は 眞鯛(まだひ)を髣髴(おもはす)。 0 By Sony 【2013-05-25追記】: " 茄子(なす)の揚(あ)げ浸(びた)し"、" 淡竹(はちく)に水菜(みづな)"など。 鰻(むなぎ)は 琵琶湖(びはこ)。 " 城下鰈(しろしたがれひ)"は 指身(さしみ)、 潮汁、 握 りの三種(みくさ)。 〆は" 能登大納言(のとだいなごん)のアイス"。 ------------------------------------- 【照相機】:富士胶片(ふじふぃるむ) X-E1無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれすかめら) 【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena) 紅MC Pancolar 1. 4 【2013-03-10追記】: 此度 こだみ は琵琶湖(びはこ)の""、"(もろこ)"など。 頗(すこぶ)る美味(びみ)也。 名殘(なご)りの" 鰒(ふぐ)"に"炙(あぶ)り めじ"また佳(よ)し。 目新(めあたら)しきは岩手(いはて)の" 雁喰豆(がんくひまめ)"。 ------------------------------------- 【照相機】:富士胶片(ふじふぃるむ) X-E1無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれすかめら) 【鏡頭】 :Kern Macro Switar 1. 脂(あぶら)こそ少(すく)なめなれど舌觸(したざは)り頗(すこぶ)る滑(なめ)らか。 古來(いにしへより)、 江戸前海(えどまへうみ)の鰻(むなぎ)は 夏を盛りとす。 善哉(よきかな)、善哉(よきかな)! 【2012-06-23追記】: 【2012-06-10追記】: この日は京師(みやこ)より東下(あづまくだ)りせし(おやかた)と鉢合せ。 小宮(こみや)親方(おやかた)を交(まじ)へ四方山話(よもやまばなし)に花(はな)。 鰻(むなぎ)のほどよき大(おほ)きさ、海鰻(はむ)の産地(さんち)は勿論(いふにおよばず)、 師匠(おやかた)生(む)まれし能登(のと)の魚(うを)などとゞまるところを知らず。 【2012-05-12追記】: 喜界嶋(きかいじま) 大名笋(だいみやうだけ)、 琵琶湖 鰻二百十匁、 石川芋(いしかはいも)、明石鯛(あかしだひ)、 江戸灣(えどわん)の 鳥貝、 四万十川(しまんとがは)の 鮴(ごり)、 大和丸茄子(やまとまるなす)など。 出水(いづみ)と 淡路(あはぢ)の眞鰺(まあぢ)比(くら)べも、、。 【2012-05-04追記】: 此度(こだみ)は、 遠州濱名湖(ゑんしうはまなこ)の 鰻(むなぎ)、百六十匁、 豐州(ほうしう) 城下鰈(しろしたがれい)五百卅三匁(ごひやくさんじふさんもんめ)など。 江戸灣(えどわん)の穴子(あなご)に 大車蝦(おほくるまえび)はひさかたぶりの品。 紅椒(ぱぷりか)ムウスに咖啡(こおふィ)葛切(くづき)りは鮓屋らしからぬ品。 【2012-04-21追記】: 今季(こんき)の 初鰻(はつむなぎ)は、備州 兒嶋湖(びしうこじまこ)。 脂(あぶら)も少なく、龝(あき)盛りの鰻(むなぎ)とは雲壌(うんじやう)の相違(たがひ)。 しかはあれど、これぞ正眞正銘(まがふかたなき)天然物(てんねんもの)。 この日(ひ)の白眉(はくび)は" コンソメ"に" 蕨餠(わらびもち)"。 "コンソメ"は 牛脛肉に 芹菜(せろり)、 洋葱、 迷迭香(ろーずまり)など、 菜蔬(あをもの)・香艸、 胡椒、 百里香(たいむ)など香辛料(かうしんれう)を加へ、 さらに 鳴門鯛(なるとだひ)骨邊肉(あら)の 潮汁(うしほじる)を加へたる逸品(しな)。 居多(あまた)洋食屋ですら尻込みする" コンソメ"に挑(いど)むとは見上げたもの。 最初(いやさき)の" コンソメ"より 初鰻(はつむなぎ)、 握(にぎ)りを經(へ)て、 最後(いやはて)は 本蕨粉(ほんわらびこ)にて製(こしら)へたる"蕨餠(わらびもち)": 上にかゝるは 丹波黒豆の 黄粉(きなこ)にて、その旨さ、勿論(いふもさら)なり。 【2012-04-07追記】: この日の目當(めあ)ては今季初 塚原(つかはら)の" 白子筍(しらこだけ)"に、 " 備州(びしう) 白小豆(しろあづき)"の" 水羊羹(みづやうかん)"。 偶(たまさ)か、朝〆(あさじめ)したる鳥羽(とば)の" 星鰈(ほしがれひ)"と、 これまた今季初、肥州 八代(ひしうやつしろ)の" 鼈(すつぽん)"も、、。 倩(つらつら)筍(たけのこ)の優劣(いうれつ)を考察(かんがみ)るに、 塚原(つかはら)の" 白子筍(しらこだけ)"は、 " 長岡京(ながおかきやう)"の筍(たけのこ)と比(くら)べても、一枚上手なるべし。 寸毫(つゆ)えぐみや癖の類(たぐひ)あらで、寔(まこと)、筍の頂點(いたゞき)。 鳥羽(とば)の" 星鰈(ほしがれひ)": 縁側(えんがは)もさることながら、 潮汁(うしほじる)の出來榮えが類稀(たぐひまれ)。 半月前(はんつきまへ)の 明石鯛(あかしだひ)を凌(しの)ぎ、 一月前(ひとつきまへ)の" 城下鰈(しろしたがれひ)"に竝(なら)ぶほどの美味(うまきあぢ)。 惜(を)しむらくは、身(み)頗(すこぶ)る硬(かた)く大味(おほあぢ)なること。 "薩州 出水(さつしういづみ) 眞鰺"の甘美(うま)さは勿論(いふもさら)なり。 扨(さて)、" 備州 白小豆(しろあづき)"の" 水羊羹"に" 黒豆 あいすくりん": 實(げ)に、鮨屋(すしや)で供(いだ)すものとも思(おも)はれぬ出來(でき)。 就中(わきても)、" あいすくりん"は居多(あまた) 卵黄と ヴァニラビンズが光る一品。 【2012-03-25追記】: 此度 こだみ は、 長岡京(ながおかきやう)の 筍、 稚鮎、 明石鯛など。 閖上(ゆりあげ)の赤貝 あかゞひ は『』に續き、大地震(おほなゐ)の後二度目。 明石鯛(あかしだひ)は子持ちにて、やはり龝 あき の 紅葉鯛(もみぢだひ)に分。 待ち遠しきは 塚原(つかはら)の" 白子筍(しらこだけ)"。 牛乳(うしのちゝ)を 吉野葛にて固(かた)めたる" 牛乳豆腐(ぎうにゆうどうふ)"が、 この日の白眉(はくび)。 生の米粒(こめつぶ)のごとき塊(かたまり)を訝(いぶか)しく思ひ、これを問(と)ふと、 「自(みづか)ら編出(あみいだ)せしものにて、 葛(くづ)の粒(つぶ)にてござる」と。 【2012-03-11追記】: 銀寶(ぎんぽう)、 山獨活(やまうど)、 筍、走りの明石 櫻鯛(さくらだひ)。 それに、琵琶湖(びわこ)の" もろこ"。 潮汁(うしほじる)は時季(じき)も向去(さりなん)とする 鮃 ひらめ。 小振(こぶ)りなれど、口味(あぢ)はなかなかのもの。 【2012-02-19追記】: 漸(やうや)う生業(なりはひ)からも解放(ときはなた)れ、この日久々の『』。 最初(いやさき)は椀(わん)。 雲子(くもこ)、 菜花(なのはな)、 蘿蔔(すゞしろ)、吸口(すひくち)は柚子。 " 淀蘿蔔(よどだいこん)"と號(よびな)す 聖護院蘿蔔(しやうごいんだいこん)の一つ。 とは云へ、この日(ひ)の白眉(はくび)は" 城下鰈(しろしたがれひ)"。 身(み)は二百四十匁(にひやくよんじふもんめ、900g)と聊(いさゝ)か小振(こぶ)り。 この日の旦(あさ)活け〆にしたばかりなれば、旨味(うまみ)乏(とも)しきは明白(あきらか)。 さらば、亭主(あるじ)の捌(さば)く姿(すがた)を虚(うつ)ろに眺(なが)む。 刺身(さしみ)を箸(はし)に取(と)り、ゆるりこれを吟味(あぢは)へど、 冬の 青森鮃(あをもりひらめ)、龝(あき)の 明石鯛(あかしだひ)を仰(あふ)ぎ見、 星鰈(ほしがれひ)、否、高名(なだか)き鮨店(すしや)の 眞子鰈(まこがれひ)にも劣る。 時季(じき)に外れ、身の締まり、香氣(かをり)、旨味(うまみ)ともに今一つ。 " 城下鰈(しろしたがれひ)"と云ふは遍(あまね)く知(し)らるゝごとく、 豐後(ぶんご)は 城下海岸(しろしたのはま)にて漁(すなど)らるゝ眞子鰈(まこがれひ)。 まともに口(くち)にするはこれが初(はじめて)。 求むるまでもなく、阿吽(あうん)の呼吸(いき)にて供(いださ)れし" 潮汁(うしほじる)"。 上面(おもて)には珠(たま)のごとき油脂(あぶら)が浮(う)かみ、 湯氣(ゆげ)とゝもに、芳香(かぐはしきかをり)四方(よも)に漂(たゞよ)ふ。 これを口に含(ふく)むに、 ほどよき鹽加減(しほかげん)と無限(かぎりな)き旨味、 味覺(した)を搖(ゆ)さぶり、鼻竅(はな)を穿(うが)ち、吭(のんど)を貫(つらぬ)く。 想定外(おもひのほか)に柔(やは)らかく、舌(した)に滑(なめ)らか。 これを噛み締むれば、奧齒(おくば)に抗(あらが)ふ方策(すべ)もなく蕩(とろ)け、 骨(ほね)の周圍(まはり)より旨味(うまみ)滾々(こんこん)と溢(あふ)れ出(い)づ。 これを 舐(ねぶ)り、慈(いつく)しみ、最後(いやはて)の一滴(ひとしづく)まで飮み干す。 およそ、 鮃(ひらめ)の骨邊肉(あら)なるは、 朝(あさ)〆なれば硬(かた)く、舌に逆らひ、:旨味(うまみ)乏(とも)しきもの。 日を置くに從(したが)ひ旨味(うまみ)を増し、味はひを深(ふか)むるが通例(つね)。 眞鯛(まだひ)また然(しか)り。 俗(よ)に鮃(ひらめ)は生で啖(くら)ふがよく、鰈(かれひ)は煮るが何よりと云ふ。 とは云へ、大(おほ)きなる眞子鰈(まこがれひ)は鮃(ひらめ)に似(に)て、 煮ては舌(した)に逆(さか)らひ、鮨(すし)・刺身(さしみ)に好適(む)く。 この日の鰈(かれひ)は鮃・眞鯛と云ふより 鮎魚女(あゆなめ)に彷彿(さもにたり)。 【2011-10-19追記】: 備前(びぜん)兒嶋湖(こじまこ)の蝦蛄鰻(しやこむなぎ)など。 【2011-09-29追記】: 琵琶湖(びわこ)の鰻(むなぎ)など。 【2011-09-22追記】: 宍道湖(しんじこ)の鰻(むなぎ)など。 【2011-09-10追記】: 球磨川(くまがは)の鰻(むなぎ)など。 【2011-09-04追記】: 此度 こだみ は、『』なる新種(しんしゆ)無花果(いちじく)。 【2011-08-18追記】: 土州(としう) 鏡川(かゞみがは)の 鼈(すっぽん)。 生姜(はじかみ) を加(くは)へず、掃愁箒(さけ)も嘗(かつ)ての三分(さんぶん)の一(いち)。 纔(わづ)かな臭(くさ)みこそあれ、なかなかのもの。 鼈裙(えんぺら)、頭(かうべ)も、、。 【2011-08-10追記】: 四万十川の 鮎(あゆ)、 佐島(さじま)の 章魚櫻煮(さくらに)、土州(としう)の鰹、 蝦夷地(えぞち)釧路(くしろ)の秋刀魚(さんま)など。 家苞(いへつと)ゝして『 ばらちらし』。 秋刀魚(さんま)は身(み)も膓(わた) もなかなかの旨(うま)さ。 【2011-07-03追記】: 此度(こだみ)の白眉(はくび)は 紅椒(ぱぷりか) のムウス。 紅椒(ぱぷりか)の苦味)、凝乳(くりいむ)のまろやかさ、ほどよき鹽氣(しほけ)と非のうちどころなし。 握りとして、茹で上げ蝦蛄(しやこ)、三枚漬(さんまいづ)けの新子(しんこ)、 大原の蒸鮑(むしあはび)、明石鯛、佐島(さじま)の章魚(たこ)櫻煮(さくらに)など。 茹 で上 げ蝦蛄に舌鼓(したつゞみ)を打つは大約(およそ)一年(ひとゝせ)ぶり。 時季(じき)の穴子(あなご)はまづまづ。 【2011-06-15追記】: 此度(こだみ)は、『 四万十川の 香魚(あゆ)』、『 北上川の 山女(やまめ)』、 『丹後 舞鶴(まひづる)の 鳥貝』、『房州 勝浦(ばうしうかつうら)の 鰹(かつを)』、 『 淡路(あはぢ)の 鱧(はむ)』、『 江戸前(えどまへ)の 穴子(あなご)』など。 『吉野川』の鮎(あゆ)の比(くら)べ、四万十川(しまんとがは)には力強(ちからづよ)さ。 鰹(かつを)、 鰺(あぢ)にも優(まさ)るこの日の白眉(はくび)は 穴子 あなご。 皮(かは)甚 いと 柔(やは)らかにして、身(み)も崩(くづ)れんばかり。 身皮(みかは)の間(はざま)なる脂(あぶら)が舌に纏(まと)はりつゝ、 吭 のんど の奧に、、。 やはり 鰻(むなぎ)は龝(あき)、 穴子(あなご)は初夏(なつのはじめ)が何より。 【2011-06-03追記】: ・・・・・・(略)・・・・・・ 此度(こだみ)の酒菜(さかな)は、 吉野川の 鮎、京師(みやこ) 賀茂茄子(かもなす)、 壹岐(いき)の 岩牡蠣(いはがき)など。 鮎(あゆ)には楓(かえで)と 加賀太胡瓜(かゞぶときうり)があしらはれ目にも鮮やか。 これを貪(むさぼ)るに、身と膓(わた) より心持(こゝち)よき香(かをり)迸(ほとばし)る。 岩牡蠣(いはがき)はその儘(まゝ)でも旨(うま)く、ぽん酢(ず)もまた佳(よ)し。 賀茂茄子(かもなす)はほどよき齒應(はごた)へを殘(のこ)し、出汁(だし)も上々。 握(にぎ)りは生平(つね)のごとし。 出水(いづみ)の眞鰺(あぢ)は時季(じき)に適(かな)ひ旨さ口中(くち)に横溢(あふ)る。 肥後(ひご)の 本蛤(ほんはまぐり)も朝鮮蛤(てうせんはまぐり)と見紛(みまが)ふ大きさ。 天草(あまくさ)の車蝦(くるまえび)は俗(よ)に云ふ『 大車(おほぐるま)』。 【2011-04-28追記(拔粹)】: 蝦夷(えぞ) 苫小牧の 馬糞海膽、洛(みやこ) 塚原の 白子筍(しらこだけ)、 越中 富山の 喉黒(のどぐろ)などを貰(もら)ひ杯(さかづき)を傾(かたぶ)く。 握りで、鮃(ひらめ)縁側(えんがは)、眞鰺(まあぢ)、小鰭(こはだ)、黄肌(きはだ)、 赤貝(あかゞひ)、穴子(あなご)。 音(おと)に聞(き)く『 白子筍(しらこだけ)』を口にするはこれが初(はつ)。 鹽茹(しほゆ)でに見(み)えしかど、出汁(だし)を加(くは)へたるものとなむ、、。 滑らかなる舌觸(したざは)りは絹に似て、えぐみのなさは泉(いづみ)を髣髴(おもはす)。 慥(たしか)に笋(たけのこ)の皇(すめらみこと)。 喉黒(のどぐろ)は兜(かぶと)ばかりを擇(えら)み、ほどよく炙りて供(いださ)る。 豫(あらかじ)め降り鹽(じほ)が施(ほどこ)され、その旨味も一入(ひとしほ)。 遉(さすが)に 閖上(ゆりあげ)の赤貝はなく、 周防にて漁(いさ)りしものゝみ。 殼(から)を剥(む)き、肝(きも)を燒(や)き、身(み)と紐(ひも)は握りとなす。 【2011-04-17追記】: ・・・・・・(略)・・・・・・ 漬け場に目立つ 九十九里(くじふくり)の 朝鮮蛤に 鶏卵燒(たまごや)き。 車蝦と 山芋を擂り込み、 四十分かけて燒上(やきあ)げたるもの。 主人(あるじ)、『 大地震(おほなゐ)に遭ひて閖上(ゆりあげ)の赤貝など皆無』と、、。 掃愁箒(さけ)を貰ひ、酒菜(さかな)二種(ふたくさ)に主人(あるじ)心盡くしの品。 最初(いやさき)に、越中滑川(ゑつちゆうなめりかは)の螢烏賊(ほたるいか)。 獨活(うど)を添(そ)へ酢未醤(すみそ)で戴(いたゞ)く。 酒菜(さかな)として、品書きより、 琵琶湖(びわこ)の もろこ鹽燒(しほやき)と、 洛(みやこ)は 長岡京 筍(たけのこ)の炙り燒きを注文(たのむ)。 もろこは二寸斗(にすんばかり)の大(おほ)きさで子持(こも)ち。 築地(つきぢ)で琵琶湖(びわこ)の もろこを扱ふは纔(わづ)かに一軒のみとか。 穴子 肝煮(きもに)、走りの 淡路島(あはぢしま) 海鰻(はむ)落とし、 それに、海鰻(はむ)の あら汁(じる)は、 主人(あるじ)の好意(かうい)。 握り十二、鶏卵燒、玉薤(さけ)、酒菜(さかな)二種(ふたくさ)で八千二百圓也。 價格(ね)の廉きは、家族(うから)ばかりで商(あきな)ひ、廛(みせ)も持ち家なればこそ。 銀座『』とは互ひに先代(せんだい)よりの附き合ひとか。 主人(あるじ)、今は『』となりし紀尾井町時代をも知る。 京師(みやこ)の馨(かをり)漂ふは、先代女將(さきつおかみ)の生まれもさることながら、 偏(ひとへ)に主人(あるじ)の(しゆげふさき)にあり。 力みがなく、『某(それがし)、 鮨より懐石料理(くわいせき)が得手(えて)』とポツリ。 扨 さて 、鮓職人が力量 うで を餘すところなくあらはす 鶏卵燒(たまごや)き。 些(いさゝ)か滑(なめら)かさに虧(かく)と云ふとも、 車蝦(くるまえび)の色尤(いと)鮮烈(あざやか)にして味はひもまたなかなかに深淵(ふかし)。 昆布〆に用(つか)ふ昆布(こんぶ)は 利尻(りしり)と、これまた京風(きやうふう)。 江戸(えど)の鮨屋(すしや)では 眞昆布(まこんぶ)を用(つか)ふが通例(ならひ)。 煮切(にき)りは醤油(しやうゆ)七に味醂(みりん)三で配合(ま)ぜ、 出汁(だし)を加へたるもの。 驚(おどろ)くべきは主人(あるじ)の 記憶力(ものおぼえ)の凄(すご)さ。 四月(よつき)も前の客(きやく)の呑み啖ひしたるものをつぶさに憶(おぼ)えてをり、 剩(あまッ)さへ、話のやりとりまでもが審(つまびらか)。 【2010-12-04記(拔粹)】: 最初(いやさき)に掃愁箒(さけ)。 酒菜(さかな)は豊後(ぶんご) 冬茹(どんこ)の含(ふく)め煮(に)。 一日(いちにち)西洋時辰儀(せいやうとけい)にして六時間煮詰(につ)め、 それを幾日(いくにち)も繰(く)り返(かへ)すと云ふ驚(おどろ)くほどの手間隙(てまひま)。 次いで『星鰈(ほしがれひ)の卵巣(こ)』。 主人(あるじ)の修業先(しゆげふさき)は洛 みやこ 木屋町通り『』。 慥(たしか)に味附けは淡く、京師(みやこ)の割烹(かつぱう)を髣髴(おもはす)。 この星鰈(ほしがれひ)、常磐(じやうばん)のものにて、主人(あるじ)誇りの品。 握りは、星鰈(ほしがれひ)、星鰈縁側(えんがは)、眞鯖(まさば)、小鰭(こはだ)、 墨烏賊(すみいか)を煮切(にき)りと鹽(しほ)で、 鮪(しび)の赤身(あかみ)醤油漬(しやうゆづ)けに、赤身(あかみ)に近き脂身(あぶらみ)、 蛤(はまぐり)、卷き、煮穴子(にあなご)、燒穴子(やきあなご)、冬茹(どんこ)卷き。 途中(とちゆう)、唐墨(からすみ)に 蟹汁(かにじる)を挾(はさ)み、 握(にぎ)り十三(とあまりみつ)、卷物(まきもの)一つ、合はせて値(あたひ)八千五百圓也。 口惜(くちをし)きは 鶏卵燒(たまごや)きなきこと。 勿驚 おどろくなかれ 、各々(おのおの)品の價格 ね が黒板(こくばん)に審 つまびらか。 僕(やつかれ)のほか、絶(た)へて客(ひと)の姿(すがた)を見ず。 近傍 ちかく に寺多く、粗方(あらかた)休日(やすみのひ)の法事客(はふじきやく)とか。 饗應(もてなし)に用(つか)ふ廛(みせ)なれば、價段 ね を明かす道理(ことわり)なし。 唐墨(からすみ)は自家製。 鹽(しほ)ばかりで製造(こしら)へたるものとは明らかに異なる圓(まろ)やかさ。 その理(ことわり)を訊(たづ)ぬれば、 燒酎(せうちう)に暫し漬け込みたるものとのよし。 傍(かたは)らの 紅芯蘿蔔(こうしんだいこん)は鮨屋(すしや)には珍しき品。 要求(もとめ)に應(おう)じ、唐墨(からすみ)に添(そ)ふると、、。 そも、蘿蔔(すゞしろ)は徒(いたづら)に強き鹽氣(しほけ)を和(やはら)ぐるもの。 鹽(しほ)強(つよ)からざれば、そのまゝに味(あぢ)はふが何より。 こゝろみに紅芯蘿蔔一片(ひとひら)を齧(かじ)るに、爽やかなること梨(なし)に似たり。 萬願寺唐辛子(まんぐわんじたうがらし)も東都(えど)の鮨屋にはなき菜蔬(あをもの)。 舎利(しやり)は粒(つぶ)が立ち、舌(した)に滑(なめ)らか。 暖(あたゝ)かさは人肌(ひとのはだ)ほどならん。 酢は 尾州半田(びしうはんだ)の白酢に、纔(わづ)かながら 沙糖を用(つか)ふ。 甘酢(あまず)漬け生姜(はじかみ)の自家製(じかせい)なるは勿論(いふもさらなり)。 くどさなく、口直(くちなほ)しにはほどよし。 近會(ちかごろ)の に比(くら)ぶれば、聊か冷たく、酢も弱め。 山葵(わさび)は本物(ほんもの)ながら、高名(なのある)廛(みせ)には遠く及ばず。 主人(あるじ)の誇る『 星鰈(ほしがれひ)』は〆てより三日目(みッつかめ)。 この時季の、『』か『』の 鮃の美味(うまきあぢ)にはとてもとても、、。 『』なれば〆て間(ま)もなきものを厚(あつ)めに切りつく。 身が活き、噛み締むるほどに旨味(うまみ)奔(ほとばし)るが通例(つね)。 『 蛤(はまぐり)』は他店(よそ)で用(つか)ふ鹿島灘(かしまなだ) 朝鮮蛤とは異なり、 肥後(ひご)の濱(はま)にて漁(すなど)られし 本蛤(ほんはまぐり)。 これを『漬け込み』となし、 煮詰(につ)めを寸毫(つゆ)施(ほど)さずに味はふ。 僅(はつ)かながらも火の入り過ぎたるけはひこそあれ、なかなかの出來榮(できば)え。 主人(あるじ)が『今一つ』と羞(は)ぢらふ『 煮穴子(にあなご)』は江戸前(えどまへ)。 煮工合(にぐはひ)もほどよく、この時季(じき)としては、まづまづ。 最(いと)面白(おもしろ)きは『 燒穴子(やきあなご)』。 洛(みやこ)に倣ひて、 骨切(ほねき)りを行ひたる後これを炙(あぶ)る。 やはり『 燒穴子』に限るなら『 468』に一日(いちじつ)の長(ちやう)。 鶏卵(たまご)の代替(かはり)に『尤(いと)自信(じゝん)あるもの』と、問はゞ、 『含ませ煮の冬茹(どんこ)』を海苔(のり)に卷くは如何(いか)に、と、囘答(いら)ふ。 ぬばたまの黒さながらも、味は海苔卷きの干瓢(かんぺう)よりも穩(おだ)やか。 さても、握り鮨の華(はな)たる 光物(ひかりもの)ゝはと檢(あらた)むるに、 鯖(さば)はやゝ淺(あさ)め、小鰭(こはだ)は聊(いさゝ)か強き酢〆。 主人(あるじ)に據(よ)らば、鯖は、鹽(しほ)二時間半、酢(す)四十分、 小鰭 こはだ は、鹽(しほ)を五十分、酢(す)を四十分とか。 豐後(ぶんご)の鯖(さば)は、その身頗(すこぶ)る肥(こ)え、 脂(あぶら)は鹽(しほ)を蹴散(けちら)らし、酢を四方(よも)に彈き飛ばさんばかり。 小鰭(こはだ)には"卷き"より拵(こしら)へたる朧(おぼろ)を挾(はさ)む。 〆の強さたるや、九段下『』、烏森稻荷『』に次ぐ。 そも『』なる屋號(やがう)、 小宮徳造(こみやとくざう)が 魚屋に因む。 倅(せがれ) 健(たけし)、當地 このち に開きし鮨屋こそ『おすもじ處(どころ)』。 二代目(にだいめ)重病(おもきやまひ)に仆(たふ)れ、跡を繼ぎしが、三代目(さんだいめ)。 すなはち、現行(いま)の親方(おやかた) 小宮健一(こみやけんいち)その人(ひと)。 四度目(よたびめ)の『』。 當日(そのひ)電話(テレフヲン)するに、「 空席(あき)あり」との應答(いらへ)。 今猶(いまなほ)かくのごとき景状(ありさま)なる縁由(ことのよし)、 偏(ひとへ)に、" 川口(かはぐち)"と云ふ地(ところ)の牆壁(かべ)にあらん。 とは云へ、かの蒲田(かまた)『』の前例(ためし)もあり、 努々(ゆめゆめ)油斷大敵(きをぬくべからず)! 半年後(はんとせのち)、 「『』のごとき爲體(てゐたらく)にならぬ」とは、難斷言(いひきりがたし)。 " 熟成(ねかし・うらし)"を窮(きは)めんとするは、以前同樣(まへにおなじ)。 魚(うを)に依存(よ)り、大(おほ)きさに從(したが)ひ、 鹽(しほ)を振(ふ)り、時(とき)にその儘(まゝ)、 冰温(こほりのつめたさ)に寢(ね)かすこと數日間(いくにちか)。 " 劍先烏賊(けんさきいか)"で五日(いつか)、 " 鱸(すゞき)"、" 星鰈(ほしがれひ)"なら七日(なぬか)、 この日(ひ)の" 鮪(しび)"は五日(いつか)と云ふ工合(ぐあひ)。 鱸(すゞき)は、「 昆布〆(こぶじめ)歟(か)?」と訝(いぶか)るほど。 舎利(すめし)の美味(うま)さも不變(あひかはらず)。 陸奧(むつ)の 眞妻山葵(まづまわさび)の優秀(すば)らしさは、 豆州(いづ)のそれにも匹敵(ま)けぬほど。 季(とき)に恵(めぐ)まれずと云へど、" 鮪(しび)"もまた佳味(よきあぢ)。 創業(あきなひをはじめ)て以來(よりこのかた)、 築地(うをいちば)では、最上(いとよ)きものばかりを贖(か)ひ續(つゞ)け、 今(いま)や、 仲卸(なかおろし)が、 當家(こちら)のために極上(このうへなき)ものを確保(とりおき)するまでに、、。 " 鮪(しび)"、" 海膽(うに)"は勿論(いふまでもなく)、 その他(ほか)の鮨種(すしだね)も至高(とびきり)のものばかり。 この日(ひ)の" 紫海膽(うに)"にも「 築地一(つきぢいち)」の極印(きはめいん)。 一貫(ひとつ)原價(もとね)で四千五百圓(よんせんごひやくゑん)にもなると云ふ。 それを、 「四千圓(よんせんゑん)と云ふ破格値(あかじね)」 にて提供(いだす)とのよし。 小人(それがし)のみ、このありがたき提案(まうしいで)を辭退(ことわる)。 " 星鳗(はかりめ)"は 烹(に)て炮(あぶ)ると云ふ烹調法(やりかた)。 外見(みため)も食感(あぢはひ)も、 瀬戸内(せとうち)界隈(あたり)の燒穴子(やきあなご)に彷彿(さもにたり)。 僕(やつかれ)、やはり、古典的(むかしなが)らの" 煮穴子(にあなご)"が吉(よい)。 " 蝦蛄(しやこ)"も卵巣(たまご)を持(も)たぬものを、 眼前(めのまへ)にて茹(う)で上(あ)ぐるを嗜(この)む。 當家(こちら)の流儀(やりかた)、 風習(ならひ)の" 漬込(つけこみ)"とも半點(いさゝか)異質(ことなる)。 明々地(あからさま)に改良(よく)なりしが" 雞卵燒(たまごやき)"。 顏色(いろ)の變化(たがひ)は 甘蔗(さたう)を變更(かへ)たことに起因(よる)。 滑(なめ)らかなること絹(きぬ)のごとく、 嫩(やはらか)なること焦糖布甸(かすたあどぷでいんぐ)を髣髴(おもはす)。 劈頭(いやさき)から掉尾(いやはて)に至(いた)るまで、 一(ひと)つとして麁味(あぢあ)しきもの皆無(なし)。 只顧(ひたすら)旨(うま)く、唯々(たゞたゞ)味覺(した)を怡(よろこ)ばしむ。 とは云へ、 美味(うま)く濃厚(こ)きに過(す)ぐるとの恨(うら)みを殘(のこ)す。 8 「 雞卵燒(たまごやき)、進化(かはりぬ)。 」 との慥(たしか)なる噂(うはさ)を小耳(こみゝ)に挾(はま)み、 三度目(みたびめ)の訪問(おとづれ)。 此度(こだみ)は、 類稀(たぐひまれ)なる食通(たべて)を同伴(ともな)ひ、、。 劈頭(はじめ)から、 豬股親方(ゐのまたをやかた)の誇(ほこ)らしくも愉快(たの)しげなる聲(こゑ)。 」 「 今季最後(いやはて)の津輕海峽(つがるかいきやう)もの。 卷物(まきもの)など十七(とあまりなゝつ)に啤酒(びいる)を合(あは)せ、 對價(あたひ)、二萬圓(にまんゑん)斗(ばかり)。 前(まへ)に同(おな)じく、 過半(あらかた)、 輕(かろ)く鹽(しほ)して熟成(ね)かしたる素材(たね)。 「たゞし、 貝(かい)と蝦(えび)はその限(かぎ)りにあらず。 」 とは、師傅(おやかた)の辯(はなし)。 " 鰤(ぶり)"、" 眞鯛(まだひ)"、" 赤鯥(あかむつ)"、など、 背身(せみ)と 腹身(はらみ)を薄(うす)き削(そ)ぎてこれを合體(あはす)。 その縁由(ことのよし)、 「 僉(みな)、均一(おな)じ味(あぢ)にせばやと、、」となむ。 " 眞梶木(まかぢき)"も同樣(おなじ)ながら、 背身(せみ)二枚(にまい)。 " 小鰭(こはだ)"は、 市場(いちば)で厚(あつ)めのものを選擇(えら)み、 半身(はんみ)にして、更(さら)にこれを薄(うす)く開(ひら)き、 裏表(うらおもて)にして二枚(にまい)。 「 鹽(しほ)、 醋(す)、ともに 八十分(はちじつぷん)」 とは、 今時(いまどき)ありえぬほどの強烈(つよ)さ。 さりながら、 醋(す)の立(た)ち過(す)ぎを感(かん)じさせぬは驚歎(おどろき)。 「 十日間(とほか) 熟成(ねかしたるもの)」、 と證言(い)ふ淡路(あはぢ)の" 眞鯛(まだひ)"。 " 紅瞳(べにひとみ)"と號(よびな)す" 赤鯥(あかむつ)"には仰天(そらをあふぐ)。 元來(もとより)、 北陸(ほくりく)近邊(あたり)ではこれを" 喉黑(のどぐろ)"と稱(とな)ふ。 その美味(よきあぢ)たるや、もはや、 唸(うな)るほか術(てだて)なし。 どれもこれもが東道(あるじ)の誇(ほこ)り。 時季(とき)に適(かな)ふ至高(このうへなき)ものばかりを仕入(しい)れ、 これに、 鹽(しほ)を振(ふ)りて適宜(ほどよく)寢(ね)かし置(お)き、 時(とき)に、速(すみ)やかにこれを鮨種(すしだね)となす。 柵漬(さくづ)けたる 鮪(しび)は、 切附(きりつ)け、再度(ふたゝび)漬醤油(つけじやうゆ)に滲(ひた)し、 小柱(こばしら)などには、 醋洗(すあら)ひを施(ほどこ)す。 眞牡蠣(かき)は岩手(いはて) 赤嵜産(あかざきのもの)。 酒(さけ)、 味醂(みりん)、 昆布(こんぶ)による" 漬込(つけこみ)"のごときもの。 亭主(あるじ)言(い)ふやう: 「世(よ)に "昆布森(こんぶもり)"に優(まさ)る牡蠣(かき)なしと云へど、 今頃(いまごろ)のものは火(ひ)に遭(あ)ひて縮退(ちゞむ)が通例(つね)。 」 これに因(よ)り、 「" 昆布森(こんぶもり)"の牡蠣(かき)は十二月(じふにがつ)まで、 海膽(うに)は、 利尻(りしり) 馬糞海膽(ばふんうに)の最上品(いとよきしな)を、 春(はる)から夏(なつ)までに限定(かぎり)て用(つか)ふ。 」と、、。 " 穴子(あなご)"なき縁由(ことのよし)、また同樣(しかり)。 眞梶木(まかぢき)の旨(うま)さも時季(いまごろ)固有(ならでは)。 「 春(はる)には 三州(みかは)の" 淺蜊(あさり)"、、」、 と、心待(こゝろま)ちの樣子(そぶり)。 駭(おどろ)くほどに大(おほ)きな 野附(のつけ)の" 大星(おほゞし)"。 すなはち、 莫迦貝(ばかゞひ) 貝柱(かひばしら)番(つがひ)の一(ひとつ)。 僕(やつかれ)、 酢洗(すあら)ひせで、その儘(まゝ)に用(つか)ふが嗜(この)み。 纔(わづ)かに味(あぢ)の濃(こ)さを感(かん)じたは、 " 子持(こも)ち 槍烏賊(やりいか)"に" 手卷(てまき)の 鐵火(てつくわ)"。 槍烏賊(やりいか)は 半點(いさゝか)甜鹹(あまから)く、 手卷(てまき)は 煮切(にきり)過多(おほめ)。 味覺(した)の鋭(するど)き 同行者(つれ)より、 さらに、より詳細(こま)かき指摘(してき)あり。 とは云へ、 押(お)しなめて、どれもこれも美味(よきあぢ)。 就中(わきても)、 素材(すしだね)の上質(よ)さは折紙附(をりがみつき)。 " 鶏卵燒(たまごやき)"は 緑色(みどりいろ)が薄(うす)れ、 甜(あまみ)を増(ま)し、滑(なめ)らかさも向上(うはむき)たる兆(きざし)。 黍糖(きびたう)を 上白糖(じやうはくたう)に換(か)へ、 沙糖(さたう)を減(へ)らして 味醂(みりん)に、、」との説明(よし)。 " 海苔(のり)"は肥前(ひぜん) 有明(ありあけ)。 " 小鰭(こはだ)"も 有明(ありあけ)。 「 有明(ありあけ)の小鰭(こはだ)は海苔(のり)の味(あぢ)がする」、 とは東道(あるじ)が説(はなし)。 「ふらり、晝飧(ひる)にでも覗(のぞ)かばや」と意(おも)ひしかど、 「年末(としのすゑ)まで一席(ひと)つとして空(あき)なし」の景状(ありさま)。 寔(まこと)、 近會(ちかごろ)の鮓店(すしや)は尋常(よのつね)ならざるものあり。 かつて、" 御好(おこの)み"、すなはち、 賓(まらうど)の隨意(おもひのまゝ)に摘(つま)めた『』は、 " 御任(おまか)せ"のみと變貌(なりは)て、その名聲(たかきな)に胡坐(あぐら)。 先般(さきごろ)閉店(みせじまひ)せしばかりの『』また同樣(しかり)。 人(ひと)が客(ひと)を呼(よ)び、評判(うはさ)が評價(うはさ)を呼(よ)ぶ。 宛然(あたかも)、 雫(しづく)集(つど)ひて清水(しみづ)となり、川(かは)と變貌(な)り、 やがて瀑布(おほだき)と化(な)りて瀧壺(たきつぼ)に荒狂(あれくる)ふがごとし。 さすれば、當家(こちら)『』の遠(とほ)からず上(うへ)のごとく變化(な)るも、 最早(もはや)不可避(さけがた)き宿命(さだめ)。 氣(き)も漫(すゞ)ろ。 「有象無象(うざうむざう)の衆人(たみ)蝟集(むらが)る前(まへ)に、、」と、 この日(このひ)、矢(や)も楯(たて)もたまらず、 武州足立郡川口(むさしのくにあだちのこほりかはぐち)の地(ち)に、、。 大約(およそ)半年(はんとし)ぶり。 前囘(まへ)は六字(ろくじ)開始(はじまり)で客(かく)一人(ひとり)、 此度(こだみ)は五字(ごじ)開始(はじまり)で賓(まらうど)六人(むたり)。 「前日(まへのひ)は纔(わづ)か一人(ひとり)のみ」とのよし。 " 墨烏賊(すみいか)"九日(こゝのか)、" 眞鯛(まだひ)"は十日(とほか)。 " 皮剥(かはゝぎ)"、" 喉黑(のどぐろ)"なども熟成(うら)す。 とりわけ、" 眞梶木(まかじき)"は 廿日(はつか)と云ふ長期間(ながさ)。 但(たゞ)し、 " 蟹(かに)"、" 貝(かひ)"、" 蝦(えび)"は 速(すみ)やかに用之(これをつか)ふ。 どれもこれも、魂(たましひ)を消(け)すほどの旨(うま)さ。 就中(わきても)、" 喉黑(のどぐろ)"、" 皮剥(かはゝぎ)"、" 鮪(しび)"は、 呆(あき)れ果(は)て、笑(わら)ふ餘(ほか)術(てだて)なし。 唯一(たゞひとつ)、" 鶏卵燒(たまごやき)"の味(あぢはひ)は今一(いまひと)つ。 舎利(すめし)は、 小人(それがし)が嗜(この)みに秋毫(つゆ)異(こと)なるところなし。 粒(つぶ)が立(た)ち、しかも 舌(した)に滑(なめ)らか。 飯切(はんぎり)に混合(あ)はせて大約(およそ) 三十分(さんじつぷん)。 以爲(おも)ふに、輙(たやす)く席(せき)の取(と)れぬ 『』、『』、『』、『』 に拘泥(こだは)るより、 當日(そのひ)に空席(あき)のある當家(こちら)が理想(よい)。 鮨職人(すしゝよくにん)としての才能・力量(ちから)も稀有(まれにみるほど)。 小人(それがし)もまた、『』には一目(いちもく)二目(にもく)。 『』を 敬(うやま)ひつゝ、 己(おのれ)固有(ならでは)の流儀(やりかた)を探求(さがしもと)めんとするは、 傍目(はため)にも明白(あきらか)。 實(げ)に、 求道僧(みちをさがしもとむるもの)に異(こと)ならず。 實家(うまれたるいへ)が農業(こめづくりをなりはひとなす)にもかゝはらず、 實家(うち)や近所(ちかく)の米(こめ)に飽(あ)き足(た)らず、 彼此(をちこち)に好(よ)き鮓米(すしまひ)を求(もと)め、 (いひやま)の 米(こめ)へと到達(たどりつく)。 産(いひやまさん)" こしひかり"。 信州(しなのゝくに)(いひやま)は、 越後(ゑちごのくに) 魚沼郡(うをぬまのこほり)と隣接(となりあふ)。 「 舎利(すめし)には"魚沼産(うをぬまさん)"より好適(よい)」と斷言(いふ)。 鶏卵(かひご)は、 陸州(むつのくに)津輕郡(つがるのこほり) 鰺ヶ澤(あぢがさは)の地(ち)、 (はせがはしぜんぼくじやう)のもの。 " 鶏卵燒(たまごやき)"の 顏色(いろ)は獨特(ほかになきもの)。 鮪(しび)のみならず、 白身(しろみ)の類(たぐひ)も 熟成(うら)して用(つか)ふ。 白烏賊(しろいか)、すなはち 劍先烏賊(けんさきいか)、 鱸(すゞき)、 星鰈(ほしがれひ)など、何(いづ)れも 七日(なのか)ほど。 鮃(ひらめ)、 鰈(かれひ)の類(たぐひ)は、 平均的(なみ)の鮓店(すしや)なら、寢(ね)かしてもせいぜい三日(みッか)。 纖細(こまやか)なる 烏賊(いか)への 疱丁(はうちやう)は、 『』を髣髴(おもはす)。 とは云へ、『』とも『』とも異質(こと)なる味(あぢはひ)。 今(いま)や 熟成(うらし)の盛名(な)を擅(ほしいまゝ)にする『』: 小人(それがし)、 十年前(とゝせまへ)の陳腐(ありきたり)の烹調法(やりかた)を知(し)るのみ。 9kg)もの 星鰈(ほしがれひ)、 最上質(いとよ)き 利尻(りしり)の 蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)を用(つか)ふは、 寔(まこと)、豬股親方(ゐのまたをやかた)が 心意氣(こゝろいき)。 とは云へ、 鮨種(すしだね)の良(よ)し惡(あ)し、貴賤(たふとき・いやしき)は、 成形技術(かたちづくるわざ)と 舎利(すめし)に比較(くら)ぶれば、 些末(とるにたら)ぬこと。 上記(うへにしるせ)るごとく、 米(こめ)は産(いひやまさん)こしひかり。 三種(みくさ)の 紅醋(あかず)を混合(あは)せ、 沙糖(さたう)に頼(たよ)らで、旨味(うまみ)を抽出(ひきいだす)。 口(くち)に抛(はう)り込(こ)むや、 須臾(たちまち)解(ほぐ)れて、臼齒(おくば)に幾粒(いくつぶ)か留(とゞ)まる。 瞬時(すぐさ)ま崩壊(ほど)けながらも、 口中(くちのなか)に殘(のこ)る 米粒(こめつぶ)は 舌(した)に滑(なめ)らか。 一度(ひとたび)これを噛締(かみし)むるや、 瞬(またゝ)く中(うち)に咽喉(のみど)を通過(す)ぎて胃袋(いのふ)に、、。 鹽梅(しほとす)、 温度(あたゝかさ)も も適切(ほどよ)く、 これぞ、小人(それがし)庶幾(こひねが)ひてやまぬ舎利(すめし)そのもの。 『』、『』 の舎利(すめし)に肉薄(せま)る水準(たかみ)。 否(いな)、 漫(みだり)に主張(いひはる)こともせで、 能(よ)く、あらゆる鮨種(すしだね)にも調和(あ)はすことのかなふ、 " 最適解(よきおとしどころ)"やも知(し)れぬ。 『』には半點(いさゝか)及(およ)ばぬにせよ、 手附(てつ)きに無駄(むだ)はなく、迅速(すばやく)・精確(あやまちなきかたち)。 齢(よはひ)・ 春秋(つきひ)を重(かさ)ねれば、 即(すなはち)、 いづれ神業(かみわざ)の域(いき)に到達(いた)らん。 扨(さて)、この日(ひ)の流(なが)れ: 白烏賊(しろいか)に始(まじ)まり、鶏卵燒(たまごやき)に終(を)はる、 握(にぎ)り十七(とあまりなゝつ)、手卷(てまき)一(ひとつ)、 卷物(まきもの)一(ひとつ)からなる構成(くみたて)。 鮪(しび)が赤身(あかみ)と 肥肉(あぶらみ)合計(あは)せて五(いつゝ)。 更(さら)に 手卷(てまき)も、、。 老舖(しにせ)"(ひちやう)"よりの仕入(しいれ)。 これを過半(あらかた) 醤油漬(しやうづ)けとなす。 夏場(なつば)としては、稀(まれ)に見(み)る美味(びみ)。 敢(あ)へて" 房州産(あは)"を避(さ)け、 " 三陸産(さんりく)"を重用(おもん)ずと云ふ 鮑(あはび)も佳味(よきあぢ)。 " 胡麻鯖(ごまさば)"は 薄(うす)く三枚(さんまい)に引(ひ)き、 これをずらし 重(かさ)ねて用(つか)ふ。 この技法(やりかた)の嚆矢濫觴(さきがけ)は、 六本木(ろつぽんぎ)『』 鈴木隆久親方(すゞきたかひさおやかた)。 眞鰺(まあぢ): 豫(あらかじ)め 輕(かろ)く振(ふ)り鹽(じほ)を打(う)ち、 供(いだ)す直前(すぐまへ)に醋(す)に潛(くゞ)らす流儀(やりかた)。 この時季(じき)、しかも、薩州(さつまのくに) 出水(いづみ)の産(もの)。 穴子(あなご)は吾(あ)が嗜好(このみ)に合(あ)はず。 東都(えど)の" 煮穴子(にあなご)"と云ふより、 京坂(あちら)の" 燒穴子(やきあなご)"のごとき食感(はごたへ・したざはり)。 皮(かは)近(ちか)くより漂(たゞよ)ふ臭氣(くさみ)は皆無(なし)。 酒(さけ)・ 味醂(みりん)の類(たぐひ)を用(つか)ふことなく、 芝蝦(しば)と 薯蕷(いも)・ 甘蔗(たう)にて制作(こしら)へたる、 鶏卵燒(たまご): 件(くだん)の鶏蛋(たまご)の濃厚(こ)き口味(あぢ)こそ顯著(あらは)なれど、 やはり、『』の 鶏卵燒(たまご)が吉(よい)。 親方(おやかた)と、 やがて 御内儀(おかみ)となる許嫁(いひなづけ)の 呼吸(いき)も合(あ)ひ、 寔(まこと)、 心持(こゝち)よき限(かぎ)り。 繁盛(さかえ)て欲(ほ)しくもあり、混雜(こみあ)ふは辛(つら)きところでもあり。 東道(あるじ)曰(いへら)く、 「 一流店(なのあるみせ)で修業歴(わざをならひおぼえ)たる例(ためし)なし」と、、。 獨學(ひとりまな)びて祕技(ひめわざ)を會得(ゑとく)せしは、 木挽町(こびきちやう)『』など極纔(きわめてわづ)か。 押竝(おしな)めて、 この界隈(あたり)では、浦和(うらわ)『』を凌駕(しの)ぎ、 東都(えど)でも、『』、『』と比肩(かたをなら)ぶるほど。 今(いま)や、『』にも肉薄(せま)る威勢(いきほひ)。 F2 「今(いま)向絶滅(たへな)んとする 膀胱包(ヴェッシー、ばうくわう)づゝみ」 「庶幾(こひねが)はくは、一緒(とも)にこれを啖(くら)はん!」 とのありがたき誘(さそ)ひ。 「据膳(すゑぜん)喰(く)はねば肚(はら)が減(へ)る。 」 瞬時(またゝくいとま)もあらで、快諾(よろこびいさみてこれをうけたまはる)。 その容(さま)、 草花(くさばな)の風(かぜ)に靡(なび)き、 猫(ねこ)が木天蓼(またゝび)に酩酊(ゑ)ふがごとし。 新派法國菜(しんぱフランスれうり)が旗頭(はたがしら)、 ""が" ブレス雞(どり) 膀胱包(ばうくわうづゝ)み"は、 あまりに高名(なだかし)。 そも、" 膀胱包(ばうくわうづゝ)み"は 昔(いにしへ)より傳承(つたは)る技法(わざ)。 往古(そのかみ)以來(よりこのかた)多用(おほくもちゐ)られ、 現代(いまの)"(しんくうてうり)"へと連(つら)なる。 ラグビー蹴球(けまり)の球(たま)の歪(いびつ)なる縁由(ことのよし)、 偏(ひとへ)に 豬(ぶた)膀胱(ばうくわう)の形状(かたち) に由來(よる)。 誘(さそ)ひ主(ぬし)と東道(あるじ) 室田總主廚(むろたをやかた)とは、 舊知(ふるきなじみ)の間柄(あひだがら)。 (よしのたてるおやかた)の薫陶(をしへ・てほどき)を受(う)け、 古典法國菜(ふるきフランスれうり)に長(た)くるとの噂(うはさ)。 小人(それがし)、傳統(ふるきもの)を愛(め)づること、 宛然(あたかも)、 蝶(てふ)が花(はな)を戀(こ)ひ、 鰻(むなぎ)が坑(あな)に執着(とりすが)るに似(に)たり。 この日(ひ)の宴(うたげ)は、 アミューズに始(はじ)まり、前菜(オルドゥーヴル)、魚(ポアソン)、 肉(ヴィアンド)、菓子(デセール)なる構成(ながれ)。 但(たゞ)し、事情(わけ)ありて菓子(デセール)には到達(いた)らず。 最初(いやさき)に、 蘇格蘭産(スコットランドさん) 雷鳥(らいてう、グルーズ)と 琉球産(りうきうさん) 高麗雉(かうらいきじ、フェザ)の御披露目(おひろめ)。 桌子(つくゑ)には、狩獵(かり)にて殺害(あや)められし鳥(とり)二羽(には)。 詳細(つぶさ)にその顏色(かんばせ)を觀察(うかゞ)ふに、 海(うみ)よりも深甚(ふか)き遺恨(うらみ)を抱(いだ)き、 無念(むねん)極(きは)まりなき憤怒(いかり)の形相(ぎやうさう)。 、、と云ふは眞赤(まつか)な嘘僞(うそいつはり)。 さながら、 安(やす)らかに眠(ねむ)る童蒙(わらんべ)のごとし。 これを 攝氏(せつし)五・六度(ごろくど)にて熟成(ねかしうらす)。 雷鳥(らいてう)七日(なのか)、雉(きじ)十四日(とほかあまりよつか)。 前菜(オルドゥーヴル)? として、 " 梭魚(かます) 冷燻(れいくん)"に" パテ・アンクルト(パイ包み)"。 近會(ちかごろ)巷(ちまた)に跋扈(はびこ)るは、 " パテ"と詐稱(あざむ)き" パイ生地(きぢ)"用(つか)はぬ貨物(しろもの)。 當家(こちら)の" パテ・アンクルト(パイ包み)": 「 これぞ王道(わうのみち)」と賞賛(ほめたゝ)ふべき一品(ひとしな)。 倩(つらつら)その内容(なかみ)を窺(うかゞ)ふに、 鹿肉(かのしゝ)、 野豬肉(ゐのしゝ)、 熊肉(くまのしゝ)、 鵝肝(フォアグラ)、、。 およそ 魳(かます)と云ふは 水氣(みづけ)多(おほ)き魚(うを)なれば、 開(ひら)きて鹽(しほ)して乾(ほ)すが慣習(ならひ)。 鮓店(すしや)なれば" 棒鮓(ぼうずし)"と做(な)すが通常(つね)。 當家(こちら)、鹽(しほ)したる後(のち)、 冷燻(れいくん)を施(ほどこ)す。 その身(み)は柔(やは)らかく、適度(ほどよ)き水氣(みづけ)を保持(たもつ)。 實言(まこと)、 拔群(ひとにひいで)たる火入(ひい)れ。 ソースの美(うつ)しさも特筆大書(おほいにかきしるす)べきもの。 翡翠(ひすい)かと疑(うたが)はれ、(し)と錯覺(みまがふ)。 " 魚(ポアソン)"はと覽(み)るに、 傳統(いにしへよりつたは)る" ソール・ボン・ファム(したびらめ)"。 由緒(すぢめ)正(たゞ)しき法國魚料理(フランスうをれうり、ポアソン)。 纔(わづ)かながらも鹹(しほから)く、白葡萄酒(さけ)以(も)て漱(くちすゝ)ぐ。 扨(さて)、お次(つぎ)に控(ひか)へし" 膀胱包(ばうくわうづゝ)み": 調理前(てうりまへ)の"あの 惡臭(にほひ)"に首傾(くびかしぐ)るも、 膀胱(ばうくわう)を切開(きりひら)くや豹變(にはかにさまがはり)。 須臾(たちまち)周邊(あたり)に漂流(たゞよ)ふ妖(あや)しき馨(かをり)。 實(げ)に、 惡臭(あしきかをり)と 芳香(かぐはしきかをり)は 紙一重(かみひとへ)。 就中(わきても)、 松露(せうろ、トリュフ)がその證左(あかし)。 桌上(つくゑのうへ)には、分割(とりわけ)濟(ずみ)の銘々皿(めいめいざら)。 僕(やつかれ)、 雉(きじ、フェザ)・ 雷鳥(らいてう、グルーズ)とも、 口(くち)にするは此度(こだみ)でこれが二度目(にどめ)。 とは云へ、 高麗雉(かうらいきじ)は初(はじめて)。 それも 雌(めす)。 「 雌(めす)の食味(あぢ)は雄(をす)に優(まさ)る。 」 とは、御招(おんまね)き頂(いたゞ)きたる方(かた)の説(はなし)。 欝血(ちがたま)りて二週間(にしうかん)の長(なが)きに亙(わた)れど、 その身(み)は 想定外(おもひのほか)に白(しろ)く、臭氣(くさみ)もなし。 かくて、 只顧(ひたすら)、 手羽肉(てば)を喰(く)らひ、 腿肉(もゝ)を貪(むさぼ)る。 その容(さま)、惡鬼羅刹(あつきらせつ)に異(こと)ならず。 肉(にく)のみならず、 皮(かは)の美味(うま)さも一入(ひとしほ)。 慥(たしか)に、 雷鳥(らいてう)には 臭氣(くさみ)と 苦味(にがみ)が伴(ともな)ふ。 然(しか)はあれど、 『』 にて閉口(くちをとざ)したるほどの惡臭(あしきかをり)にあらず。 然(さ)れば、瞬(またゝ)く中(うち)に皿(さら)は空(から)と化(な)る。 膀胱(ばうくわう)と 雷鳥(らいてう)と云ふ 惡臭(あしきかをり)の共演(きそひあひ)。 實(げ)に、「 毒(どく)以(も)て毒(どく)を制(せい)す。 」 元來(もとより)、癖(くせ)のある馨(かをり)は嗜(この)むところ。 " くさや"、" 臭豆腐(しうどうふ)"、何(いづ)れも同様(しかり)。 故(ゆゑ)ありて、 菓子(デセール)を前(まへ)に辭別(いとまごひ)。 女洋菓子職人(パティシエール)の技藝(わざ)を見逃(みのが)したるは、 僕(やつかれ)一世一代(いつせいちだい)の大不覺(だいふかく)。 この女職人(パティシエール)「手煆煉(てだれ)」との評判(うはさ)あり。 桌子(つくゑ)には 純白(まし)き 亞麻布(リネン)の 桌布(テーブルクロス)。 亞麻布(あまぬの)の 餐巾(ナプキン)に加(くは)へ、 御絞(おしぼ)りまで、、。 麪麭(ぱん)を手掴(てづか)みする洋食(やうしよく)でこそ、 御絞(おしぼ)りは不可缺(かくべからざるもの)。 そも、 眞白(ましろ)き 亞麻布(リンネル)は 裝飾(かざり)にあらず。 周圍(まはり)を柔(やは)らかに照(て)らし返(かへ)す效果(きゝめ)あり。 鮓店(すしや)の 檜(ひのき)もこれに同(おな)じ。 高脚杯(ぐらす)も 皿(さら)も、 菜(れうり)を活(い)かす上質品(よきもの)。 白瓷器(はくじ)若(も)しくは玻璃(がらす)の碟(さら)に ソースを垂(た)らし、 小賢(こざか)しき繪畫(ゑ)を描(ゑが)く近會(ちかごろ)の作法(やりかた)とは、 雲壤(くもとつちほど)の相違(たがひ)。 漫(みだり)に賓(ひと)の眼(め)を欺(あざむ)くは廚師(いたまへ)に非(あら)ず。 當家(こちら)、かゝる 小手先(こてさき)の技藝(わざ)とは無縁(ゆかりなし)。 肉用(にくやう) 餐刀(ナイフ)の 利(するど)さ、使(つか)ひ易(やす)さ、 適切(たゞし)き 碟(さら)の温度(あたゝかさ)、 悉(ことごと)く、小人(それがし)が琴線(こゝろ)に觸(ふ)れて止(や)むことなし。 金屬洋食器(カトラリ)の設置法(おきかた)は 英國式(エゲレスしき)。 仰向(あふむ)けとし刻印(こくいん)を表(おもて)となすは、 當家(こちら)老板(あるじ)固有(ならでは)の創意工夫(やりかた)にて、 「(おやかた)は 法國式(フランスしき)」とのよし。 野獸(のゝけだもの)、 野鳥(のゝとり)を扱(あつ)ひながらも、 突(つ)き進(すゝ)むは 正統(せいとう)にして 王道(わうだう)。 菜(れうり)、 器(うつは)、 金屬洋食器(カトラリ)、 接客(もてなしぶり)、 何(いづ)れも然(しか)り。 4 掉尾(いやはて)の粕壁(かすかべ)『』。 「 同(おな)じ屋號(な)で、 神田神保町(かんだじんぼうちやう)へと移轉(うつるべし)」との情報(よし)。 「櫛齒(くしのは)の毀(こぼ)るゝが如(ごと)く」とは正(まさ)にこのこと。 僕(やつがれ)相知(なじみ)の肆(みせ)が、一軒(ひとつ)、また一軒(ひとつ)。 「またにたま」。 "また"に一箇(ひとつ)は(このおかた)。 "また"に一杯(いつぱい)、(しがらきやき)。 、、と云ふ次第(わけ)にて、 "(サルシッチャ)"+"(えびかづらのさけ)"+"(あいすくりん)"、 〆に"(エスプレッソ)"。 對價(あたひ)、三千八十圓也(さんぜんはちじふゑんなり)。 主菜(しゆさい)の一皿(ひとさら)"(サルシッチャ)": 今更(いまさら)言(い)ふも憚(はゞか)るが、 それにしちャ、滿更(まんざら)でもなき味(あぢはひ)。 舌鼓(したつゞみ)からの(はらつゞみ)、(ばさら)で辭去(さらば)。 8~F4 東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1. 此度(こだみ)は""に"(あかきえびかづらのさけ)"、 對價(あたひ)、三千三百円也(さんぜんさんびやくゑんなり)。 通例(つね)のごとき 琺瑯鍋(はふらうなべ)。 ""には種々(さまざま)あれど、「"風(ふう)"」との由(こと)。 「""專用(せんやう)」と云ふ"(あかきえびかづらのさけ)": 『』ほどではないにせよ、 (ビイドロのうつは)には適度(ほどよ)き大(おほ)きさもあり、 能(よ)く 優雅(みやび)なる風味(あぢかをり)を輔(たす)く。 これを一口(ひとくち)飮(や)り、 上記(くだん)の 四色(よいろ)の 禽獸肉(とりけだものゝしゝ)を齧(かぢ)るに、 各(それぞれ)の個性(もちあぢ)を保持(たもち)つゝ、 " 臛(あつもの)"としてこの"(なんばんわたりりのさけ)"に調和(つりあふ)。 (たけゐおやかた)の" 羹(あつもの)"もさることながら、 心殘(こゝろのこ)りは 拂郎西察(おふらんす)舶來(わたり)の"(あいすくりん)"。 こればかりは、 何國(いづく)の如何(いか)なるものより華美(よきあぢ)ゆゑ、 今后(これよりのち)、難儀(こまる)、絡(から)まる、跽(かしこまる)。 8 久方(ひさかた)ぶりの『』。 移轉話(よそにうつるはなし)が二轉三轉(こちらがまろびて、あちらにかはり)、 暫(しばらく)は當地(このち)にての商賣(あきなひ)。 而(しか)して、捲土重來(きたるべきひにまきまへしをねらふ)。 此度(こだみ)は、 "(かきグラタン)"+"(もゝいろのえびかづらのさけ)"、 甜點(あまみ)として、"(あいすくりん)"、 對價(あたひ)、二千五百三十圓也(にせんごひやくさんじふゑんなり)。 "(かきグラタン)"には二色(ふたいろ)の"(チーズ、かんらく)"。 その内(うち)の一種(ひとつ)が"(あをかびのかんらく)"。 (しぶがき)、(かごかき)、靴磨(くつみがき)。 (かごかき)に鞜(くつ)不要(いらず)。 箱根山(はこねやま)の(くもすけ)草鞋履(わらぢばき)。 (つくばのやま)(しろくのがま)は四面鏡張(かゞみばり)。 己(おのれ)の醜姿(みにくきすがた)に垂(た)らす蝦蟇(がま)の膩汗(あぶらあせ)。 さすがに"(がまのあぶら)"は斷念(あきら)め、 " 鮮蠔(なまがき)"の次點(つぎ)に"(かきのあぶらあげ)"、 "(グラタン)"はその下(した)、と云ふのが卑見(それがしがみかた)。 "(グラタン)"に用(つか)ふ"(かんらく)"としては、 沒個性(くせのなき)ものが適當(よ)く、 "(あをかびのかんらく)"の匂(にほひ)は、 " 鮮蠔(なまがき)"の" それ"と 衝突(ぶつかりあ)ひて不融合(とけあふことなし)。 宛然(あたかも)、 虎(とら)に草(くさ)、象(ざう)に雞(にはとり)を給餌(あたふる)がごとし。 やはり、虎(とら)には雞(にはとり)、象(ざう)には草(くさ)が適合(よい)。 " 鮮蠔(なまがき)"の 配搭調劑(とりあはせ・あぢつけ)は "葷(なまぐさ)"なるべからず。 8 東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1. 「" K澄S河 (けいすみえすかは)"へは來年(きたるとし)。 」 「なれど、 正式契約(はんをつく)には未到達(いまだいたらず)。 」 との説明(はなし)。 " 甘味(デセール)"として"(もゝのソルベ)"を選擇(えらむ)。 "(あかきえびかづらのさけ)"を加(くは)へ、 對價(あたひ)、二千一百六十圓也(にせんいつぴやくろくじふゑんなり)。 雞(とり)も種々雜多(とりどり)、自由選擇(よりどりみどり)。 (にとり)、(はつとり)、本名(な)は染谷(そめや)。 目脂(めやに)、(まつやに)、三流大學(すべりどめ)。 四脚(よつあし)を、嫌(きら)ふ(せきとり)二本脚(にほんあし)。 (とりかは)は"(あれ)"の若(ごと)く、 嫩(やはらか)き(み)は乙女(をとめ)の 耳朶(みゝたぶ)を髣髴(おもは)す。 蔬菜(あをもの)、 蕈菇(きのこ)の等類(たぐひ)は、 燉(にこま)れて口味(あぢ)が滲(し)み、實(げ)に優(やさ)しき味(あぢはひ)。 "(もゝのソルベ)"は初(はじめて)。 やはり、"(まんごソルベ)"か"(あいすくりん)"が吉(よい)。 "(こうちや)"はと吟味(み)るに、 (は)から推定(し)て、"(ダージリン)"とは異(こと)なるもの歟(か)? 8 東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1. 菜單(しながき)に""もあれど、 何(なに)を喰(く)ふかと、沈吟(しあん)しどころ、此處(こゝ)『』。 「茲(こゝ)は(ほたて)の兒(こ)にすべし!」とて、 "(ちいさなほたてがひ)と蔬菜(あをもの)ゝ(あかなすじたて)"に、 "(しろきえびかづらのさけ)"を加(くは)へ、 對價(あたひ)、一千八百九十圓也(いつせんはつぴやくきふじふゑんなり)。 赤色(あかきいろ)の琺瑯鍋(はふらうなべ)には、 "(ちいさなほたてがひ)"のほか、 "(せりにんじん)"、" 蘿蔔(おほね)"、" 西蘭花(はなめやさい)"、など。 その 口味(あぢはひ)、生平(つね)に無所相違(つゆことなるところなし)。 愈々(いよいよ)、 翌月(あくるつき)には閉店(みせをしめ)、 花(はな)の東都(おえど)の 根津(ねづ)、or、 門前仲町(もんなか)に、、。 「 おめおめ當地(このち)に囘歸(もどる)まじ!」との決意(はら)。 あと一~二度(ひとたび、ないし、ふたゝび)訪問(あしをはこぶ)ことになる歟(か)? 8 東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1. 法國(おふらんす)の 名菜(なだがきめし)なるは勿論(いふもさらなり)。 肉(にく)の部位(ぶい)は風習(ならひ)の 頬(ほゝ)。 " 薔薇(むはら)"歟(か)? 、" 糖酒葡萄乾(さけづけのほしえびかづら)"歟(か)? 冰酪(あいすくりん)として" 糖酒葡萄乾(ラム・レザン)"を選擇(えらむ)み、 "(あかきえびかづらのさけ)"を加(くは)へ、 對價(あたひ)、三千四百五十六圓也(さんぜんしひやくごじふろくゑんなり)。 "(ラム・レザン)"とは、 葡萄乾(ほしえびかづら)を(さたうきびしぼりかすざけ)に漬(つ)け、 これを 冰酪(あいすくりん)として製(こしら)へたるもの。 珍(めづら)しき 白葡萄(しろきえびかづら)。 劈頭(いやさき)に"(ブッフ・ブルギニオン)": 不硬(かたからず)、 さりとて、 徒(いたづら)に嫩(やはらかき)に走(はし)ることなき 火候(ひいれ)。 醢醯(しほけとすみ)亦(また)適切(ほどよし)。 (かとらり)は法蘭西(おふらんす)""牌(じるし)。 叉子(にくさし)に抑(おさ)へ、 餐刀(めしがたな)以て截(き)り、 赤葡萄酒(あかきえびかづらざけ)の(たれ)は 湯匙(ちりれんげ)に拯(すく)ふ。 佳味(よきあぢ)、佳味(よきあぢ)! " 糖酒葡萄乾(ラム・レザン)"の"(あいすくりん)"なるもの、 當家(こちら)では初(はじめて)。 責(せめ)て怡(よろこ)ぶ(さどこうしやく)。 〽荒海(あらうみ)や、佐渡(さど)に飛翔(とびか)ふ(とき)の聲(こゑ)。 〽あら巧(うま)や、(さど)の欣喜雀躍(よろこ)ぶ(むち)の音(おと)。 、、と云ふは 眞赤(まつか)な虚文(うそ)・戲(たはふれ) にて、 〽あら旨(うま)や、(おやかた)烹飪(つく)る(なべ)の味(あぢ)。 8 東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1. 此度(こだみ)は、"(かりィめし)"を選擇(えらむ)ことに、、。 別料金(おひぜに)して、" 冰酪(あいすくりん)"を二種(ふたいろ)にして貰(もら)ひ、 對價(あたひ)、一千二百九十六圓也(いつせんにひやくきふじふろくゑんなり)。 最初(いやさき)に、 盌(まり)の(かりィ)を米飯(こめのいひ)に #BCMKR! 平生(つね)に無處相違(ことなるところなし)! 落膽(きおち)するでもなく、感歎(ためいきもらす)譯(わけ)でもなく、、。 (たけゐおやかた)、 やはり" 咖哩(かりィ)"より" 煮込(にこみ)"が得意(えて)歟(か)? 冰酪(あいすくりん)二種(ふたいろ)は、 "(あいすくりん)"に"(まんごそるべ)"。 これも亦(また)、 平生(つね)に無處相違(つゆとたがふところなし)! 善哉(よきかな)、善哉(よきかな)、。 漢字(もろこしのもじ)にて記(しる)されたる"(まんゑふがな)"。 (えびかづらのさけをいるゝびいどろのうつは): その内容(なかみ)は冷水(つめたきみづ)。 玻璃(びいどろ)の表面(おもて)に 水滴(しづく)が附着(つ)き、 水温(みずぬる)み、軈(やが)て、大(おほ)きく(さま)、「 いとをかし」。 8~F4 東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1. 周知(あまねくしら)るゝごとく、 " ゐのしゝ"とは「"豬( ゐ)"の"肉( しゝ)"」にて、" ゐ"とはその 鳴聲(なきごゑ)と云ふ。 大和言葉(やまとことば)には 一音(ひとつのおと)多(おほ)し。 例示(ためしにあぐる)なら、" 木"、" 子"、" 小、" 粉"、" 此、" 海鼠"は孰(いづれ)も" こ"。 愚老(やつがれ)が淺學(さるぢゑ)では、その理(ことわり)不詳(つまびらかならず)。 " 豬"も" 井"も、ともに" ゐ"と發音(くちよりおとにしていだす)。 "( Notation、かきしるしかた)": 天竺(てんじく)發明(あみいだせ)し"(くらゐどりきすうはう)"、 "(やうしきさんじゆつきがう)"、そして、"(もろこしもじ)"。 悉(ことごと)く 學問進歩(ちゑとまなびのあゆみ)に不可缺(かくべからざるもの)。 そも、諸學(もろもろのちゑ)、萬(よろづ)食物(くちにするもの)、 夏華(もろこし)の恩惠(めぐみ)に無關係(かゝはらざる)は稀(まれ)。 「 無震旦(もろこしなくして)、無東瀛(ひのもとなし)」。 就中(わきても)(かんじ)は「その 象徴(しるし)」とでも云ふべき存在(もの)。 ともあれ、 野豬肉(ゐのしゝ)なるもの、 本朝(わがくに)では往古(いにしへ)より好(この)まれ、 時(とき)に、" 牡丹(ぼたん)"、" 山鯨(やまくぢら)"、" 藥(くすり)"と稱(とな)へ、 大賞味之(おほいにこれをあぢは)ふが風習(ならひ)。 かくて、菜單(しながき)より、 "("たちばな"はみてそだちし"くさゐなぎ"と"あをもの"ゝにこみ)"に、 "(あかきえびかづらのさけ)"を合(あ)はせ、 對價(あたひ)、三千二十四圓也(さんぜんにじふしゑんなり)。 愚按(やつがれおもふに)、 野禽獸(のにすむとりけだもの) 啖(くら)ふには肉叢(しゝむら)が最善(よい)。 如何(いかに)せん、 この大(おほ)きさでは、 野豬(くさゐなぎ)の特徴(もちあぢ)を存分(こゝろゆくま)で難愉(たのしみがたし)。 此度(こだみ)は"(あかきえびかづらのさけ)"が上々(なかなか)。 「法國(おふらんす)(ブルゴーニュ)"Hautes 2012"」 との説明(よし)。

次の